NENOMETALIZED

Music, Movie, and Manga sometimes Make Me Moved in a Miraculous way.

伊藤詩織 監督渾身のドキュメンタリー『Black Box Diaries 』レビュー

 

”「沈黙を続ける」ことは私の本意ではない。“
10年前に傷つけられたあの日の真実を暴く、渾身のドキュメンタリーようやく日本でも上映!


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1.First impression
2015年4月3日に起こったという、「国の権力者に近しい位置にいるある大物ジャーナリストによる、ジャーナリスト志望の若い女性に対する性加害事件」の概要は何となく認知してたが、に本作に、その事件に真正面から対峙してようやくBLACKBOXならぬ「パンドラの箱」の中身が明らかになったような驚愕と衝撃の2時間だった。
 件の11年前の「事件」自体の許せざるっぷりとは別に、ここまで2時間色んな感情に揺れつつも食い入るように鑑賞したドキュメンタリーは極めてレアだった。全体の構成が洗練されててそりゃ海外でも評価高いのも頷ける。マイケル・ムーア監督『ボーリング・フォー・コロンバイン』(2002)にも匹敵する秀逸なドキュメンタリーである。
 それぐらい飽きさせない映像展開の巧みさに惹きつけられた。(語弊覚悟で言うと)本作は完膚なきまでにエンターテイメントとしても成立している。この作品に欠陥があるとすれば未だ尚解決していない事ぐらいか。

bbd-movie.jp

 伊藤詩織監督が女性の幸せのあり方に関してコンサバティブな父親に対して思った印象的なフレーズがあった。

“Silence was not the option to be happy.“
沈黙し続けることは幸せになる為の選択肢ではない。

この言葉を信じ今も尚闘い続ける監督の勇気に最高の拍手とエールを送りたい。

この言葉を信じ今も尚闘い続ける監督の勇気に最高の拍手とエールを送りたい。
本作Tジョイ梅田にて鑑賞したが、満員に近い老若男女問わず多くの人々が来場していた。


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2.Second impression
心斎橋Kino Cinema(旧シネマート心斎橋)にて伊藤詩織監督による舞台挨拶付きの2回目。


 初回はひたすら加害者に対する怒りが中心だったが、2度目の今日はなぜヤツがさっさと逮捕されないのかという歪な社会構造の正体が分かった気がした。
そして、あの事件を経て「surviving」から少しづつ「living」への布石を取り戻さんとする 監督に心からの拍手を贈りたいと改めて思った。
さて舞台挨拶での監督だが、映画本編で感情的になるシーンが続くものでアクティブな印象を持っていたが非常に穏やかな語り口で話される落ち着いた大人の女性と言った印象だった。本編中では街頭プロテストやってた高齢の女性に声かけるシーン(「あの、レ〇プされた人?」のオバちゃんのいるシーンね)に接する時のモードに近いというか。観客の感想(これがリピーターばかりでめちゃくちゃハイレベルで共感的なものでばかりだった)にも丁寧に反芻するなど穏やかな舞台挨拶だった。

 ちなみに舞台挨拶後、サイン会なるものがあったが監督が3年ほど前に出したエッセイ集『裸で泳ぐ』にサインを頂いたが「タイトルこれにするかすごく悩んだんですよね〜笑」って事だったが私はこのタイトルこそ希望があると思う。

どこか正に「surviving」から「living」へと着実に近づけている伊藤詩織という女性そのものを象徴していると思うし、それでいてどこかポエティックな響きすら感じるではないか。(まさか本当に泳いでたエピソードがあったのにはびっくりしたがw)
最後にふと本編を観ながら浮かんだマーティン・ルーサーキングJr.の名言で本レビューを締め括りたい。

Almost always, the creative dedicated minority has made the world better.

(ほとんど大抵、創造的でひたむきな少数派こそが世界をより良いものにしてきた)-Martin Luther King, Jr.

Electric Mama(#エレママ)'s masterpiece『Rock N Roll Universe』Review(international version)

【Overview of the Review】

*1
 Electric Mama『Rock N Roll Universe』 includes spiritual 10 tunes that stands for their live and releasing act in 2024.
More than ever, we relatively find the faster BPM tunes just like their live mode. Anyway, we must celebrate that the newest masterpiece is born in this world🪐

 

1.Rock N Roll Universe

"Rock N Roll Universe" is a title and first tune of the Album『Rock N Roll Universe』.

Among them, it’s the phrase that 【wishing I could fly just like the speed of light】represents their live space as it were. The sound trip begins from here🪐!

Then, let me show the MV of "Rock N Roll Universe" , as follows.


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 As the key word “universe” prove that it includes various kinds of meanings form human  race to space, we can also witness in this mv various scenes such as DNA, brain system,&galaxy.

Anyway, this tune's MV seems to me to be very challenghing.*2

 

2.Hyper Vega


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 Succeeding in the flow of the 1st tune, Ele-Mama suggests to us that you should shed a light just like "Hyper Vega" that is the hyper Rock & EDM tune and the lyrics of the song expresses from daily life to the farthest place, or very magnificent song🚀


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 Totally, most of the Ele-Mama’s MVs always make me feel that the originality of each tune always is expressed with space, humans brain process and the elements of retro future existed.Also this MV reminds me of the movie『Ghost in the shell』in its orientarism.


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*3



3. Taxi Driver2 
After the dramatic first 2 tunes, we are attracted by the introduction that express the wonders between forever and illusion and simultaneously, take us to the New wave sound.
Of course, this tunes’ background is based on the movie “Taxi driver”(1976).*4


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4.Space Derringer

As for "Space Derringer", the introduction of this tune seems to me to set the fire on feeling of our impulses as if to get the battle started and noticed this album『Rock N Roll Universe』features situations of “flying” such as【habataku】in this song.

SpaceDerringer(MV)


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This MV also seems to features key words“flying”in that a ballet dancer have a wings as if to fly in the sky.
Besides, we can confirm many TV men that are controlled by dictators just like the novel George Owell’s “1984“.((「スペース・デリンジャー」に関しては、この曲のイントロダクションが、まるで戦いの火付け役のように私たちの衝動に火をつけるように感じます。そして、このアルバム『Rock N Roll Universe』には、この曲で描かれているような【羽ばたく】といった「飛ぶ」というシチュエーションがフィーチャーされていることに気づきました。このMVでも、バレエダンサーがまるで空を飛ぶかのように翼を広げているなど、「飛ぶ」というキーワードが強く現れています。
また、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』のように、独裁者に支配されたテレビマンたちを多く確認することができます。))


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5. Sky Telepathy


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Across the sky a telepathy to you

The phase personally reminds me of the masterpiece movie"interstellar(2014)"in that these works are based on the humanism, and besides, Kenji Zombie’s tender&delicate vocal contribute to that🌌

It was surprising to see that the phrases of『sky telepathy』 have synchronized with the latest Gandam series "GQuuuuuuX".
1.【across the sky】

2.【someone’s voice】and

3.【Zeknova】
can be paraphraed as

1.「another world」
2.「lala’s voice」
3.「Space-time transition」.

*5


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6. MoonDiamond


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This tune’s existence makes me feel this album has one magnificent concept and picture the mental scene that a girl is asking to the moon, saying 

If we understand each other like ever,

I'd be still holding you furthermore

*6

 

7.AstroDancer

 In 2024 June 21th, Electric Mama gave a birth to this tune, titled "Astro Dancer" as if to celebrate Kenji’s birthday.
The moment I come across  the introduction of this tunes, I feel extraordinary catarlsis.
I define this tune as representatives of Ele-Mama.🚀


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*7

 

8.Baby Dont Cry

THis "Baby Dont Cry"‘s existence makes me confirm that this album 『Rock N Roll Universe』must be Ele-Mama’s culmination, since they play this 1st『The Wall』’s tune not only with a tension of self-cover, but rather with a tension of head-on battle. *8


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9.Starship Blues


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"Starship Blues" is the latest ElectricMama sounds that  they perform with the nowadays’ mode, what we should call Electric Rock Blues.

Anyway, the brilliant scattering guitar sounds are so beautiful just like shining star and brilliant human’s eyes👀

*9

 

10. Black Hole Love

The final song of the album, "Black Hole Love" is the very tune that close the 『Rock N Roll Universe』and celebrate the Kenji Zombie’s birthday in 2023.

Let’s get together in the next world

If I define『Distopia Parade』as “praying song”, this will be  “promising song”


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*10

 

【Concluding Remarks】
 Although『Rock N Roll Universe』is such an album as you are brought to the black hole, you can return to the first song, Rockn’ Roll utopia, since you can’t stop playing this album. Anyway, we must celebrate the giving a birth of masterpiece🪐.

*11

 

*1:【レビュー概要】
ElectricMama『Rock N Roll Universe』には、2024年の彼らのライブやリリースを象徴するスピリチュアルな10曲が収録されています。これまで以上に、ライブモードらしい速いBPMの曲が多く見られます。とにかく、最新の傑作が誕生しました🪐

*2:RockNRollUniverseはアルバム『Rock N Roll Universe』のタイトル曲であり、1曲目でもあります。
中でも【光の速さのように空を飛べたらいいのに】というフレーズは、まさに彼らのライブ空間を象徴しています。ここからサウンドトリップが始まります🪐!

キーワードである「宇宙」という言葉が、人類から宇宙まで様々な意味を内包していることを証明するように、このMVではDNA、脳システム、銀河など、様々なシーンを目にすることができます。とにかく、このMVは非常に挑戦的な作品です。

*3:1曲目の流れを引き継ぎながら、エレママは#HyperVegaのように、ハイパーロック&EDMチューンのような光を当てることを示唆しています。歌詞は日常から最果ての地まで、まさに壮大な楽曲です🚀

エレママのMVはどれも、宇宙、人間の脳のプロセス、そしてレトロな未来といった要素が込められたオリジナリティ溢れる楽曲ばかりだと感じます。
また、このMVは映画『攻殻機動隊』のオリエンタリズムを彷彿とさせます。

*4:ドラマチックな最初の2曲の後、永遠と幻想の間の不思議さを表現しながら、ニューウェーブサウンドへと誘うイントロダクションに私たちは惹きつけられます。もちろん、この曲の背景は映画『タクシードライバー』(1976年)に基づいています。

*5:「空を越えて君へテレパシー」この作品は、ヒューマニズムを基盤とした作品群という点で、個人的には傑作映画『インターステラー』を彷彿とさせます。さらに、ケンジ・ゾンビの優しく繊細な歌声も、その魅力をさらに引き立てています🌌『sky telepathy』の世界観が驚くほど「ガンダム #GQuuuuuuX」のそれと符号している。【空の向こう側】【誰かの声】とは「あっち側の世界」「ララァの声」と各々リンクするし次元転移を意味する「ゼクノヴァ」のゼクは漢字で「是空」、空を越えての交信を現す。

*6:この曲の存在は、このアルバムに壮大なコンセプトがあると感じさせ、少女が月に問いかける心象風景を思い起こさせます。

もし私たちが今までのようにお互いを理解し合えたら、私はこれからもずっとあなたを抱きしめ続けるでしょう。

*7:2024年6月21日、ElectricMamaはこの曲、AstroDancerを、まるでKenjiの誕生日を祝うかのように誕生させました。
この曲のイントロダクションに出会った瞬間、私はとてつもないカタルシスを感じます。
私はこの曲をEle-Mamaを代表する曲だと定義しています。🚀

*8:『BabyDontCry』の存在によって、このアルバム『Rock N Roll Universe』がエレママの集大成であることは確信できた。1st『The Wall』収録曲を、セルフカバーという緊張感ではなく、真正面から戦いを挑むような緊張感を持ってプレイしているからだ。

*9:StarshipBluesは、ElectricMamaが今風の、いわばエレクトリック・ロック・ブルースで演奏する最新のサウンドです。とにかく、きらきらと散りばめられたギターの音は、まるで輝く星や輝く人間の瞳のように、とても美しいです👀

*10:BlackHoleLoveは、まさに『ロックンロール・ユニバース』の幕を閉じ、2023年のケンジ・ゾンビの誕生日を祝う曲だ。【来世で一緒に集まろう】
『Distopia Parade』を「祈りの歌」と定義するなら、これは「希望の歌」となるだろう。

*11:【おわりに】
『Rock N Roll Universe』はまるでブラックホールに連れ去られるようなアルバムですが、聴き続けると止まらなくなるので、1曲目の「Rockn’ Roll utopia」に戻って聴くことができます。とにかく、傑作の誕生を祝福しなければなりません🪐

日常を鳴らすパンクロックがここに〜WtB(ex Who the Bitch)アルバム『years』全曲レビュー

 

Overview〜パンクとは

2025年の夏、映画『スーパーマン』が公開された。鑑賞前に予告編を見た時点で、これがまたバットマンがらみでもジャスティス・リーグがらみのあのどこか病んだような印象のあったダークネスなスーパーマンでもない生粋のあの「正義の味方、スーパーマン」を主人公とした作品である事に真っ向勝負感があった。これは期待できる、と思ったものだ。でも、正直不安もあって、(本作を輩出したDCUのライバルとも言える)あのMCUを代表する『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』などのジェームズ・ガン監督作という事で過剰なギャグや、メタ視点入った(個人的に苦手なMCU特有の)ワチャワチャなノリを懸念してたんだけど全くそんな事もなかった。

