NENOMETALIZED

Music, Movie, and Manga sometimes Make Me Moved in a Miraculous way.

映画『#怪物』(#是枝裕和)〜怪物の正体とは?音楽論を交えてのちょっとした考察〜

家族愛もイジメも児童虐待も友情も性への目覚めもどこか淫靡体質な最近の政治的世相を風刺したような描写もあちこちに散りばめておいて最後の最後に「で、あなたはどう思う?」と私の心の奥底に全てを丸投げされたような久々に重厚な何かを受け取った正にタイトル通りの怪物作である。

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この膨大な伏線的なものを投げかけられて最後の最後になって「で、あなたはどう?」と丸投げされる感はどこか2014年の傑作ゴーン・ガール辺りを彷彿とさせるような。
ここ最近エンターテイメント色の強い分かりやすい感動や共感を得られる作品が多い中本作は珍しく良い意味で「分かりにくい」作風であるといえよう。


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因みに話は意外な所に飛躍するが、今現在関西を中心に活動している女性SSW、優利香(ゆりか)の『ハートレス人間』が好きな人は必見かもしれない。なぜから別に本作の制作過程とは全く関係ないんだけれども優利香の『ハートレス人間』の歌詞が物凄く本作とシンクロするからだ。

本曲について過去の優利香に関する記事で以下のように定義している。

nenometal.hatenablog.com

「自分の本当の気持ちとは裏腹に愛想笑いを浮かべてしまう、私はそんな空虚な「ハートレス人間」そして私に立ちはだかる得体の知れぬ「怪物」の正体とは?」

勝手に本曲を私なりにまとめてしまったが、そんな内省的な心情をこのポップスフィールドで綴ったこれまた珠玉の名曲である。後の「ABCホールアフタートーク」を聴きつつふと思い出したけど『ハートレス人間』辺りからそれまでの盛り上がりを更に助長するような物凄い盛り上がりが起こったのは驚きだった。或いは世界が滅びようがどうにでもなれ的なヤケクソ感にも似た覚醒感。正に「ライブマジック」と呼びこんだ曲。優利香楽曲の中でも、いやJpopのフィールドでも内省的な部門に入る本曲がなぜここまで起爆剤となったのは、ややトートロジカルな言い方になるが、この歌詞が「内省的」だからだろう。誰もがこのコロナ禍において内なる【怪物】を意に反して育んでいたのを認知しているのだ。そしてその存在の正体も無意識に知っているからだ。


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そして本曲に以下のような一節がある。

怪物とは他の誰でもない 鏡の中のもう1人

と言う誰しも抱え込んでいるもう一人の狂気的な自分を「怪物」とメタファーを用いたポップソングだけど、本フレーズをもはや「影の主題歌」と呼称しも差し支えないくらいである。

 あともう一つ思い出した曲が東京を中心に活躍している役者兼SSWのSaika(吉田彩花)『Have a goodday~青の時代』もあげられる。
本曲にこういう一節がある。


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押し付けの優しさは心を殺す 中身のない正義は失笑を産む

本曲における安易な共感への反発とステロタイプの押し付けに対する抵抗は、正に本作で描かれている少年達の心象風景そのもの。

本作にはボーカルを伴った劇中歌・主題歌がないからこそこういうリンクが発見できたのかもしれない。
にしてもこういうシンクロニシティを発見するのはエンタメの醍醐味って感じがしてとても楽しい。

あと、子を思いながらもどこか我が子を育てきれなかった自分に頼りなさを感じているシングルマザー早織を絶妙な匙加減で演じられた安藤サクラも凄く良かった。
これは是枝監督の過去作である万引き家族*1の時も思ったんだけど、たま〜にこの種の個性強い女優だとか芸人畑の人が映画出ると何とか爪痕残そうと必死感が滲み出すぎて痛い事になってる人がたまにいるんだけれども、この人は彼らとは一線を画していると思う。自分のこの映画の中での全うすべき役割をしっかりと把握して認識してある意味「抑えた」「徹した」「ストイック」な演技をしているっていうのがすごく伝わってくるのだ。

 最後に本作のタイトルについて一考察。パッと見「怪物」と言うタイトルは少し大げさで、実際は「心の闇」とか、「鏡の中の自分」とかそういうちょっとソフトなニュアンスのもの方が合っていると思うかもしれないが、実はある場面にホントに怪物のようなものが心の中で出現する場面がある。これにはびっくりした。

これどの鑑賞者の頭の中にもゴジラのような巨大な怪物が狂い倒して叫ぶシーンが浮かんでくる事だろう。


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 正にゴジラの〇〇」!!!!
でもこれ以上言うとネタバレになってしまうし、とは言え本作はギミックに溢れた所謂「ネタバレ厳禁映画」ではないので鑑賞経験者としては誰しも言い出しかねない人が出てくると思うので、多分ロングランするんだろうけど早めに観に行った方がいいと思います。

 

*1:万引きで生計を立てる家族の元に、怯える仔犬の目をした少女が迷い込む。腕にはDVを匂わせる傷跡。やがて彼女はその一家との交流(万引き講習含む)を経て本当の家族とは何かを知る。にしても『万引き家族』公開を狙い定めたかのように登場人物と全く同い年の女児の虐待事件が起こったりと、傑作であるほど時代の空気を必然的に投射する映画は多い。傑作は常にその時代の空気を必然的に投射する。『万引き家族』に関する当時のツイートより

抜粋記事;#植城微香(うえきそよか)New Album『#SO』レビュー

植城微香(うえきそよか)

New Album『#SO』ディスクレビュー

*本記事は前の記事、「2023年最重要hero、植城微香(うえきそよか)爆裂レビュー」のNew Album『SO』レビューにフォーカスした抜粋記事である。

nenometal.hatenablog.com

 タイトルは『so』。 ワンマンライブのタイトル『YOUR』 も潔いなと思ってたものだが今回のそれはもっと潔いタイトルである。「UEKISOYOKA」ど真ん中、UEKISOYOKAという意味を込めたタイトルなのだろうか。それにしても配信でもCDでもなくまだ音源化されてないオリジナル曲はこの『hero』を含めて何曲か路上でもライブでも聴いたけど大袈裟ではなく全曲素晴らしい。

収録曲

1.YOUR GIRLFRIEND
2.HI TO RI ZI ME
3.HERO
4.24 hours
5.drive
6.merry-go-round

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ゆっくりとビートが目覚めるように始まる1曲目から、穏やかに眠りに落ちるような6曲目まで唯一無二の植城微香ワールドが展開される。

このタイトルの『SO』とはsoundでもありsongでもありsoulでもありsophistication (洗練)でもありSoyokaをも駆動する頭二文字。正にアートが彼女を必要としている、そんな時代の幕開けだ。そしてリリース以後何十回聴いたか分からないがある事を確信した。タイトルの「GIRLFRIEND」とは自己でもあり他者でもあるが【let me be my girl friend】と心中叫んでしまう複雑な心象風景をドラマティックなアレンジで包んだ2023年のR&Bポップス。この人はこういう複雑な気持ちをカッコいいポップスとして表現するのが上手いと思う。

この点についてはのちに詳しく触れたい。


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先行配信されている『HI TO RI ZI ME』もALの流れで聴くと一曲目の『GIRLFRIEND』の【let me be my girl friend】な思いとのシンクロを一層感じてより新鮮に響く。


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個人的に

誰かと話す楽しそうな横顔なんてもう見たくない

の少しブルージーナ憂を帯びたR&B色を帯びたメロディの美しさ。この部分を聞くと特に彼女も路上でカバーしている宇多田ヒカル、もっと言えば初期の『First love』辺りの要素を感じるのは私だけだろうか。

次に本記事でも散々語り尽くしてきた『HERO』が始まる。

前記事の本曲に関するレビューを再び引用する。

 


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この曲はまあ言うなれば極寒の季節を経てようやく雪も溶け出して広い荒野で新芽が息吹き初め、太陽光を浴び一気に各々の芽から花が一気に咲き誇っていくようなあのサビの高揚感に包まれるような壮大な曲である。そしてそのメロディに寄り添うにはこの上ないフレーズを以下、挙げてみたい。

You are my hero

You are my hero

飛べない 飛べないけれど

泣きたい時に 優しくマントで包んでくれる

You are my hero...

この詞とメロディとが融合するこのカタルシスにただただ立ち尽くし、心の臓をぶち抜かれ、感涙し、感動するしかねえ作ってる時天から降ってきたんじゃねえかってくらいの超絶神曲だと言っても過言ではない。いや過言どころか本ブログ記事100000もの文字数で補ったとしても足りないくらいだ。いつも思うがこの曲をFM802辺りヘヴィロテに採用してくれんじゃろか。802の人気パーソナリティーである仁井聡子さんなんか絶対この人のキャラクター含め楽曲とか絶対気に入ってくれると思うんだが、それこそAnlyとめちゃくちゃ仲良いっぽいし。それにしても、京橋駅前という土地柄から改めて分かったのだがこの植城微香という人は小さな子供からそのお母さんからウェイウェイ系のお兄さんから彼女と同い年くらいの若い女性から、私のような理屈っぽいサブカル拗らせた音楽オタ(笑)に至るまで万人に好かれる素性を有していると思う。

そんな彼女の要素がどこかキャラクターのポピュラリティへと繋がっていく楽曲自体にも普遍性を伴って響くのだろう。


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そして本盤ではスタジオ版ならではの聴き心地の良いサウンドプロダクションに乗っかる事で曲世界の奥行きを感じることに驚く。どこかナイーブな心情を吐露しながら身近な存在によって光明を見出すようなポジティティが存在し、2023年最強のアンセムだ。もうこのまるで空に解き放たれた鳥が大海原を駆け巡るようなアレンジで聴くとアコギ以上に更に曲世界の"エモ度"が増してくるようだ。前々から思ってて本スタジオ版を聴いて確信したが、専門学校などのCMテーマなりシネコンでやりそうなデカい青春映画の主題歌なりFMラジオのヘビロテ曲でも何でもいいから大々的にタイアップするべき超絶大名曲である。そして本曲は『24 hours』『drive』などなど路上でもお馴染みのキラーチューンを経て本アルバム収録の全ての曲のように「他者への思い」を綴った『merry-go-round』で穏やかにクロージングする。


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このアルバム全体を貫いているのはれない対象にせよ友情にせよ、片思いにせよ「赤裸々なまでの内なる他者への思い」である。この「他者への思い」とは植城微香にとって何を示唆しているのだろうか、と考えた時に彼女の実体験や友人の話や何らかのインスパイアとは別の所に、そっくり今の彼女の音楽シーンにおけるスタンスをも重ね合わせざるを得ない。今現在「シンガーソングライター」と名乗る女性の音楽家の数だけでも半端なく多くて、数を数えようとなるとおそらくは途方もない数値が出てくるだろうってのはほぼ毎月のように開かれるライブイベントで見るたびに聞いたこともないような名前の人に数多く巡り会うことからももう明らかだ。そんな途方もない数の中からこれまた数多くいるリスナーにとっての「推し」が選出されることはもう並大抵のことではないだろう。だからこ「植城微香の音楽はあなたのとってのGrilfriendであり、24hoursずっとhitorizmeできるHero的なポップアイコンでありたい」と言う彼女の切なる思いがブレイク間近であるのこの時期のリアリティとして本盤から潜在意識として溢れ出ているのではなかろうか。もっと言えば『merry-go-round』も「ヘヴィロテ」を暗示するタイトルである。そして、そんなリアリティが痛々しくも生々しくもならずにしっかりとエンターテイメント性のあるポップミュージックとして機能している点に私は恐ろしく彼女のセンスと才能を感じるのだ。本盤は今年2023年にリリースされた洋楽・邦楽問わずリリースされたアルバムの中でも最高にポップスに向き合った名盤であると断言しよう。

このアルバムリリース以後、【植城微香】【SO】という二つのwordが音楽業界のメインストリームを駆け巡るだろう、そうするとまたまた彼女はそんなリアリティを新たなヴィジョンを持った未知なる音像に変えてドロップアウトしてくれるだろう。

本盤が正に時代の変遷を感じるキッカケとなるようなディスクという名のトレースとなることを願ってやまない。

....と、なかなか本アルバムリリースから1週間、絶好調な滑り出しを見せる植城微香 さんだが、路上なりライブなりで絶対売ってたら死んでもゲットすべきなのがこのCD。
配信にも『SO』にも収録されていない『星空ライブハウス』と『Sweet Little Demon』という前記事を書くキッカケと言っても良い超絶大名曲が収録してるからだ。


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2023年最重要hero、#植城微香(うえき そよか)爆裂レビュー

2023年最重要hero、#植城微香(うえき そよか)爆裂レビュー

*1

0.対バンの「殺傷力」について考える

1.植城微香のもたらすインパク

❶Anly『Alive』

新山詩織『絶対』 

❸Nakamura Emi『YAMABIKO』

2.植城微香のオリジナル・ソング

Case(1);Sweet Little Demon

The Beatles『Here, there &everywhere』 

QueenBohemian Rhapsody 

Alicia keys『Underdog』
Case(2);星空ライブハウス

Case(3);Hero

Case(4);GAME SET, One More Crash

3.植城微香、未来へのパースペクティブ

Appendix;ミニアルバム『SO』Disc REVIEW

 


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Here’s to the crazy ones.

The misfits.
The rebels.
The troublemakers.
The round pegs in the square holes.
The ones who see things differently.

They’re not fond of rules.
And they have no respect for the status quo.

You can quote them, disagree with them, glorify or vilify them.
About the only thing you cant do is ignore them.
Because they change things.

They push the human race forward.
Maybe they have to be crazy.

While some see them as the crazy ones,
we see genius.

Because the people who are crazy enough to think
they can change the world, are the ones who do.

 

[日本語]

クレージーな人たちがいる。
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。
四角い穴に丸い杭を打ち込むように
物事をまるで違う目で見る人たち

彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。

彼らの言葉に心をうたれる人がいる。
反対する人も、賞賛する人も、けなす人もいる。
しかし、彼らを無視することは、誰にも出来ない。
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。

彼らは人間を前進させた。
彼らはクレージーと言われるが

私たちは彼らを天才だと思う。

自分が世界を変えられると
本気で信じる人たちこそが
本当に世界を変えているのだから。

〜「Apple CM Crazy Ones」より

 

0.対バンの「殺傷力」について考える 

毎回毎回色んなライブに行ってるとふと考える事がある。

それは「対バン」についてで、そもそも対バンとはメインで観たい(聴きたい)アーティストとは違って当初は初めて聴く人が多かったりであ、イマイチだな、とかまぁまぁだな、とか個別脳内で色んな感想を抱く訳であってなかなかシビアなものである。たとえメインのアーティストと旧知の仲であっても聴き手にとっては「合わないものは合わない」訳で最悪の場合その対バンアーティストが演奏している一曲すらも超絶長く感じることがある。そういう経験は山ほどあるし、そう考えると逆に「対バンが良くて音源を購入する、もっといけばメインを超えるぐらいに心を撃つ」という現象は本当に物凄い事だと思う。もっといえばこれは「殺傷力」と言えるもので以前Anlyに関する過去記事で以下のように述べている。*2

これはAnlyのライブに行く度に思ってるのだが、ループ・ペダルでのパフォーマンスを録音したLiveアルバムか、このliveの映像集でもリリースしてそれが多くの人の目に触れることがあれば、膨大な数のSSWの立場をなくしてしまうだろうと思う。

 実際個人的に彼女のライブを体感したばかりに何名かのシンガーソングライターがネノメタル 内ライブ・レギュラーリストから見事に落選してしまった。だってもうAnlyのライブのレベルを体験してしまったら幾人かのシンガーソングライターの音楽やライブが自分の人生に全く必要なものでは無くなってしまったのだ。僕らも別にアーティストに対して義理や人情で音楽を聴いている訳ではない。これはシビアな話であるが"殺傷力"っていうのはつまりそう言うことなのだろう。

今回のケースでこれよりもすごいのはAnlyの場合は音源を予習して完全装備でライブを見てそう思ったのだから多少そうなることもわかっていたのだが、植城微香の場合、今まで名前すら全く聞いたことすらなくて初聴きでお目当てのアーティストを凌駕するぐらい圧倒されてしまった事。もちろんそんな経験は一年に数回かるかないかぐらいでめちゃくちゃレアだと思うのだが今回紹介する植城微香(うえきそよか)というアーティストは初聴きで一気に私の中でメインストリームに躍り出た奇跡的な存在である。

本記事では彼女の魅力について楽曲とストリートパフォーマンスに絞って思う存分論じたいと思う。*3

時代は変わった、いや時代よ変われ。

世界よ、2023年最強のHero, 植城微香を聴け!

www.uekisoyoka.com

1.植城微香のもたらすインパク

まずは彼女との出会いを述べたい。あれは忘れもしない、1月31日の心斎橋にある真心場(まほろば)という関西近郊に住んでいるライブファンなら一度は耳にしたであろうライブバーでの出来事。この日天野花、Nachika、植城微香という女性SSWばかりの【Nachika 上京企画 特大スリーマン!「東西マイスター感謝祭!」】というイベントライブに行った。

*4彼女がブルーとピンクのオーガニックな柄のセーターにダボっとしたジーンズというカジュアルなファッションで現れ、ガシャガシャっとギターを鳴らした瞬時にわかった。

あ、これは来たぞと。

そう、もう瞬殺的に「あ、この人は何かが違う。」と思ったのだ。どハマり決定。そう、そしてこの感覚には実は既視感があった。思い起こせば2019年の4月に神戸のアコースティック・フェスティバルにて、Anlyがミリタリー風のジャケットをラフに羽織ってふらっと現れた瞬間と驚くほど類似しているのだ。何というか、何の特別な演出もBGMもなくてもう存在自体が才能の塊ってかもはや存在自体が「音楽」というか、もうルックスだとかファッションとかどうでも良くって完全に音楽が身についている人のオーラというか、存在自体が音楽といっても過言じゃない何かがあったのを思い出した。

正にAnlyの衝撃ふたたび。

もうそう思ったらだめ押し感ハンパなくて彼女がパフォーマンスに突入するとそれはもはや当然のように確信に変わる。初めて聴く曲であろうにそのグルーヴ感やギターテクニックや勿論歌声に完全に心を持ってかれた。

ああ、凄い。よし、この人の音源を聴こう、今後絶対ライブに行こう、Twitterのプロフに彼女の名を入れよう、通知もオンにしよう、とすぐに決心したものだ。更に驚くべき事はAnlyのアコフェスの時とは完全に違って、彼女に関しては事前に音源はおろか、もはや「植城微香(うえきそよか)」という名前すら認知せずにライブ会場に赴いてにも関わらずここまでどハマった事である。正に対バン形式ライブの究極の醍醐味がそこにあったのだ。もうこれぞ本当の殺傷力だと思う。その時にパッと聴いた第一印象はそれこそ高音部ではAnlyを彷彿とさせる芯のある伸びやかな歌声と、どこか新山詩織を思わせる低音部との組み合わせがありそのある種、対照的な2人のボーカリゼーションの中庸をいく感じがとても聞き心地が良かった。そしてそんな聴き心地の良さを駆動するような曲調は完全にJ-POPのフィールドでありつつもどこかAnlyのみならず、竹内アンナだとか、Emi Nakamuraなどのインターナショナル感覚を踏まえたポップスを鳴らす人たちと近い印象があった。

❶Anly『Alive』


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新山詩織『絶対』


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❸Nakamura Emi『YAMABIKO』


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.....とここまで記述して「今年に入って彗星の如く現れた」というトーンで語るべきだろうが音源も3曲入りのEPの入ったCDとそれらに収録している曲とは別にサブスクリプションにおいて3曲ほどの配信もリリースしたり、熱心な固定ファンがついている数多くのライブもこなしたり、もはやインディーズながらも既に3〜4年ほどのキャリアを積んでいる点に注意したい。これはもう完全に私の目が節穴だったのだと猛省するしかない。私は3年もの間何をしていたのだろう、ここまでの逸材を見失っていたとは音楽リスナー人生最大の汚点である。

