【超絶速報】12/21 リリースHyper Vegaレビュー
本記事を執筆して半年経過した今日2023年12月21日、正にタイトル通り銀河系宇宙で最高に光り輝く曲がArisaZombieの誕生日とともに爆誕した。
そう、あのタイトルのこと座で最も光り輝く星であるVegaの如く輝く星のようであれ!と我々にとっても、そして自分自身にも言い聞かせるように歌い上げる爆裂エレクトロダンスロックチューンである。これは断言しても良いがちょうど去年の12月21日にリリースされた『Black Hole Love』に並ぶ、いやもはやそれすらも凌駕しているのかもしれないエレママの新たな風穴をこじ開けてくれるフェイズへの導入だとも言えよう。
もう去年からエレママの加速が止まらない。
もうこのままぶっちぎってしまえ!
そんな『HyperVega』という曲の持つ爆裂エレクトロックなイメージに加えて、ダンスミュージックならではの煌びやかさと華やかさとどこか和のテイスト漂う要素(これを通称「わっしょい」要素とでも呼称しようか...ってあんただけだろww)を加味したこのMVも素敵だ。
そして、本曲のRunning time 3分の中で終始上と言うより宇宙(そら)を見上げて歌うArisa Zombieがとても印象的である。
まあそう言う事なのだろう。
なぜここまでエレママが『HyperVega』という決定打のような曲を生み出したのだろう。
そこで思い当たる節がある。11月17日の神戸DQでのライブである。
ElectricMama (#エレママ) @神戸D&Q(11/17)
①Dystopia Parade
②Cosmic Zero
③普通じゃない
④Black Hole Love
⑤The Wall
⑥Zombie
あとこの日のLIVEのテーマを私なりに定義すると『Hyper Vega』だと思った。もう曲としての原型はなくてもこの日のギグが全力で『HyperVega』を示唆していたのだ。これはまんままだ未聴の新曲のタイトルなんだがどの曲も同じ曲であってもどこか違って新たなHyper Vegaモードで炸裂しているような印象を受けた。
全ては来月のArisa Zombie爆誕ライブにて明かされる!心の準備はできている。色んなLIVEに行って心の底からグワァっと何かを掻き立てるようなpassionが欲しいな、と思ってた矢先にジャストタイミングなエレママ。私も世界もエレママが必要だ。全曲私の身体に浸透している。
そしてこの日のというか定番セトリの常連である『The Wall』も凄かった。疾走感と熱狂を主体としたセトリを象徴すぎるかのように希望も絶望もロックダイナミズムもわっしょいも無い混ぜに「壁をぶち壊せ!」と叫び倒すArisa Zombieと稲妻に打たれたようにギターを弾き倒すKenji Zombieの姿に思わず涙が溢れた。そう、これがRockだ!
これがエレママだ。最終曲『Zombie』が最高の熱狂と共にエンディングを迎えようとする正にその瞬間エレママが神戸DQが放つ最大限の光に包まれた瞬間!!
私は確信した!!我々はこの世界で生きるのに4つのEで始まるワードを必要とすると!
endeavor
encouragement
enthusiasm
そして
ElectricMama
である!!
情熱と衝動とカタルシスと #エレママ と〜日本屈指のNWバンド、 #Electric Mama 爆裂レビューvol.1〜
Table of Contents
0.introduction
1. 最新レポ; 6/20『Black Hole Love』Release Party
2.エレママとの出会い、そしてライブ記録
Case(1)『Dystopia Parade』Release Party(12/21)
Case(2) 不思議回遊@大阪アメリカ村(2/12)
Case(3) 心斎橋 Pangea rale one stance pre.
『伊豆はどこだ』リリースライブsleeping leon Vol.8(2/17)
Case(4)『Dystopia Parade』Release Tour 4/7@D×Q神戸3.エレママ 全Album Review &More...