ただただ純粋に物凄く面白い作品だった。
人間クラーク・ケントとして、万人のヒーローであるスーパーマンとして、はたまた移民としての扱いを受ける理不尽に苦しむ男として、これら3つの狭間に揺れる彼のリアルな苦悩も出しつつもまるで70年代〜80年代に国内外問わずに顕著だった純粋に正義を貫くヒーローものが活躍するエンタメに振り切るバランスが絶妙な作品だったといえよう。

そして特筆すべき点は本作ではこういう台詞が存在するのだ。恋人ロイスとの会話のシーンで「あなたは人を信じすぎる。」と言われて、「いや、でもそれって僕がパンクなんだってことだよ。」と返すシーンがあるのだ。*1「こんな酷い世の中では優しいことこそがパンクであり、世界への反抗なのだ」と。


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このセリフは結構な衝撃だった。だって「優しさ=パンク」というこの定義。「パンク」とは過去のレジェンド達から考えると本来世の中へ「ノー」を中指を突きつける反逆・反骨精神の具現化のようではなかったか。むしろクラーク・ケントの言うところの「人を信じることに根ざした優しさ」とは全く逆のベクトルだったはずだ。でも逆にそこに納得した私がいたのも事実だ。それは、確かに個人的にも今の世の中において邪悪さこそが正義という嫌な風潮を感じることが度々感じたりするから。その証拠に、思想家であり社会学者である内田樹氏が言うところの「デモクラシー(demo(民衆の)cracy(政治))」ならぬ「イービル・クラシー(evil (邪悪な)cracy(政治))」で人を惹きつけていく政治家やインフルエンサーらがここ最近圧倒的に増殖していることが挙げられる。だからこそ僕らは日々、そのような世間の理不尽や矛盾や葛藤や衝動を目の前に悔しさや怒りで拳握りしめる瞬間があるのだ。権力への怒りではなく正しくありたいと思うのに立ちはだかる「イービル・クラシー」に対する怒り。ここにシンクロニシティを見る。『スーパーマン』は正に現代の風潮というフィルムが写像した必然のヒーローだったのだ。

 そんなことを思っていた今日この頃、そんな命題に答えるような日常を鳴らす音像に出会った。それが今回の主題であるWtB(ex Who the Bitch)『years』である。「優しさこそがパンクなのだ」というクラーク・ケントの言葉と、そして力強くも日常を鳴らす『years』の音像とがシンクロするのだ。

 果たしてWtBは今のパンクを鳴らしているのだろうか?

そこで、本記事ではそんな命題を検証するために『years』の楽曲全10曲、関連曲を含めて一曲ずつレビューしていこうと思う。

*2

1.月光🌕


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正にキャリア20周年の集大成であり新生WtBのデビューアルバムにふさわしい一曲目を飾るにふさわしい勢いのある爆裂ロックチューン。冒頭、揺るぎなく力強さに溢れたコーラスが聴こえた瞬間、紛れもなくWho the Bitch時代の『Letter』『Colors』に匹敵する新たなアンセム爆誕を確信した。 

頭上には月光が降り注ぐあの日の様にまた

このフレーズに包まれたメロディが狂おしいほど美しい。

 

2. Image

1曲目の勢いをそのままバトンタッチするような2曲目『Image』である。


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いつかまた飛び立つその瞬間を

個人的にWtBの音楽を構成するキーワードに「祈り」という概念が少なからず存在すると思う。叶わぬ想いがあるのなら届かぬ夢を見続ければ良い、そんなロマンティシズムにも似た祈り。かつての名曲『Hello, again』にも共時するような世界観が本曲にはある。


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3.おにぎり🍙

次はまずタイトルにある種のインパクトを覚える3曲目『おにぎり』である。


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WtB名義になって以前に増して表現がより自由に、よりフラットに広がっている様に思う。それはビジュアルイメージ含め突き抜けているように感じる。そんな今のバンドの状態を象徴するのが本曲だと思う。ここで描かれるのはツアー中のワンシーンから写像される普遍的な家族愛。

正に広い意味でのラブソングだ。


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Who the Bitch時代からのソリッドなパンクロックスタイルとは一線を画し、フラットに日常を描い歌詞がスッと心に溶け落ちる。しかしノスタルジックにとどまらず「実家アンセム」としてカッコよく鳴らす所が20年戦士としての本バンドならではの境地だと思う。共感者がいるかどうかは全くわからないが、個人的ツボは2:07〜辺りのボーカル・ehi氏の横顔と髪の跳ね具合の絶妙なバランス感。これです。私はここにロック魂やらパンクスピリットやらオルタナティブ精神を感じたりして。

 

4. node

次は4曲目、再びロックモードにシフトする『node』である。


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狙いを定めて走った時から

ふと本フレーズが耳に入った瞬間に『的』というコロナ禍という暗黒時代「躊躇うな不器用でも良いんだ」とガムシャラに突き進む事を志向していたあの曲が浮かぶ。あの頃繋いできた点と点が線となり、やがてブレない軸と化したのだ。


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*3

 

5. yardbirds 🦅
序盤の「攻め」モードから一転じっくり聴かせる「泣きビッチ」な5曲目。


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追憶の彼方にある「あの頃」を描く事で20年間飛翔を続けたバンドそのものを回想しているような。ふとこの郷愁的なイントロを聴くとoasis『whatever』を繋げて聴きたい衝動に駆られてしまう。


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WtBは、テンポ早い曲よりもスローな曲におけるパフォーマンスの方がむしろガムシャラに突き進む感が醸し出される瞬間があってそこが私的にツボだったりする。『赤いレモンティー』然り『oblivion 』然り「泣きビッチ」系統の曲は全てそういう印象を持っている。そして本曲も例外ではない。悲しみで憎しみでもなく心の底から突き上がるような感情そのもののような涙が溢れるものだ。

 

6.トリコロール🇫🇷

次は後半戦の6曲目『トリコロール』である。


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青い海 白い霧 赤い夕陽

正にトリコロール。思えばWtB楽曲は時折色がモチーフとして音像化されてきた。「赤いレモンティー」「青い舟」そして「colors」などが挙げられよう。

でもそれは解釈を色彩で固定するのではなく自由なのだと思う。例え色が見えなくても音楽には色がある。

そして以下のフレーズも忘れてはなるまい。

I'll be there I'll be there I'll be there

きっとずっと旅の途中

正にこの目まぐるしく変化していくミュージックシーンに残り続けることを希求するような一節である。トリコロールとはehi、nao、mieという三人のメンバーであり、彼女らの放つ音像であり、WtBとライブハウス、そしてオーディエンス、という3つの要素をも示唆しているのかもしれない。


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7. place

シンプルながらとても力強いフレーズが印象的な7曲目の『place』だ。

円陣組んで重ねてきた手

ステージから放つよ、未来

正にここにどストレートなまでにLIVEバンドとしてのスタンスをマニフェストした、WtBがWtBたり得るスタンスを音像化したパンクが鳴っていると言って良い。そしてこのタイトルである『place』は間違いなく彼女らの主戦場であるライブハウスそのものであるのと同時にもっと広い意味での心の居場所をも含意するのだろう。本曲はそんなことをはっきり明示してくれる。

 

8. 季節外れの桜 🌸

いよいよ終盤戦、ライブにおけるクライマックス性をも感じる8曲目だ。


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自分らしく咲き誇れ

諦めてないだろう

このフレーズの中に正に自らに言い聞かせ、他者に問いかけるようなバンドアイデンティティが音像化されている。季節外れにひっそりと咲く桜の美しさにこそ尊さだとか強さがある。正に世の中に星の数ほど現存するインディーズ・バンドを代表するような曲だ。そして、因みにふと思い出すのがあの世界のエンターテイナーであるウォルト・ディズニーが放った以下の名言ともシンクロする。

The flower that blooms in adversity is the rarest and the most beautiful of all. 
(逆境の中で咲く花こそが最も貴重でかつ美しい)

ーWalt Disney(ウォルト・ディズニー、1901 -1966)

正に世界のエンタメ精神とWtBがリンクした瞬間でもある。

 

9.tonight

8曲目の勢いをさながら継承して9曲目である。


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煌めく街の灯火が

 tonight tonight

今夜も眠りにつく

正に本曲こそがWtB名義以降の「最高傑作」と呼称しても大袈裟ではあるまいどえらい名曲である。バンドダイナミズムとWtB特有のメロディアスさ、そしてまるで素晴らしいliveを観た帰り道のようなポジティヴィティ溢れる歌詞とが絶妙に調和を成している。

私はこの曲にこそWtBの音楽における強さに根差した「優しさ」をも感じたりする。3ピースから織りなすバンドサウンド写像するのは日常を鳴らすパンクロックだ。それは彼女らの日常であり、オーディエンスの日常であり、まだ見ぬ未来のオーディエンス達への日常でもあり、WtBの描く音像はどこまでも人を信じる事をやまずどこまでも自由に広がってゆく光さす曲だ。ここで種を少し明かすと私が今回のアルバムに『スーパーマン』とのシンクロを感じたのは紛れもなくこの曲である。

 

10.years🎸🥁

そして10曲目、アルバム最終曲を飾るのはタイトル曲でもある『years』である。


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選んできた道は間違いじゃない

アルバムラスト曲でありながら何かの始まりをも示唆する力強いフレーズ。どこか第二期Who the Bitchのライブ定番曲『zero』に対してのセルフアンサーでもあるような印象を受けた。そしてタイトルは「今までの二十年間の年月」と「これから重ねていくであろう年月」とのダブル・ミーニングを含意するのだろう。更に以下の一節にも注目したい。

刻んでいけ

I go, I go, I go

6曲目『トリコロール』における「I’ll be there」というフレーズとどこかしらリンクしていくような感覚を覚える。

 

Concluding Remarks〜『years』はパンクロックなのか?

さてここまでWho the Bitch名義から続く20年の集大成でもあると同時にWtBとしてのデビューアルバムとしても聴けるエヴァーグリーンな名盤であるものとして印象的なフレーズ、過去曲などを踏まえ一曲づつ論じてきた。個人的にチリヌルヲワカチバユウスケoasisなどの本格的なロック愛聴者だけでなく、純粋にポップスリスナーにおいても心の琴線に触れる何かがあると思う。


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そして本記事を執筆するきっかけとなった「パンク性」とは何かについて考察したい。こうしてアルバム全曲聴いてみてもわかる通りここで描かれているのは自らのバンドヒストリー「今まで」を振り返るだけでなく、がむしゃらに突き進むこれから「これから」をも盛り込んだ歌詞の曲が大半を占めていることがわかる。少しここは振り返ってWtBにおけるバンド観を振り返る必要があるだろう。

先ほど触れたアルバム4曲目『node』にはこういうフレーズが存在する。

それぞれが軸として光放つ

ここに私はWtBのバンド観を見る。そしてこの「それぞれ」というのは別にバンドメンバーに限定したそれではない。私は以前コロナ禍時代に開催されたWho the Bitchの『ビッチフェス』配信ライブ全般を通じて、以下のバンドとライブ、ライブハウス、そしてそこに集いしオーディエンスに関する記事を書きバンド観について以下のように結論づけている。

nenometal.hatenablog.com

「band」と一口に言っても必ずしも我々が常日頃からギター・ベース・ドラムなどのいわゆる楽器や音楽的センスに秀でた集団だけを指すのではないことが分かる。例えば、あるバンドがライブをするということになれば、そこに集いし【音楽に魅せられ、熱狂する者】たち全てが広い意味で「band」という風に解釈できるのではないだろうか。 

そう、この「光放つ軸」とはここでいうバンドメンバー、ライブハウス、そしてオーディエンスとが構築するトリコロールを構成するnodeではないだろうかと思う。正にこの3つの信頼関係のもとで構築される真っ向勝負なバンド観。そして、ここに冒頭の章で紹介した『スーパーマン』のある場面が想起されるのだ。

ロイス「あなたは人を信じすぎるのよ。」

ケント「いや、でもそれって僕がパンクなんだってことだよ。」

この台詞を鑑みて、主人公クラーク・ケントのいう所のパンクが正しいものだとすると従来の世の中へ「ノー」を中指を突きつける反逆・反骨精神の具現化のような「パンク」は死んだ、とさえ思える。少し具体例をあげて考えてみよう。今現在ライダースだのクロムハーツだの黒スキニーだのDr.マーチンだので全武装してあとオプションとしてモヒカンヘアーだったり、中指を突きつけている連中のどこに「生きたパンクスピリット」があるのだろうか。そして度々話題に上がる「ダイブ・モッシュ」肯定論もしかり。

*4

少なくとも私はそこには半世紀前の様式美にすがりついてるだけの「Conservativeness(コンサバティブネス、保守的状態)」しか感じない。だからこそ「優しさこそがパンクなのだ」というクラーク・ケントの言葉にこそ説得性を持つのだ。調子乗ってもっと言ってやろうか。最近特に思ってるがLIVE文脈で真の意味での「熱狂」は死んだと思う。中高年層の人間で塗り固められたフロアでの所謂オールドロックで起こる熱狂じみたアクションは「こういうの好きでしょ?」的なショーに過ぎないものが非常に多い。かといって方や若年層で塗り固められたワチャ系LIVEでは革命が起こってる訳でもなくて、お行儀の良い「内輪ノリ」が大半だ。パンクやロックだけではない。もはやLIVE自体が死んでいるとすら思う。そしてそこに力強くも現状を受け入れ、時には挫折しながらも前を進もうとする、そんなバンドヒストリーの中での日常を鳴らすサウンドトラックのような『years』の音像とがシンクロするのだ。そんな、世界へ広がっていくような10曲の魂はひたすらに、正に空を飛び回るスーパーマンのように自由で力強く、そして優しい。この彼女らがキャリア20周年の集大成のようであり、はたまた改名後のデビューアルバムとも言える本盤は以下のようにマニフェストをしてくれる。「その怒りの拳を空に高く翳せ。そして、この音に耳を澄ませ。もっと声をあげよ。」と。

 

 紛れもなくWtBは「今」のパンクを鳴らしているのだ。

*1:

ja.wikipedia.org

*2:Who the Bitch時代の記事はこちら。

nenometal.hatenablog.com

*3:余談だが因みに本曲、イントロからAメロにかけて個人的にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT時代のチバユウスケを感じたりする。

*4:それに関連して最近、著者はダイブ・モッシュに関してこのような元も子もねえ論をポストしている。

To Rock & Pop Music Enthusiasts: 映画『#ボールドアズ君(The Bold As You)』English review

1. overview

『ボールド アズ、君(Enlightitle;bold as you)is a Japanese adolescence movie whose main cast Tama-chan is searching for her own way of living a full life by playing her favorite guitar as well as which devoted to those who are crazy for rock&pop music all around the world.*1


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As for the main cast, Tama-chan(伊集院香織), although she used to be a lonely geek in her high school days, she is gradually getting to notice an important thing that she wants to be like charismatic artist on the live stage.
Exactly, she must be saved by the music.
 