*5以下、彼女の楽曲の魅力に関して、私が実際に現地へ赴いて撮った楽曲とストリートパフォーマンスと共に紹介していきたい。

 

2.植城微香のオリジナル・ソングたち

Case(1);Sweet Little Demon

植城微香 さんは10年に1人出るか出ないかの天才だとハッキリ確信した曲がある。それがこの日にルクア前で披露された『Sweet Little Demon』である。


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これは今現在入手可能なCD『Endless Love Song』の二曲目に収録されているのだが、最初に聴いた時から全パートのメロディーが満遍なく美しいのに恐れ慄いた一曲だ。普通AメロとBメロが凡庸だけれどサビが恐ろしくキャッチーだとか敢えてBメロだけが群を抜いているとか色々なパターンがあるんだけれども全パートってのは滅多にない。敢えて言うならビートルズ『Here, there &everywhere』とかクイーンのBohemian Rhapsody』やAlicia keys『Underdog』とかああいうオールドロックやR&Bの「美メロの嵐」みたいな曲に匹敵すると思う。


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The Beatles『Here, there &everywhere』


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QueenBohemian Rhapsody


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Alicia keys『Underdog』


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てか、美しいメロディーの曲というのは大概ネタ切れがしていているのかと思っていたら、まだ奥行きがあるのかと言う事実に驚いているくらいだ。
しかもどこかラテン的なアレンジが施されるようなリズムがある気がする。正に歌詞にある通り恋愛に翻弄されてしまう男の子の心情を描いたらしくて、文字通り「甘く危険な罠」のような神曲(この場合悪魔曲か)である。この曲の中毒性含めて
本当にこの人のコンポーザーとしての才能は凄すぎる。*6
Case(2);星空ライブハウス

次で現在CDのみで聴ける『I sing to you; endless love song』と書かれた3曲入りEP最終曲に収録されている『星空ライブハウス』である。そういえば本曲を演奏する前にこんなことを言って歌った。

なんか毎日毎日嫌なこともあるし、辛いこともあるし、時間に追われて、時間にこう支配されて、ふぅ〜と一息できる瞬間も少ないかもしれへんけど、私とギターとみんなさえあれば、星空ライブハウスに...星ないけど今(笑)


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私が見る限りいつも本曲を演奏する時に限って空に星が見えなかったりするのだが(笑)、いやいや、そんなことはさておきそんなストリートライブにおける彼女のスタンスを象徴するかのようなこの歌詞に注目するべきだ。どこかサニーデイ・サービスのようなノスタルジックなAメロを経て、サビメロのまるで地球から木星まで40光年年もの可視光を超え壮大に心の奥底まで響いていくサビはもう鳥肌ものである。歌とメロディと音楽を愛する人と魂があればどこでもLIVEハウスなのかもしれない初めてLIVEで聴いた時から神曲認定した『星空ライブハウス』である。

本曲を路上で聴くのは個人的に初めてだったがタイトル通りここがHEP前だろうがルクア前だろうが音楽が鳴るべきサンクチュアリに変えてしまう力強い曲である。路上ですらサビの美しさに道行く人がハッと振り返るのを10人ぐらいは確認したものだ。
こちらは後述するが、来る5/31の心斎橋Janusでのワンマンライブではどんな想いを込めて歌い、そして我々オーディエンスはどんな心持ちで受け取るのだろう。それが楽しみで仕方ない。


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こちらは京橋駅前。空には星1つなかったが、そんなもん関係なく『星空ライブハウス』は、植城微香の歌声によって夜空に満天の星空を讃えていた。2コーラス目のサビ終わりで隣にいた酔っ払いのオヤジさんが突如「優しい歌声!」と言って何故か私に握手をしてきたのには少々ビビった。

さすがこれが彼女が人間味があって良いといつも言っている「京橋マジック」というものか。

いつの間にか京橋という街が少し好きになったかもしれない(笑)

Case(3);Hero

思えば1月末に初めて 植城微香 のLIVEを観てこの人の音楽活動は追っていこうと決心した心臓ど真ん中を貫いた曲がある。それがこの3/18路上ライブの第二ステージ京橋駅前で披露された『hero』である。


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この曲はまあ言うなれば極寒の季節を経てようやく雪も溶け出して広い荒野で新芽が息吹き初め、太陽光を浴び一気に各々の芽から花が一気に咲き誇っていくようなあのサビの高揚感に包まれるような壮大な曲である。そしてそのメロディに寄り添うにはこの上ないフレーズを以下、挙げてみたい。

You are my hero

You are my hero

飛べない 飛べないけれど*7

泣きたい時に 優しくマントで包んでくれる

You are my hero...

この詞とメロディとが融合するこのカタルシスにただただ立ち尽くし、心の臓をぶち抜かれ、感涙し、感動するしかねえ作ってる時天から降ってきたんじゃねえかってくらいの超絶神曲だと言っても過言ではない。いや過言どころか本ブログ記事100000もの文字数で補ったとしても足りないくらいだ。いつも思うがこの曲をFM802辺りヘヴィロテに採用してくれんじゃろか。802の人気パーソナリティーである仁井聡子さんなんか絶対この人のキャラクター含め楽曲とか絶対気に入ってくれると思うんだが、それこそAnlyとめちゃくちゃ仲良いっぽいし。それにしても、京橋駅前という土地柄から改めて分かったのだがこの植城微香という人は小さな子供からそのお母さんからウェイウェイ系のお兄さんから彼女と同い年くらいの若い女性から、私のような理屈っぽいサブカル拗らせた音楽オタ(笑)に至るまで万人に好かれる素性を有していると思う。

そんな彼女の要素がどこかキャラクターのポピュラリティへと繋がっていく楽曲自体にも普遍性を伴って響くのだろう。


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Case(4);GAME SET, One More Crash

まずは『GAME SET』というオリジナル曲である。

本人曰く

過去最悪な恋愛をして“知らんわ、もうゲームセット!”というカッコいい系のオリジナル曲

という(どういうこっちゃw) 『GAME SET』である。ちなみに本曲は以前から彼女の音楽を知ってる人からも支持されている人気曲の一つである。


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そんな前置きはともかく曲展開がスリリングでクールながらもエモーショナルな印象がある3拍子揃ったポップチューンである。バンド演奏などになったらまた更に大化けしそうな印象。この曲に関しては「自分でも弾いていて凄く楽しい曲。」或いは「この曲を演奏する事が自分へのご褒美。」とすら言わしめるほど気に入っているらしい。

ついでに別の場所、梅田駅付近の御堂筋線南口の通称砂ゾーンで撮ったバージョンのも見てみよう。


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ちなみに別に楽曲とは関係ないがアトリエ・ペガサス(バーペガ)の店主・不滅のしょまちゃんの直伝「iPhoneナナメ持ち撮影法」で撮っている成果が現れている。

*8『GAME SET』における持つ揺れ動く感情をスマホ画面を傾ける事によって表現でき、より曲のダイナミズムが伝わってくるようだ自画自賛。それにしてもこの曲は死ぬほどカッコいい、彼女自身も気に入って、私より以前から彼女を知る人達が絶賛するだけあるな。


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次に『One More Crash』という心斎橋Janusでも聴いた事のあるオリジナル曲も披露されたがこれもまた聴いてて途中転調する所とか死ぬほど素晴らしい。この梅田駅近くの商業施設Hep前で本曲を聴いた時にふとあることを確信したものだ。この時全然発表してないが彼女はいずれ大阪でも🍌か🐈の名の付くどこかのライブハウスで近々絶対ワンマンをやるだろうと何故か予知的に思ったものだ。そしてこの直後に正にそのような展開へのプレリュードとなるような、5/31と6/4の大阪と東京でのワンマンライブが告知されたのだ


*9

 

3.植城微香、未来へのパースペクティブ

このワンマンライブが成功すれば、来年の今頃には心斎橋ジャニスや下北沢MOSAic以上のものすごい規模の会場のワンマンの告知がなされていると思っている。それはどこかはわからないが、大阪城ホールでも武道館でも東京ドームでもはたまたウェンブリー・スタジアムでもなんでも構わないと思っている。

 更にさらに、そうこう言っている間に3/19に、来る5月10日に6曲入りの1stミニアルバム発売の情報が入ってきた。
タイトルは『so』。 ワンマンライブのタイトル『YOUR』 も潔いなと思ってたものだが今回のそれはもっと潔いタイトルである。「UEKISOYOKA」ど真ん中、
UEKISOYOKAという意味を込めたタイトルなのだろうか。それにしても配信でもCDでもなくまだ音源化されてないオリジナル曲はこの『hero』を含めて何曲か路上でもライブでも聴いたけど大袈裟ではなく全曲素晴らしい。ハッキリ言ってこれはもう既に「名盤」と付される事が決定している。

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植城微香New Mini Album『SO』収録曲

1.YOUR GIRLFRIEND
2.HI TO RI ZI ME
3.HERO
4.24 hours
5.drive
6.merry-go-round

*10最後に、彼女の音楽家としての本質をズバリ言い当てたようなエピソードを紹介してこのやはりといおうか超尺の13011字にも及んだ爆裂レポートブログに決着をつけたい。

そう、4月2日の京橋駅前での22時30分を過ぎた辺りのストリートライブの模様である。この日は梅田だの難波だの大阪中を一日中かけての演奏をし、最後に最も人の温かさを感じるという京橋駅での出来事である。普通のセトリスタイルではカバーで初見を惹きつけておいてオリジナル曲も披露するスタイルなのだがこの時の3曲連続全てオリジナルでぶっ通したのだ。もはや理由は明らかで、もうカバー曲のインパクトだけにくる人々を呼び込むのではなく夜22時30分に植城微香の歌を愛して、それらをしっかりと聴きにきた人たちにしっかりと曲を届けたいからというストレートかつ真摯な思いのみである。

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セットリスト

1. H I T O R I Z I M E
2. Hero
3. GAMESET

そして更に彼女の音楽人としての真摯なアティテュードを意味するもう一つのエピソードがある。これは3月6日のまだ肌寒い頃の大阪ルクアから梅田御堂筋線前の砂ゾーンへ移ったストリートライブで、とにかくこの日はどこにいっても警察にすぐに止められるわ、酔っ払いはヤジ飛ばすわである意味「呪われた日」だったのだが、まあ百歩譲ってそういう日もあるのは良いとして、とにかくこの日は缶ビール片手に騒ぎまくる老害以外の何者でもない産業廃棄物にすらならないゴミカスジジイである酔っ払いがギャーギャー騒ぎまくっていたのだ。警察も彼女らストリートライブ演奏者たちに音楽を止めさせるためにきたもののもはやメインの仕事がその酔っぱらいをも宥める方に移行していったみたいななかなかにしてカオスな1日だった。でも、植城氏は違った。そういう状況にも彼女は一切めげずに、騒ぎにならないようにマイクを通さずに歌い方を変えたり、ヤジにも「どうもすいません💦」と決して無視せずに反応したりととにかく臨機応変に望んでいた。しかし本当今思っても腹立つぐらいその酔っ払いジジイのヤジはなかなか耐え難いものがあったのだが「道路でうるさい音楽を鳴らすなや!!!!」などなどてめえの声の方がうるせえじゃねえかというツッコミ待ちのようなカスのような言葉で散々ヤジった後に何故か知らないけど「よっしゃ、もうお前の顔覚えたわ!!覚えとけよ、頑張れよ!」となんと前向きなことばを残して去っていってしまったのだ。一同唖然。彼女もそのジジイが去った後「あれ?今私応援されてた?(笑)なんか応援されたみたいやからまだ歌うわ。」とケロッと言って場を和ませてこの滞ったというか陰鬱な空気を一変させ、むしろ妙な一体感を生んでなんと盛り上がりに転じさせたのだ。

 昔からあるミュージシャンの魅力を語る時に「このミュージシャンは歌う事が子供の頃から大好きで...」というトーンで語られることってよくあるんだけど、他のミュージシャンと呼ばれる人々にこれぐらいの精神的なタフさというか歌うことへの執着心があるのだろうか?てかむしろそれぐらいの根性がなくてはそれを生業にしていくのは困難だろうとすら思えるが、それにしても彼女は本当に歌う事が好きなのだと思う。

 そして話は変わるがこの日私は心斎橋club Janusにて別の映画と音楽とを融合した大きめのイベントに行ってきたその帰りがけだった。そこはいうまでもなく、偶然にも正に彼女が5/31にソールドアウトを目指して日々歌っているそのもの舞台でもあった。それにしてもこの『Hero』という曲は聴き飽きる事がないのだが同じ京橋駅前でも日々進化しているからであるとも思った。きっと満員のJanusでは、格別の輝きを持って響くだろう。

断言しよう、植城微香は世界のミュージックシーンをもっと面白いものに変えられるヒーローだと。

そして再び言おう!世界よ、2023年最強のhero、植城微香(うえきそよか)を聴け!

そして本ブログの序章にて植城微香にまつわる本爆裂ブログを執筆しつつ思わずこののCMのを思い出した。

正にここにある言葉、特に最後の言葉は紛れもなくこれは今の彼女にぴったりのフレーズだと思う。


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クレージーな人たちがいる。
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。
四角い穴に丸い杭を打ち込むように
物事をまるで違う目で見る人たち

彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。

彼らの言葉に心をうたれる人がいる。
反対する人も、賞賛する人も、けなす人もいる。
しかし、彼らを無視することは、誰にも出来ない。
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。

彼らは人間を前進させた。
彼らはクレージーと言われるが

私たちは彼らを天才だと思う。

自分が世界を変えられると
本気で信じる人たちこそが
本当に世界を変えているのだから。

〜「Apple CM Crazy Ones」より

 

Appendix;

ミニアルバム『SO』Disc REVIEW

収録曲

1.YOUR GIRLFRIEND
2.HI TO RI ZI ME
3.HERO
4.24 hours
5.drive
6.merry-go-round

ゆっくりとビートが目覚めるように始まる1曲目から、穏やかに眠りに落ちるような6曲目まで唯一無二の植城微香 ワールドが展開される。

タイトルの『SO』とはsoundでもありsongでもありsoulでもありsophistication (洗練)でもありSoyokaをも駆動する頭二文字。正にアートが彼女を必要としている、そんな時代の幕開けだ

今日18回聴いて確信した。タイトルの「GIRLFRIEND」とは自己でもあり他者でもあるが【let me be my girl friend】と心中叫んでしまう複雑な心象風景をドラマティックなアレンジで包んだ2023年のR&Bポップス。この人は複雑な気持ちをカッコよく表現するのが上手いと思う。


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先行配信されている『HI TO RI ZI ME』もALの流れで聴くと一曲目の『GIRLFRIEND』の【let me be my girl friend】な思いとのシンクロを一層感じてより新鮮に響く。


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個人的に

誰かと話す楽しそうな横顔なんてもう見たくない

のメロディに彼女も路上でカバーしている宇多田ヒカル、もっと言えば初期の『First love』辺りの要素を感じるのは私だけだろうか。

次に本記事でも散々語り尽くしてきた『HERO』が始まる。

スタジオ版ならではの聴き心地の良いサウンドプロダクションに乗っかる事で曲世界の奥行きを感じることに驚く。どこかナイーブな心情を吐露しながら身近な存在によって光明を見出すようなポジティティが存在し、2023年最強のアンセムだ。もうこのまるで空に解き放たれた鳥が大海原を駆け巡るようなアレンジで聴くとアコギ以上に更に曲世界の"エモ度"が増してくるようだ。前々から思ってて本スタジオ版を聴いて確信したが、専門学校などのCMテーマなりシネコンでやりそうなデカい青春映画の主題歌なりFMラジオのヘビロテ曲でも何でもいいから大々的にタイアップするべき超絶大名曲である。


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そして本曲は『24 hours』『drive』などなど路上でもお馴染みのキラーチューンを経て本アルバム収録の全ての曲のように「他者への思い」を綴った『merry-go-round』で穏やかにクロージングする。

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ここで描かれている「他者への思い」とは植城微香にとって何を意味しているのだろうか、と考えた時にそっくり今の彼女の音楽シーンにおけるスタンスをも重ね合わせざるを得ない。今現在「シンガーソングライター」と名乗る女性の音楽家の数だけでも半端なく多くて、数を数えようとなるとおそらくは途方もない数値が出てくるだろうってのはほぼ毎月のように開かれるライブイベントで見るたびに聞いたこともないような名前の人に数多く巡り会うことからももう明らかだ。そんな途方もない数の中からこれまた数多くいるリスナーにとっての「推し」が選出されることはもう並大抵のことではないだろう。だからこそ「植城微香の音楽はあなたのとってのGrilfriendであり、24hoursずっとhitorizmeできるHero的なポップアイコンでありたい」と言う彼女の切なる思いがブレイク間近のこの時期のリアリティとして本盤から潜在意識として溢れ出ているのではなかろうか。そして、そんなリアリティが痛々しくもならずにしっかりとポップミュージックとして機能している点に私は恐ろしく彼女のセンスをも感じるのだ。本盤は2023年にリリースされたアルバムの中でも最高にポップスに向き合った名盤であると断言しよう。

このアルバムリリース以後、【植城微香】【SO】という二つのwordが音楽業界のメインストリームを駆け巡るだろう、そうするとまた彼女はそんなリアリティを新たな音像に変えてドロップアウトしてくれるだろう。

本盤が正に時代の変遷を感じるキッカケとなるようなDiscとなることを願ってやまない。

 

*1:本記事は5月10日の新譜『so』発売、5月31日心斎橋Janus、6月11日下北沢MOSAiCでのワンマンライブ『YOUR』と2023年は間違いなく彼女の歌が世界中を駆け巡るだろう。
本記事はそんな未来への応援歌であり、予言書となることを切に願う。

*2:Anlyに関する過去記事。この記事いまだにアクセス良い(自画自賛

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*3:殺傷力で思い出したが殺虫剤で有名な「フマキラー」はFly(ハエ)とMosquito(蚊)の頭文字を足して「フライ+モスキート+キラー」で「フマキラー」らしい。

*4: 天野花の過去記事はこちら。天野花 の楽曲でも特にピアノ演奏曲はどこか日常の瞬間を切り取りとりつつ「永遠に続く」と思わせるような普遍性に満ちている。どこかスピリチュアルソングを彷彿とさせる強いサビメロディが助長してるのかもしれない。
そんな系譜にある新曲を今日初めて聴いた。『バター』新たな神曲の降臨である。

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*5:これ2枚あるけど別に"匂わせ"ではありません、当たり前かw、単に東京のバーペガへのお土産ですので悪しからず

*6:この曲が演奏されただけでも大阪駅に行った甲斐があった。それにしてもすげえな植城微香さん、今日5時間も路上やったのかてか個人的に体感時間15分ぐらいだったわ(笑)それぐらい幸福な時間だったと思う。

*7:ちなみにここの箇所メロディといいいボーカルの感じといい、凄くAnlyっぽいといつも思う。Anlyにカバーして欲しいわ〜。

*8:バーペガに関してはこの記事にて詳細に述べられている。

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*9:以下がTwitterでのライブの模様。優里『ベテルギウス』などのカバーソングなどもオリジナルのように秀逸である。

*10:ちなみにHEP前路上ライブにて、ワンマンライブ用の告知写真をプリントアウトしてキンコーズの誇る高性能ラミネート機でハード加工して持っていった所本人に大いに喜ばれたもの。以前にぽてさらちゃん。にも同じようなことをして大変感謝された事があるぞ(笑)キンコーズもこのブログ記事の影のheroである。

映画『#シャーマンの娘』(#井坂優介 監督)レビュー!