3-1.『The Wall』(2008)
2-2.『Zombie』(2011)
3-3.『1982』(2016)
3-4.『ELECTRICITY』(2018)
3-5.『Moment』(2019)
3-6.『Dystopia Parade』(2022)
4.エレママを紐解く2つのキーワード
Keyword (1) ;tension
Keyword (2) ;transform
0.Introduction
女性のファッション業界に一大革命を起こした、あのCoco Chanel(1883-1971)はこう言った。
Don't spend time beating on a wall,
hoping to transform it into a door
壁がいつか、扉に変わってくれるだろうと期待して、
壁を叩き続けて時間を無駄にしてはダメよ。
(ココ・シャネル)*1
それにしてもここ最近コココロ(ウパルパ猫)だ、植城微香だ、優利香だ、ぽてさらちゃん。だ、ヤジマX、Rale One Stanceだ、thanなどの関西発のミュージックシーンが東京のミュージックシーンに負けず劣らずとてもアツイのを感じる。*2そんな中で忘れてはならないのはここにもう一つ一際アツイバンドがいる。パッションとカタルシスとダイナミズムと「わっしょい」を共存させるあのバンドである。そう、これぞ今回の記事のメインテーマである、
ELECTRIC MAMA(以下、エレママ)である。二人は2004年あたりから関西を中心に活動しているArisa Zombie(Vocal)と
Kenji Zombie(Gt.Vocal)から成る男女から構成されるツーピースバンドである。
彼らのロックスター然とした佇まいもさる事ながらスタイリッシュさとそれを良い意味で覆すエモさとが共存している唯一無二のバンドであると断言して良い。
なんとなく現在の二人のルックスから察するに同じRock好きでもパティ・スミスやエアロスミス辺りにルーツを持つロック姐さんな雰囲気を醸し出すArisa Zomieとナイン・インチ・ネイルズに顕著なオルタナティブロックにルーツを持っているひたすら音像を極めるギターオタク的な雰囲気のKenji Zombieというこの対照的なこの二人のバランスも絶妙である。
この二人の曲作りの構成はどうなっているのだろう。
それは以下のKenji Zombieのツイートが示唆的である。
歌・作詞・作曲 / アリサゾンビ
— KENJI ZOMBIE@エレママ (@KENJIZOMBIE) 2023年6月28日
ギター・作曲・トラック制作・ミックス・マスタリング / ケンジゾンビ
曲の完成までの時間の85%ぐらいがトラック制作・ミックス・マスタリング。
作曲と歌と演奏はもちろん、トラック制作・ミックス・マスタリングのクオリティをどこまで上げられるかに命かけてます。 https://t.co/8Yq7PuH2d7
ふと「2人組でエレクトロとロックサウンドとを融合させるバンド」と言えば、個人的には、1993〜1996年の僅か3年間であるが3枚の傑作のオリジナル・アルバムを残し、ブレイク寸前に横浜アリーナをソールドアウトさせて解散した車谷浩司(現;Laika Came Back)と石田小吉(現;石田ショーキチ、ex.Scudelia Electro)から成るSpiral LIFEと符合する。彼らもエレママ同様、主要メンバーがサポートを取らない本格的にギターソロをも弾けるギタリストであるし、LIVEでは音源で聴くクールなエレクトロサウンドを武器としながらも、ライブではそれを乗り越えたロック寄りなパフォーマンスを展開している点が共通していると考えている。
或いは1998~2000年初期に数々のアルバムをリリースしたWINOというモロにオアシスに影響を受けたバンドを解散して突如ダンスミュージックを主体としたアルバムをリリースした「JUN」を彷彿としたり。彼はポップスのロマンティシズムをダンスミュージックの煌めきで盛り上げていくあの感じには紛れもなくエレママにも共通しているのはなかろうか。