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In this movie, Tama-chan’s longed-for artist is Heishi Yuiko who’s the main vocalist of Kage-razu(翳ラズ、カゲラズ) that can play both rockn’ roll dynamism and fragile&sensitive mental landscape that is peculiar to youth just like her.
This is the theme song of『ボールドアズ、君』as follows.


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This is a live version of Kage-razu’s “Bold as you” in the live house Big Cat in Shinsaibashi where the most of live scenes of this movie were shot two years ago based on the real lives.

 

2. various musicians

Thus, we can enjoy the real live concert’s dynamism by watching this movie.In this movie, in addition to theme song, we should pay attention to various kinds of bands that they usually perform around the live house in Shinsaibashi.
Especially, Sumurooth(スムルース)‘s 『美しい世界
(beautiful world) shed a light on Tama-chan’s mental scene.Moreover, P-90 is indispensable band in this movie, the vocalist of which is Suzuki Hiromu who is a solo singer but has powerful vocal and aura as rockn’ roll star.


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ボールドアズ君 is such a movie as rockn’ll roll band spirits, dynamism, and Romanism’s been still alive until now.Another important band is Ashigaru-youth(アシガルユース) that expresses the delicate, positive&nostalgic world with dynamic rock sounds.  


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This song, 『青い自転車』(blue bicycle) is not only their killer tune of live, but also bring the positive light to this movie, ボールドアズ君.The reason why we can enjoy such a rockn’ roll dynamism in ボールドアズ君 is the director of this movie is an active musician whose name is Takashi Okamoto(岡本祟), who can write various kinds of music, play the guitar wildly& direct the enthusiastic live space in live houses.Main cast Tama-chan(伊集院香織)is a vocalist&guitarist of the band(M1LKYWAY, みるきーうぇい).


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 So, this story has some overlapping points where she used to be introspective in her teenage but tried to search for hopes in listening&playing music.
『ボールドアズ君』might be her documentary. In『ボールドアズ君』, we can come across a guitar-battle scene&surprisingly, this event is a real live event that had really held in a live house (Kobe D×Q) where about 80~100 audiences are enthusiastic for witnessing they playing guitar.

 

3. The linkage between music&movies

In this movie, we enjoy such an enthusiasm.『ボールドアズ君 isn’t just a adolescence&music movie, but the movie that we can experience dynamism of live music mainly based on indies in Japan, such as 翳ラズ, p90, スムルース. In this context, we can witness continuations of movie every day in many live houses until now.

 Before watching『ボールドアズ君』, you might want to try 『ディスコーズハイ』(discords high)that is Okamoto director’s previous masterpiece that has common with this movie in that a woman find a favorite thing (music)by promoting a minor band, and p90&後藤まりこ are also appearing.


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Let's turn to the past. On November 23th in 2023, it was for the first time that Director Okamoto presented a concept of making a movie based on indies rock band& mini theater recognize by making the use of cloud founding.

 Exactly it was the moment that we know beginning the project of『ボールドアズ君』.

Director Okamoto once said “There is an unnecessary border line between live house &mini theater in the entertainment society, but I wanna destruct this border."

Clearly, this statement will be necessary core of 『ボールドアズ君』&any other works even if they are music or movie.Such a borderless-idea between music&movie reflects the casting in Okamoto works.
The representative example is potesara-chan(ぽてさらちゃん) who is a solo singer as well as an actor&doesn’t cling to genre of entertainment. Thus, she plays an important role in 『ボールドアズ君』.


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Okamoto’s attitudes suddenly spread to Tokyo, where event space live bar-pega(バーペガ) understand the attitude& the owner 古郡翔馬 had kindly consent with decorating the poster of 『ボールドアズ君』 on the wall.

 Because he also knows there’re no borderline between music&movie. The other music bar that is understanding Okamoto’s borderless-between-music&movie is TAKAITOW located in Kayanacho, whose owner, Namita Sui is not only a musician, but also taking music video for indies artists. In that respect, they seem to have synchronicity.

The thoughts that there’s borderless between LIVE house&Mini theater is clearly reflected by the Okamoto’s(コココロ) live.

 Most of the audiences must’ve felt as if to come across the ending of ディスコーズハイ and surely 『ボールドアズ君』 because the essence is almost the same.Concretely let me show you an incident; on June 2024 live in Teradacho, Director Okamoto lent his guitar for Ishikawa(who’s a member of P-90)instead of broken one.
Surprisingly, watching『ボールドアズ君』 may make you realize the same incident happened!

What a miraculous this is!

 Otherwise, this isn’t a miracle but rather a dairy event in that such a miraculous incident’s  happening everyday in each live houses, where you can find not only kagerazu-like band but also tamachan-like person who’s searching for identification. 
 『ボールドアズ君』 is such a movie. In this live on April 2024,  Director Okamoto fell down as if to be crazy playing their standard tune“『じゃあねさよなら』(see you again), which
made us feel his rock &entertainment spirit.


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 I‘d like all the people who like ボールドアズ君 to watch his live. We should note that #ボールドアズ君 is NEVER a kind of  movie that only mania can enjoy within inner circles. As an evidence, in 2024 winter, digest video of this movie was on air at the center of Osaka(道頓堀). 


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This is a popular movie everyone enjoys!In an event related to 『ボールドアズ君』 , we witnessed 鈴木大夢(P-90) acting with a solo acoustic style.The most impress tune is “The moment(瞬間)”, among which he sung loudly “music is just the art of the moment”, which can be said to every entertainment.


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*1:日本語訳

1. 概要

『ボールド アズ、君』は、大好きなギターを弾きながら、自分らしい生き方を模索する主人公のたまちゃんを描いた日本の青春映画です。世界中のロック&ポップミュージックに熱狂する人々に捧げる作品です。

主人公のたまちゃんは、高校時代は孤独なオタクでしたが、徐々に大切なことに気づき始め、ライブステージでカリスマ性のあるアーティストになりたいという気持ちが芽生えていきます。

まさに、彼女は音楽に救われているのです。

本作でたまちゃんが憧れるアーティストは、ロックンロールのダイナミズムと、彼女と同じように青春特有の繊細で脆い心情を両立させる、カゲラズのメインボーカリスト、平石唯子です。
『ボールドアズ、君』の主題歌は以下です。

これは、2年前に心斎橋のライブハウスBig Catで行われた、影らずの「Bold as you」のライブバージョンです。映画のライブシーンの大部分は、このライブハウスで撮影されました。

2. 多彩なミュージシャン

このように、この映画を観ることで、実際のライブコンサートのダイナミズムを堪能することができます。映画では、主題歌だけでなく、心斎橋のライブハウスで普段演奏している様々なバンドにも注目してください。
特に、スムルースの『美しい世界』は、たまちゃんの心象風景を鮮やかに浮かび上がらせました。さらに、この映画には欠かせないバンド、P-90。そのボーカルを務めるのは、ソロシンガーでありながら、ロックンロールスターとしての力強い歌声とオーラを持つ鈴木ヒロムです。

また、この映画には欠かせないバンド「P-90」のボーカルを務めるのは、ソロシンガーでありながらロックンロールスターとしてのパワフルなボーカルとオーラを持つ鈴木ヒロム。『#ボールドアズ君』は、ロックンロールバンドのスピリットとダイナミズム、そしてロマンスが今も息づいている、そんな映画です。

この曲『青い自転車』は、ライブのキラーチューンであるだけでなく、この映画『ボールドアズ君』に明るい光をもたらしている。『ボールドアズ君』でこれほどのロックンロールのダイナミズムを楽しめるのは、この映画の監督を務めた岡本隆史という、多彩な楽曲を書き、ワイルドにギターを弾きこなし、ライブハウスの熱狂的なライブ空間を演出する現役ミュージシャンである岡本祟のおかげである。たまちゃん(伊集院香織)はバンド(M1LKYWAY、みるきーうぇい)のボーカル&ギタリストです。

このように、この物語は、10代の頃は内省的だった彼女が、音楽を聴き、演奏することで希望を見出そうとしていた点と重なる部分がある。

『ボールドアズ君』は、彼女のドキュメンタリーと言えるかもしれない。『ボールドアズ君』では、ギターバトルのシーンが登場するが、なんとこのイベントは、神戸D×Qというライブハウスで実際に行われたもの。80人から100人ほどの観客が、彼女たちのギター演奏に熱狂している。

3. 音楽と映画の繋がり

この映画では、そんな熱狂を味わうことができる。『ボールドアズ君』は、単なる青春・音楽映画ではなく、翳ラズ、p90、スムルースといった日本のインディーズを中心としたライブミュージックのダイナミズムを体感できる映画だ。こうした文脈の中で、私たちは現在に至るまで、多くのライブハウスで、この映画の続きを日々目にすることができるのだ。

『ボールドアズ君』を観る前に、岡本監督の前作『ディスコーズハイ』を観てみるのも良いかもしれません。本作と共通するのは、マイナーバンドのプロモーションを通して好きなもの(音楽)を見つける女性を描いた作品で、p90&後藤まりこも出演しています。

さて、少し遡ってみましょう。2023年11月23日、岡本監督はクラウドファンディングを活用し、インディーズロックバンドとミニシアターを題材にした映画を制作するという構想を初めて提示しました。

まさにその時、『ボールドアズ君』のプロジェクトが始まったと感じました。

岡本監督はかつて、「エンターテイメントの世界にはライブハウスとミニシアターの間に不必要な境界線があるが、僕はその境界線を壊したい」と語っていました。

岡本監督はかつてこう語っていた。「エンタメ社会において、ライブハウスとミニシアターの間には不必要な境界線がある。でも、僕はその境界線を壊したいんだ。」

この言葉は、#ボールドアズ君をはじめ、音楽作品でも映画作品でも、あらゆる作品の核となるだろう。

岡本の姿勢は瞬く間に東京へと広がり、イベントスペース「バーペガ」もその姿勢に共感し、オーナーの古郡翔馬は『ボールドアズ君』のポスターを壁に飾ることに快諾してくれた。

彼もまた、音楽と映画の間に境界線がないことを理解しているからだ。音楽と映画の境界線がないという岡本の考えを理解しているもう一つの音楽バーが茅野町にあるTAKAITOW。オーナーの浪田翠は、ミュージシャンであると同時に、インディーズアーティストのミュージックビデオも手掛けている。その点、両者にはシンクロニシティがあるようだ。

ライブハウスとミニシアターの境界線がないという思想は、オカモト(ココココロ)さんのライブ。本質はほぼ同じなので、多くの観客はディスコーズハイのエンディングときっと『ボールドアズ君』に出会ったように感じたはずだ。具体的に事件を紹介しよう。 2024年6月の寺田町でのライブでは、岡本監督が壊れたギターの代わりに石川(P-90のメンバー)にギターを貸してくれたのだ。

Electric Mama(#エレママ)最新にして最高傑作『Rock N Roll Universe』爆裂Review!!〜エレママにとってのブルースとは?

Electric Mama(#エレママ)最新にして最高傑作『Rock N Roll Universe』爆裂Review!!

〜エレママにとってのブルースとは?

Table Of contents

0.Preview of the Review

1. 『Rock N Roll Universe』〜Overview~

1-1.Rock N Roll Universe

1-2.Hyper Vega

1-3.Taxi Driver2 

1-4.Space Derringer

1-5.Sky Telepathy

1-6.Moon Diamond

1-7. Astro Dancer 

1-8.Baby Don'tCry

1-9.Starship Blues

1-10.Black Hole Love

Appendix.Emperor Of Sunrise

2.エレママにとってのブルース、そしてレジェンドとは?