1.the Loveless isn’t anything 
 本作を一言で言うと大袈裟ではなく尋常ならざる傑作であると断言したい。


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去年末に本作を観てたら間違いなく2022年ベスト10に入ってたと思うし、逆に言えば新年初めて観る作品だけども【2023年ベスト10入り】決定だと断定しても良いぐらいの作品だった事をも同時に記しておきたい。
それぐらいこの2023年明けて間も無く大手を振って「やった〜!!めちゃくちゃいい作品観た!!!」と言える作品に早々と出会えたことを映画ファンとして喜びたいと思う。
本作のテーマに乗っかるならばたとえ「死んで化けてでも」絶対もう一回は観るだろう、って本レビュー執筆時点で既に2回目の鑑賞予約してるたんだけど笑
話の内容が

恋人さゆりを事故で亡くして悲しみに暮れる健悟は、風変わりな女子高生の海花と出会う。彼女の父である祈祷師の哲史によって健悟はさゆりの霊が見えるようになり、再びさゆりとの同棲生活が始まる。
さゆりは可愛い。幽霊なのにちっとも怖くない。
それどころか料理の作れない健悟に熱心にレシピを伝授し、すっかりさゆりと同じ味を再現できるまでになる。
音楽の夢も、恋人の霊も、こんなにはっきり見えるのに、まるで掴み取ることができない。
そんな歯痒い日々が、それでも彼は幸せだった。
しかしある日、祈祷師の娘海花が健悟のことを好きだと言う、いわゆる三角関係事案が発生。
海花は悪霊だろうが心優しき霊だろうが何でも除霊してしまう悪趣味の持ち主だった。

「恋人と死別したバンドマン志望のフリーターが"幽霊とコミュニケーションが取れる不思議な能力の女の子"が介在する事でその幽霊になった彼女と再会し…」というトーンで始まったもんだからてっきりホラーテイスト込みのコメディかと思って油断してヘラヘラ観てたらもう何のその.....その後、まるでMy Bloody Valentine的なシューゲイズバンドの轟音ノイズの間奏のような予想の1億超の怒涛の展開に度肝抜かれた。 

https://www.musume-shaman.com

急にマイブラを例に持ち出したが別に適当に言った訳ではなくて、むしろ作品全体に直感としてマイブラ的なダイナミズムを本作から感じ取ったのは、本作のサウンドトラックの劇伴なり主題歌・挿入歌を日本のシューゲイズ・バンドの騎手「僕の死んだ彼女」(もうバンド名からしマイブラ好きなんだということがわかってくる。しかしなんちゅうバンド名やw、これを超えるインパクトのあるバンド名は他に知りません。)が担当してる事にも起因してるからかもしれない。

rockinon.com

それぐらい彼らの音楽とシンクロニシティがハンパなかった。個人的に度肝抜いたのが男が、死んだ恋人とは触れ合う事がままならない為に服を脱いだ彼女を見つつ自慰行為をする場面があるのだがその正にしの自慰シーンで轟音サウンドが劇伴として使用されたのは驚いた。本作ほどシューゲイズを映像で解釈し切った作品はないんじゃなかろうか?と思われるMVがこちら。木原渚が金属バットで地面叩きつける絵と本曲のMBVのような轟音との華麗なる融合っぷり。本編でも物凄い場面で轟音が合わさってたし。いやマジであのシーンはコロンブスの卵すぎ。シューゲイズバンドが時に織りなす轟音は劇伴で使われるとしたら号泣したり激怒したりの感情表現、中でも「エモ」な場面で使用されると予想しがちだがこの自慰行為というのは史上初かもしてない。

「エモ」ならぬ「エロ」という正にリビドーとしてのシューゲイザーの轟音を用いたというのは斬新だし、めっちゃハマってる。 


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あと、シーンによっては曲全編丸ごとフルコーラスで「僕の死んだ彼女」の曲をフィーチャーしてる場面もあるし監督は相当このバンドにハマってるのだろう。事実舞台挨拶後井坂優介監督に直接する機会があったが、曲を聴きながら歌詞世界にあてはめながらプロットを完成させたりもしたらしいし。
 本作色々凄いんだけど、本質的に何が凄いって、世の中には「家族愛」だ「死生観」だ「生きる事の大切さ」だみたいなああいう綺麗事にお涙頂戴要素を付加したプロトタイプ映画作品群達が世に蔓延っている訳だけども、ああいう余命がどれぐらいだの何ヶ月だのタイトルや予告編見ただけでも大体内容がうすら透けて見えるじゃん的な作品群に堂々と立ち向かい正面切って「ノー」を突きつけるオルタナティブな姿勢を感じ取れる作品だと言う事。正にパンクであり、オルタナティブ
ほんと名盤『isn’t anything』か『LOVELESS』リリース時のマイブラ的スタンス。
で、そもそもインディーズ映画で尖ってるパンク志向の作品って非常に多いんだけど、単に尖ってるってだけでなく、その尖り方に「センス」を伴うってなると非常に限定されるものだと思う。そんな中、本作「シャーマンの娘」とあと思い浮かべるならば、去年観た衝撃作「Cosmetic DNA」だとか、一昨年観た『黄龍の村』などはその両方の要素を奇跡的に満たした貴重な「尖り散らかしたオルタナティブパンク作」に位置付けられるものだと断言して良い。

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2.Focus
❶最高最強最狂の主人公・赤星海花
そんな既成概念をバサバサ切り倒す役割を担うのは女子高生である主人公・赤星海花(木原渚)なんだけど、彼女の佇まいがいちいち決まっててカッコ良いのだ。ゴールデンレトリバーかなんかの犬のお面を頭に乗せて金属バットを背中のリュックに背負ってタバコ吹かしてるあのサマになってる感はもうそれだけでキャラクターとして決まっている。めちゃくちゃ古いんだけど『男はつらいよ』の車寅次郎レベルのキャラの決まりっぷりと言ったらわかりやすいだろうか?

海花の口角キッとあげて微笑むあの表情で死人を更に地獄の淵の極限にまで追い詰めまくる様が観れば観るほど色濃く記憶にバンクされる。あんだけ叫びまくって練習する癖に静かな狂気を帯びて実践する様に鳥肌が止まない。
てか映画初主演て事実が全く信じられん前世で女優だったんじゃないか?
ノドから血を吐くような壮絶なシャウトで素振りするのにいざ実践となると薄笑いすら浮かべるクールな赤星海花の佇まいにある種のプロ味と凄みを感じたものだった。
木原渚に海花が乗り移ってるのか彼女に海花的資質があるのか分からないがつくづくテーマ同様にスピリチュアル(霊的な意味で)な作品である。

既に二作目の構想があるらしいけどその際は絶対アクキーなど2パターンくらいリリースして欲しい。
ほんとそれぐらい愛すべきキャラクター然としたキャラだと思う。


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❷最高最強最狂のタイトルシーン
あと、本作を再度観ておきたい理由は"タイトル"が出る瞬間今まで見た映画作品の中でも最高峰ってくらい掛け値なく素晴らしいからでもある。タイトルが出る瞬間のカタルシスを感じるのはまず個人的に浮かぶのは上田慎一郎監督『スペシャルアクターズ』であるとか阪元裕吾監督『最強殺し屋伝説国岡』であるがまだあれらに匹敵するぐらいだが、あの瞬間は映画マニアならずとも誰しもが感動するであろう演出効果ではなかろうかと思ったりする。『#デリバリーキラー』は『#シャーマンの娘』とは標的へのベクトルが真逆だけど音楽のシングルとアルバムのような一体感がある。
僅か5分の短編なのにシャーマン以上に目を背けるほど残酷で痛いのだ。逆に赤星海花(#木原渚)の手捌きは卓越して洗練されて実は愛情で溢れてるのねと妙に感心してしまった。

正に本作は第四章まであるのだが第1章の終わりで「生身の彼女を見つけなよ」と言い放った後に『僕の死んだ彼女』によるオリジナル曲『conception for three forms of happiness at the state of existence』の轟音ドラムが鳴り響いて赤星海花に寄り添うようにタイトルが浮き上がるあの瞬間たるや!!!!!!!!!
もうあそこは本当に鳥肌もので円盤などがリリースされた後も時間ない時でもあのシーンだけ接種するぐらいしっかりと目と心に焼き付ける事だろう、もうそれぐらい最高なのだ。
 ほんとシリーズ化、少なくとも第二弾は必須だと思うとか思ってたらパンフレットに第二弾の脚本がごっそり書いてあるではないか。


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3.Future Perspectives
あと本作には「死に向き合い、それを死として認める事によって、生きる事を貴しとなす。」と言う大メジャー作品『鬼滅の刃』にも顕著な死生観をも感じ取れる事も重要だと思う。
その意味で本作はサブカル領域に留まらずメインストリームに位置付けても決して劣らぬ価値観をも有していると断言できるのだ。
主役以外のキャラクターも本当魅力的なのだ。それに関連して、1月13日の上映後に開催された舞台挨拶に於いて舞台挨拶で死んだ母親役小夏いっこさんと通りすがりのカップル役の椿かおりさんが登壇され、本作品における好きなシーンなどを披露して頂いた。どのご一日経ってお二人のキャリアなど検索すると様々な作品・活動などやられてる事を知り作品の素晴らしさを改めて噛み締める。小夏氏演じる山吹芳子さんは2回以上見ると段々とその姿が「見えて」くるような気がするのだからリピートは必須である。
それにしても私が本作を何度でも観たい理由は
「ストーリーが難しかったから」でも
「疑問を明らかにしたい」でもなく
単に「タイトルシーンと赤星海花の佇まいと彼女が放つ台詞が死ぬほどカッコいい」からである。
これぞ真っ向勝負の全世界へ金属バットを突きつけるオルタナティブパンク作であり、本作は絶対に目にしておかねばならない尋常ならざる傑作である、と断定してこの取り止めのない本レビューを締めくくろう。
こうなったら(どうなっても)3回目も絶対観よう、次の上映スケジュールとして名古屋のシネマ・スコーレだそうだが、この「尖り散らかしたオルタナティブパンク作」は私を呼んでいる気がする、そうあの愛なき幽霊達の誘いによって...🔨

2023年のエンタメを照らす太陽盤、Saika(#吉田彩花)『#有象夢像』爆裂ディスクレビュー

2023年のエンタメを照らす太陽盤、Saika(吉田彩花)『有象夢像』爆裂ディスクレビュー

1.はじめに

2『有象夢像』ディスクレビュー

一曲目『イントロ』

二曲目『二度寝

三曲目『まる』

四曲目『ゴール』

五曲目『いつか君にとって』

3.Overview &Further Along 

Appendix; 3/21(火)SAIKABANDバンドワンマン「有象無象にくそみそに言われたい」セトリ予想

1.はじめに

2月24日、やっと3泊4日の東京旅行から帰って来て今日2月24日、ようやく落ち着いて全曲を聴いた。

もはや断言したい。

これは紛れもなく日本のロック史を塗り替える最高傑作である。もっと言えばようやく日本でもこういう真っ向勝負に心を打つポップスアルバムが出たことを誇りに思いたいぐらいの超絶大名盤である事がわかったので急遽、ここに全5曲合計8300文字大絶賛レビューツイートをカマす次第である。だってここ最近メジャーストリームを駆け巡ってる音楽を見ても面白いものが全くないではないか!!!!!やれ「TikTokみたいな犯罪者養成アプリでバズってる」とか芸能界の大人の事情と忖度と広告代理店から「流行っている」事になっているアイドル崩れみたいなしょうもない口パクアイドルとか(「口パク」は「口パク」ですもはや最近流行りの「リップシンキング」などという下手にオブラートに包んだような言葉自体がもはやダサいです)、本格派志向のバンドやアーティストですら、全世界に拡散しようなどという夢のあるフェイズは諦め切ってしまっててガッツリとコア客頼りにLINE登録やらファンクラブやらで客を囲い込み・蛸壺方式にしようとする所が本当に急激に増えたりとか*1そんな夢のない展開ばっかじゃんか、もうプライドが高いのか何か知らんがどいつもこいつもカッコつけやがって、要するに音楽リスナーとして流行りモノども全部全くどいつもこいつも面白くもなんともなくなったってのが実情なのです。因みに先日、渋谷のタワレコにもほぼ1日かけてガッツリ行ってきたが、案の定、超絶賑わってるの目の当たりにしてつくづく思ったけど、1階から4階までポコポコあっちでもどこでも特典会みたいなんばかりやっててもうほとんどイベントスペースと化してるのね。もはやイベント自体が目的でもはやCDなどのフィジカル自体が特典って感じに妥協してしまってるとはっきり思ったね。もう「名盤」どころか「盤」自体が、もっと言えばエンタメ自体が完全に舐められてる時代なのだろう。ちょっと本論から外れるかもだが毒舌ついでにいかにエンタメが不要不急扱いを受けてきたかを象徴する出来事があった。

こちらをみてみよう。

これは、2/25に私個人が出くわしたある路上ライブでの出来事。*2そんなに人通りも厳しくなくて誰もが彼女らの歌声に優しく耳を傾けてたのにも関わらず、「迷惑行為」だの「騒音公害」だの頭脳警察の名曲ではないが「ふざけんじゃねえよ」って話で。*3しかしストリートライブも場所や時間によっては全然良かったり警察に罵られたり(笑)基準が曖昧すぎるとは思う。しかし迷惑行為だの騒音公害だのあの言い方...東京に比べ大阪はひどいな、特にあのヨドバシカメラ周辺。まあでも遥か50年以上前でもルーフトップコンサートでビートルズですら警察に止められてたからこれもロックの勲章みたいなもんかもとか思ったり。*4だからこそって訳ではないけど今この状況の中でもエンタメというものに誇りを持って闘っている人が今最高に面白いのです。そこにはマイノリティだのマジョリティだのは関係ないのだ。

かの、公民権運動などでアメリカ史に大変革を起こしたあのマーティン・ルーサー・キング Jr.はこう言った。

Almost always, the creative dedicated minority has made the world better.

常に世界を変えてきたのは創造的で直向きな少数派だ。

*5

 

正に『サニー』という歌の中で彼の意図とシンクロするかのように【僕らにマイノリティなど本当はないの】と高らかに歌った人がいる。その人こそが小劇場だろうが、インディーズだろうがエンタメにかける想いにはメジャーマイナーなどないのだという宣戦布告を掲げた人、そう、それこそがエンタメは心の太陽こと吉田彩花ことSaika、その人である。言っておくけど今度のブログ記事のテーマは実はある話題のインディーズ映画にしようと思っててそれはほぼ完成しかかっていたのだ。もうそれをも超えて二連続で吉田彩花がテーマにしてしまった。同じ人が連続テーマになるなど、例外中の例外です。

 本盤はLIVEでお馴染み『イントロ』『まる』『二度寝』等を含んだ全5曲の『有象夢像』と付された本盤には20年ほど日本の音楽業界に欠如していたPOPSの魔法がある。 そんなスパイスの1つの要因になっているのは吉田彩花 がコロナ禍以降エンタメとは何か追求してきた闘争過程に他ならない。

本記事では一曲ずつ考察した形で過去記事を織り交ぜつつ紹介していきたい、と考えている。

 

2『有象夢像』ディスクレビュー

一曲目『イントロ』

冒頭のフレーズから分かるように、名古屋のオルタナティヴバンド、鈴木実貴子ズの名曲『あきらめていこうぜ』へのアンサーソング。だが満を辞しての音源化。と、同時に【あきらめていこうぜ】 というフレーズが彼らだけではなくSaika オリジナルフレーズと化した瞬間でもある。それにしても単体で聴くよりもアルバムに配置されるとバンド編曲がとてもキラキラしているふうに聞こえ、正にオリジナルソングとして形の上でも気持ちの上でも昇華したことへの祝福の歌と捉えている。

あきらめていこうぜ 

そんな歌を聞いて 

期待していた自分に気づく

ぶっ壊れていこうぜ 

そんな歌を聞いて 

守っていたんだって嫌気が差す 

あきらめたいけど 

あきらめられない 

あきらめられないけど 

あきらめてないな

こんな夜には あの歌を聞いて 

確かめてみるんだ 

(中略)

寄り添う歌など 

僕にはいらない 

励ます歌などまぶしくて聴けない

優しいうたを作る前に聴こう 

あの歌はぼくを吐き捨ててくれる 

余計な心を吐き捨ててくれる 


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この歌詞にある「そんな歌」「あの歌」とは、紛れもなく 実貴子ズのライブレパートリー曲『あきらめていこうぜ』であるがこうして本盤に収録されると不思議な感覚に見舞われる。ラスト曲を経てまたリピート再生して『イントロ』に戻ると不思議なデジャヴ感に見舞われる。

あきらめていこうぜ、そんな歌を聴いて

ここでの「そんな歌」が実貴子ズのみならず本曲もダブルミーニングで含まれている事に気づくだろう。「そんな歌」とは「イントロ」も含めれているのだ。そんなデジャヴ的ってか連続循環的にってか回帰的に大きくなっていくEPが『有象夢像』なのかもしれない。そしてアレンジで注目すべき点は間奏のギターソロでMy Bloody Valentineか僕に死んだ彼女辺りのシューゲイズな雰囲気がありつつも全体の処理の仕方は完全にノイジーに爆発せずの一歩手前にとどめておく事で全体のアレンジの煌びやかさを維持しているのが特徴だろうか。本曲に関して興味深い点は鈴木実貴子ズにおける『あきらめていこうぜ』はよくラストのラストのアンコールで歌われる事が多く、本曲はタイトル通り一曲目、と対になっているのだ。「ショーの終わり」を志向した曲に対するそのアンサーソングが「アルバムの一曲目」に位置するこの回帰的な流れがどこかこの曲のみならずアルバム全体に何度でも聴かせる力が内包してるように思えるのだ。

或いは、正にこれこそが「グルーヴ」とも呼べるものなのかもしれない。


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二曲目『二度寝

正直初回聴いた時は地味な印象しかなかったが、ここ最近LIVEでボディブローの如く効いてくるこの『二度寝』。先の伝説のピカソ降臨ライブでもある種キーとなる曲として演奏されたが、個人的にはこのスタジオ盤ではアレンジにおいてはCornelius『Chapter 8』やどこか浮遊感のあるメロディーとい意味ではきのこ帝国『クロノスタシス』、レゲエサウンドを主体としていたの初期のフィッシュマンズなどなど過去のリファレンスが浮かんできてとても味わい深い。


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*6 そして本曲はそれら以上に今の日常を照らしてくれる普遍性に溢れている。


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これには本EPの編曲を担当している康士郎の貢献も計り知れない。こちらは前回の記事にて触れてるので軽く引用しよう。

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本曲のスタジオ版について今までのブログ上全く触れていなかったのでここで触れておくとCornelius『CHAPTER 8』を思わせる康士郎 の編曲も自然に共存している。


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少し話は逸れるが、アレンジャー・康士郎による今までの『むらさき』『まる』『きまぐれ』などなどSaika曲の編曲とは彼独自の「解釈」であると同時にリスナーへの「返信」としての機能を有してる。「LIVEでこの曲聴いている皆さんこうお感じでしょ?」というこの天才アレンジャーからのリスナーへのメッセージ。だが『二度寝』に関しては編曲自体が無邪気なギミックと化し歌詞世界に没頭している。これは驚くべき変化だし、『二度寝』は単に「良い曲」の枠組みを超え、ましてや常日頃からSaikaや群像ピカタやバーペガでの音楽等に触れているいわゆる音楽(live)フリークスの層を超えて更に大きなマスにポーンと届く力を有している生粋のPOPSに分類されると思う。真のPOPとは今世の中に蔓延している予定調和な音楽にはない、まだ見ぬ景色を魅せてくれるものだと思うから。

三曲目『まる』

そんな前曲における日常の普遍性を全力で祝福したようなアンセムがこのライブでもお馴染み楽曲の『まる』である。本曲はLIVEで演奏する度にどんどん大きくなっていく印象があるってのは過去記事でも触れている通り。


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先日のLIVEではパブロ・ピカソの意味における太陽と同化してしまったことを記述したがまさにそんな感じがするし、前回の記事の「ピカソ降臨ライブ」にて以下のようなセトリ構成だったと結論づけているが本曲の影響というか貢献度が大きいと思う。

最初は小さなコガネムシ(🪲)ほどの小さいものやがて🤡となり、時間(🕘)となり様々な感情にぐるぐる(🌀)と渦を巻き、やがてそれがどんどん大きくなって🌞へと導かれる。正にピカソの言葉通り小さな点から太陽に変えたようなLIVEだった。

そして今回アルバム全体に照らし合わせて聴いてみて注目すべきは単体で聴くよりもより「エモさ」を増して聴こえてくるのだ。正直この曲を聴きつつスーパーで買い物しながら歩いてて、母親が子供にお菓子を買い与えてやってる姿を目の当たりにして、ふと涙が溢れそうになってしまった。いや、別にこれはいい人ぶっている訳ではない。「今日という何気ない日々を無事に終えてこそ、また明日も迎えられるのだ」というありふれた日常の大切さのようなものを、この深みのあるバンドアレンジにより更に享受できる。私自身も大人になってある程度人生を生きてきて遠い追憶の日々の断片と折り重なってしまったり。因みに、本曲に限った話ではないがこの曲は編曲も最高なので是非是非インストオンリーのヴァージョンも聴いてみたい。今回のアルバムに収録されなかった「不適な迷子」は曲もさる事ながらインストバージョンも味わい深いから。*7


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四曲目『ゴール』

本曲はバーペガ配信で初聴きした時「バンドアレンジが浮かんでくる。」と思い、コメントした記憶がある。

それだけ【このゴールは僕しか知らない】と言うメロディと歌詞にどこかライブで拳突き上げる様が浮かんでくるというか、パワーポップ寄りの"強さ"を感じたからだろう。

以下は去年の3月11日におけるバーペガアクトに際しての私のツイートであるが「ゴール」がバンドサウンドが絶対合う説唱えてるという自画自賛のためだけに引用する(コレコレw)

BARPEGA ×Satori.K.O.pre.
Satori.K.O.BIRTHDAY GIG!
#吉田彩花(#Saika)
❶ ゴール
② サニー
❸ 水星逆行
④青の時代〜ポエトリーReading ver.

