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映画『#シャーマンの娘』(#井坂優介 監督)レビュー!

1.the Loveless isn’t anything 
 本作を一言で言うと大袈裟ではなく尋常ならざる傑作であると断言したい。


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去年末に本作を観てたら間違いなく2022年ベスト10に入ってたと思うし、逆に言えば新年初めて観る作品だけども【2023年ベスト10入り】決定だと断定しても良いぐらいの作品だった事をも同時に記しておきたい。
それぐらいこの2023年明けて間も無く大手を振って「やった〜!!めちゃくちゃいい作品観た!!!」と言える作品に早々と出会えたことを映画ファンとして喜びたいと思う。
本作のテーマに乗っかるならばたとえ「死んで化けてでも」絶対もう一回は観るだろう、って本レビュー執筆時点で既に2回目の鑑賞予約してるたんだけど笑
話の内容が

恋人さゆりを事故で亡くして悲しみに暮れる健悟は、風変わりな女子高生の海花と出会う。彼女の父である祈祷師の哲史によって健悟はさゆりの霊が見えるようになり、再びさゆりとの同棲生活が始まる。
さゆりは可愛い。幽霊なのにちっとも怖くない。
それどころか料理の作れない健悟に熱心にレシピを伝授し、すっかりさゆりと同じ味を再現できるまでになる。
音楽の夢も、恋人の霊も、こんなにはっきり見えるのに、まるで掴み取ることができない。
そんな歯痒い日々が、それでも彼は幸せだった。
しかしある日、祈祷師の娘海花が健悟のことを好きだと言う、いわゆる三角関係事案が発生。
海花は悪霊だろうが心優しき霊だろうが何でも除霊してしまう悪趣味の持ち主だった。

「恋人と死別したバンドマン志望のフリーターが"幽霊とコミュニケーションが取れる不思議な能力の女の子"が介在する事でその幽霊になった彼女と再会し…」というトーンで始まったもんだからてっきりホラーテイスト込みのコメディかと思って油断してヘラヘラ観てたらもう何のその.....その後、まるでMy Bloody Valentine的なシューゲイズバンドの轟音ノイズの間奏のような予想の1億超の怒涛の展開に度肝抜かれた。 

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急にマイブラを例に持ち出したが別に適当に言った訳ではなくて、むしろ作品全体に直感としてマイブラ的なダイナミズムを本作から感じ取ったのは、本作のサウンドトラックの劇伴なり主題歌・挿入歌を日本のシューゲイズ・バンドの騎手「僕の死んだ彼女」(もうバンド名からしマイブラ好きなんだということがわかってくる。しかしなんちゅうバンド名やw、これを超えるインパクトのあるバンド名は他に知りません。)が担当してる事にも起因してるからかもしれない。

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それぐらい彼らの音楽とシンクロニシティがハンパなかった。個人的に度肝抜いたのが男が、死んだ恋人とは触れ合う事がままならない為に服を脱いだ彼女を見つつ自慰行為をする場面があるのだがその正にしの自慰シーンで轟音サウンドが劇伴として使用されたのは驚いた。本作ほどシューゲイズを映像で解釈し切った作品はないんじゃなかろうか?と思われるMVがこちら。木原渚が金属バットで地面叩きつける絵と本曲のMBVのような轟音との華麗なる融合っぷり。本編でも物凄い場面で轟音が合わさってたし。いやマジであのシーンはコロンブスの卵すぎ。シューゲイズバンドが時に織りなす轟音は劇伴で使われるとしたら号泣したり激怒したりの感情表現、中でも「エモ」な場面で使用されると予想しがちだがこの自慰行為というのは史上初かもしてない。

「エモ」ならぬ「エロ」という正にリビドーとしてのシューゲイザーの轟音を用いたというのは斬新だし、めっちゃハマってる。 


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あと、シーンによっては曲全編丸ごとフルコーラスで「僕の死んだ彼女」の曲をフィーチャーしてる場面もあるし監督は相当このバンドにハマってるのだろう。事実舞台挨拶後井坂優介監督に直接する機会があったが、曲を聴きながら歌詞世界にあてはめながらプロットを完成させたりもしたらしいし。
 本作色々凄いんだけど、本質的に何が凄いって、世の中には「家族愛」だ「死生観」だ「生きる事の大切さ」だみたいなああいう綺麗事にお涙頂戴要素を付加したプロトタイプ映画作品群達が世に蔓延っている訳だけども、ああいう余命がどれぐらいだの何ヶ月だのタイトルや予告編見ただけでも大体内容がうすら透けて見えるじゃん的な作品群に堂々と立ち向かい正面切って「ノー」を突きつけるオルタナティブな姿勢を感じ取れる作品だと言う事。正にパンクであり、オルタナティブ
ほんと名盤『isn’t anything』か『LOVELESS』リリース時のマイブラ的スタンス。
で、そもそもインディーズ映画で尖ってるパンク志向の作品って非常に多いんだけど、単に尖ってるってだけでなく、その尖り方に「センス」を伴うってなると非常に限定されるものだと思う。そんな中、本作「シャーマンの娘」とあと思い浮かべるならば、去年観た衝撃作「Cosmetic DNA」だとか、一昨年観た『黄龍の村』などはその両方の要素を奇跡的に満たした貴重な「尖り散らかしたオルタナティブパンク作」に位置付けられるものだと断言して良い。