 

0.Preview of the Review


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アメリカ合衆国ミシシッピ州ヴィックスバーグ生まれの主にブルースシンガーであるウィリー・ディクソンはこう言った。

ブルースはルーツさ

それ以外はみんなその果実(フルーツ)さ

ブルース(ズ)」を知るというのは、人の気持ちや考え方を知るということなのかもしれない。人の苦境に我が身を置き換えそうなった時の気持ちや考え方を理解する。ブルースはロックの重要なルーツの一つであり、ロックの歴史におけるブルースの影響は計り知れないものがあるブルースはロックの音楽的基盤を形成するだけでなく、ロックの精神やスタイルにも大きな影響を与えるものだ。そしてこれらのつながりは、音楽的な影響だけではなく、歴史的・社会的な背景にも深く連動するものだ。ブルースは、アメリカの黒人社会の文化を反映した音楽であり、ロックは、その文化を継承し、発展させてきた音楽である。ブルースとロックの歴史は、アメリカの音楽史における重要な部分であり、その影響は現在も続いているといえよう。そんな事を思って自身のアップルミュージックを使って「ブルース」を巡る旅をしていたら目を惹くアルバムに出会った。あのブルースのレジェンド、Muddy Watersが1968年に産んだアルバム『Electric Mud』である。これは古くからのブルースファンから賛否両論を呼びつつも若いヒップホップファンからは熱狂的に受け入れられたという点に俄然注目してしまう。この、ブルース→ロックの流れ、そして本アルバムに関しては以下のブログ記事において当時の状況が明確に記されている。

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『Electric Mud』はサイケデリック時代を反映した実験的なブルーズで、発売当時は酷評された。マディ・ウォーターズが作ったアルバムと思えなかったからだ。だがそれは間違いだった。ヒップホップ世代の若者たちには革新的に聴こえたのだ。

正にここにブルースがロックの根源たりえる所以があるのではないだろうか。ブルースといえどもスタイルを巧妙に模倣するのように継承するのではなく時代の空気感を取り入れ、リアルの音を鳴らし、未来への言霊として羽ばたかせる為の音楽である

正にこの時代以降の【ロック→プログレッシブ・ロック→パンク→ニューウェーブオルタナティブ...】と言った具合に次々に展開されてきたアティテュードが既にマディ・ウォーターズという古典的とも言えるブルースの英雄によって既に提示されていたのだ。

 そして本題に行こう。この偶然にも彼のこのブルースという固定概念をぶち抜いたアルバムのタイトル『Electric Mud』にも似たバンド名が日本のインディーズシーンに存在する。ズバリ、【Electric Mama】(以下、エレママ)である。そして更なる偶然は彼らの現時点で最新作である『rock 'n' roll universe 』に関して個人的に強く感じる要素は【ブルース】だったので私の驚きは二重になった。*1ここで注記しておくと収録曲の中にはそういうブルース性を示唆しているものもあったりとかいうことは抜きにしてもコアレベルでそれを感じるのだ。そこで本記事では『Electric Mud』と【Electric Mama】、「ブルース」と「ロック」この偶然にも貼られた伏線のようなキーワードを基にこの『rock 'n' roll universe 』の収録曲をレビューしたいと思う。


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1. 『Rock N Roll Universe』〜Overview~

このアルバムは2024年12月20日にリリースされた。とはいえそれ以前も含めて数多くのLIVEと共に駆け抜けたエレママの20年を象徴したかのような正に10もの魂の結晶がここに存在するものといえよう。従来の音源以上にBPM早めのクールなEDMロックンロールナンバーが続き、だからこそ8-9曲目に連続するロックバラードである『Baby Don't Cry』、それに続くエレクトリック・ブルースStarship Blues』の展開がとてもエモい。

このようにクールもエモも熱狂も全てがここにある感覚はLIVEモードでのエレママをが炸裂した傑作であるともいえよう。

以前X(旧Twitter)にてこの盤を聴けば「少なくとも10回は宇宙にぶっ飛べます」と記述したことがあるがその理由を述べると、ラスト曲『Black Hole Love』でブラックホールにブッ飛ばされるのだ。また一曲目に戻ればいい。一度聴き終わっても回帰的(recursive)な流れになってるのでリピートが止まらないのだ。
そこにあるのは宇宙の普遍とロックとELECTRICMAMAと....わっしょい。『Rock N Roll Universe』はそういうアルバムである。

そして次にこのアルバムのアートワークにも注目したい。あの土星のようでもあり人間の瞳のようでもあり、SNS上におけるXのGrokのマークのようでもあり、その全てのようでもあり或いは全く未知のものでもあるようだ。
 正に生活のワークスペースを彩る音楽が宇宙(space)を感じる世界観たり得る名盤である事を示唆している。


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1-1.Rock N Roll Universe

『Rock N Roll Universe』の表題曲であり一曲目を飾るハイパーロックンロールチューンである。
中でも

感覚が研ぎ澄まされてく 光の速さで翔べたら

というフレーズがあるが正にエレママが構築するLIVE空間そのものを象徴している。本気の冒険が今ここから始まる🪐

この『Rock N Roll Universe』のMVにおいて「universe」というワードが「人類→生活→世界→宇宙」へと多様な意味を内包する事を証明するかのように「DNA→計算体系→脳内体系→銀河系」など様々な映像を垣間見る。

「この音像からあなたは何を感じる?」という彼らからの挑戦状がここにあるものといえよう。


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1-2.Hyper Vega

一曲目の勢いを継承し「銀河で最高に光り輝く『Hyper Vega』 であらん事を。」と我々にも、エレママ自身にも問いかけるように歌い上げるEDMロックチューン。
【等身大から完全体、そして最果て】へと連動していくような世界観。ここから描かれる理想はロマンチシズムすら超えていくような感覚に見舞われる。それにしても、エレママのMVを観てていつも思うのが人間の計算体系に基づいた近未来像、宇宙観などエッセンスを維持しつつその曲にしかないオリジナリティも忘れない点。
本MVでは映画Ghost in the shell (攻殻機動隊)』に顕著なオリエンタリズムが炸裂しているように思えるのだ。


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1-3.Taxi Driver2 
怒涛のエレクトリックダンスチューンの2曲を経て更に深くなっていく。正に永遠と幻想の狭間に揺れるようなイントロにグッと引き込まれ、まるでNWの世界へと【僕らを連れて行ってくれ】るような3曲目である。


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1976年の同タイトルの映画をモチーフに作られた事からも分かるように様々な情景も浮かぶ幻想的な一曲。TaxiDriver2 を初めて聞いたのは思えば、2年前の夏のアコママ(アコースティックスタイルでのエレママのライブ)である。

その時の印象は音源におけるNWアレンジと言うよりもむしろ情感たっぷりのゾクゾクするフォーキーかつブルージーなアレンジで「わたしを置いていかないで」というArisa Zombieのモノローグと相まってヒリヒリと私の心を揺さぶった。


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更にいえば、ここ最近よくロックと政治性について考える事が多いのだが、ここで言う政治性とは社会性とも拡張されようが、ロックが社会的批評性を失ってしまったらそれはもはやロックどころかポップスではあり得ないとすら思う。
そう、本曲がそれを雄弁に教えてくれる。

論争が生まれていく

グラグラと崩れていく

さっき前の当たり前が

目の前で変わっていく

 

1-4.Space Derringer
今まで時折覗かせていたアイロニックな視点は消え失せ、タイトル通り世界へ銃口を突きつけるかのようなエレママ史上最もストレートさと攻めの姿勢をも同時に感じ取れる、思えば正に20周年アルバムのパイロット曲の爆誕だった。

#ELECTRICMAMA
梅田BANGBOOと言う新たなライブハウスで新たに生まれた『#SpaceDerringer』という曲がまるで地上からスペースへ向かって打ち上げられた瞬間を目撃できて心底良かった。もはや無謀なまでに美しい光景だった。セトリハイライトに敢えて新曲で真っ向勝負をかけてくる #エレママ は最強だ。 https://t.co/Kvl9oHepS9 pic.twitter.com/2ba94w3fGJ

— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2024年9月13日

今夜新たな宇宙の誕生を祝福したい衝動を掻き立てるイントロが戦いの火蓋が切られた事を示唆する世界観を誘導する。
思えば『Rock N Roll Universe』とは飛翔のALである。
...というのも本曲で【羽ばたく】というフレーズがあり一曲目

光の速さで翔べたら

とシンクロするからである。


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本MVでも「飛翔」というキーワードが翼を持ったバレリーナという形で具現化されている。更にディストピアを描いたジョージ・オーウェル1984のように操られた独裁者に洗脳されたかのようなTV男達の存在。どれも曲の輪郭を際立たせてくれる。

1-5.Sky Telepathy

アルバムも中盤戦。5曲目はKenji Zombieのボーカルである「Sky Telepathy」である。まず前提として彼のギターソロに感じる音色がふくよかさだとか、幻想性だとか雄弁で、まるで言葉を放っているかのような印象があるのだが本曲におけるこのボーカリゼーションには全く同じ印象を持った。

正にしなやかさと強さと優しさが共存しているのだ。


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次に歌詞に目を向けてみよう。

空の向こう側 君へのtelepathy

正にここでも映像が浮かぶ音像であるといえよう。

映画『インターステラー』を彷彿させる一節で、あの映画に顕著な壮大なテーマの根底にあるヒューマニズムを感じ取れるエレママのもう一つの一面がここに。

そこにはKenji Zombieのボーカルにおける貢献度も高い。そして話は脱線するが本曲の浮遊感に関して思い出すバンドがある。ナンバーガールくるりなどと共に1990年代末〜2000年の間コアながらもミュージックシーンを牽引してきた「snoozer系のバンド」であるスーパーカーである。

本曲を聴くと『YUMEGIWA LAST BOY』を聴きたくなる。
正に時を超えて音像達が共鳴し合う瞬間である。


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1-6.Moon Diamond
 本盤には一つの大きなコンセプチュアルなストーリーがあるのではないか?それを確証させるのが本曲『Moon Diamond』の存在である。


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地上での運命に抗えず月へ向かって

今度はもっと分かり合えたら愛し合えたかも

と愛を希求する登場人物の心象風景を写像する本曲。

そして私はここにもブルースがあると考えている。

そしてこの曲に私はどこか先ほど引用したスーパーカー以降の90sJ-POPの幻影を見る気がする。どこか相川七瀬『夢見る少女じゃいられない』のようなヤンキー文化を経た当時の若者が歌うポップスの面影を見る気がするからというのもあると思う。この辺りの影響についてはよくわからないが。既存曲で行けば『普通じゃない』にNew Order『Blue Monday』要素を加味してJ-POPのロマンティシズムを浮き彫りにした印象がある。


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1-7. Astro Dancer 

そしてこのアルバムを全曲通しで聴いた人は、いや正確には昨年6月Kenji Zombieの誕生日と共にドロップされて以来、LIVEでも音源でも何度も聴いてきた人にとっては本曲のイントロが鳴った瞬間人半端ではないカタルシスがあるのではないだろうか。ズバリ『Astro Dancer』である 。
間違いなくエレママど真ん中であるこの楽曲。宇宙も愛もロックも全開だ。最近のエレママ新曲群は宇宙とリアリティとは常に地続きである事を教えてくれる気がする。
そう「Space」が空間と宇宙を意味するように。
今回もAstroDancer とは決してアンドロイドなどではなく人だとでも言いたげな本MV。これほどスケールのでかいラブソングを他に知らない。


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個人的に本MVは伝説のアップル社CM『1984』さながらデジタルディストピアに支配された社会に一人悶々としている女の子がやがてKenji Zombieのギターを浴び一人の人間としてそこから解放され恋をして夢を持ちダンスをするまでの物語と受け取っている。


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1-8.Baby Don'tCry

『Rock N Roll Universe』とはエレママの進行形であると同時に集大成だとも位置付けていてそれを確信したのが『Baby Dont Cry』。


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1stAL『The Wall』収録曲をセルフカバーというよりも今現在のテンションで真っ向勝負で演奏している。エレママブルーズは止まない。『Baby Dont Cry(『The Wall』ver.)を聴聴きながらブルースマン、ウィリー・ディクソンの言葉を再び思い出す。

ブルースはルーツさ。その他はそのフルーツさ。

ここからあのロックダイナミズムも強さの中の優しさをも感じる歌詞世界がスタートしたのかも。
正にエレママの原風景がここに。


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1-9.Starship Blues
これぞ最新のエレママが今のモードで鳴らすエレクトロックブルースだ。それにしても全編に縦横無尽に広がるギターサウンドの煌めきは銀河の星の輝きのようでありキラキラと光る瞳のようでもあり...どこかアートワークともシンクロするようだ。


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ある朝 孤独を感じて この世でひとり

どうしようもない寒さに動けなくなる戸惑い

心の奥では招いた鼓動あのこが小さい声で

ドアを叩くよ 呼んでる

どうして人は求めるのだろう

どうして人は繫がるのだろう

どうして人は与えるのだろう

どうしてどうして

ここで特筆すべきは、本曲の内省的とでも称しても良い心の叫びである。人によってはあの「わっしょい!」と叫び、ライブハウスをダンスフロアと化すあのエレママのライブから想像すれば、意外に思われるかもしれない。しかし、これを人が音楽を愛する理由という文脈で本歌詞を読み込んでいけば正に原風景でもあるのだろうとも考えたりもする。まさにここにあるのは普遍的なまでの人間の心象風景であり、言うなれば紛れもなくBlues(ブルース)なのだ。私はこの曲のみならず、このアルバム全体にブルースを感じる理由があるのは本曲の存在意義が非常に大きい。

 

1-10.Black Hole Love
アルバムラスト曲であり2年前のKenji Zombieの生誕を祝うようにドロップアウトされた最初の『Rock N Roll Universe』の要素を持つ曲である。

合図をするから来世で逢いましょ

『Distopia Parade』が「祈り」ならば本曲は「約束」の歌である。エレママ新曲『Black Love Hole』セトリのどの位置で放たれるかに注目していたが、正にダイナマイトにニトログリセリンをぶち込むかの如く最も盛り上がりを加速させる中盤だった!彼らはキラーチューンに頼らず真っ向勝負に出たのだ!
このアティテュードこそ最高の起爆剤だ。


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本曲は『Distopia Parade』以後の光景のようであり、ROCKのドグマとはバカ明るい太陽光ではなくブラックホールシャドウから滲み出る歪な炎にこそ存在することを教えてくれる最高で最狂なスペイシーなダンスチューンである。

以前「エレママliveでは二人を操る"第三のメンバー"を見る瞬間がある。」とXでポストしたことがあるが、MVの担う役割がめちゃくちゃ大きいと思う。このカッコいい音像をビジュアライズ化する事によって更なる『Black Hole Love』像が確立するのだ。私なりの解釈として本曲に限りなく感じるのは「怒り」であり「熱狂」であり「アンダーグランドからの突き上げる拳の強さ」である。
もうバカみたいなことをいうが私には最近のワチャワチャ系みたいな内輪ノリの音楽は必要ない。エレママの音楽が、ライブがあれば生きていける、闘っていける。  

 

Appendix.Emperor Of Sunrise

このブログ記事ドロップアウトより12日後、Kenji Zombieの生誕を祝うかのように生まれたまっさらな新曲だ。


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そこに描かれるのは風、太陽、月、夢、そしてそこで鳴り響く懐かしい「音楽」の存在
本記事で触れたようにスペーシーな世界にブルースを取り入れた傑作『rock 'n' roll universe 』の次なるヴィジョンがこの音像にある、と断言して良い。銀河を彷徨い、空との交信をし、ブラックホールを抜け、地上に降り立ったこの新たな光景は今まで以上に力強く鳴り響く。とここまで書いてふと思い出す曲がある。アルバム収録曲の『SKY TELEPATHY』である。まさにこの曲において登場人物は宇宙ではなく地球上にいる事が以下のフレーズで示唆されている。

空の向こう側 君へのtelepathy

そしてこの『Emperor Of Sunrise』も同じく「地上曲」であるのだが、どこかあの曲とシンクロし、時を超えて共鳴し合っているような気がするのは気のせいだろうか?