❶が「エモ進化」していたのに驚く。
❶〜❸はバンド演奏のアレンジが凄く似合うなと思う。
あと④は現代社会のあり方に一撃を食らわすリリックが痛快。

 

『ゴール』のみならず、あともし演奏されるなら『水星逆行』も同様に来月のバンドのワンマンで更に化けそうな予感がする。その辺りを踏まえてAppendix セクションでは3/21のSAIKABANDワンマンのセトリ予想をしてみたいと思う。

五曲目『いつか君にとって

【有象無象にくそみそに言われたい】

と名付けられた3月21日に開催されるバンドワンマンから分かるように紛れもなく本盤のタイトル曲。あと、本曲はある意味今までと違う点で驚いた。というのも最初に聴いた時からどこかSmashing Pumpkins的な雰囲気というかWho the Bitchボーカルehiのソロワーク『Here in my heart』のようなアンニュイなオルタナティブロックなアレンジが施されると思ってたからむしろシンプルなアコギに意表を突かれた次第である。

これは、もしやこれは前振りで来たるバンドワンマン3/21にて何かバンドアレンジなどあったりするのだろうか?とも思ったりしている。

 次に歌詞に目を向けるとこの数年ほど続いているこのコロナ禍で「不要普及」のレッテルを貼られ、悔しさを握りしめつつもどこかエンタメの照らし出す光を希求する祈りのような一曲だ。


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以下それを象徴するフレーズを挙げておこう。

音楽なんかで泣かない
舞台なんかで笑わない
絵なんかただの紙切れだ
そんなわけはないだろう

...中略

音楽なんかで泣かない 
そんなわけはないだろう
メロディはすぐ側にある 
彩ることで世界は変わる

ここに冒頭で触れたように個人的には「小劇場だろうが、インディーズだろうがエンタメにかける想いにはメジャーマイナーなどないのだという宣戦布告」性が色濃く感じられたりする。間違いなく今回のアルバムと連動するように 3/21(火)のSAIKA BAND,バンドワンマンのタイトルは「有象無象にくそみそに言われたい」と呼称されている。この曲の中には様々な答えが内包されているように思えてならない。

3.Overview &Further Along 

これまでこのEP全5曲に関して過去記事と照らし合わせつつすた時音源となっている今現在どのような印象を持つようになったのか検証していったが、この5曲はデモ段階でもツイートされ、その後のLIVEで更に研ぎ澄まされ大きくなっていったというもはやお馴染みの曲である。そしてこれらの楽曲は様々な形で先のピカソ降臨のような奇跡を生みと言う...Saika のみならず我々リスナーもその事件の目撃者であると断言できよう。このEPは初めて彼女の楽曲に触れる人たちにも十部に何らかの痕跡を残せる力を持っているが、既知のものにとってはもはやそのストーリー自体をもこの盤に閉じ込められているといえよう。そして1曲目『イントロ』が終わった直後に0.000001秒たりともインターバル置かずに『二度寝』が始まった瞬間鳥肌が立ってしょうがないのは私だけではないだろう。ここに私が名盤と言いたい全ての理由が凝縮されている。

そしてそんな今、 Saika はもう次なる挑戦に突入している。やはり前回の記事でも触れたが、来る 3/21(火)この『有象夢像』のCD盤をリリースし、そのリリースパーティを名目上にバンドでのワンマンという形にてソロキャリアで最大規模のLIVE「有象無象にくそみそに言われたい」というライブを開催する予定である。

ここで注意したい点は3/21にリリースするにも関わらず、もうこうして先行でじたりリリースしている理ううは何故か?理由は一つしかなくてきっとこの「バンド・ワンマンライブが凄いから。」だ。1曲目『イントロ』は音源以上に歪みきったマイブラ的な轟音ギターが炸裂する「グランジ寄りな展開」の一曲になりそうな気がする。次に2曲目の『二度寝』はピアノがフィーチャーされジャズ文脈におけるインプロビゼーション展開になりそうと大胆に予想。そして3曲目の『まる』は長尺になる事が必須で、ライブ本編最後あたりのメンバー紹介あたりで使われそうな気がする。そして本EP4曲目に位置する『ゴール』は2曲目辺りの盛り上がり曲にセトリ配置されるのかもしれない。いや、下手したらもはや1曲目かも。そして最後の『いつか君にとって』がアコースティックなのかバンドアレンジなのかが一番難しい。後者だったらプログレッシブ・ロックのようにグルーヴが渦巻くものになるだろう。

...という事でAppendixとしてセトリ予想を掲載して8300文字にも及んだ本ディスクレビューを締めくくろう。

 

Have A Good Day!

 

Appendix;3/21(火)SAIKA BAND

バンドワンマン

「有象無象にくそみそに言われたい」

セトリ予想

バンドセクション・疾走

1.サニー

2.ゴール

3.水星逆光

バンドセクション・着地編

(MC)

4.オレンジ

5.二度寝

6.道化師の部屋

アート&パフォーマンス・セクション

7.HAVE A GOOD DAY~の時代

8.不適な迷子

9.カウントダウン

(MC)

アコースティック・セクション

10.石集め

11.気まぐれ

12.ゲストの長谷川小夏「ひこうきぐも」デュエット

バンドセクション・盛り返し編

13.コガネムシ

14.イントロ

15.余計だ

クライマックス編

16.いつか君にとって

17.むらさき

18. まる~メンバー紹介

(アンコール)

19. やさしく生きよう

*8

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:でもそういう所に限ってオフィシャルアカウントが稼働しなくなってる気がする。本来そういう囲い込みなくしてなんとなく仮想的なファンダムコミュニティがフリーでできるのがSNSの良い所だと思うが。

*2:余りに不憫だから紹介しよう。この女性グループは「クラウソラス」て方々。個人的には少し『アパート』とか歌ってた頃の初期ハルカトミユキ感がある。オリジナル曲は『クラゲ』て曲がとても好きでございました🎣

*3:頭脳警察の名曲「ふざけんじゃねえよ」


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*4:The Beatles Get Back;ルーフトップコンサート』の記事

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*5: 

ja.wikipedia.org

*6:個人的に新たに見つけたSSWを割と「この人はこういう所が魅力だ!」的に割と断定口調でツイートしてるが背景にはこれまで聴いてきた音楽遍歴がリファレンスとしてあるから自信を持って言ってる。前から知ってる古参(という言い方大嫌いだけど)の気に触らないか、などと気を使った事は一度もないなw

*7:あくまで個人的だが、康士郎氏の「背景♪」ってコーラスがめちゃくちゃ彼が歌ってる顔が浮かんでくるのだ(笑)

*8:今回の5曲以外で本セトリに収録されている楽曲解説は過去記事に掲載されている。

『むらさき』『コガネムシ』『サニー』『気まぐれ』『オレンジ』『ひこうきぐも』↓

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『余計だ』『やさしく生きよう』↓

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What is live?〜「#吉田彩花 (Saika)2023/2/11(土)、ピカソ降臨LIVE in 鑪ら場」爆裂レビュー

What is live?〜「#吉田彩花 (Saika)2023/2/11(土)のピカソ降臨LIVE in鑪ら場」爆裂レビュー

Ⅰ.What is Live?(Presuppostion)

Ⅱ.ピカソ降臨LIVE in 鑪ら場

Ahead of Session

1st Session;🪲(コガネムシ)

2nd Session;🤡(道化師の部屋)

3rd Session;(二度寝)

4th Session;(サニー)

5th Session;🌀(余計だ)

6th Session;🎶(イントロ)

7th Session;☀️(まる)

Ⅲ.What is Live?(Definition)

Previous and Future Sessions 

Ⅳ.Appendix(おまけ)

Ⅰ.What is Live?(Presuppostion)

ここ最近コロナも落ち着いてか、以前にもましてライブに行く機会を飛躍的に増えてきたし、それに比例して違和感を感じることも増えているのだけど、顕著な例が2点ほどあるのでそれをここで紹介しよう。

一つは、4人か5人ぐらいの様々なシンガーソングライターが集うそして2時間なら3時間ないしを構成する1つのフェスとまではいかないがイベント的な対バン形式のライブによく行く事があるが、良い加減パターンが同じすぎるのでもはや一般化した形でそれを示したいと思います(笑)

CASE(1)

体 1人が30分程度のライブで、5曲ほど演奏して、それから1曲目は手馴しっぽい感じの曲をやって2曲目位でアップテンポ目の曲に入る。ここ早い人でイントロ付近、遅い人で間奏ぐらいから「拍手できますか? 」とか何か言って拍手を促すのだ。一旦休憩飲みタイム。そしてMCに入ってちょっと会場リラックスさせつつのバラードに入ってミドルテンポで巻き返す。それから1ヶ月先ぐらいのLIVE告知をして、チケットやら物販のCDをひとしきりして、それから最後アップテンポ目の曲で締めてまたもや手拍子やら極端な場合には謎の歌詞に合わせた振り付けを半強要しライブが終わる、チャンチャン。

いや、そのやり方が一番無難ってか、もう有無を言わさず形式的に場が成り立つって事なんだろうけど、何かそこには予定調和感以外の何物でもない気がしてならないのだ。そして客席も客席で演者に「皆さん、振り付け上手にできました〜💗」なんか褒められてへらへら笑って拍手したりする始末。私は音楽を聴きにきたのだ。ここは幼稚園か遊園地かメイド喫茶でか地下アイドル(あ、後者二つは演者次第では半分似たようなニュアンスあったりもするんですが)じゃないんだ!そう言う時は思わず、その時私は正に去年観て衝撃を受けたあのライブハウスの実情を描いたインディーズ映画『辻占恋慕』のあの衝撃のラストシーンを思い出してしまう。

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そして二つ目は比較的最近行った某イベントライブでの出来事である。この日あるパフォーマンスグループのライブのやり方に大いに疑問と怒りを抱いたのだ。いや、こっちはあまりに呆れ返ってしまったので永久保存版としてここに記録しておきたい。

CASE(2)

某関西中心で活動している大所帯のダンスパフォーマンスグループの40分ぐらいの持ち時間の中での中間あたりの出来事。彼らのオリジナル楽曲に「〇〇裁判」というタイトルの裁判にまつわる曲があってその前振りに唯一「ノリが悪い客を一人設定して、後ろで腕組みしてる”地蔵客”を探してその人を前方へ寄せて椅子に縛り付けて裁判する。」という演出があった。これはいわゆる客を肴にして吊し上げてウケを取るパフォーマンスなのだが、その一人の客は素直に座ってお行儀よく縛られ(笑)抵抗しなかったので大いに盛り上がり結果的に盛り上がったのだが私は当然納得いかなかった。多分私がその立場にあったらブチ切れて帰ってたよね、ってこと。

注意すべきはこの某グループのこういう演出はもしかしてコアファンにはお馴染みのノリで人によってはそれこういう演出を成立させる点にこそ魅力を感じてる人がいるかもしれんので完全に否定はしないが、私はこんな事せずに彼らはステージ上で歌とダンスとパフォーマンス力だけで勝負できる実力があるのに勿体ねえとハッキリ思ったし、私はその翌日に彼らのTwitterアカウントのフォローをガッツリ外している。だから彼らの2度とライブに行くことはないだろうが、でも縁を切るってのもお互いのためだろう。

そして2/11、そんな2点のCaseにぶち当たってその疑問に対してポーンと風穴を開けるような最高のライブをやってのけた人がいたのだ。そう、本ブログでは最多掲載の我らがエンタメは心の太陽、というかエンタメの照らす太陽光そのものである吉田彩花(以下、Saika)。彼女が正に最高最強のコンセプチュアルなライブをやってのけたのだ!!!!しかも彼女が(私もだけど)敬愛してやまない「鈴木実貴子ズ」が経営するライブスペース「鑪ら場」で、彼女が最初に鑪ら場にてライブをした記事とそのライブの模様を記録した動画を以下に挙げておく。

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Ⅱ.ピカソ降臨 LIVE in 鑪ら場

 2023/2/11の「音のホームルーム第三回履修登録」という企画で演奏されたセットリストとその日の動画は以下の通りである。*1

音のホームルーム第三回履修登録

1.コガネムシ
2.道化師の部屋
3.サニー
4.二度寝
5.余計だ
6.イントロ
7.まる


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Ahead of the Sessions

まず、このライブの前、実は吉田彩花アクトの前にとトイレに行こうとしてたらあるデカい「おじいさん」がふっと入っていったのでしばらく待ってたのだ。....だが中々出てこない。アレ?とノックしても出てこないか空けると無人だった。当然会場にもそういう人はいない。

 という出来事があった事を記しておこう。

後から重要な意味を帯びてくる伏線として...

1st Session;(コガネムシ)

一曲目『コガネムシ』のイントロを奏でると同時に以下の言葉を放った。

「それにしてもあの絵は全然彼女に似ていないな」
「なに、彼女の方で段々絵に似てくるさ」

そう、これは紛れもなく楽曲を演奏することのみならずパブロ・ピカソの言葉から本ライブをスタートさせることにより、どこか今までs-igen企画での演目やバーペガでの試みが結実した瞬間を見た思いがしたものだ。

本曲は「意に反して光に反射する色彩を放つカルマを背負ってしまった黄金虫」の悲しくもどこか共感すら覚える不思議な歌詞だが、今思えば、この曲から最後の『まる』からの流れを考えるとコガネムシも実は太陽なのではないかと思えてきた。正に小さな虫も捉えようによっては光り輝く生き物なのだ。先読みになるが太陽光を浴びてこそ輝けるエンタメそのもののような存在ではないかと思う。

それにしても個人的にはチリヌルヲワカの曲調をも思い出すような良いメロディを有する楽曲である。


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2nd Session;🤡(道化師の部屋)

鏡の前の自分は不器用に笑う

そして私は道化師となった

そう言ってSaikaは『道化師の部屋』を歌う。思えば過去のs-igen企画作には『歌えピエロ〜movie by youtu部?』『悲劇のアルレッキーノ』『悶々と愚問』『すうぷ』など常に「道化師」的な存在が示唆されていたが今曲では間違いなく彼女自身がその役割を担わんとする事をマニフェストするかのように思えた。この時ふと彼女が去年の5月に行ったパフォーマンスを思い出した。


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これは「本能のまま赴いた新たな芸術の扉、星を求めた少年、一つの物語を。」というテーマのもとバーペガで開催されたイベントで「夜空に輝く星を求め走り続けてきた少年がズダボロに傷ついていたある日、人に踏みにじられようとも咲き誇る一輪の花を見てもう一度走り続けよう、と決心する」物語に『カウントダウン』『余計だ』『不敵な迷子』などの楽曲が更にドラマティックに盛り上げる、そんな今まで観たことあるようで誰もやってこなかった新基軸のパフォーマンスであってまさにこれは音楽家Saikaと役者 吉田彩花 とのコラボだったのだが本ライブもそういう意味合いがあるのを感じたりした。


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3rd Session;(サニー)

天井から音がする。

見上げると天窓から覗くのは太陽だった。

ツイート元を見れば分かるとおりギターのボディを叩きながら天上の音を演出するSaika。本当に「誰か」が天井にいてそこから音を鳴らしているようなこの不思議な臨場感。そして「太陽」というキーワードにふっといろんなニュアンスが含まれるのではと感じたりして。実際にその後演奏されたLIVEレパートリー『サニー』も際立って素晴らしすぎた。本曲『サニー』はライブでも頻繁に演奏され、それを目撃するたびに徐々に狂想曲のような混沌性を増していく化け物であると思う。まるでトグロを巻いて突き進む大蛇のような非常に更新性の高い曲で、ライブでは主に勢いよく一曲目に演奏されることが多いが今回は割とゆったり目のトーンで3曲目っていうのも新鮮だった。

私はいつもこの曲のこのフレーズがどう歌われるかに注目している。

喜怒哀楽ほど簡単に言葉に収めたとしても感情は

余白ほど渦巻いてる

それはなぜか。これは以前「うぇらっぷ」というLIVEイベントでこのようなことを言ってた事に由来している。「人間の感情は喜怒哀楽と4つに分けられるのってとってもシンプルだけど、色んな事情でそう断言できない余計な感情が芽生える事もある。そんな時にこの曲ができた。」この曲とは実は『サニー』ではなく5曲目で出てくる『余計だ』のことなのだがこれらはSaika曲を構成するコア要素ともなっていると思う。

4th Session;(二度寝)

2曲目に入る前に彼女は以下のように呟きながらチューニングを行った。

6弦の音は虚しい
5弦の音は悲しい
4弦の音は情けない
3弦の音は...見て見ぬふり
2弦と1弦は...合っている

ふとこれを見て3年前にAnlyがアコースティック弾き方りオンリーの「いめんしょりツアー」を思い出す。ある曲を演奏する前にチューニングが異常に長引いて、客席が響めき始めた時に「今のはチューニングという曲でした!」と言って逆に盛り上がって沸かせた事があったがこれは最早それを超えて何かの演目の台詞ようなモノローグっぷりである。あと、或いはここ最近彼女の音楽性における昭和歌謡的な要素から鑑みて、どこか浅川マキ的歌謡曲の幻影も見えたりするのだが。*2時折私個人として二度寝に突入する瞬間だかに既聴感のない美しい音楽が聴こえる事がある。あの夢であり現実のような不思議な日常の光景を、キャンバスでラフスケッチを描くような Saika 曲史上最も嫋(たお)やかなボーカルが窺える一曲である。


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そして本曲のスタジオ版について今までのブログ上全く触れていなかったのでここで触れておくとCornelius『CHAPTER 8』を思わせる康士郎 の編曲も自然に共存している。*3


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少し話は逸れるが、アレンジャー康士郎氏による今までの『むらさき』『まる』『きまぐれ』などなどSaika曲の編曲とは彼独自の「解釈」であると同時にリスナーへの「返信」としての機能を有してる。「LIVEでこの曲聴いている皆さんこうお感じでしょ?」というこの天才アレンジャーからのリスナーへのメッセージ。だが『二度寝』に関しては編曲自体が無邪気なギミックと化し歌詞世界に没頭している。これは驚くべき変化だし、『二度寝』は単に「良い曲」の枠組みを超え、ましてや常日頃からSaikaや群像ピカタやバーペガでの音楽等に触れているいわゆる音楽(live)フリークスの層を超えて更に大きなマスにポーンと届く力を有している生粋のPOPSに分類されると思う。真のPOPとは今世の中に蔓延している予定調和な音楽にはない、まだ見ぬ景色を魅せてくれるものだと思うから。

5th Session;🌀(余計だ)

1st sessionにて芸術性とコンセプチュアル性とが融合したエンタメの「奇跡」と言ったが、ここで正にそう断言しても良い奇跡が起こった。本曲『余計だ』の前に吉田彩花 は以下のようなモノローグを放っている。

重い腰を上げてお風呂場に向かう鏡を見ると

そこで初めて気づく。

化粧を落とさずに寝てしまった。

なんだか鏡に映るそれを雑に扱いたくて

洗顔石鹸で顔をゴシゴシと...まだ落ちていない。

何度も何度も顔を洗う

何度鏡を見ても落ちていない

だんだんと顔が痛くなってくる

ヒリヒリとヒリヒリと赤く腫れ上がっていく様子

を見てとても情けなく思う

そうかこれが私か化粧を落としても

化粧をしているようだ 

ただため息より先に言葉が出た...