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2.Focus
❶最高最強最狂の主人公・赤星海花
そんな既成概念をバサバサ切り倒す役割を担うのは女子高生である主人公・赤星海花(木原渚)なんだけど、彼女の佇まいがいちいち決まっててカッコ良いのだ。ゴールデンレトリバーかなんかの犬のお面を頭に乗せて金属バットを背中のリュックに背負ってタバコ吹かしてるあのサマになってる感はもうそれだけでキャラクターとして決まっている。めちゃくちゃ古いんだけど『男はつらいよ』の車寅次郎レベルのキャラの決まりっぷりと言ったらわかりやすいだろうか?

海花の口角キッとあげて微笑むあの表情で死人を更に地獄の淵の極限にまで追い詰めまくる様が観れば観るほど色濃く記憶にバンクされる。あんだけ叫びまくって練習する癖に静かな狂気を帯びて実践する様に鳥肌が止まない。
てか映画初主演て事実が全く信じられん前世で女優だったんじゃないか?
ノドから血を吐くような壮絶なシャウトで素振りするのにいざ実践となると薄笑いすら浮かべるクールな赤星海花の佇まいにある種のプロ味と凄みを感じたものだった。
木原渚に海花が乗り移ってるのか彼女に海花的資質があるのか分からないがつくづくテーマ同様にスピリチュアル(霊的な意味で)な作品である。

既に二作目の構想があるらしいけどその際は絶対アクキーなど2パターンくらいリリースして欲しい。
ほんとそれぐらい愛すべきキャラクター然としたキャラだと思う。


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❷最高最強最狂のタイトルシーン
あと、本作を再度観ておきたい理由は"タイトル"が出る瞬間今まで見た映画作品の中でも最高峰ってくらい掛け値なく素晴らしいからでもある。タイトルが出る瞬間のカタルシスを感じるのはまず個人的に浮かぶのは上田慎一郎監督『スペシャルアクターズ』であるとか阪元裕吾監督『最強殺し屋伝説国岡』であるがまだあれらに匹敵するぐらいだが、あの瞬間は映画マニアならずとも誰しもが感動するであろう演出効果ではなかろうかと思ったりする。『#デリバリーキラー』は『#シャーマンの娘』とは標的へのベクトルが真逆だけど音楽のシングルとアルバムのような一体感がある。
僅か5分の短編なのにシャーマン以上に目を背けるほど残酷で痛いのだ。逆に赤星海花(#木原渚)の手捌きは卓越して洗練されて実は愛情で溢れてるのねと妙に感心してしまった。

正に本作は第四章まであるのだが第1章の終わりで「生身の彼女を見つけなよ」と言い放った後に『僕の死んだ彼女』によるオリジナル曲『conception for three forms of happiness at the state of existence』の轟音ドラムが鳴り響いて赤星海花に寄り添うようにタイトルが浮き上がるあの瞬間たるや!!!!!!!!!
もうあそこは本当に鳥肌もので円盤などがリリースされた後も時間ない時でもあのシーンだけ接種するぐらいしっかりと目と心に焼き付ける事だろう、もうそれぐらい最高なのだ。
 ほんとシリーズ化、少なくとも第二弾は必須だと思うとか思ってたらパンフレットに第二弾の脚本がごっそり書いてあるではないか。


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3.Future Perspectives
あと本作には「死に向き合い、それを死として認める事によって、生きる事を貴しとなす。」と言う大メジャー作品『鬼滅の刃』にも顕著な死生観をも感じ取れる事も重要だと思う。
その意味で本作はサブカル領域に留まらずメインストリームに位置付けても決して劣らぬ価値観をも有していると断言できるのだ。
主役以外のキャラクターも本当魅力的なのだ。それに関連して、1月13日の上映後に開催された舞台挨拶に於いて舞台挨拶で死んだ母親役小夏いっこさんと通りすがりのカップル役の椿かおりさんが登壇され、本作品における好きなシーンなどを披露して頂いた。どのご一日経ってお二人のキャリアなど検索すると様々な作品・活動などやられてる事を知り作品の素晴らしさを改めて噛み締める。小夏氏演じる山吹芳子さんは2回以上見ると段々とその姿が「見えて」くるような気がするのだからリピートは必須である。
それにしても私が本作を何度でも観たい理由は
「ストーリーが難しかったから」でも
「疑問を明らかにしたい」でもなく
単に「タイトルシーンと赤星海花の佇まいと彼女が放つ台詞が死ぬほどカッコいい」からである。
これぞ真っ向勝負の全世界へ金属バットを突きつけるオルタナティブパンク作であり、本作は絶対に目にしておかねばならない尋常ならざる傑作である、と断定してこの取り止めのない本レビューを締めくくろう。
こうなったら(どうなっても)3回目も絶対観よう、次の上映スケジュールとして名古屋のシネマ・スコーレだそうだが、この「尖り散らかしたオルタナティブパンク作」は私を呼んでいる気がする、そうあの愛なき幽霊達の誘いによって...🔨