夜明けまで踊りたいよ

離れないで離れない 

風と太陽息を合わせて

Emperor Of Sunrise

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そしてこのmvも新境地だ。
従来のmvではライブシーン含めアクロバティックにパフォーマンスする二人の姿が描かれるものだが今回一切それがない。
動かぬエレママ。
無表情のエレママ。

歩き出すエレママ。

だが、二人の佇まいが既に音像を掻き鳴らしているのだ。

日常という名のスペースの中で日常という名のブルースを鳴らす。

 

2.エレママにとってのブルース、そしてレジェンドとは?

本レビューの締めくくりに2025年5月21日に寺田町Fireloopにて開催された「音不死-Autopsy-vol.2 大阪解剖室」での私にとっての最新のエレママのライブの模様をレビューすることで本記事を締めくくりたいと考えている。youtu.be

「音不死-Autopsy-vol.2 大阪解剖室」 @寺田町Fireloop

setlist

1.生命のダンス

2.zero

3.Black Hall love

4.Space Derringer

5.moon Diamond

6.rock 'n' roll universe

7.Baby Don't Cry

8.Dystopia Parade

9.Wall

10.Zombie

理由はシンプルで最&高を更新したからだ。もっと具体的にいえばこの日は特に『Evil Heat』期のプライマル・スクリームのようなエレクトロパンクスピリットを感じたからだ。『rock 'n' roll universe』に顕著なスピード感溢れるロッキンブルースとあの頃のプライマルに顕著な荒削りなEDMパンクとの華麗なる融合した正にオーディエンスの誰もが「世界はエレママが必要だ」ともわ思わせた瞬間でもある。

このエレママは日頃決して共演しないであろうSAISEIGA、ストロベリーソングオーケストラというメタルバンドが中心で、アウェイな雰囲気も確かにあった。そうした対バンだとかハコの資質を意識してか一貫して【攻めママ】であったと断言できよう。従来のライブスタイルに加え、ハードロック&ブルースの荒削りさに根差したエモさを投下したような印象を受けた。
そしてそれが顕著だったのはやはり8曲目の『Baby Don’t Cry』だったし、
エレママの音楽が原点回帰するかのようにどんどんコアになりLIVEパフォーマンスも更にダイナミックになっていく事を確証させるのが本曲である。
5曲目『Moon Diamond』地上での運命に抗えず月へ向かい

今度はもっと分かり合えたら愛し合えたかも

と愛を希求する心象風景を辿るこの音像の美しさよ。
そして9曲目『The Wall』ここ最近、私は本曲が放たれた時にはもはや完全に目をつぶってしまっている。
この曲は聴くよりも観るよりも「体感する」に尽きるからだ。
音像のシャワーを浴びる。
ロックンロールを浴びる。
そして、レジェンド達の音を浴びる。
エレママは全てをフロアにぶつけてくれるのだ。
ほんとに思うのが、エレママのライブでは色んなレジェンド達の面影を感じるのだ。最近よくロックと政治性について考える事が多い。ここで言う政治性とは社会性とも拡張されようが、ロックが社会的批評性を失ってしまったらそれはもはやロックどころかポップスではあり得ないとすら思う。

そう、本曲がそれを雄弁に教えてくれる。
それはニューオーダーであったり、スーパーカーであったり、プライマルであったり、アンダーワールドであったり、或いはエアロスミスであったり、パティ・スミスであったりと彼らが築いてきたルーツがフルーツとなり様々な形で結実しているのを感じるのだ。正にブルースがロックと化し、ヒップホップとしての萌芽を見出した1968年のMudy Watersのように。ここでARISA ZOMBIE、KENJI ZOMBIEの二人がが私にX(旧Twitter)でリプライしてくれた言葉を引用しよう。

『Rock N’ Roll Universe 』が世に放たれてから、また更にそのレジェンド達の数が益々激増しましていくような感覚を覚える。そうだ。エレママのライブはレジェンド達のスピリットを継承し常に進化し続けていく。
そして私はエレママを正に「更新し続けるロック史」である。そう言える根拠はもっとプリミティブな所にあるようにも思う。唐突に引用するが、あのアメリカの小説家、詩人であるヘミングウェイはこう言った。

The world breaks everyone, 

and afterward, some are strong 

at the broken places.

 

この世では誰もが苦しみを味わう。

そして、その苦しみの場所から強くなれる者もいる。

正にこの言説の中にエレママの音楽、そしてライブから感じるブルースやロックスピリッツは強さにこそあるのだと思う。

他のレジェンドたちがそうであるように。

そしてレジェンドたちよ、安らかに眠れ。

世界よ、今こそElectric Mamaを聴け。

これはそんな11767字の物語である。

 

 

*1:エレママに関する個人的出会いや既存曲、アルバムなどに関する過去の記事はこちら。

nenometal.hatenablog.com

ボールド アズ、君。レビュー〜LIVE映画なのか、映画のLIVEなのか?

ボールド アズ、君。レビュー〜LIVE映画であり映画のLIVEでもある『ボールドアズ、君。』ここに降臨!!

1.impressions
来年本格上映の本作はクラファンで参加しているので試写会において一足早く鑑賞しているのでネタバレなしに感想を述べることにするが、まず一言。Live シーンの臨場感にひたすら圧倒された。もうこれはライブ映画であり、映画のライブである。
具体的にいいえば、関西近郊ではその名が知れ渡っているロックバンドである「スムルース」や「アシガルユース」だとか、岡本祟監督による長編第一作目『ディスコーズハイ』でもお馴染みの映画オリジナルのバンド「P-90」、そして本作のオリジナルのバンドである「翳ラズ(かげらず)」ととにかくLIVEハウスでのバンド勢の演奏シーンが美しすぎて力強くてそれでいて光に溢れていて、普段からライブ慣れしている私でさえ思わず目から大量の水分が溢れ出たほどだ。


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因みにスムルースのあるライブ定番曲がめちゃくちゃ良い感じに使われてるんだよな。

鑑賞後この曲を口づさみながら帰宅したものだ。
 本作は、日頃主に心斎橋周辺で血と汗を流しパフォームしている彼らにありったけの愛情と光を当てている音楽映画であり、今後音楽を愛する全ての者達を祝福するアンセムにもなる事だろう。


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そしてドラマの中核を成す登場人物らにも少し目を向けようか。
 今回は『ディスコーズハイ』でも冒頭にちらっと路上ライブシーンで登場した珠ちゃん(伊集院香織)が主役である。本作は彼女の孤独なオタク時代から直向きなオタクになり、ステージでカリスマアーティストから見つかるまでの最高のヒューマンドラマでもあるのだ。
2025年、多くの人がそんな彼女に救われるだろう。彼女だとか、井澤雄一郎(津田寛治)の心象風景にフォーカスしてザワっと変わりゆく部分にヒリヒリ共感しつつ鑑賞した。 それと関連して私的2024年ベスト1の『ブルーを笑えるその日まで』のアンと『ボールドアズ君』のたまちゃんの孤独なオタ時代の心象風景が物凄くオーバーラップする。
 来年辺りでも映画館によっては両作をフィーチャーした「令和の青春映画特集」みたいな企画するのも大いにあり!とふわっと提案しときたい。
 いや〜、それにしても頭を掻きむしる仕草やらアヒル口で札束を数えるシーンがあそこまでカッコ良くてサマになる人は後藤まりこ氏以外に考えられません。「お騒がせしてすいません」といってレコード会社の人に無理やり謝られるシーンはやけに現実の彼女からと大いにオーバーラップしてて本編とは関係ないところで笑ってしまった。

 

2.Focus
あと本作と前作長編の『ディスコーズハイ』との関係に関してだが、P-90も出てくるので「続編」と捉えるべきかもしれないが、時間軸として瓶子結衣子が生きているという事実から考えると前日譚としての解釈も可能である。その辺りの時間軸に関してはそれほど正確ではなく敢えて曖昧にしている向きもあるので観た人の解釈だけで捉えればこの上ないように思ったり。
その意味では個人的には『ボールド〜』のラストと『ディスコーズ〜』の冒頭とが繋がってくるように思っている。  
 そのことを象徴するエピソードとして本作のラスト付近のとあるシーンを観てその物凄い偶然に驚愕し鳥肌がたったものだ。
本作の初公開日の3日前、岡本崇監督率いるバンドであるココロロも出演していたHelplessTriangle (ちなみにP-90のメンバーであるイシカワさんがリーダーのバンド)のLIVEイベントでイシカワシ氏と岡本氏との間で本作のあるシーンと全く同様の「事件」を目撃したからだ。これはネタバレ抵触になるので明言は避けるが、ライブハウスで起こった事と映画でのワンシーンがクロスしてリンクしたのだ。


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正にライブハウスが映画となり、そして映画がライブハウスと化した瞬間であった。
そう、ここで注意すべき点は、本作は別にバンドを、音楽を、そしてライブを別に取り立ててデフォルメしたり美化したりした映画ではないという事。ライブハウスでは、もうありのままああいう事件は常に起こっているのだから。言い換えればライブハウスでは常に映画のような「ドラマ」が起こっている。
これはあくまで私見であるが、出演してなくてもエレママから鈴木実貴子ズからWtBからpod‘zからUekiSoyokaから優利香から東京でも仲良くさせてもらっている古郡翔馬などのバーペガ勢やなみたすゐなど多くのインディーズアーティスト達の面影がふっと浮かぶのだ。
 その意味で本作はLIVE映画であり映画のLIVEなのだと定義している。
だから映画ファンのみならずライブファンだとか音楽ファンにこそ体感してもらいたいダイナミズムがある。
以下、個人的雑感

①ぺつさん(未遂ドロップス)の「ああいう人いる」感と「あの方ならではの味」とのバランスが絶妙で良。
②内藤御子さんを昨日初めてBCライブシーンで認識。
③結局逃げるのに見つかるまでなぜかいるp-90の鈴木大夢さんがナゾで良。
④エンドロールのフォントがコココロらしくて良。
⑤あと少しだけ辛口な事言うが、ある場面で絶対有り得ない状況で「ある人物が他の人物に偶然出くわす」と言うのが2シーンほどあるのだがあれには違和感を覚えざるを得なかった。特に最初のはかなり強引なのでむしろ驚いたし、あの辺の若手男性俳優の演技も大げさすぎなのも相まって正直興醒めしたのも事実。そこが残念なので5.0は上げられないかな。スコアは4.8に。いくら映画だからってフィクションだからって遵守すべきリアリティというものがあるだろう。
あの場面はそこを大きく逸脱していた。

いつの日か、全国LIVEハウス爆音上映ツアーでもカマせばいい。というよりその為の下地を私は今密かに目論んでいる。

あの、キング牧師はこう言った。

Almost always, the creative dedicated minority has made the world better.
(常に世界を変えてきたのは創造的で直向きな少数派だ。)

 

The Comprehensive Disc Review of GunzoPikata's(#群像ピカタ) ”Braid”(2022) ~International Version

The Comprehensive Disc Review of GunzoPikata's(#群像ピカタ) ”Braid”(2022) ~International Version

 

【Review】
Although 3 years have passed since『Braid』released, we can recognize the lifestyles of 古郡翔馬.
These constituent (music, art &atelier Pegasus)are merged into peculiar sound escapes and these 7songs have a POWER to appeal the world.

1.『Intro』

The vocalist (古郡翔馬)said “It’s essential to feature acoustic guitar sound even if the tune is rock-oriented”.
In fact,  the first tune of the album『intro』is acoustic guitar instrumental tune we feel the sense of urgency.

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2.『群像ピカタのテーマ』

 Although this tune has many varities of version, this album version might be what we call, conclusive version in that chrus work and goovy sounds are added to bring us a kind of funky element.