それはとても小さく小さく小さくお風呂場に響き渡った

「嫌だなぁ」

この「風呂場」「洗い流す」というワードを放った瞬間、先ほどの一曲目頭と同じようにてっきりピカソ『全ては奇跡だ。例えば、お風呂に入ったとき、貴女がお湯に溶けてしまわないことだって』という名言の引用かと瞬時に思ったのだ。

それを思って真っ先に終演後、彼女にその真意を聞いてみたものだった。

で、なんとこれが全くの偶然だと言う。そう、正に鑪ら場にあの天才画家の霊が降臨したのだと確信した瞬間だった。

本曲の細かい歌詞分析に関して、或いは本曲の細かい歌詞分析に関しては以下の記事で12000字ほどで語っている。


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6th Session;🎶(イントロ)

そしてここ鑪ら場でこの『イントロ』が放たれる意味と意義は途轍もなく大きい。この鑪ら場という音楽スペースのオーナーである鈴木実貴子ズの屈指の名曲『あきらめていこうぜ』へのアンサーソング*4

あきらめていこうぜ 

そんな歌を聞いて 

期待していた自分に気づく

ぶっ壊れていこうぜ 

そんな歌を聞いて 

守っていたんだって嫌気が差す 

あきらめたいけど 

あきらめられない 

あきらめられないけど 

あきらめてないな

こんな夜には あの歌を聞いて 

確かめてみるんだ 

(中略)

寄り添う歌など 

僕にはいらない 

励ます歌などまぶしくて聴けない

優しいうたを作る前に聴こう 

あの歌はぼくを吐き捨ててくれる 

余計な心を吐き捨ててくれる  


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この歌詞にある「そんな歌」「あの歌」とは、紛れもなく 実貴子ズのライブレパートリー曲『あきらめていこうぜ』である。『イントロ』はポジもネガも全てひっくるめて先ヘ行かんとする人生という発火装置に対する起爆剤のような歌で本当に素晴らしい曲だと思う。本曲は『あきらめていこうぜ』以外にも『なくしたもん』『アホはくりかえす』などの、荒野にポツンと立ち尽くし何もない地点からスタートする事への悲壮なまでの覚悟が窺える意味でも鈴木インスパイアな意味でのシンクロニシティを感じる。そう、紛れもなく 吉田彩花 は真っ向勝負に出たのだ。恐らくはこの曲ありきでセットリストを組んだのだろうと予想される。それにしてもこの曲が演奏された時、厨房にいたアンサーソングの大元である鈴木実貴子はどういう気持ちでこれを聞いていたのだろう。

7th Session;☀️(まる)

そしてラスト曲は「まる」だがここでようやくMCに入った

ここで注目すべき点は第一章のWhat is Live?(Presuppostion)に触れたような、

2曲目で手拍子させ3曲目前で水飲んでバラードで4曲目

ミドルテンポで盛り返しMCで告知して最後アップテンポ

な曲で変な振り付けを強要する

的な並のSSWがやる「LIVEの雛形」を悉く無視して拍手すらさせぬLIVEをやってのけた点である。

そして再び『まる』という歌に触れよう。変な言い方だけど、本曲は本当に「歌」、いや「歌」というよりもっと大きな「うた」だと思う。

以前のブログ記事でも同様に述べているのでここではそれを引用する。

LIVEの度に、どんどんまるく初めは小さな点だったのかもしれないが、やがてひまわりの大きさとなり、そしてそんなひまわりは太陽光へと目指すべく、大きくなっていく、本当の意味での「うた」だという意味で。本来持っていたスケール感がそれこそ新緑が太陽光を浴びて芽吹くかのように更にグングン成長していくのを感じ、思わず目頭が熱くなる時がある。そしてこの曲は【エンタメは心の太陽】をスローガンに掲げることを象徴しているかのようにSaikaの2022年のライブで最も歌われた気がする。彼女は本曲を歌う前にこう言っていた。「偶然古道具屋の前を通って小学校の時に家にあったでっかい時計が置いてあってびっくりして家に連絡した。」というエピソードを披露したが、本当に偶然すぎてビックリする。

正にこのエピソードはいろんな偶然を引き寄せる不思議な力があることを意味しているのだが、正にこの『まる』を演奏するような事を予見するような事をあのパブロ・ピカソは言ってたのだ。

太陽を黄色い点に変えてしまう画家もいれば

黄色い点を太陽に変えてしまう画家もいる

この名言で特に重要視されるのはさて、今回のライブでは最初は小さなコガネムシ(🪲)ほどの小さいものやがて🤡となり、時間(🕘)となり様々な感情にぐるぐる(🌀)と渦を巻き、やがてそれがどんどん大きくなって🌞へと導かれる。正にピカソの言葉通り小さな点から太陽に変えたようなLIVEだった。

そして今日、この歌はエンタメの光に、心の光に、そして太陽の光となったのだ。

あと、対バンとの絡みで敢えて言うがもう3組の中でも彼女は「圧勝」だった。音楽に勝ち負けはないと言われるがこういう対バン形式だと明らかにそれはあるのを経験上知っている。というか、今までにこれだけ対バンに圧倒的勝利なliveを見たことない。心から彼女の提示するエンタメに出会って良かったと思う。もう圧倒的勝利てか完全優勝てか殺傷力ってかこれがLIVEです!っていうLIVEをSaikaはやってくれたのだ。私の中でわだかまっていたLIVEにおける既成概念をぶち壊し求めていたLIVEの理想像全てがここにあったと断言して良い。*52月11日の18:40から19:40までの40分のアクトだけでも神戸から名古屋にわざわざ行った価値はあったのだ。

Ⅲ.What is Live? (Definition)

この3章では再び比較的Case(1),(2)を取り上げこの日のSaikaの行ったライブパフォーマンスとどう違うのか比較検証してなぜピカソ降臨という事態になったのか論じていきたい。それぞれのCaseをここに再掲する。

CASE(1)

大体 1人が30分程度のライブで、5曲ほど演奏して、それから1曲目は手馴し言った感じの曲をやって2曲目位でアップテンポ目の曲に入る。早い人でイントロ遅い人で間奏ぐらいから「拍手できますか? 」か何か言って拍手を促す。一旦休憩飲みタイムとMCに入って会場リラックスさせつつのバラードに入ってミドルテンポで巻き返す。それからLIVE告知をして、チケットやら物販MCをひとしきりして、最後アップテンポの曲で締めてまたもや手拍子やら極端な場合には謎の歌詞に合わせた振り付けを半強要しライブが終わる。もうこのパターン誰もがやりすぎて一部の人たちを除いてもはや誰のライブだか記憶にございませんwww

CASE(2)

関西中心で活動しているダンスパフォーマンスグループの40分ぐらいの持ち時間の中での中間あたりの出来事。彼らのオリジナル楽曲に「〇〇裁判」とかいう裁判にまつわる曲があって前振りに「ノリが悪い客を一人設定して、後ろで腕組み地蔵な客を探してその人を椅子に縛り付けて裁判する。」的な演出。客を肴にして吊し上げてウケを取るゴミのようなパフォーマンス。その一人の客は素直に座ってお行儀よく縛られ(笑)抵抗しなかったので結果的に盛り上がったのだが私は納得いかなかった。多分こいつらのライブ一生行きません、固定ファンの結束も無駄に強いしwww

こちらCase1、2とSaikaの今回のライブには当たり前ながらこれらの要素は一切含まれていなく真逆のベクトルを内包している事がわかる。Case(2)の方は大所帯グループとソロアコースティックという形態が違いのだから当然なのだが、ここで違いを明らかにする事に私は意味があると考える。なぜならここにエンタメのにおける本質的な部分が隠されているように思うから。ざっくりと言えば演劇でもお笑いでもライブでもエンタメには多く分けてintrovert(内省的)typeextrovert(外交的)typeとが存在するように思われるのだ。私がここ最近関西発のエンタメに数多く触れて随所に感じるのは後者の「外交性」を帯びたもので極端な話、演劇でもLIVEでも頻繁にある「〇〇(後輩、若手、客)いじり」と称して他虐的な視点で笑いを取る危険性も孕んでいる点である。だが、これは明らかに関西人のマインドに長い間蔓延っている某新喜劇等の影響があるように思えるのだ。これは勿論いうまでもなくCase2のライブの演出がピッタリとそれに符合するのだ。ここまで大袈裟でなくても客のリアクション、ウケ、楽屋落ちのようなネタ話などは演劇でも見受けられる現象である。*6そしてこうした現象は別に大所帯だろうがソロだろうがそのライブの構成(脚本)を作るのは究極的には一人の脳内なので他虐性を帯びたライブはソロだろうが大所帯だろうがどのような体制でも存在することも付け足しておきたい。一方、前者のintrovert(内省的)とはどういうものだろうか。これが他者を介在せずにひたすら自己に向き合い、自己の中の物語を構成させ、それを完結していくスタイルで関西では少なく、主に関東発のライブや演劇に多いように思える。その証拠として、最も身近な例を紹介すると、実は彼女自身が企画から脚本から全てを手がけたS-igen企画『悲劇のアルレッキーノ』(2021)にある。本編において、LIVEを終えたばかりの二人組バンドのミュージシャン(Saika)と彼女の知り合いである藍と初めて演奏を聴き感動したその友人茜とで物販で語り合った後、藍と茜との間で以下のようなやりとりがある。茜はいう「ミュージシャンとして一本でやっていけば良いようなものの、脚本やったりあっちこっち取り留めのない活動をするのはどうかと思う。」と。この台詞の意図とは一体何だろうか。過去記事でも触れているが、この言葉を聞いた瞬間、吉田彩花を認知している誰もが今現在、SSW、女優、脚本、動画サイトなど様々な形でエンタメを届けようとする吉田彩花自身の状況そのものであると悟ったのだ。そしてひょっとして他人からはこういう事を外部から言われている事もあるだろうと予測できる故に、そういうある種の内省的な自虐ネタとも取れる言明をポーンとセリフとして打ち込むことによって怒りをぶちまけているという極めて自虐を含んだオルタナティブな性質を持つパンク特性が背後にあるのだ。*7そしてそのオルタナティブなパンクの背景にあるのはこの【キュビズム】であるとか【アフリカ彫刻の時代】と言う彼のスタイルを確立する以前、ピカソが人生史上最も孤独で最も燻っていた時代で憂鬱の「blue」そしてその青とは若干、苦悩(アングスト)要素も入り混じった【青=ブルー】の時代におけるパブロ・ピカソである事は言うまでもない。そう、ここで初めてSaikaにピカソという要素が一致する。そう、このライブはCase1やCase2に顕著だった安易な拍手や客いじりなどのなどのコミュニケーションを要さず、自己に向き合い演劇におけるストーリー性と音楽のダイナミズムがあったからこそ、あの世からピカソが舞い降り、彼のアート性とが見事に融合したLIVEだったのだ。そう、ネノメタルさんとうとう頭おかしくなったのねと思われても良い、てか最初から頭おかしいってか詳細は省くがこれまでの私の人生色んな面で他人と違う点が多いってことを思う事が多いからまあ普通じゃないってことはわかりきっている。もうハッキリ断言しよう!!正にここ、鑪ら場に天才画家パブロ・ピカソの霊が降臨したのだ!!!!!!!!

そしてそう言えるに値するこの2月11日において、このピカソに関して不思議な出来事があったのだ。

先ほどのライブレポ直前のAhead of Sessionを思い出してみよう。

実は吉田彩花さんアクトの前にトイレに行こうとしてたら「おじいさん」がふっと入っていったのでしばらく待ってたのだ。....だが中々出てこない。アレ?とノックしても出てこないか空けると無人だった。

当然会場にもそういう人はいない。

そう、ここで再度「おじいさん」とは誰か検証してみよう。一曲目の頭で名言を取り上げ、2曲目では偶然名曲とシンクロするモノローグを引き出し、太陽と言うキーワードを導くというこの日のライブのこれまで述べた数多くの奇跡の中身を鑑みた所、紛れもなく1973年4月8日に92歳でこの世を去った「天才画家」パブロ・ピカソの姿が浮かんでこないだろうか?いやこれ考えようによってはめちゃくちゃオカルトチックな話だけど、これだけ偶然が起これば彼は本当に降臨してたのかと思っても何ら不思議ではない...私はこの日のliveをピカソ降臨LIVE in 鑪ら場』と定義し、タイトル通りこれはもはや【ピカソとのセッション】がそこにあったと結論づけよう。

.....とここまで11541文字。以上がこの日の2023/2/11(土)のピカソ降臨LIVEの爆裂レポートである。

Previous and Future Sessions

ここで今回のピカソ降臨LIVEと共有する過去の彼女のパフォーマンスを2点ほど紹介したい。

❶「言葉と音と三つ編みの私の絵を。」

一つは去年の2/20 S-igen企画pre.として開催された「言葉と音と三つ編みの私の絵を。」 去年の今頃開催されたバーペガでの45分の演劇と音楽とライフストーリーとが組み合わさったもはやカテゴライズ不可能な「概念」と称すべきパフォーマンスである。私がバーペガや吉田彩花の音楽が好きなのは「トータルアート」だから。暴論かませば絵画も映画も演劇も音楽だ。
そこに境界線は無い。


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❷「五味夢中」 

もう一つは去年の5/3 S-igen企画pre.としてやはりバーペガにて開催された「五味夢中」というタイトルでどちらかといえば一人劇に中心を置いたアクトで「夜空に輝く星を求め走り続けてきた少年がズダボロに傷ついていたある日、人に踏みにじられようとも咲き誇る一輪の花を見てもう一度走り続けようと決心する」物語に『余計だ』などの楽曲が更にドラマティックに盛り上げる、そんな今まで観たことあるようで誰もやってこなかった新基軸のパフォーマンス。まさにこれは音楽家Saikaと役者吉田彩花 のコラボでどこか2/11の鑪ら場でのピカソアクトと相補分布をなすような気がする。

1.カウントダウン
2.余計だ
3.不敵な迷子

そんな物語であると同時に、コロナ禍で闇に閉ざされてしまったエンタメに光明を見出そうと模索するs-igen企画 #吉田彩花 のアティテュードとも解釈可能だ。
パーペガという音楽LIVEスペースが一気に演劇舞台と化し『不敵な迷子』でエンディングを迎える展開は新たなエンタメのあり方を提示してくれる。


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❸「有象夢象」

そして今、 Saika はもう次なる挑戦段階に突入しようとしている。来る 3/21(火)、というもう直ぐ冬が終わりかけ、チラホラ桜が見え隠れしているかもしれないであろうこの時期にファースト・ミニアルバムとなるをCD盤としてリリースするのだ。(先行配信は2/21)そのリリースパーティを名目上にバンドでのワンマンという形にてソロキャリアで最大規模のLIVEにくそみそに言われたい」というライブを開催する予定である。

そこで彼女はまた、どんなセッションをして、そんな円を描き、どんな絵を描き、どんな輪を描くだろう、あと1ヶ月後の景色が楽しみで仕方がない。

Ⅳ.Appendix(おまけ)

....ところで私は当日こういう差し入れをSaika氏にプレゼントしている。このツイートに上げられた右下の黒い手榴弾風の容器の写真である。*8

【速報】 本日鑪ら場にてS-igen企画主催者氏に送る差し入れが過去最大に意味不明な件 https://t.co/WNNKSzNfnt

こちらの中身は様々な私がここ最近関西近郊で足で稼いだエンタメデータ30GBぐらい詰め込んだものだとかが中心になっている....が実は私はこの手榴弾の中に更にオマケがある事を伝え忘れているのだ(ウソつけwwwわざとだろw)。この容器の最初のチャックを開け、更に奥にもう一つファスナーがあるのだがそれを開けるとなんとなんと......そちらはこの記事がアップされて3日後の2/21の生誕の日でも明らかにして頂きたく思いまするという締めにてまたもや大長文となる13701字にも及んだ本爆裂レビュー記事を締め括らせて頂きます。

あ、これ手榴弾だけど見かけによらず爆発はしませんのでご心配なく(笑)

 

*1:【オマケ】 あとYouTubeに「文字起こし」の機能があって人昔前は酷かったもんだが、今現在は歌詞とかMCとか結構正確に聴き取ってくれるのだがここを間違えちゃいかんだろwww #齋藤ではありません #しかも斉じゃなくて齋… https://t.co/3CwyDu8F7q

*2:浅川マキ『夜が明けたら』参考までに。


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*3:Corneliusの『CHAPTER 8』。アレンジの立体感にすごくシンクロニシティを感じる。


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*4:鈴木実貴子ズ名曲『あきらめていこうぜ』


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*5:昨日の対バン二組とも初めてだったが鑪ら場に凄く馴染んでいる感じがあったな。しかしこの「#アバンdeモーダン」という仲睦まじい夫婦ユニット、100人規模のライブ企画してると言ってるしで地元でかなり知名度があるんだろう。 個人的にこ… https://t.co/iu3Z8Z37lm

*6:この辺りの演劇にのみ焦点を絞った関東と関西の特徴は階下の過去記事が示唆的である。

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*7:この『悲劇のアルレッキーノ』を詳細に分析したこの記事ではパンクとオルタナティブパンクと呼称しているがここでは割愛する。

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*8:これも差し入れ。以前から薦めてた鑪ら場名物念願のホタテっぽい揚げものである

【速報】映画『#きらっきらにぶちころしたいっ!』レビュー!(ネタバレなし) #松本大樹 #岡本崇 #ぽてさらちゃん。

【速報】映画『#きらっきらにぶちころしたいっ!』レビュー!(ネタバレなし)

 

無機質だけどどこかヒューマニズム溢れる松本映画の映像美とそこから垣間見える狂気の正体とは?