Music varies with audiences' interpretation freely.

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3.『No.9』

【I feel the underground boiling with enthusiasm】
This 『No.9』 ‘s impressive phrase reminds me of the very ideal for Japanese indies music scene and we also feel the arrangement have the taste of jazz improvisation in 1970s〜80s.
We should note that『No.9』has the following phrase
【Making the correct way the right way on my way 】
This phrase is warning clinging to a stereotype is dangerous & suggesting a criticism to the music scene all over the world.

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4.『ネモフィラ
【Make a greatest change if you want 】
This phrase includes Shoma’s introspective feeling and praying, where we can feel the combination of his shouting 【鳴らせ】with the groove of the band sound proceeding gradually.As for the concept of “change”in #ネモフィラ, we should note a biologist Charles R. Darwin stated as follows;
“It is not the strongest of the species that survives, but the one that is most adaptable to change.”which prove that music has a power to change the world🌎

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5.『人生名画』

For 群像ピカタ, 人生名画 can be compared to『A day in the life』for a legend, THE BEATLES.
A trivial event in a day life can trace in our heart, leading to a universal truth even if our lives passed away, which is also compared to just like a painting🖼️ .

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Watching this MV strongly proves that the scene of reversed guitar sounds(1:05) and noisy shoe-gaze sounds(2:25) make us feel that both romanticism and melodious elements are preserved without devoting itself too much psychedelics🖼️


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I am clearly remembering this act at Atelier Pegasus when  the first time I came across this song. I was very impressed by Shoma’s performance feeling not only delicate&poetic elements but also emotional and dynamic parts (especially interlude of the song).

6.『金星の日面通過を見逃した』
This is the very killer tune that is often played in Shoma’s solo LIVE. As the tile shows, the rylics is based on his way of thinking in his daily life. That‘s why we can feel&enjoy its contrast of dynamic band sound.

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7.『Outro』

This is the last tune of『Braid』and one-half minutes instrumental『Outro』that has a taste of silence and bluesy.
Because of the wordless world,  the interpretation depends on each audiences.
And this might be the introduction of『intro』.

youtu.be

【Concluding Remarks】

Let me conclude this review.

As『人生名画』shows, we can find a phrase【sub-cultural days】which suggest that every cultural things ahead of us have messages and 『#Braid』tells us such an attitude’s as everything is permitted in my life



 

心臓バクバク震わせるアート・パンキッシュバンド、#群像ピカタ『Braid』爆裂レビュー

心臓バクバク震わせるアート・パンキッシュバンド、群像ピカタ『Braid』爆裂レビュー

心臓バクバク震わせるアート・パンキッシュバンド、群像ピカタ『Braid』爆裂レビュー

Table of contents

0.はじめに

Ⅰ.群像ピカタ『Braid』レビュー

1. intro

2. 群像ピカタ のテーマ

3. No.9

4. ネモフィラ

5. 人生名画

6. 金星の日面通過を見逃した

7. Outro

Ⅱ.Grand Concusion and...

Ⅲ. Bonus tracks

1.【群像ピカタのテーマ】❶(sg version)

2.【群像ピカタ のテーマ】❷(ソロ ver)
3. 名残り

4. 立ち枯れ

5. 羊をめぐる冒険

6. ダンスダンスダンス

7. 可愛いアメリ

8. 人生クリエイト

0.はじめに

もう何度もこの記事で言っていることだけど、音源として残ったものをガッツリと、そして時にマニアックに聴く事はとても重要なことだと思う。だってアルバムなどの音源における「名盤」の基準はハッキリ定義できるから。ここでライブと比較してみよう。現に一概に「伝説のLIVE」とは言ってもライブにおいての「伝説」の基準は極めて曖昧なものだということに気づくだろう。現に多くの人の目に触れる訳ではない場合もあるし、演者・オーディエンスの主観に左右される場合が極めて多いのではないかと思うのだ。だが、そこに来てアルバムなどの音源における「名盤」の基準は定義できるのだ。音楽オーディエンスとしてそこには拘りを持っていきたいとずっと考えている。なぜなら、音源を客観的に語る事はポップカルチャーの歴史を語り継ぐ事とイコールでもあるから。近年「音楽なんて楽しく聴けりゃ良い。言葉なんて不要だ。」等という輩がどこでも結構いて個人的には最近ますます増えつつあるように思えるが、私はそこは粘って「それは大きな間違い」であると死守する立場を貫き通したい。なぜならポップミュージックもまた「過去の遺産の積み重ねの歴史」の一部だからだ。音楽・映画・演劇・アート全てにおいて時代が進むにつれ益々多くの引用や文献が積み重ねられていて、それらをより享受するには更なる言語化が必要になってくるのだ。だからと言って肩肘張ってマニアックに評論家ぶって語る必要もなくて、もっと自由にむしろ様々なカルチャーが生み出した範疇における様々なカードに気軽に接する時代が来ているのかもしれない。だって一昔前など❶音楽・❷映画・❸演劇・❹アートなどを比較すると圧倒的に❹がカルチャー然として高尚なもので次に❸、その次に❶❷と段々サブカルチャー化していくようなヒエラルキーがあったではないか?そこに来て現状を見るとサブカルチャーという概念自体が消滅しつつあり、今2025年の世の中では❶〜❹全てが「カルチャー」として横並びになっているように思えるのだ。例えば「御朱印集め」だったり美術館巡りだって20年前はかなり高尚な「文化」だった訳で今やもうポップカルチャー然としてるじゃないか。ちなみに私の御朱印帳はお寺とは真逆のベクトルにあるカルト・ホラー漫画家である伊藤潤二氏の作品『富江』イラストが裏表に描かれているサブカル要素の強いものだ。一昔前だったら信じられない代物である。

では、そして音楽に話を戻そう。現に今現在音楽業界でポピュラリティを持って迎え入れられている人たちを見てみると、その多くの人は過去の歴史的遺産というカルチャー概念を度外視して、ほぼ「ゼロ地点」からスタートしているものが多いような印象を受ける。米津玄師然り、King Gnu然り、Ado然り、....その他もろもろ.....彼らが流麗なメロディーと未知のアレンジでサウンドエスケープを彩ったとしてもどこかバックグランドが不透明故に空虚な印象を受けるのだ。それらが一概に悪いという訳ではないが、でもハッキリ言ってしまえば曲に深みがないというか歴史の重みが感じられないものが圧倒的に多い。あ、でも『マリーゴールド』時期辺りのあいみょんは少し違ってて、ギリ「それ」があると思う。あの人はしたり顔の物販で会話したりチェキ撮影か何かで顔近づけたりすることだけが目当ての唾棄すべきSSWおじさん(今もいるけど)に囲まれた「ギター女子(ギタ女)ブーム」最中にインディーズデビューしてて、その辺りのムーブメントの壇上に載せられつつある自分が嫌で嫌で鼻っから「女版ミスチル」を志向してたらしいから、少なくとも過去90年代以降のJ-Popの歴史を継承していこうとする気概は感じられたのだ。それにしても....である。

まだまだ熱いマグマのようなウネリは今の音楽界隈には見当たらなくて、もっと熱い全てのカルチャーを、歴史を、遺産を、そして過去のレジェンドさえもひっくるめて乗り越えていこうなんていうそんな音楽家が本当に少ない

そんなことを思っていたらふとこういうポストを目にした。

そう、私にとって「東京の実家」とすら化している中野新橋にあるバー、アトリエペガサス(通称;バーペガ)の店長、古郡翔馬によるポストである。今現在は彼とKZ(ドラム担当)をオリジナルメンバーとする現在は2ピースのバンドだがその編成にこだわらず彼らに描いているサウンドスペクタクルは極めて自由度の高いバンドだと言えよう。

これには私も同調して以下のようなポストした。

それからこの日(1/21)を皮切りに群像ピカタに関するポストを続けてようやく1ヶ月になろうとしている。本記事の趣旨は今までのポストで核となるもの中心にこうしてレビュー化したいと思った次第である。

このバンドを紹介するにあたって正にジャストな曲が存在する。ズバリ、タイトルが示す通り、このバンドのテーマ曲『群像ピカタのテーマ』である。

まずはこちらのMVをご覧いただこうか。

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本曲は「グ・!」と言うイントロでもあり、バンドのセルフイントロダクションから始まるどストレートなテーマ曲だ。本曲を聴くと「〇〇に似ている」「△△の影響を受けたサウンド」などの定義が当てはまらない、極めて独創的な響きがあることに気付く。かといって逆に過去の文化遺産を度外視している訳でもなくむしろその全て玩具箱に入れて遊んでいるような余裕すらも感じられたりして。

正にこの曲はパンクとアートが融合した音像である。

その証拠として以下のリリックに目を向けてみよう。

ゴッホピカソムンクフェルメール

というど直球のフレーズがある。これた有名画家の名前の羅列から「アートの本質とは何か?」というのがテーマではないかと思う。しかしそこを敢えてジャズ即興風アレンジを加味する事で楽曲全体がポップアートとして成立している。『群像ピカタ のテーマ』は「生きる芸術」とは「心臓バクバク震わせる瞬間にこそある」というフレーズを内包する事で音楽をサブの付かないカルチャーへと導き出そうとするそんな野心的かつ珠玉の咆哮のような一曲だ。

そんな 第0芸術劇場、舞台の幕が空く。

更には『群像ピカタ のテーマ』に以下のフレーズがある。

第0芸術劇場 で人生始めてみませんか

この第0芸術劇場...これは大阪十三のミニシアター「第七藝術劇場」という言葉の響きがヒントになったのだそうだ。

正に「アートこそジャンルレス」「アートも音楽もカルチャーだ」というアティテュードを垣間見る思いだ。

 

Ⅰ. 群像ピカタ『Braid』レビュー

インスト含め全7曲にまとまったミニアルバム。2022リリースだから既に3年経過しているものの今だにギラギラとした効力を保っている。今改めてこれらの楽曲群を聴いて分かるのはここにあるのは古郡翔馬の日常である。ロック、ライブ、アート、そしてバーペガ。これらが全部融合しケミストリーとなり構成された唯一無二の音世界がそこにある。
だからこそこの7つの音像は世界に響く力を秘めていると信じたい。

それでは一曲ずつ検証していこう。

 

1. intro


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古郡翔馬はいつかのバーペガでのライブの時にこう言い放ったのを覚えている。「どんなにロック志向でもアコギの音色が入っているバンドが好きだ。」と。正にそんな思いを象徴するかのように1曲目『intro』はアコギのインストゥルメンタル曲で始まる。
本曲の冷たくも熱くもある音像がもたらす緊張感が次の曲への高揚感を煽るものだ。

 

2. 群像ピカタ のテーマ


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この曲は様々なバージョンがあるが、アルバム『Braid』2曲目に配置されたいわば現時点での決定版。コーラスワークやグルーヴ感が加味されてどこかファンクの色彩をも感じることができる。音楽は解釈と共に自由に変化する。

では以下の歌詞に注目しよう。

はちゃめちゃ書いてるあの絵がどうして

と言うフレーズがあるが有名画家パブロ・ピカソの言明を彷彿とさせる。

「太陽を黄色い点に変えてしまう画家もいれば黄色い点を太陽に変えてしまう画家もいる」

そう、芸術とはスピリットに触れる事に意義がある。

そこにアートの本質があると思う。

正にバンド姿勢そのものを反映した一曲である。

更にこの曲は『瞬間』(鈴木大夢)という曲の
「音楽(人生)なんて 瞬間のアート」
という全ての本質言い当てたかのようなフレーズがあるが、どこか『群像ピカタのテーマ』における「生きる芸術」とは「心臓バクバク震わせる瞬間にこそある」というフレーズとがシンクロする。正にアートの本質であり、
ここに魂の共鳴が存在するのだ。


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3. No.9


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アンダーグランドがグツグツ煮えたぎっている」

このフレーズの響き。まるでインディーズ音楽シーンの理想そのものを言い当てたかのようなフレーズが印象的な『No.9』。
この曲もソロ・バンドなど様々な形態で奏でられるライブレパートリーだが本盤ではどこかジャズ即興的なグルーヴ感がある。更には『No.9』にこんな一節がある。

正しい道、進むのではなく選んだ道を正解にする

これは正に「ステレオタイプ固執する事への一つの疑念に対する一つのサジェスチョンであり世の中に何億曲と存在している音楽シーンへの一つの批評となっている。

ふとここで現TAKAITOWの店長である浪田彗(Namita Sui)の名曲『soup』とのシンクロを見る。

歌の歌い方ひとつマイクの握り方一つ

というこのフレーズと『No.9』(#群像ピカタ)の
【正しい道、進むのではなく選んだ道を正解にする】というフレーズも「ステレオタイプ固執する事への一つの疑念を投げかけている」点においてシンクロしている。

正に魂の共鳴がここにもある。


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4. ネモフィラ


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変わるなら壮大に変化しちゃえ

と言う一節に古郡翔馬の内省的な思いと祈りとが溢れ出ている。そこに【鳴らせ 鳴らせ】という叫びとともに徐々にドライブ感を増していくバンドアンサンブルも印象的である。

そしてこの『ネモフィラ」における「変化」という概念について、付け加えたい事がある。そう、自然淘汰という起源論の発案だるとか『種の起源』の著者である生物学者チャールズ・ダーウィンはこう言い放った。

It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.

 

ーCharles Darwin(1809-1882)

 

最も強い種とは"進化"ではなく"変化"に耐えうる種である

進化ではなく変化の優先。それは一見ネガティブな響きすらも漂う印象を受けるが実はそうではない。生物学的にもパワーだけを頼りに生きてきた恐竜は気候の変化などに対応できずに滅亡してしまったのと同じようにカルチャー分野においても時代の流れをにうまく乗っていけるFlexibility(柔軟性)を伴うものこそが生き残ると思うのだ。そういう意味での変化。壮大な変化は、進化やパワーをも兼ねる。そして、時に音楽というものは世界に語りかけその光景を一変させる不思議な魔力が潜んでいると思う。

そして最後の「1, 2, 3!!!!」というカウントが次の曲『人生名画』へと繋げていくようだ。

 

5. 人生名画

この『人生名画』は有名すぎるリヴァプールのバンド(The BEATLES)になぞらえると、群像ピカタ にとっての『A day in the life』に匹敵するのではなかろうか。


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その理由としては、この曲は人生のある日の何気ない出来事こそ心に残り、やがて永遠となろうとも普遍の真実となる、そんな風景を描いているような気がするからである。それはまるで絵画のようでもある。本曲を「音像のART」と称したい。それにしても1:05辺りのギター逆回転サウンドも2:25辺りのシューゲイズサウンドもありつつサイケデリアに溺れる事なくあくまで楽曲自体の持つロマンチシズムやメロディアス性を維持しているのに深く感銘を覚えるものだ。このMVがそれを立証している。


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『人生名画』のMVでは逆回転サウンドと古郡翔馬が関わったMVとをシンクロさせる事でセンチメンタリズムを、踊り手と花束を用いる事でロマンティシズムを各々体現している。

「感傷主義」と「ロマン主義」正にこの曲は絵画である事の証明である。
 その証拠にラストで彼らが名画の額縁内に収められるシーンとして反映されている。この日のバーペガliveアクトを明確に覚えている。私は当時繊細さを感じる音源とは一線を画すエモーショナルなパフォーマンスや間奏の轟音部分に物凄く心を打たれたのだ。やがてMVとして『braid』として本曲は大化けしたものだ。

 この日は正に「壮大なイントロダクション」でもあった。MVのコンテンツだとか制作に関する全般のレビューに関しては以下の過去記事を参照されたい。

nenometal.hatenablog.com

 

6. 金星の日面通過を見逃した
古郡翔馬LIVEでも高確率で放たれるキラーチューン。タイトルからも分かる通り日常的な思索がモチーフになっているからこそバンドサウンドとのコントラストが心地良い。
次の金星の日面通過は2117年。


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どこで誰が本曲を見つけるだろう?


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7. Outro


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アルバム『Braid』の締めくくりは収録曲中最も穏やかで静謐ブルージーな趣きすら漂う1:30のインスト曲『#Outro』。
正に言葉のなき世界だからこそオーディエンスそれぞれに伝わる解釈がより自由に委ねられる。
そして本曲は一曲目『intro』へのイントロでもある。

 

Ⅱ.Grand Concusion and...

では、レビューを総括しよう。
先ほど紹介した『人生名画』に【サブカルチャーな日々】という言葉がある点に注目したい。
絵画も音楽も映画もカルチャーとしてネタが出尽くしちゃったのだ。それらをもはや人生のスタイルとして闊歩していこう。『Braid』にはそんなアティテュードを写像されている。そして以下の動画は2024.2.25アトリエペガサスにて開催された「丁村康太pre. 丁村康太 生誕祭 音旅プレミアムGIG!!」というイベンでの出来事である。


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本動画で古郡翔馬は「“ロックとは何か?”友達と話した。それはドクターマーチンであり、機材であり、細身のジーンズであり、細美武士だったり、ポール・マッカートニーのプレイスタイルだったり。ロックとは概念ではなくて余りにも見た目だった。」とラップばりのフリースタイルでこの『閃光星』にぶち込んだ。これはきっと正確だ。新たなロックの定義として。世の中全てのカードが出尽くしちゃってるのだ。だから音楽も映画も演劇もアートも全部ライフスタイルとしてカジュアルにアクセスして昇華できたものだけが勝ち。
「"サブ"カルチャーなどと卑下する必要はない。全てはポップカルチャーなんだから」という事を古郡翔馬は世界に対して体現している。それは群像ピカタとしてまだ音源化しておらず、ソロで『人生近道』という曲があるがこういうフレーズがある。


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いい音楽聴いて いい文章書こうぜ

というこのフレーズ。正に随筆的であり、巣描画的であり、何よりも【目に見えるもの全てはポップカルチャーだ】という古郡翔馬 のライフスタイルそのものを雄弁に音像化している。群像ピカタ ではどう再生されるのだろう?

最後に本当の意味で本記事を締めくくりたい。

 アメリカでの長い間人気漫画となっている『peanuts』において、主人公のビーグル犬であるスヌーピー氏(?)は以下のように言っている。

snoopy's statement❶

You play te cards you 're dealt with(whatever that means).

配られたトランプで勝負するしかないのだ。

snoopy's statement❷

Dogs could fly if they wanted to

犬だって望めば空を飛べるんだ。

 

この二つの名言。一見矛盾するようだが実は、この二つをリンクできるカードがポップカルチャーに存在するのだ。

そう、これこそが冒頭で述べた音楽・映画・演劇・芸術という多種多様なカードである。このカードについて再に引用する。

一昔前など❶音楽・❷映画・❸演劇・❹アートなどを比較すると圧倒的に❹がカルチャー然として高尚なもので次に❸、その次に❶❷と段々サブカルチャー化していくようなヒエラルキーがあったではないか?

そこに来て現状を見るとサブカルチャーという概念自体が消滅しつつあり、今2025年の世の中では❶〜❹全てが「カルチャー」として横並びになっているように思えるのだ。

そう、サブカルチャーの死とそれに伴う各カードにおけるヒエラルキーの崩壊。これら❶~❹のカードは全てはカルチャーとしての枠すら超えてポップカルチャーとしての資質を含んでいくのだと思う。そして、それらこそが群像ピカタが歌う、「第0芸術劇場」へのチケットでもある。

心臓バクバク震わせるアートでもありパンクな危険性をも含んでいて世界を揺るがせる可能性があるもの。

それこそが群像ピカタに課せられた役目である。

そしてこの10000字ものレビュー記事は
群像ピカタへの
古郡翔馬への
そして
アトリエペガサスへの
ことばの差し入れである。
そして
今や死んでしまった音楽ジャーナリズムへの
挑戦であり、宣戦布告でもある。
そしてこの記事がムーブメントという発火装置への起爆剤となる事を望んでいる。
「言霊は心のシナリオ」

これは私が去年の今頃ふと思い立った言葉だ。

さあ、今こそ。

熱狂的状況を作り出せ。

 

Ⅲ. Bonus Tracks

1.【群像ピカタのテーマ】❶(sg version)
本曲は色んなアレンジがあるが、こちらは群像ピカタとして初めてシングルとしてリリースされた初期バージョン。
MVバージョンに比べるとどこかテンポもゆっくりとそれでいてギター音が大きくフィーチャーされたロック色豊かなものになっている。


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2.【群像ピカタ のテーマ】❷(ソロ ver)
『バーペガコンピレーション vol.5』に収録されている最も初期のしょまちゃんによるソロ・アコバージョン。
今まで紹介した中で最もスローテンポである。

だからこそじっくりと歌詞の重みを噛み締める事ができる。
第0芸術劇場 の幕が静かに開いた瞬間。


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3. 名残り

アンビエントなバックトラックから聴こえてくるのは

歌い続けろお前の歌は響いてるぜ

という他でもない自己への内省的な心の叫び。前バンド・ハングオーバーでは生粋のロックサウンドだったが群像ピカタ ではいかなるケミストリーが生まれるのだろう?


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4. 立ち枯れ

群像ピカタ の前身バンド、ハングオーバー の曲で古郡翔馬 ソロでも鳴らされる定番曲。瑞々しいバンドサウンドが中核を成しているが以下のフレーズ、

本当に強いのは
本当の悲しみを
背負って生きてる人

という内省的フレーズが投げ込まれる点に一貫した哲学が見受けられる。


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5. 羊をめぐる冒険
村上春樹の小説と同タイトルである事からも分かる通り
古郡翔馬 のセンチメンタリズムを詩的レベルにまで昇華した文学だと断言しよう。ハングオーバー、バーペガコンピレーションでも様々なアレンジに耐えうる曲だが #群像ピカタ での音源化も期待したい。


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6. ダンスダンスダンス
歌詞全体は純粋なラブソング風だが「生きることは踊ること」というフレーズが象徴している通り #古郡翔馬 の俯瞰的視点を垣間見ることのできる【ストーリーテラーラブソング】。
アコースティックのみならず、ハングオーバー版もあるが様々なアレンジを呼び込む曲だと思う。


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7. 可愛いアメリ
タイトル通り、映画『アメリ』にインパイアされて作られた #群像ピカタ 現時点での最新曲。正に日常でのワンシーンを普遍的に写像するような哀愁あるメロディラインに個人的には曽我部恵一『吉祥寺』、Saika『むらさき』を彷彿とさせる。正に珠玉の名曲である。


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8. 人生クリエイト
群像ピカタの私的フェイバリット『人生クリエイト』。


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 本曲ほど本編中盤辺りでフロアでバンドも客も汗と涙でボロボロにながら聴きたい曲はない。曲の体温は極めて平常なのだがそれだけに「エモ」の配分が付加される余地が大きい。今後もどんどんクリエイトされていくだろう。『人生クリエイト』は個人的に久々に聴いたがここ最近のバーペガを取り巻く様々な流れを如実に言い当てている。そして以下のフレーズに注目したい。

目に見えるもの拾うのは目に見えた奴の特権

こうした姿勢の成果は音楽以外にも以下の過去記事が示すように中国舞踏だとかライブペインティングだとか様々なカルチャーだったりインディー映画界との繋がりだったりと次々と萌芽し続けている。

nenometal.hatenablog.com

 

 

 

 

#劇映画孤独のグルメ レビュー〜ネタバレあり〜

『劇映画孤独のグルメ』レビュー

1.impression

本作を観て私はなぜこのドラマ版全シリーズを何度観ても飽きないのかに気づいた。


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孤独のグルメ」(ドラマ・原作漫画両方含めて)がどちらかといえば、主に、関東圏を中心として和・洋・中・その他と様々な美味いものを食す井之頭五郎の孤独かつ好奇心あふれるグルメ紀行を通じて、その街の活気や人情をどこかフワッと映し出してくれる作品であるのは周知の通りだが、本作では更に主人公である井之頭五郎という男が単に胃袋のみならず懐もデカい魅力的な人だという紛れもない事実に対峙することができるのだ。そして予想以上にドラマティックでホロリとさせて、少しシリアスさもある110分の「ヒューマン・グルメ・アクション(?)ドラマ、或いはロードムービー要素込みのヒューマンドラマ」とでも定義しようか、何書いてるのか訳わからなくなってるけど(笑)
 で、ドラマ版との違いは五郎の「すいません〜、〇〇もください。」から始まる追加注文シーンが食事におけるそれではなく【パリ→五島列島→韓国→東京】というロケーション展開によるダイナミズムに置換されているのが特徴。そして今は亡きかつての恋人・さゆき、昔も今も腐れ縁の同業者の親友・竹山ら原作キャラにおける現状も浮き彫りになっていたりもするのでここから10シーズンに及ぶドラマ版をもう一度お代わりとして鑑賞するのも大いに味わい深いものだろう。
 だがここで注意しておきたいのは「長編」という事で年末に放送されるスペシャル版の延長バージョンと言うよりも、むしろ昨年秋ぐらい少し前に放映していたたスピンオフ的なスタンスの異色作『それぞれの孤独のグルメ』に顕著な人間ドラマが反映されているかのように思える。実際あのシリーズで見受けられた設定がいくつか散見されていて、どこか地続き感を感じる事ができる。本作、五郎以外でも色んな人々における「それぞれのグルメ」が人間模様としてキッチリ描かれてるし。で、本作は既に2回観ているのだが、二回目は【『孤独のグルメ』が映画に?】ていうバイアスも抜けるので、二回目の方がよりヒューマンドラマ、とりわけ本作でのヒロインにあたる内田有紀氏が演じる志穂の物語の核を握る心象風景にフォーカスして鑑賞できた。

 彼女の最後料理研究所の皆にあの完成したスープをもとにラーメンを振る舞おうってアクションがあるのだが、ひょっとして店主と「ヨリを戻す」って事の示唆なのだろうか?
 この辺りは鑑賞者のジャッジに委ねられそうだ。主演井之頭五郎を演じている松重豊氏が監督なのだが初監督とは思えないほど巧みなストーリー展開である。

 

2.Focus〜音楽を中心に
更に言えばドラマ版の慌ただしさから解放されたゆったりと「ラグジュアリーバージョン」という気もしたのは劇伴による変化も大きい。本作では国内外いろんなとこで五郎さんは食事をするものだが、某所ではあまりにアグレッシブな食いっぷりなので爆笑してしまった。その意味で松重豊監督の古くからの盟友であるという甲本ヒロト氏率いるロックバンド、クロマニヨンズのテーマ曲が凄く馴染むし、あと「ふらっとqusumi 」でお馴染みの原作者でもある久住昌之氏によるサントラバンド、の劇伴群も少し映画用にアレンジされてて、音量も抑え気味でどこか余裕すら感じられる。


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個人的にはスクリーントーンズ自体ライブに何度も赴いて久住さんには認知してもらっているぐらい大好きなので、彼らの楽曲『レガートワルツ』を、『伊豆Qのテーマ』を、『そよ風』を『リアスの海』などのドラマでよく流れる名曲群をあの広い劇場のスクリーンで聴きたかったというのが正直な所。私にとっての『孤独のグルメ』の根幹をなすのは『レガートワルツ』或いは『遥かなる大地』の雄大でこの嫋やかな調べこそが『孤独のグルメ』の根底にあるものだと思うから。

1. Screen Tones『レガートワルツ』


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2. Screen Tones『遥かなる大地』


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3. Screen Tones『リアスの海』


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それとそれともう一つ。

本作のトータルタイムは110分。

もうここはジャスト120分にして残りの10分は久住さんが五郎列島の「みかん」ちゃんぽんではない裏メニューでも食べながら【麦ジュース】を堪能する「劇場版ふらっとqusumi 」を期待してたりして。そういや本作、酒飲んでる人が誰もいなかったよな。でも概ね評判もいいし、気の早い話だけど第二弾も制作されることだろう。その時には本作で意図的に排除されたであろうドラマ版要素も全開にしたバージョンの映画を実現して欲しい。そういえば久住昌之さんは弟との漫画家ユニットQBBにて『古本屋台』という名著がある。タイトル通り古本を売るある屋台のオヤジと常連さんとのやり取りを綴った激シブ漫画だ。いっそこちらもドラマ映画にして『孤独のグルメ2』と同時上映ってのはどうだろう?