芸術は悲しみと苦しみから生まれる。

わたしは立ち止まりはしない。

パブロ・ピカソ 1881-1973)

1.Overview

出演がほぼほぼ岡本崇×ぽてさらちゃん。のみという映画界隈では『ディスコーズハイ』でお馴染みの監督と出演女優のほぼ二人劇と言えば分かりやすいのだろうか。或いは彼らのコアなファンである私にとっては毎週木曜日の深夜に定期的に収録しているYouTubeラジオ番組「滅菌ラジオ」のようなゆる〜い感じのトーンが続くコメディかと思って油断して観てたら.....これが多いに予想の斜め上をいく展開で、さすが『みぽりん』『コケシセレナーデ』『極道系Vチューバー達磨』など一筋縄も二筋縄も行かぬ傑作を残してる松本大樹監督だと舌を巻いたものだ。

なにせこの25分にも満たない短編映画なのに松本大樹特有のエッセンスが生きていたのだから。

以下、松本監督作品に関す記事は以下の通りである。

❶みぽりん

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❷コケシ・セレナーデ

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❸極道系Vチューバー達磨

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まあ今時点では全く今後の公開予定なども分からず生まれたての試作上映会段階という状況なので詳細は避けるが、途中まさかのまさかの名優、白澤康宏氏が演じるとあるマッドな役柄によってそれまで緩い会話劇みたいな感じだったのが突如ふわっと静かなる狂気を感じたのだ。ここでいう「狂気」とはホラー寄りではなくてちょっとサイコサスペンスじみた狂気に近いのかもしれない。
この感触は個人的には『みぽりん』というより『コケシ・セレナーデ』ラストのゾワっとした感に近い。
次節ではそのコケシとのシンクロに関してフォーカスしてネタバレ踏まぬ程度に述べていきたい。


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2.Focus
この「コケシ・セレナーデとのシンクロ感」には岡本祟氏が舞台挨拶等や自身のバンド(ウパルパ猫)のライブMC等で時折みせる「取り留めのなさ」を基盤としたあのどこか掴みどころのないミステリアスなキャラクター(何度もお会いしてるのにすいません w、あ、ちなみに岡本氏も実はコケシ・コレクターで彼の映画にはコケシの桜井夫婦かってくらいコケシが出て参ります、本ブログの過去記事には感動のエピソードもございますという余談も入れまぜつつ)が十二分に生かされている役作りの効果も非常に大きいのだけれど、今回劇伴を担当している片山大輔氏によって提供されたあの不穏な楽曲群による効果も非常に大きい。


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是非本格上映の際にはサントラなどを配信か音源フィジカルのリリースして欲しいと思ったものだ。特にあのぽてさらちゃん。が「とある事実に気づいて割とマジになる展開」(ここめっちゃ抽象的だけどネタバレなしレビューなので悪しからず)になるいわば本作の核となるシーンでのあのピアノを土台とした曲もとても美しい旋律でとても印象に残ったものだったし、あとぽてさらちゃん。の役に関して言えば、関西弁がちょっと出る感じなどは普段の路上ライブやラジオなどの感じに近くて、全体的なテンションは『ディスコーズハイ』の役柄要素も少し入ってる、みたいな丁度良い塩梅のトーンだったと個人的に思ったりもしている。


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あとつくづく私はこの松本大樹監督作品はラスト付近のあっと驚くストーリーの展開とか、キャラクターの濃さとか(ほぼ『みぽりん』じゃねえかw)インパクト面に焦点がおかれがちだけど、実はもうとても綺麗な映像を撮る監督なんだよなぁという点を実感した。どこか押し付けがましくなくて無機質なんだけど心地良くてどこか根底にヒューマニズム溢れる感じというか、そういう意味では本作は以前動画限定で公開されてた『みぽりん』のスピンオフ的な短編、『はるかのとびら』のもたらす「限りなく現実に近い異世界感」をも感じたりしている。
 更に本作はどこか本作に出演している岡本祟氏が監督をしている『世紀末ヘッドギア』とも核の部分でシンクロしてくる作品でもあるのだ。


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時に人々のエモを掻き立て、熱狂させる楽曲とはどこか危険で、暴力性にも似た「初期衝動」に満ちてて抑えきれぬ感情の暴発から生まれるマグマのようなものなんだろうなと両作品を観て実感したものである。

3.What is ART?
本編冒頭で(「芸術は悲しみと苦しみから生まれる」)というイタリアの有名画家であるパブロ・ピカソの名言が引用されているが、正に絵画も映画も音楽ももはやアート全体としてこういう熱狂という起爆剤を苦しみや悲しみなどの感情という発火装置にぶち込んでこそ生まれるものなのかもしれない。
 そんな思いで本作が今後劇場公開などを通じて数多くの人々にある種のenthusiasm(熱意)を持って受け入れられる事を祈って私の好きなピカソの名言で締めくくりたい。

ja.wikipedia.org

It's the most import thing to create the enthusiastic situation.
「大切なのは熱狂的状況は作り出す事だ。」
パブロ・ピカソ 1881-1973)

#松本大樹 監督七転び八起きの大傑作 #極道系Vチューバー達磨 完全ネタバレ・レビュー

松本大樹 監督七転び八起きの大傑作 #極道系Vチューバー達磨 完全ネタバレ・レビュー

Ⅰ.First Perspective

Ⅱ.Some Points I noticed

Ⅲ.達磨again

Focus①.海道力也(as vチューバー達磨)

Focus②. 鈴木まゆ(as 梶原メイ役)

Ⅳ.Further&Future Perspectives

Ⅰ.First Perspective*1
前評判というか、事前に見たキャストがダンスしているミュージックvideoであるとか、SNS等で発表されるメイキングで垣間見るキャストのヴィジュアルイメージなどから「極道系893がYouTubeを始めたよ!」的な当たり障りのない思いっきりコミカルに振り切った話かと思いきや、任侠の世界で生きるガチの893が自己に向き合い、仁義を尽くしつつ動画配信を一体始めたらどうなるのだろうか、というリアリティ要素も確かにあって、途中のめちゃくちゃシリアスな展開には圧倒されてしまった。
これ例えるなら、ふつうのラーメンを食べに行った所、豚の丸焼きから始めてそこから焼豚を出してくれたり、麺は刀でシャッシャッシャッと削り出すパフォーマンスがあったり、あとスープは大鍋で鶏ガラ豚骨だ煮込んだ本格的なものだったりディテールがガチ過ぎて驚いたみたいなそんなエクストリームな展開だったのだ(←逆にわかりにくいわっw)

gokudaruma.com

Story

かつて組の事情からやむなく殺人を犯し、 
刑務所に服役していた黒澤組幹部・三船達磨。
15年の刑期をようやく務めあげて娑婆に出るも、
黒澤組は亡くなった先代の妻である京舞子と若頭達が全てを取り仕切り、
達磨や彼を慕う古参達の居場所は完全になくなっていた。

このシリアスとコミカルのバランスは、シリアス7割コミカル3割ぐらいの絶妙な感じで個人的にはコミカルすぎるのは見てて疲れるので丁度いいバランスだったな。でもこういう絶妙なキャラクターのバランスが成立しているのは他ならぬ、あの主演俳優・海道力也氏の力量に他なるまい。*2
 何せあの方は、あの怪作にして超弩級の問題作『ドスえもん 』において、タイトルに近しいなんとかプロダクションの元ネタ周辺に一瞬すら気づかれたらヤバイだろ的な、何故か観る側の我々の方がヒヤヒヤしながらも謎のスリル感に苛まれながらも、主人公の邪悪さ・下劣さが半端なさすぎて寧ろ客席を爆笑させつつも、どこかしら主人公・ドスえもんから滲み出るピュアさと(まさかの)可愛さとを両立できるほどの怪優だ。
だって『コケシセレナーデ』の舞台挨拶の時に初めてお会いした時「ネノメタルさんはTwitterでは"お友達"になって頂いてますか?」と私に問いかけたのだ。
なぬ、【お・と・も・だ・ち???】なんなんだwwwww
なんと可愛らしい響きよ!!!
でもあのコワモテのお顔から発せられる「おともだち」なる響きをなんの衒いもなく発するこのギャップ、、、これこそ彼の魅力の一つなんだろうなと妙に感心したものだったのも事実で。
こんな人見た事ないよ、マジで。
あとは、色んな濃いキャストがいるなかでもヒロイン・鈴木まゆの役は無茶苦茶切れ味のある役で完全に釘付けだった。もう死ぬほどカッコいい。
で、その鈴木さんが当時ツイートしていた通り「濃いキャラ達がごったがえしててうるさい。」との事だったんだが、確かにそれは否定はできない。
でもこの作品裏を返せば、濃いキャラ全員ということは海外の某DCみたいなアメコミヒーローものばりに「全キャラ・フィギュア化可能」だとも言えるわけで、仮に海道さんのフィギュア絶対売れそうですな(手足がとれて達磨仕様にもなったりして...www)
さあ、figmaさんあたり目を付けてくれないだろうか、とか本気で思ったりしてます(笑) 


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Ⅱ.Some Points I noticed
正直に言いって、残念だった点も上げとくと2点あった。*3
一つは『コケシ・セレナーデ』のスピンオフ的にあのこけしコレクターの桜井さんの奥さん役、桜井萌々花がYouTuber(Vtuber)として出るとの事だったんだけど、全くそんなYoutuber感はなくて単なる通りすがりの人みたいな印象しかなかった点。でも『コケシ・セレナーデ』の結末を拡大解釈すると案外亡霊として達磨の運命を知ってる人だったりしてとか考えたらしっくりくるんだけど。
もう一つはあと全体的に任侠ものとしてはしっかりどっしりど迫力だったんだけどネット界隈の描写が非常に陳腐な印象があった点。

*4そこには視聴者も2、3人ぐらいしか映らなかったし炎上してる場面でも本当に炎上してるのかどうか、任侠に比べネットにおけるリアリティが個人的にはよくわからなかった、というのが正直な感想である。
とはいえ、本作を見たのが7月末の海道力也映画祭での修正の余地のある「特別公開」的なスタンスだとの事だったので、いずれ本格公開になればこの辺りもっとしっかりreviseしてバランスの良い作品に仕上がる事だろうなと期待している。気になった点はその二点だけで、再鑑賞の価値も十分にある見応えのある作品だと思ったものだ。
いや、再鑑賞どころか5回は観ます(笑)
海道さん、、いや達磨さんたちにまた会いましょう!
と言いたい。

Ⅲ.海道達磨、again*5
とそれから4ヶ月、色々と紆余曲折を経てあの極道たちが帰ってきた!初回よりもリファインはあったのだろうか?
極道達の生々しいまでのヤクに溺れた攻防戦とvチューバーと配信閲覧者達のユルユルのゲーム配信と父親の弔いに刃を研ぎすます一人娘という3方向から展開するマルチバースが同時進行しそれらがあの衝撃への結末へと収束する様は鳥肌もので、更にテンポ感が増した気がしたかな。
これはたとえそうだとしても初回鑑賞時に比べエンタメが復興しつつある2022年冬に観たというタイミング的なものもあるのかもしれない。
その意味で本作は今まで溜まった我々の心のヒダを全力で洗い流すと同時に関西インディーズシーンの底力を見せつけてくれる快作だといったスタンスに位置付けられる役割を担っていると言う事も多いにあり得るのかもしれない。

Focus①.海道力也(as vチューバー達磨)
それにしても話は戻るが主役の達磨こと海道力也。彼の義理人情に溢れた893もチャーミングなvチューバーも全てが普段舞台挨拶の気さくな彼と連動しているようで松本大樹監督は実はヤクザもvチューバーも取っ払って彼の人間性を浮かび上がらせる事が目的だったのではないかと思ったほどだ。本作数回観た上でのテメエ仮タイトルは【海道力也のすべて】だったくらい。
それにしても極道もYoutubeもグロも家族愛も笑いもギャグもアクションも全てを達磨色に染める海道力也の人間力には感服せざるを得ない。


Focus②. 鈴木まゆ(as 梶原メイ役)
あと観れば観るほどやさぐれたヒロイン梶原メイ(鈴木まゆ)に徐々に惹かれていく作品でもあって、彼女が颯爽と黒のライダース着て刀投げ捨てて仇を打ちにいくシーンもうあれなんなんすかってくらいシーンがカタルシス級でカッコいいのだ。
彼女の場合台詞という台詞がほとんどなくて「達磨は?」とか「キモいんだよ」とか「(海は)嫌いです」「ふざけんなよ」とかほぼ一言レベルなのだがその少ない台詞やそれを発する表情から醸し出されるニュアンスというのも汲み取れるようにもなってて逆に彼女の表現力というものに感嘆させられる。てかあの海辺のオシャレなカフェでフルフルチキンだかフリフリチキンだか忘れたが、グリルチキンをさもヤケクソにかっ喰らうシーンなぞもう最高最強最狂だったなw

*6あんだけ女優さんで人間の複雑なあらゆる感情をぶち込めた狂気じみた食い方する人は非常にレアなのではないか。もはやあのシーンのポストカードを売ってくれ、100枚くらいデスクトップpcに貼っておきたいから。
 いや、これマジで思うんだが日本の女優でハリウッドのアクション映画ではスカーレット・ヨハンソン的な女優ばりにヴァンプな要素もありつつクールなカッコ良さを表現できる人ってほんとレアと思う。そしてそんなカッコ良さから一転してその例の海辺のカフェでのそれまでの感情を押し殺して敢えてこその清楚に装ったあの格好や表情からは逆に敵討ちをしようといいう覚悟が伺えるし、瞳の奥に宿した心の叫びみたいなものを感じて切なくもなったな。
あとこれは舞台挨拶での松本大樹監督の解説で判明したのだが、例のグミを万引きして一回コンビニ店長から補導され、その後も認知されてるんだが、ここのコンビニ以外にもグミなどどこにでもあろうに、なぜあのわざわざ捕まったあのコンビニに行くんだろうと言う疑問点がふっと繋がったりした。ハッキリ言って彼女も誰かに構って欲しかったのだ。どこか彼女も父親という存在を失って以来、父性の愛に飢えていたのだと思うし、万引きした際警察沙汰にしなかったあの店長に感謝している筈なのだ。そしてあのコンビニ店長も同じように彼女に対して自分の家族の状況を投影しているようにも思えたりして。
その証拠として、彼のスマホに自分の娘の写真を待ち受けにしてる場面があるのだが、それが恐らくメイと同い年ぐらいの若い女性であって、何となくそういう意味でどこかしらシンパシーを感じていたんだろうと思う。もしかしたらではあるが、彼は離婚かなんかしてあれぐらいの歳の娘を育てきれなかった事に何らかの後悔の念があったりするのかもしれない。
まぁ、いずれにせよ梶原メイに関してはもっともっと個人的に色々と考察したい要素がザクザク溢れている。それぐらい謎めいていて、魅力的な役柄だ。
マジで監督にも直接お願いしてるが梶原メイを主人公としたスピンオフ作品「(仮)メイ外伝」是非いずれお願いします、あとその際には「梶原メイ・アクリルスタンド」の発売も立っているライダースパターンと私服で座ってるパターンと2ver.重ねてお願いします、いやもう絶対売れるよ(笑)

Focus③ 火の鳥鳳凰
そして4回目にしてふと気づいた事がある。ある昭和を代表する超有名漫画家の、彼自身「ライフワーク」として位置付け、シリーズものになって今も尚色褪せない不朽の傑作との共通点を嗅ぎ取ってしまったのだ。
これは松本大樹監督に質問した所、見事に当たってたから断言しよう。そのタイトルは手塚治虫氏の傑作『火の鳥』の中でも最高傑作とまで評する人もいる『火の鳥鳳凰編』である。
この話の主人公である我王は達磨と同様ヤクザもので超絶的な荒くれ者だ。

tezukaosamu.net

てか子供だろうが女性だろうが片っ端殺しまくっているいわゆる「殺人強盗」なので達磨の百倍以上タチが悪いヤツなのだが、やがて彼は捕らえられ、処刑寸前になりつつもある僧正に救われ出家し彫刻家としての才能を見出される。


....とこの話を聞いて時代が奈良時代とかその辺故に「え?どこが?」と思われるかもしれないが我王には元々幼少期からも不慮の事故で片目と片腕を失っている達磨的ルックスである事に注意したい。そしてやがて彫刻のライバルとなる茜丸からも片腕を切り落とされる、言わば最終的には完全に達磨的な様相に変貌するのである。しかも手塚氏の漫画を見ていただければ分かりやすいのだが、我王の見た感じも大柄で髭を生やした強面風だしで、雰囲気では達磨と非常に似ているのだ。あと我王にとっての彫刻は怒りを筆頭に彼の中にある様々な感情をぶつける手段でもあるのだけれど、これがさながら達磨にとってのvチューバー活動ともそっくりトレースできたるするし。これは強引な結論かもしれないが我王にとっての彫刻も達磨にとっての配信活動も過去への贖罪的なニュアンスだったものが人生観をぶつける手段へと変貌していく過程とかほんとシンクロしている。結局どちらも両手を失ってからも各々のアイデンティティ活動を継続してるし。それと最も大事なのが我王も達磨も「どこか強さを装った背後にあるナイーブさとそのコアにあるイノセンスとが同居してしているという意味で本当シンクロするのだ。最終的には茜丸を慕ってたブチは野上照子のスタンスって感じだろうか、野上幸子も達磨に結構好意を抱いてたしね。

(我王 from 『火の鳥鳳凰編』)

Ⅳ.Further&Future Perspectives
それと他にも印象に残った役者としては白康澤宏氏の古参宮川さん役はパッと見柔和であり義理人情要素強めの893という印象だったんだけど、とある場面で瞳孔がパッと開いて視線がギラっと光る瞬間があってそこにある種のカタルシスを感じていた。正に極道の人のリアリティってこういう所にあるんだなと思っていた。
昨日それをお伝えできたのが本当に嬉しかった。
この宮川に関して白澤氏によるとTwitterにて以下の回答を頂いた。

松本大樹監督の演出意図普段は日常の中に居心地悪く生存している古参が、いざという時には死地へと赴く腹が決まっている人物、先代の元には三船達磨はじめ仁義を体現する漢たちがいたんだというところを描きたかったのではないか

という事。
なるほど、本作がエンターテイメントとしての領域に留まらず極道のリアリティまで細部に渡って研究され尽くされている事を示唆するエピソードである。『みぽりん』も完全にアイドル業界のコアを撃ち抜いている作品だったし松本監督のポテンシャルたるや凄いなと思う。

あと最後の最後、これはレビューでも何でもないんだけど舞台挨拶時、主演の海道力也さんが本作のキッカケとして最初は短編だったらしくて「松本監督は当初、“オレがずっとしゃべり続ける短編映画を撮ろう”って言ってたんですよ。」ていうのが何故か「しゃぶり続ける」と言い間違えたの腹筋崩壊&呼吸困難レベルで笑った。
もう帰りの電車の中でも、2週間経った今でもだいぶ思い出しては引きずっている。
観てみたいわ〜達磨さんが延々何かをしゃぶり続ける短編、いや長編作品でも良いけど。

そういえば、というか唐突にネルソン・マンデラ(1918- 2013)の言葉を引用しよう。

ja.wikipedia.org

若い時から反アパルトヘイト運動に尽力し、それが原因で46歳から73歳という人生の最も油の乗り切った時期である27年もの間、獄中生活を余儀なくされて見事に復活し、その後も運動を続け、ノーベル平和賞を受賞し、果てには第8代南アフリカ共和国大統領へと就任したあのアフリカ政治史における最大の英雄であり、アフリカ人にかぎらず世界中の人々からもっとも尊敬され、愛されたアフリカの政治家である。彼がこういう言葉を言っているのだ。*7

The greatest glory in living lies not in never falling but in rising every time we fall.

 

生きる上で最も偉大な栄光は、決して転ばない事にあるのではなく転ぶ度に起き上がり続ける事にある。

これを一言で言うならば正に「七転び八起き」である、そう正に本作主人公である「達磨」的な精神がそこにあるのだ。正に『極道系Vチューバー達磨』の本質、と言おうか、と言うより例のパクリ問題になった件から見事に復活まで漕ぎ着けた本作自体の制作過程とを重ね合わせてしまうのだ。もうハッキリ言うとあの懲役太郎というVTuberがパクリだとかで怒った件。あの騒動がった当時、予告だけで怒るのは大人げなすぎなので、作品全編を観て判断するぐらいの寛容さはあるべきだとか思ったものだし、さらに言うと懲役ファン側のとってつけたような薄っぺらい正義かざしてdisってる様がまた「誰でも良いからめざといもの見つけたら叩け」的ないつもどこかでみるバッシング構造でウンザリしてたものだが、こうして転んだ達磨はまた起き上がったではないか、そして、今もなお本作はまだまだ転がり続けるだろうしまだまだ転んでも立ち上がり転んでも立ち上がる局面にあるのかもしれない、でも。最高のエンタメには最強のサポーターがいて、最高最強の光を放つのだ。何度でも立ちあがろう。今に見てろ。本作には物語自体よりもむしろそう言うエピソードまでも物語の一部になっているような気さえする。*8これは関西インディーズ映画が2022年の年末ラストに放つエンタメの意地と真髄の極地だというGrand conclusionをブチ込めて本レビューを締めくくりたい。

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*1:2020年7月末の海道力也映画祭にて

*2:海道力也https://harmonic-inc.com/kaidou_rikiya/

*3:2022年12月時点でもあまり変わらんので残しておくw

*4:『コケシ・セレナーデ』に関する過去記事はこちら。

nenometal.hatenablog.com

*5:ここからは2022年3回観た感想です!

*6:公式Twitterによると「フリフリ」グリルチキンらしい。海辺のお洒落なカフェシーンは、ノースショア須磨ヨットハーバー店で撮影したらしい。

www.project-linsieme.jp

*7:ついでながらマンデラに関してはこういうドラマ映画がある。『マンデラ 自由への長い道』という彼が亡くなる直後ぐらいに作られた2014年の作品。


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*8:もう一つ本編合計四回観た立場で言わせてもらうとパクリ元だとされてるアイコンの役割はそこまで物語の流れ的には重要じゃ無い。仮に違うのにとって変えても物語の本質は損なわれずに成立したことも今回立証できたよね。

「夢」が「リアリティ」へと変わった瞬間~ #優利香 ABCホールワンマンライブからエンタメの輝く未来を考察する

「夢」が「リアリティ」へと変わった瞬間

~優利香 ABCホールライブからエンタメの輝く未来を考察する

Ⅰ. ABCホールライブレポート

Ⅱ.The Road to Dream

scene1「優利香&やましたりなツーマン」路上ライブ

scene2『優利香Presents ABCホールまでの盛り上げ企画!1』

scene4『大阪駅ルクア前路上ライブ』

Ⅱ.優利香 名曲コレクション

1.『感情渋滞高速道路』

2.『ノスタルジーラムネ』

3.『withallmyheart』,『開花』

4.『ハートレス人間』

5.『世界はロック』

Ⅲ.世界は優利香〜未来のJ-ポップシーンへの展望〜

Ⅰ. ABCホールライブレポート

2022年11月14日月曜日、満員の大阪のABCホールにて19:04ぐらいバンドメンバーがSEと共に颯爽と登場し、 最後に黄色い衣装を着た彼女が現れ『感情渋滞高速道路』のイントロが鳴り響いた瞬間、何かが崩壊し、 そして何かが新たな始まりを告げるのを感じた。

2022年11月14日月曜日

優利香ABCホールワンマン〜眩しくて強い未来へ〜

19:00〜

セットリスト

1.感情渋滞高速道路
2.世界はロック

3.withallmyheart

4.食べたいモノはない

5.明日やろうはバカヤロウ

6.ノスタルジーラムネ

7.開花

8.ユメビカリ

9.君に借りたパーカー

10.圧力鍋

11.僕らはきっと普通じゃない

12.神様の悪戯

13.青いクジラ

14.ハートレス人間

15.いってきます!いってらっしゃい!(with あいかビンギラ)

16.Eureka

17.眩しい朝日

18. 輝く未来へ

en1

19.やりたい事

20.ブバルディア

en2

21.三角マーク

まさに以下の当日の私のツイートがそのボルテージの高さを証明している。


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私は心の中でこうつぶやいた。「コロナ禍以降に誰もが感じた世紀末的な絶望感と閉塞感を打ち破るべく、希望の光を希求するべく立ち上がった”ライブ”の復活だ!!!!」 そんな私のセンチメンタルとエモーションとEnthusiasmの入り混じった感情などお構いなしに今度は立て続けに次の曲『世界はロック』が解き放たれる。 本曲はストレートかつポジティブなのにこれほど心臓部ど真ん中に突き刺さるようなポップミュージックがあるのか、 目から鱗のイノセントな感動を伝えてくれる個人的に超絶大名曲だがこの日は一段魔法がかって聴こえたものだ。 そう、彼女はとうとうここ3ヶ月にわたる夢を叶えたのだ。*1

ロック・ポップス系統のシンガーソングライターなら誰しも夢想するであろう【満員のABC

ホールにてワンマンLIVEを開催する】と言う夢を... 。

そしてそんなメモリアルなこの日のライブはどうだったのか感想を一言で言うと、もう当たり前のような言い方だが、もうひたすら「楽しい」ライブだった。 何より路上やハコで共にしてきた戦友のような曲達を祝福するように満面の笑みで歌う姿に何度も感動したし、もはや彼女の笑顔が、歌う姿が、もはや彼女の存在自体が最強のセットリストだった。

それはオーディエンスのみならずステージ上にいる優利香氏も、優利香バンドのメンバーも、 誰もかれも全くこのある意味大舞台に臨まねば、という気負いであるとか、特別な日にするべく変にセンチメンタルを煽ったりする事もなく普段通りのライブを全力でぶつけると言った感じ。 これは恐らくこのライブがある意味の「区切れ」「終着点」「最終目標」を意味するものであったらそういうニュアンスのステージになるのだろうが、 むしろ「Starting Over」と言う表現がある通り「ここからが始まり」という意味合いが込められているのだろう。

本編ラスト曲は『眩しい朝日』にせず『輝く未来へ』にしたのもそんな姿勢の表れだったのかもしれない。 ホントにMCも普段通りの「タイトル噛んじゃいました💦」などなどのYouTube配信さながらの感じで(本当は緊張してるのかもしれないが)どこかリラックスしてるようにすら見えた。 具体的なライブ本編の最高潮は『ハートレス人間』辺りからそれまでの盛り上がりを更に助長するような物凄い盛り上がりが起こったと思う。 或いは世界が滅びようがどうにでもなれ的なヤケクソ感にも似た覚醒感があった。 あれを人は「ライブマジック」と呼ぶのかもしれない。 繰り返しになるが、2022年11月14日19:04、我々は「夢」が「現実」へと変わった瞬間の中にいた。正にネブワース1996のノエル・ギャラガーではないが「This is history!!!」である。

これはそんな1人のSSWの「満員のホールでワンマンLIVEをしたい」という夢が叶った歴史的瞬間であると同時に全てのインディーズを中心とした音楽ファンの夢でもあり、 音楽業界全体の理想の夢でもあるのだろう。

 恐らく優利香は今、関西圏にとどまらず、日本の音楽シーン全般を通して見ても最も上昇気流に乗ったシンガーソングライターであると位置付け、本記事では彼女に初めて出会った6ヶ月前からこのABCライブに至るまでの過程とその展望をも大いに語っていきたい。

 

Ⅱ.The Road to Dream

さて、少し時間軸を6ヶ月ほど前の初夏に戻そうか。*2私がこの優利香と言うシンガーソングライターに初めて出会ったのは5月末の北堀江vijonというLIVEハウスでの対バンイベントだった。その時私個人としては対バンしていたはるかりまあこなどでもお馴染みのトラックメイカーであるAmamiyaMaakoがメインで優利香に関しては今まで名前を聞いた程度だったので当初予測がつかなかったのだが初めて観た時の印象がガチなバンド編成で衣装もガッチリとショーナイズドされていて、偶然にも「まるでワンマンライブみたいだな。」と思ったものだ。*3しかもライブハウスではなくホール級のガチさを他の演者以上に感じたりもしたのをはっきりと覚えている。まさかこれが現実になるとは当然予測もしなかった訳だけど、今思えば、オープニングの感じやバンドスタイルだとかワンマンのような演出があってとても良かった。そこで最も印象的だったのはラストで歌われた『やりたい事』という曲。ここで演奏されたコロナ禍で書き上げたという『やりたい事』はこれほどLIVEハウスで歌う事だとかそこで受け取るオーディエンスの喜びまでも純粋に歌い切った曲である。

ステージからの景色も音もこの耳で

この目でこれから見たいんだよ

というフレーズの殺傷力。本曲はコロナ禍当時から甲子園駅9月11日にパントタビスルという甲子園駅前で開催されたイベントでも披露されたが本曲のこのフレーズが殊更に心に響いた。
本フレーズがはコロナ禍当時から、来るべき11月14日のABCホールへとポジティブな意味合いへと変化した形で我々に伝わってきたからである。そして本曲はこれまでの「願い」というフェイズから
11月14日のABCホールでは「確信を込めた強いポジティブなメッセージへ」と変貌を遂げ我々にビシビシと伝わってきたものだ。


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それから3ヶ月ほど時を経て再度観たのは「MUSICBUSKER」というFM802が主催しているストリートライブのイベントである。普段TVを観なくても関西に住んでれば誰もが耳にした事のあるだろう【関西人の朝のアンセム】である『眩しい朝日』が一曲目に放たれた途端、駅周辺を歩いていた人が一気に熱い視線がこのステージに注がれるのを感じた。

その時のライブで驚いたことがあった。

初めて彼女を観た後の物販において、少し彼女も出演した事のある名古屋Sunset blueというライブハウスに観に行く事がある、という話をしたのだが、それをはっきり覚えて、「ネノメタルさんは名古屋の人というイメージがありますけど。」と言ったのだ。正確には完全に間違っているのだが、その記憶力が神レベルで凄すぎてさすがエンターテイナーだなと感心した次第である。


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そしてそんな彼女のストリートライブを次に機会に観ることはそんなに時間は立たなくて数週間後のグランフロント大阪での少し場所が変わってのストリート。40分ほどのライブでiPhoneが3度ほど高熱でバテほどの酷暑でのパワフルなパフォーマンスだった。本当歌う喜びを思いっきり噛み締めて直向きに演奏する感じがとても印象的だったのだが、*4その日に例の重大発表が放たれた。

それが「11月14日ABCホールでのワンマン」だとの事だ。こちらがその瞬間を捉えた動画ツイートである。


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以下、これまで私が参加した優利香の路上を含めたライブ・イベントなどをツイートで巡っていきたい。

scene1「優利香&やましたりなツーマン」路上ライブ

*5

scene2『優利香Presents ABCホールまでの盛り上げ企画!1』

scene3大阪駅ルクア前路上ライブ』


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ABCホール での11/14のワンマンライブもちょうどあと一ヶ月を切った日曜日の夕方のこと。大阪駅ヨドバシ梅田渡った所にあるルクア前の例の所にてジャストすぎるタイミングで 優利香の路上LIVEに遭遇した。個人的には彼女が演奏するのを見るのはこの日がラストになったが「ABCホールワンマン」発表前後ぐらいから路上ライブを観てるけど立ち止まって聴く人がかなり増えたのにも少なからず驚いたものだ。「ホールを埋めたらどんな景色があるのだろう。」そんな夢を語りながら歌い始める彼女のその姿に誰もが心を打たれ、真剣に聴いているのがビシビシ伝わってくる。MC時に「チケットがまだまだソールドに届かない。」と言っているもののどこかしら余裕が感じられたような気がした。

そして、とうとうそんな夢が現実へと変わった。

3ヶ月間掲げてきたこの目標が達成されたのはライブ当日ギリギリ1週間前くらいだったと記憶している。確かにここまでの道のりは順風満帆ではなかったのはストリートの場所によってはリアクションが少なく不安だった事も後のトークイベントに吐露してるし、時間帯によって通行の影響などにより場所を変えざるを得なかったりしたし、あと重大発表した時だったともうがストリートライブの物販時、ボロボロのルーズリーフにサインくれとねだってたある中高年の男がいたが私が同じような立場ならブチ切れまくって「てめえ舐めてんのか、このじじい失礼にも程があるだろwwwくたばれ」ぐらい腹の中で思って下手したらついまんま口走ってしまうかもしれないが「普通はお断りしてるんですけど、今日だけは特別に書かせて頂きます。」と嫌な顔ひとつせず対応してたことも私はしっかりと目に焼き付けている。感情を抑えることも重要な要素だ。まあ努力すればが全て実る世の中ではないが、何事においてもチャレンジしなければ成果は成し遂げられないのだ、そんなシンプルだけど大事な事を強く思った。

Ⅱ.優利香 名曲コレクション

さて、私が優利香というSSWがABC朝日ホールワンマンを埋めるべく応援してきた理由は「応援せねば」というボランティア精神からではないことに注意したい。そもそもSSWでもバンドでもインディーズ映画でも演劇でも第三者に「熱心に応援してますね」と言われる事があるが私の中では「応援している」という気持ちは全くない。
単に「自分が良いと思ったもの」に対して狂ってるだけ。entertainmentに必要なのは媚び売ったコメントじゃなく個々のenthusiasmだと思うからだ。そうではなくて単純にそうなるべき楽曲の良さが十分に備わってるから。曲が素晴らしいからである。『世界はロック』も『やりたい事』も『感情渋滞高速道路』も路上でもカバー曲よりこっちを演奏した方が十分人が聴きに来るのではと思ったほどである。本章では6曲ほど個人的に気に入った優利香の珠玉の名曲を論じていきたいと思っている。

1.『感情渋滞高速道路』

二度目のストリートライブ時だかにご本人にも伝えたことがあるが、当初彼女の楽曲中で最もピンときた曲は本曲だった。
モノラルからステレオへと徐々にクリアになっていくイントロが象徴しているように本曲で描かれているのはSNS社会に対する懐疑とそれを撃ち抜く音楽のもたらす希望の光だと思う。
【destruction】という語の響きが心地良い。


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ABCホールでもファーストチューンに選ばれ、バンド演奏により本曲本来が持つロックダイナミズムが更に加速された。それにしても優利香曲で他にも後述する『ハートレス人間』などでも顕著な現象なのだが

匿名お化け
イイねが欲しくて草ワロタ
今日も誰かが誰かを叩いてもうほんとに勘弁してくれ

などここ最近のSNS社会がもたらす闇の部分に関してピリッとシニカルな視点も含みつつも、

誰かがいらないと言った音楽は必要なの

というポジティブなフレーズがポーンと放たれる事で彼女のポップセンスを魅力あるものにしている。それは例えば次に述べる『ノスタルジーラムネ』という郷愁溢れるリリカルな曲に関しても同様のことが言える。

2.『ノスタルジーラムネ』

優利香楽曲で個人的に好きな点はポジティヴィティのみならず「内省的な心情」も絶妙な塩梅で配合されている所にある。
ここで取り上げている『ノスタルジーラムネ』にしても単なる郷愁に留まらず郷愁と現実とを結ぶような以下の一節がポーンと投げかけられる。もう特にこのくだりには共感しかございません。ラムネ、ビー玉、田園風景、風鈴、僕達だけのルール...ど直球までに子供の頃にしか味わえない夏の終わりの歌だ。

今の時期に聴くと一層染み入るものがある。
どこか岩井俊二監督の伝説の映画『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』の内容を思い出したりして。

*6


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いつもの空き地でした
ドッジボール覚えてる
僕は最後まで苦手だった
上手くキャッチできない
そのボールが今では
人の言葉に変わっている
上手くかわせもしない
投げ返せもできないままさ

そう、優利香楽曲で個人的に好きな点はポジティヴィティのみならず「内省的な心情」も絶妙な塩梅で配合されている所である。
取り上げた『ノスタルジーラムネ』にしても単なるノスタルジーに留まらず郷愁とリアリティとを結びつけるような一節がポーンと投げかけられる。
もう特にこのくだりには共感しかない。
この『ノスタルジーラムネ』で歌われる光景は「二度と帰ってこないあの夏」である。これは今でこそ思う後付けかもしれないが、今年灼熱の暑さの中ABCホールワンマンを発表して駆け抜けたこの2022年の夏への郷愁的な思いへとさながらトレースバックして聴いてしまうのだ。
当然のことながらABCホールで本曲のイントロが流れた途端感動の鳥肌が立って仕方なかった。

 

3.『withallmyheart』『開花』

この『withallmyheart』の中にこういう一節がある事に注意したい。

過去の栄光なんて今があってこそでしょ?

この言葉はあの「ジャズの帝王」ことマイルス・デイヴィスが全く同じような事を言っていたのを思い出す。

ja.wikipedia.org

A legend is an old man with a cane known for what he used to be. I'm still active until I die.

 

伝説とは杖にしがみついてるジジイどもの事さ。

俺は死ぬまで現役を続けるよ。

自らが伝説としてカテゴライズされるのを最も嫌ってあくまで革新性を追求するジャズの帝王らしい言葉である。優利香がこの言葉にインスパイアして本曲を構成したか、あるいは無意識なのかはまあ別としてこういう「マイルス的なもの」をポップスとして昇華できた曲はこの曲だけだと思う。ちなみに本曲は『優利香Presents ABCホールまでの盛り上げ企画!vol.1』で演奏されたのを初めて聴いたが物凄くライブ映えする曲である。ライブ当時のツイートでも語っているがとにかく魅せ方やグルーヴ感がヤバくて目から汗が流れたほどだ。

これがバンド演奏のダイナミズムが加味されると一体どうなるのかに関しては言わずもがなである。


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あと同日2曲目に放たれた『開花』。もちろんLIVEでは初聞きだったけどこれがまた素晴らしかった。ずぶ濡れでも泥まみれでも飽くなき夢へとひたすらに突き進もうと決意するこの歌詞世界は、正に2ヶ月後のホールワンマン成功を目指す彼女の姿そのものだった。

これも大袈裟でなく感動の鳥肌立たせて震えて聴いたものだ。


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4.『ハートレス人間』

自分の本当の気持ちとは裏腹に愛想笑いを浮かべてしまう、私はそんな空虚な「ハートレス人間」、そして私に立ちはだかる得体の知れぬ「怪物」の正体とは? 」

勝手に本曲を私なりにまとめてしまったが、そんな内省的な心情をこのポップスフィールドで綴ったこれまた珠玉の名曲である。後の「ABCホールアフタートーク」を聴きつつふと思い出したけど『ハートレス人間』辺りからそれまでの盛り上がりを更に助長するような物凄い盛り上がりが起こったのは驚きだった。或いは世界が滅びようがどうにでもなれ的なヤケクソ感にも似た覚醒感。正に「ライブマジック」と呼びこんだ曲だ。優利香楽曲の中でも、いやJpopのフィールドでも内省的な部門に入る本曲がなぜここまで起爆剤となったのは、ややトートロジカルな言い方になるがこの歌詞が「内省的」だからだろう。
誰もがこのコロナ禍において内なる【怪物】を意に反して育んでいたのを認知しているのだ。そしてその存在の正体も無意識に知っているからだ。そう「鏡の中の自分」。
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 正にこの曲に対するある種の共感と感情移入の表れからライブマジクを呼び込んだ曲であると断言して良い。


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そして本曲は、今回のABCライブがコロナ禍以降のライブ自体の光景へと流れを変えるきっかけになったとすれば本曲の貢献は計り知れないものとなるだろう。

 

5.『世界はロック』

本曲は何度も言っているが、非の打ち所の無い完璧なポップミュージックだと思う。メロディ、歌詞ともにストレートかつポジティブなのにこれほど心臓部ど真ん中に突き刺さるようなポップミュージックがあるのか、目から鱗のイノセントな感動を伝えてくれる超絶大名曲である。ワンコーラスサビでブチまけられたネガティブな感情はツーコーラスサビで全てが力強く払拭されポジティヴィティに導かれる瞬間に何度聞いても感動してしまう。


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ここまで私が感動する所在は何なのか。本曲に関してはタイトルにあるように「ロック」を定義することで詳細に述べていきたい。Weblio英和辞書によると本曲の意義に適合すると以下のよう3つの意義に分類される。*8

ロックの定義

①(lock)

(かぎ で開閉する)錠、錠前、輪止め、銃の発射装置

(交通などの)身動きもできない状態、

②rock(1))

岩,岩石; 岩盤,岩床,岩壁 

③(rock(2)
ロック音楽=rock 'n' roll.

この定義を本曲のワンコーラス目のサビに当てはめていく事にする。

恋の定義はロックと同じ 唱られやしない

君への思いはロックみたいに 感情に支配されている

この場合支配され、唱えられないがんじがらめの「ロック」という意味で上の定義上①のlockになる。

次は2コーラス目のロックを見ていこう。

僕の夢はロックと同じ ヤワなもんじゃない叶えたい思いがロックするんだ 前しか見えないくらいに

ここでは「ヤワなもんじゃなくロックする」という意味では正に岩の意味でのロック。スペルもLからRへと変わり、定義上②となるのだ。そしてクライマックスである。

僕の歌よロックみたいに 世界へ轟け...(略)...