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【付記】
本作とにかくオリジナルグッズの売れ行きが半端ない。初日にもかかわらず既に「腹が減った」のアクリルスタンドが売り切れになっていたし、2回目に見た時すべてのグッズが物販コーナーに消え失せしまってトレーディングカードのみ販売していなかった。
この作品がいかに愛されてるのかがわかる。

 

余白が余韻を生む珠玉の短編映画『#兎姉妹』(遠藤大介監督)爆裂レビュー(ネタバレなし)

余白が余韻を生む珠玉の短編映画『#兎姉妹』(遠藤大介監督)爆裂レビュー(ネタバレなし)

0. Preface〜雪うさぎ🐇

1. Impression

2.🐰キャラクター紹介

3. Focus

3-1 アートワーク論

3-2 バニーガール論

4 うさぎの未来

 

0. Preface〜雪うさぎ🐇


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雪うさぎ、雪うさぎ

あなたのお目目はなぜ赤い?

母さん夢見て泣いたから

 

〜博多銘菓「雪うさぎ」CMより

 

1. Impression

外は雨が止んだばかりか乾ききっていない山道の道路。

美しくもあり、でもどこか訳ありげで複雑な、ともとれる、二人のメランコリックな表情のバニーガールが立っている。

これが今回の記事のテーマ映画『兎姉妹』。

実はこのアートワークを始めて見た瞬間の2ヶ月ほど前からこんなことを思っていた。

とXでポストしてるんだけどその予感通り、本作はまさにアートワークそのままの世界観の映像作品である。 


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で、上映時間は約21分。短編ながら、でももはやそういう短編だの長編だのそういうカテゴライズを完全にとっぱらった正に余白が余韻を生む21分の珠玉の名作と断定して良い。

それぐらい鑑賞者の心の中には鑑賞後にはきっと二羽の兎が宿るだろう。「温泉コンパニオンとしての初日、旅館で既にスタンバッてた一人のバニーガールがまさかの姉だった!」という衝撃展開から始まる。この姉妹の会話から浮き彫りになってくる複雑な家族事情。

上映時間20分台という枠を超え大切な家族のあり方を教えてくれる......という話だが「え、まさか!!!!!!!なんでそういう事になったん?」な展開に驚愕してしまう。

 舞台挨拶で興味深かったのがこのヴィジュアルにもある通りバニーガールのコスプレで働く温泉コンパニオンというシチュエーションゆえに「シリアスさと色もの感との境界線をどこに引くか」で 遠藤大介監督と脚本家であり、主演(写真右)の高尾美有 さんとでバチバチに意見を戦わせたというエピソードを教えてくれた。その成果あってフェミニンの象徴であるバニーガールが実は親に捨てられた兎の姉の物語でもある本作はその成果あって絶妙な塩梅だった。

この辺りについてはやや詳細に後述したい。 

 

①舞台挨拶の様子@シアターセブン11/3(日)

(左から、遠藤大介監督、高尾美有さん、田口智也さん)

 

②舞台挨拶の様子@シアターセブン11/4(土)

 

2.🐰キャラクター紹介

佐々木 燈(27)(演:高尾美有 @miyu_takao)

優衣の姉。中学時代、両親の離婚により妹・優衣と別れ母親の元で暮らす。21歳の時に優衣が行方を眩ました為、消息を探している。就職した会社でのトラブルにより多額の借金を負い、現在返済の為コンパニオンとして働いている。

 

須藤優衣(25)(演:松嶌かおり)

 

燈の妹。両親の離婚後、父親と共に暮らす。
専門学校在学中に父親が倒れ入院、その際父親が隠していた金銭問題が発覚した。問題解決に奔走するも行き詰まり、以後消息を経つ。
それから数年後、由紀子に連れられ温泉街に現れる。

 

関口 由紀子(45)(演:福田温子 @stageholic) 

人材派遣会社「ピンク・ラビッツ」の社長。 
様々な境遇の人間を受け入れ、長年コンパニオンを務めた経験を活かし育てている。

 

あじさい旅館」女将(58) (演:長島悠子)  

昔、コンパニオンをしていた経験もあり、「ピンク・ラビッツ」社長の関口 由紀子とは長い付き合いがある。

 

左から
田中守(43)(演:田口智也 @DRIFTAGU)

岡本隆(45)(演:ジャン・裕一 @jeanjajaaaaaan)

浅井健志(42)(演:光永聖)

岡本を筆頭に、同じ職場の仲間たち。
コンパニオンである燈と優衣を宿泊している「あじさい旅館」に呼んだ。

 

3. Focus

3-1 アートワーク論

本作タイトルにある通り「うさぎ」といえば映像劇団テンアンツが昨年の秋辺りに上映した映画『うさぎのおやこ』が浮かぶ。そして「姉妹」といえばやはりこれまた劇団テンアンツが10年ほど前に公開した『姉妹』という短編が頭に浮かぶ。これも偶然ではないだろう、というのもいずれも毒親に翻弄されて行き場を失ってしまった娘の心象風景が主軸になっているからだ。

 いずれの三作とも「家族の本当のあり方」とは何か?と言うテーマが作品のベースになっているからである。


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 そう考えれば「うさぎ」という動物はどこか、そういう「家族」だとか「孤独」だとか「悲しみ」だとかそういう要素を呼び込むメタファーになりやすいのだろうか?と思ったりして。*1

話は脱線するが冒頭でも紹介した通り、30代後半ぐらい以上の福岡県民にとって遺伝子レベルで浸透しているマシュマロで白餡を包んだ銘菓に「雪うさぎ」というものがありこのCMを思い出す。

♪雪うさぎ、雪うさぎ、あなたのお目目はなぜ赤い?

母さん夢見て泣いたから

......という涙なしには聞けない悲しいテーマ曲があってそれも思い出したりして。


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 本作観て大収穫だったのは最初にアートワーク見た瞬間下北沢のスズナリ辺りの演劇が醸し出すサブカル要素を感じてて、そういう空気を常日頃から欲っしてる私にとって大当たりだった。家族がテーマだったりこういう終わり方だったり劇団アンティークスとか制作「山口ちはる」プロデュースものの舞台が好きな人はきっとハマる、ソースは私である笑。

①劇団アンティークス『時をこえて』(2023)

②劇団アンティークス『この世界がおわる前に』(2022)

③制作「山口ちはる」プロデュース『明日もう君に会えない』(2018)

 こうして見てみると二つの劇団アンティークスと制作「山口ちはる」プロデュースに言及しただけでも人が立っているモチーフのアートワークが多い。そしてその全てが(『兎姉妹』も含めて)どこか演劇らしい雰囲気を醸し出すように思えるのは私だけだろうか。

 あとこれは偶然だけど『悲劇のアルレッキーノ』等の舞台作品でお馴染みの東京で活躍されてるNanaさんという顔見知りの女優さんが『兎姉妹』のフライヤーデザインされた方と舞台で共演されてたってのお聞きしてなんとなく舞台演劇のフライヤーを彷彿とした所在がわかって凄く納得した。ちなみにXでエゴサして行くうちに分かったのだがフライヤーデザインの担当は廣田琴美さんという役者の方が担当しているらしい。

そして本作は実は2回見ている。

1回目はどちらかというと姉目線で鑑賞したが2回目は妹目線の心象風景にフォーカスした。

あの狂気乱舞な宴会シーンがどこか人間の性(さが)の物哀しさを感じるなどより深く世界に浸れたし、昨日は唐突に思えたあの衝撃の結末に至る過程が分かった気もした。

3-2 バニーガール論

ここでちょっと話がフェティシズム方向に走るが、今回のテーマはバニーガールという事で「網タイツ」を展開したい。そう、「バニーガール」といえば網タイツを着用する事が半ば暗黙の了解になっているものだが、これは全体的に黒い衣装なので黒っぽくするということからかもしれないが誰もが最初に気づくかもしれないこととしてポスターヴィジュアルにおいてバニー姉・佐々木燈は網タイツを着用していない状態なのだ。

でも、前半部分では当然ことながら燈は網タイツを着用していることが以下の写真からも伺える。

これが何を意味しているのか?

 もちろんネタバレなしブログなので敢えてそこはハッキリと明言しないが、そういうシーンがあるわけではないがとある事が行われたからである。そしてある種この事実が二人の姉妹が各々、温泉コンパニオンという職に徹する「バニー」であるか、はたまた親に翻弄された孤独な「兎」であるかを区分するボーダーラインとなっていることを示唆しているのだ。

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 そうしてこの「うさぎorバニー」かという相違がキッカケとなってこの兎姉妹は事実上の崩壊を迎えることになり、ゆくゆくはそれがあの衝撃の結末を迎えるのではなかろうか。

だが、本作を鑑賞して一週間近く過ぎようとしているがそれ以来この哀しい2羽の兎がまだ私の心の中にいる。舞台挨拶でも監督ならびに高尾氏が言及していたが、本作では敢えて台詞や演出等を削ったりして敢えてこその「余白」を残したと言う。でも先ほどの章でも述べたが、あの人参ゲームだの旅館での宴会中のハレンチ寸前の大騒ぎシーンは、高尾氏はもっと刺激的な描写があっても良いと思ってたそうだけど、私はこのぐらいでちょうどいい塩梅なのだ。舞台挨拶でも高尾氏は「男性と女性とで色物〜シリアスの観点が異なる」みたいな事を仰ってたがこれは突き詰めると「バニーガール」というあのスタイル自体に男女間の見方の相違に起因すると思う。男性にとってはあのスタイルはどちらかというとエロティック・フェティシズムな対象としてみられる事も多いのに関して、女性にとっては可愛さ、セクシー、コスプレの一環などスタイリッシュに見られることが多いように思う。で、ここ最近後者のスタイリッシュ傾向の方が強いような気もするが、それにしてもその意味でも本作における【温泉コンパニオンとしてのバニーガール】という題材はハレンチになりすぎすしかも非日常的であり、本当にギリギリかつ絶妙な設定なのだと思う。

 

4.うさぎの未来

 そうなると、いつか本作がもっと浸透すればさまざまな年代の女性客のレビューなども読んでみたいと思う。あるいは(これは男性・女性に限らずだけど)もっとイマジネーションの豊かな人が見たら二人の兎姉妹のファンアートなども生まれるだろう。それぐらいスタイリッシュで自由な発想を刺激する作品だと思う。

本作のグッズもTシャツ・クリアファイル・ポスターと三種類ぐらい出ているがどれも本当に出来栄えが素晴らしい。

そう、私はこの頂いたポスターにあの中の新橋が誇るライブバー「アトリエペガサス(バーペガ)」宛に実はサインをして頂いてるのだ。理由はほんとシンプルで何か面白いことが起こりそう、の一点である。*2

来月末ににあそこにある私の趣味ゾーン「ネノメタゾーン」にこのポスターを貼りに行くつもりだ。

遠藤監督もいつかお邪魔したい、と仰ってるし、いつの日かここで何らかもケミストリーが生まれればいいと思う。以上、ネタバレない割にはもはや6000字近い記事になってしまったが、それほど本作は私の中に心のパースペクティブが生まれ、今なお余韻を生んでいる証拠である。
 という訳でこの現代社会が産んだ悲しくも美しくも、そして儚いフェアリーテイルに出会ったことに感謝しつつ本ブログを締めくくりたい。

 最後に、余白が余韻を生む珠玉の名作よ、また会う日まで🐇

 

Ideas are like rabbits. You get a couple and learn how to handle them, and pretty soon you have a dozen.

イデアとはうさぎのようなものだ。

あなたは2つ手に入れて扱い方を学ぶと、すぐに12に増える。

 

ジョン・スタインベック

(John Ernst Steinbeck, 1902- 1968 米小説家・劇作家)

 

 

*1:うさぎの起源:「幸運」や「商売繁盛」:うさぎは運がついている月(ツキ)にいることから。 「飛躍」や「向上」:うさぎはぴょんと大きく前に飛ぶことから。 「子宝祈願」や「繁栄」:うさぎは多産で生命力のシンボルであることから。 「お守り」や「魔除け」:うさぎの足には不思議な力が宿ると信じられ、持ち歩かれたことから。

*2:バーペガにまつわる過去記事はこちら。

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