つまり世界はロックンロール 毎日がロックンロール

歌おうぜ笑おうぜ 共に叶えようぜ

そして最後の「ロック」は正に我々音楽好きが最も馴染んでいるロックでありロックンロールとしてのRockであり定義上③であると同時に『世界はロック』というタイトルにおけるRockそのものであると断言できよう。このように一曲の中でも様々に感情の変化がタイトルの解釈にもあるようにネガティブに解釈されがちな「lock」から岩の如く強固な「rock」、そして「rockn'roll」におけるロックンロールへと導かれる様は正にポップミュージックの原点であり理想郷がそこにあるものと結論づけられよう。

 

Ⅲ.世界は優利香〜未来のJ-ポップシーンへの展望〜

第1章ではABCホールのライブについて語ったが、このライブの5日後、11月19日の19:00からcafe&bar LGTと言うところで「ABCワンマンライブアフターパーティー」なるものが昼と夜の二部にわたって開催された。私は夜の部のみの参加だったが「自分の夢を一つ達成した人とはこれほどまで晴れやかで自信に満ちた表情をしてるのか。」熱狂のABCワンマンをしっかりと観てるだけに彼女が出てきた瞬間真っ先にそれを思ったものだ。にしても彼女の一言一句から人柄の良さが滲み出るのはあのホールでも小さなバーでも変わらないが、正にこのライブには紛れもなくmusic historyに刻まれるべき何かがあったと思うから。*9

私がここまでこの優利香というSSWに楽曲の良さ以外で惹かれる理由はなんだろうかと考えた時にやはり所謂レコード会社に所属していないインディーズアーティストでありつつも「ライブハウスという狭い領域にとどまらずメインストリームへ行こう」と宣言して実行しようとするそのアティテュードに他ならない。てかここ最近、とりわけコロナ禍以降こういう上昇志向のマニフェストを掲げるアーティストってメジャー・マイナー問わず少ないように思えるのだ。それどころか、近年目立つのが規模縮小をコアにしたファンクラブ・メンバーシップを立ち上げコアなファンを中心に楽曲提供やイベントの開催などが非常に多い。そういう傾向を反映してメジャーレコード会社に所属しているアーティストでも独立したりするケースが目立つようになってきている。

 いや、確かにこういったアクションは音楽活動としての地盤を固める上で必要で堅実なやり方だと思う反面、ファンダムコミュニティの広がりという意味ではほぼ絶望的なのではないかと思うし、何よりも内へ内へと向かってもはや外の世界へと音楽を放つ事をしないアーティストのアティテュードに何の魅力も感じないのは私だけだろうか?その意味で優利香の今回のアクションはintrospective(内向的)志向にあるこの音楽シーンにおいて極めて貴重な存在である。そういうアティテュードは、先に検証した彼女の全ての楽曲群に共通するexternal (外向的)志向性がどこか大衆の心ど真ん中を射抜くポップネスという要素に反映されているのではないかと思うのだ。
そしてこの優利香のABCホールワンマン以降、数多くの若手SSWが影響力受けてそこを目指すようになるかもしれない。
というわけで私は正に【優利香以降】と呼称されるSSWシーンの到来を望んでいるのだ。そうなればもっと音楽界隈は活性化する。観客はデカいハコでゆったり聴きたいと思っていてライブハウスにはそれほど拘りはないのだ。コロナ禍を経て多くの音楽家が規模縮小を余儀なくされている状況で大きな目標を設定し成し遂げた優利香氏のソールドアウトは快挙だ。*10この勇気こそがアティテュード。ライブハウスという閉じられた空間からメインストリームへ。本当に私は音楽を、とりわけポップスというジャンルの音楽を聴いてきて彼女のようなアーティストを希求していたのかもしれない。

 ちなみに自分の支持媒体では未だ経験ないがミュージシャンが大ブレイクすると何があるかってこれをがその人の個性が遠のいてしまって一大プロジェクトと化すようだ。

そしてこれまで中核を成してきたコアなファンダム構造も一気に霞んで崩壊すると。それはある種残酷な光景だがそれをどこかで望んでる自分もいる。最近「Big successを望んでません。今後は細々とコアなファンダムコミュニティに依存して音楽やっていく方針です」みたいなミュージシャン増えたがそりゃリスナーに失礼だろと思ったりする。こちとらQOLを上げるためにエンタメを享受しているのだ。どデカいムーブメント起こして共に成長せねば意味がないとすら思う。しかしもう一つぶちまけて言うとどの音楽誌みても媚びへつらったようなレビューばっかな状況である。もはやオーディエンス一人一人がオピニオンリーダーとしての自覚を持たなきゃ音楽業界は完全に死んでしまうんじゃなかろうか。もっと傲慢かまそうか?たまに音楽界隈で「〇〇のファンを名乗るのもおこがましいですが...」とかいう謙虚な人いるが私は逆だな、もう真逆です。
ここまできたら暴論かまして言うと「ネノメタルさんに見つかった全てのアーティストたちは運がいい。」ぐらいに思ってる。粒は小さくても一人一人がもはやメディアだと思う。本論から外れてしまったが私は本当に音楽を守りたいし、ガンガン語っていきたいと思ってるのだ。

最後に伝説のバンド、あのビートルズのメンバーであるJohn Lennonの言葉で今回のABCワンマンを大成功で終えた優利香氏に、そしてバンドメンバーに、 そしてこの日のために尽力したスタッフの方々にピッタリな言葉がある。最後にジョンの言葉を送りたい。

A dream you dream alone is only a dream.

A dream you dream together is reality.

 

一人で見る夢は単なる夢だが、

皆で見る夢はそれが現実となる

John Lennon(1949-1980) 

そう、先のABCライブアフターイベントの時に優利香はこう言っていた。「今後はまだまだ大きい所、zeppツアーだとか、大阪城ホールフェスティバルホールなどで演奏したいんです。」と。このまま行け!!
行く末は
サンケイホールブリーゼだ!
Zeppワンマンツアーだ!
フェスティバルホールだ!
大阪城ホールだ!
もうこうなったら世界へ行ってしまえ!

『世界はロック』

「世界は優利香」だ!

まだまだ旅は始まったばかりである。そんな万感の想いを込めてまたもや一万字超えの13370字にも及んでしまった本記事を締めくくりたい。


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*1:昨日の優利香ワンマンの他方向からの視点ではベーシスト坂東茜氏(ばんちゃん)の佇まいがひたすら良かった。 どこかマイペースかつ淡々と飄々としてるようで時折めちゃくちゃエモーショナルに吹っ切れるようなあのベースプレイは只者ではない。 他のライブでもお目にかけると思うので今後とも注目しよう

*2:優利香のオフィシャルホームページ。

artist.aremond.net

*3:AmamiyaMaako(はるかりまあこ)の音楽について論じた過去記事はこちら。

nenometal.hatenablog.com

*4:これがその証拠、この現象が当日30分ほどのライブ中3回ほど起きるw

*5:

*6:岩井俊二監督 映画『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』予告編


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*7:自己の中の他者からの独白。 私の中の他人の声。 ふと演劇集団キャラメルボックス『嵐になるまで待って』を思い出す

*8:こちらの英和辞書サイトを参照した。

ejje.weblio.jp

*9:バーカウンターの一番端から観たんだが、LIVE史上最短距離の演者真横だったんだけど優利香氏の横顔がめっちゃ綺麗だった。もう彫刻レベルでしたという私得情報 w

*10:しかし優利香さんやら、あと番匠谷紗衣さんとかもそうだろうし、昔のあいみょんやら全て女性SSWらは笑いもとりつつ客とのやりとりしっかりできる堂々としたLIVEやれてるのは路上で鍛えたからだろうな。しかも東京以上に何言い出すかわからん難波やら梅田やらの関西ってのがめちゃちゃ貢献してると思うな。

プライドってなんですか?〜『#ミドリムシの姫』&『#ミドリムシの夢』(真田幹也監督)合同レビュー🐛

1.前作との比較🐛
前作『ミドリムシの夢』において「大人の青春群像劇」と言う作風以上に「路上監査員(ミドリムシ)」という職業そのものに更にグッとフォーカスを寄せたストーリーとなっているのがとても印象的だった。

https://midorimushifilm.wixsite.com/hime

それが功をなしてか主人公・野上幸子(河井青葉)をはじめ、同僚として働く様々なミドリムシたちの心象風景を写像することに成功していて、前作以上に登場人物たちへ深く感情移入して物語に入り込めた。めっちゃ地味って訳でもなくてあと今回新人ミドリムシとして出演してた青野竜平さんもラスト付近サプライズを見せてくれるしで前回同様にスカッとする側面もあった。


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個人的意見を言えば前作より今作の方がスルメ度は高いと思う。
昨日観て今日、公開中にもう一回は見に行きたいと考えているほどだから。
とはいえ別に前作が受け入れなかった訳ではなくて、このfilmarksでのレビューでも評価してるし、5000字ぐらいの熱いブログを執筆するぐらいとても面白かった事を断っておきたい。

ただ、前作を見た後のブログ記事内でのレビューで私は以下のように率直な意見を付記している。

「続編があるとすれば、本作以上にもっと二人の"間合い"とか、"会話劇"とかにフォーカスして欲しいなと思ったりする。」

この「二人」とはもちろん今回も出演しているバツイチ男シゲ(ほりかわひろき)と、前作のみの何事もキッチリしなければ気が済まない実家暮らしのマコト(富士たくや)のことだが、そのお二人の魅力的なキャラクターが霞むぐらい目まぐるしいストーリー展開が幾分慌ただしいという印象が少なからずあったと思う。
では今作ではどう変わっていっただろう。

 

2.姫にガチ恋🐛
今作はそんな私の懸念めいたものを見事に払拭している。
とにかく今回のバディ、主人公・野上幸子と超ストイックな元・教師のベテランミドリムシ大高洋夫)が絶妙で観ていて二人の会話シーンは結構テンポがあって心地よかった。これは後から分かるけど、二人どこか性格が似ているのだと思う。本作の根底をなしているのは、彼らの一見真面目そうというか「なんでこの職業選んだの?」というどこか抱える心の闇のようなものが徐々に浮き彫りになっていく構造で、より深く彼女ら登場人物たちへの心象風景をより深く理解し、共感することができたように思う。
.....などと、堅苦しい言葉使ったがとにかく野上さんのこういうどこか影があって芯のある女性のようにも見えてどこか脆い面もあるみたいなキャラクターがとにかく魅力的だったのだ。話は全然違うが安田弘之著『ちひろさん』という漫画の主人公を思い出した。
あの主人公ちひろさんの方が確かに心の闇の部分はとても奥深いんだけど野上幸子の方が身の回りにいそうでいない、いやもしかしたらいるかな、ぐらいの絶妙なリアリティのある女性である。あの妙に理屈っぽいハキハキした感じの口調だとか、妙に私服が我々男でも分かるレベルのオシャレさだったりとか、下ネタ言いがちなジジイにも過剰反応せず軽く受け流したりとか、妙にフワユル・インスタ映えなフェミニン女過ぎず、かと言って真逆に位置する男か女か分からんみたいなツイフェミのガチ勢みたいなああいう感じでもないこの匙加減ってかこの絶妙感が最高なのだ!
あ、告白します。
 私はどうやら、もはや野上さんに「ガチ恋」してしまったようです。
そう言った意味では、本編中「おばさん」などと抜かしたドライバー(仁科貴)や極悪YouTuberどもは断じて許せません☠️
そういや仁科さんは去年公開された某女子高生殺し屋二人組映画では893に散々な目に遭ってたけど今回も結構散々な目に遭ってます(笑)

 

3.舞台挨拶でのトーク🐛
前作・今作いずれも真田幹也監督と出演のほりかわひろきさんの舞台挨拶にも参加しているが、毎回掛け合いも独特の間があって凄くツボなのだ。
その時に早くも第三作目への展望トークもあったがタイトルはどうなるのだろう?
今まで「ゆめ」「ひめ」と「め」で韻を踏んでるので今度もそれで行くのかなど考えたり、そうなったら「"め"で終わる二文字」ってことで『ミドリムシのカメ』『ミドリムシのサメ』『ミドリムシのウメ』ぐらいしか思い浮かばないしで、3作目のタイトルは一体どうなるのか今からもう気になっている。
あと先の理由で、野上幸子さんの主人公、再登板は強く望むところだが、どうなるんだろう。

あと舞台挨拶の後半で真田幹也監督は
「世の中のドラマには医者であるとか刑事であるとか教師であるとか定番の職業を題材としてるんだけれども、このように"路上監査員"などのようなマイナーな職業にに目を向けたものは極めて少ない。こういうニッチな職業に目を向けることによって、むしろそこにしか生まれないドラマが生まれるんじゃないかといつも思っている。」
というような事を仰ってたがその言葉に深く共感できるものがあった。
というか、路上監査員というマイナーな職業にフォーカスしたからこそ、そこから透けて見える人間模様や心象風景など我々の日常生活にも当てはまる、ある種の一般性や共感が生まれるのではないだろうかとすら思うのだ。
「鑑賞後、町のミドリムシ達が皆ヒーローに見えるそんな映画だ」と前作から今作にいたるまでずっと思ったものだが、結局、我々は人生に、そして自分の生業に、自分の愛する人達にプライドを持って生きる者は誰しもヒーローなのかもしれない。
そう、ミドリムシとは彼らだけではない、我々もミドリムシ、だったのだ。

(付記)あ、真田監督、本作ってか前作を見て以来、大阪の街を歩いて路上監査員の方々に俄然注目するようになりましたが、帽子に緑色の制服、そして大体二人組と東京とほぼ同じスタイルだと思います。

再録;「ミドリムシの夢」

nenometal.hatenablog.com

1.夢にまで見た"ミドリムシの夢"

やっとのことで『スペシャルアクターズ』に出演している富士松社長、いやボスこと富士たくや氏が主演している事もあって、以前から観に行きたかった真田幹也監督作品「ミドリムシの夢」が大阪は阪急十三駅から5-6分ぐらいの所にあるインディーズを中心とした映画館「シアターセブン」でも上映される事になり、ようやく観ることができた。*1

よくよく考えれば、『スペシャルアクターズ』が公開された10月18日(金)以後に制作された出演者様の作品を観る事自体は初めての経験だったと言って良い。

孤独のグルメ』とか金スマ上田慎一郎再現ドラマ、とか公開前にってのはちょくちょくあったんだけどね。

 

で、この『ミドリムシの夢』ネタバレ抜きに話の流れをざっというと、

[STORY]

駐車監視員であるちょっと女にだらしないバツイチ男シゲ(ほりかわひろき)と、何事もキッチリしなければ気が済まない実家暮らしのマコト(富士たくや)の凸凹コンビ。*2

彼らはガンガン街に駐禁している車を取り締まりまくっている。プロポーズ成功したカップルだろうが、仕事中の現場作業員だろうが容赦無く...ってもこれはマコトの方だけだけどね。

 東京新宿は、西新宿にて深夜勤務に形態が変わった事をキッカケに次から次へと出くわす、そこで出会った様々な人生模様を絶妙な音楽や主題歌と共にテンポ良くかつコミカルに描く群像劇である。

 

 まずは本作、予告編がホントによくできているので是非観て頂きたい。


映画『ミドリムシの夢』予告編

 

予告編を見ていただいてなんとなく分かる通り、本作のテーマである、「大人になったあなたにはまだ夢があるのか?」という命題へと収束すべく、ミュージシャンになると言う夢を諦めかけた者、落ち目のアイドルとして将来的にどう苦境を乗り越えて行こうか悩んでる者、そして駐車監視員としてどのような夢を抱くべきだろうか、もう不倫はやめて家庭に向き会おう、今後の人生設計はどうしようか、etc...と総じて「現状を変えなければ。。。。!」と願っている主要な登場人物が全速力で駆け抜けていくシーンがあるのだが、このシーンがまるでスポーツかなんかを題材にした青春物語を見たような爽快感に溢れているのだ。ちなみに、予告編で流れているように落ち目のアイドルみうさんの歌う主題歌『ミドリムシの夢』がその駆け抜けるシーンとマッチしてて、主題歌と映画作品の雰囲気がこれほどピッタリとくる作品ってこれ以外探しても滅多にないんじゃんじゃないかって思うくらい。映画見た感じと曲を聞いた感じが全く同じ、というか。

*3

 

ちなみにこの二人以外の主要キャストはこんな感じである... 

 みう(落ち目のアイドル):今村美乃
 八重樫(アイドルのマネージャー):長谷川朝晴
 幸恵(見送りに来た主婦):吉本菜穂子
 翔(田舎へ帰る男):佐野和真
 春日部(主婦のバイト仲間):歌川椎子
 矢花(サラ金屋):戸田昌宏

そして上映後間も無く、真田幹也監督とこの素晴らしきバディの主演の一人であるほりかわひろきさんが登壇して舞台挨拶が全体的に和やかな大阪らしいあったかい雰囲気で行われた。

 中でも撮影裏エピソード、ほりかわさんの「滑舌に難アリではないか疑惑トーク」に関して(笑)、また、「続編はあるのか?それははたまた大阪十三が舞台ってのもアリなのか!?」などの期待以上に踏み込んだ濃くも面白いトークの応酬で、50〜60席ほどあった館内はほぼぎっしり入っていて、ホント舞台挨拶の20分間がアッという間の大爆笑の連続だった。

 ちなみに私はド真前の座席に座ってたんだけど、そこから動画をフルで撮っているので是非ご覧頂きたい。

 この二人のやりとりがもうめっちゃ面白いので。

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『ミドリムシの夢』大阪初日舞台挨拶@シアターセブン 登壇 監督:真田幹也、ほりかわひろき

  中でも、この舞台挨拶の中で個人的にハッとした点は、そうした息の合った大爆笑トークから【本音】が透けて見えた事。ズバリ真田監督からはインディーズ映画を作って東京のみならず、色んな所でプロモーション展開していくことの重要さと大変さ】が吐露され、ほりかわ氏からは良いことでも悪いことでも良い。今、SNSの力は本当に凄いのでどんどん発信していって欲しい」と言うかなり切実な二人の言葉である。そうした面を考慮すると、本作『ミドリムシの夢』においても、ある程度のプラス以上になる興行収入を上げないと、いくら作品の質が良くても続編が作れないのは当然の話なのだろうから。そのためにも是非今後も、東名阪以外の他の地域でもガンガン上映して欲しいと思う。

 監督はしきりにこの駐車監視員(ミドリムシ)なる職業が東京以外に存在しないのではないか、という点を気にしておられたが大阪では駅前とかによく目にすることも多いし、こうしてTVなどでも東京や大阪の様子などが伝えられると思うので地方でも大丈夫だとは思うんだけどね。

 ちなみにミドリムシの夢-returns-』があるとすればメインはキャスト変えずに、ほりかわひろき&富士たくやコンビでやって欲しいなとも思ったりもする。というのも、本作の後半のあるシーンで、この凸凹コンビが人混みに紛れてトボトボ街中を歩く所に、東海道中膝栗毛のヤジさん、キタさん的な、あの凸凹コンビにどこか彼らにしかなし得ない何とも言えない「情緒」が感じられるのだ。*5

 あと、これは偉そうに聞こえたら申し訳ないんだけど、続編があるとすれば、本作以上にもっと二人の"間合い"とか、"会話劇"とかにフォーカスして欲しいなと思ったりする。意外と二人の絡みシーンって卵焼き云々の所しかなかったような気がするので、今回のようにあまり周りの人間模様を入れない方が、きっと、もっと二人の面白い化学反応が生まれると思うからだ。

 ほんと舞台挨拶でも触れてたけどほんとこのポスターの二人には何とも言えない深い味わいがあるんだな。 ↓

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*1:一応公式ホームページなどここであげておく。

www.midorimushinoyume.com

*2:スペアクボスの役柄とはちょっと若い設定なんだろう。同級生が落ち目とは言えアイドルだから28,9~30代前半ぐらいだろうな。となるとボスの年代設定って40後半〜って感じか、あの娘だもんね。

*3:ちなみに物販になかったのだがあれ、CD販売してたら紛れもなく買ったよね。あとパンフレットも欲しかったなぁ、ってここで言ってもしょうがないけど。

*4:ほりかわ氏、前飲みしてたらしくホント滑舌滑らかでしたよ、って初対面だから滑舌悪い時をよく知らないんだけどw

*5:いやいや、ここは舞台挨拶でも触れてる通り『相棒』的な、と言ったほうが良かったかな汗