あとダンスミュージックに目覚め始めた頃の「ねごと」という女性5人組バンドを思い出す。エレママの「生命のダンス」とかまさに「アシンメトリ」と双璧をなす印象がするし、聴いた時のエモ度数がとても近いようにも思えるのだ。
以下、エレママのレママとの出会いから全6回に渡るライブレポ、Album Review、そしてELECTRIC MAMAというバンドを紐解くキーワードを見つけ、更に掘り下げていこうと考えている。
1. 最新レポ;6/20『Black Hole Love』Release Party
『Black Hole Love』Release Party&ケンジゾンビ爆誕祭
ELECTRICMAMA Main Act
Set list
1.生命のダンス
2.Ginga
3.Cosmic Zero
4.Dystopia Parade
5. Black Love Hall
6.Planet Nine
7.Zombie
一曲目、ボーカルのArisa Zombieが抑えられない感情を爆発させるように「祭りだわっしょいしようか〜!!!!イヤェエエ〜!!!!愛をありがとう!!!『生命のダンス』!!!!」と一曲目のタイトルを叫び、新曲のリリースとメンバーの誕生日を祝うこのイベントライブの幕が切って落とされた。正にElectronicなサウンドだとか 拳突き上げるインパルスだとかオーディエンスの熱狂だとか全てが繋がった瞬間がここに始まった。ここ最近のロックバンドでここまでのカタルシスレベルのカッコよさを演出できるバンドは極めて少ないのはライブによく行く人なら誰しも実感することだろう...正にエレママがエレママを極めた26分50秒である。
そしてこの『生命のダンス』は紛れもなく踊って狂える爆裂ダンスロックチューンである。だが、この曲は単なる生ぬるい共感や盛り上がりだけにとどまらないのは以下のフレーズに示唆されている。
どれだけ多くを語っても
きっと君には届かない
届けない 届けない
という【分かりあえないことは悲しくて、悲しいからこそ美しい。】という常日頃から私自身がポップミュージックになくてはならぬドグマチールのようなものと符合する瞬間もあったりするのも大きなポイントである。人とは決して分かり合えない存在でもある、こう思えることを心底を美しいと思う。
世の中にはポジティブな歌が溢れていてあまりにポジティブなメッセージすぎてそれが逆に自分にとって苦痛なものでないと思うことがあるからだ。たとえ絶望を歌った歌であっても、やるせない悲しみを歌った歌であってもやはり何か光が溢れていたらそこにはポジティビティを感じるものである。そしてやや飛躍するが私がエレママに共感している最大の理由はそこである。彼らの音像は常にディストピア(Dystopia)だとかブラックホール(Blackhole等)のある意味広義な意味での「絶望の地」から鳴らされるからである。そんなアンダーグラウンドから鳴らされる音像は怒りや苦悩に満ち溢れている一方で希望の光を見ださんとするロマンティシズムも共存したりして。 このエレママとしては最も新しいダンスチューン『Black Hole Love』はセトリのどの位置で放たれるかに注目していたが、なんとなんとライブでよくある「お試しに最後アンコールで」というライブではよくあるパターンではなく、正にダイナマイトにニトログリセリンをぶち込むかの如く最も盛り上がりを加速させるような中盤でのパフォーマンスだったのだ。
そう、彼らは既存の盛り上げ必須曲となっているようなキラーチューンに頼らず真っ向勝負に出たのだと悟った。こうしたアティテュードこそ最高の起爆剤だとにかく今はこの新曲の爆誕を祝したい。最近ワチャワチャやりましょう的ないわゆるワチャ系のバンドが激増してウンザリしているのだが、あれらのバンドにはなくてエレママにあるのは「怒り」「苦悩」「アングスト」が源に発せられる音楽だからだと思う。私は音楽に安易な共感などいらないと思う。 だから私はこの日6曲目に演奏された『Planet Nine』にどの感情にも属さない涙を浮かべひたすら拳を突き上げるのだろう。
そんな訳で、エレママ は単なるロックバンドではなくその背景に様々な、特に80s以降の引用を感じているがそれが最も顕著に伝わってくるのが本曲である。それはAerosmithであったりJoy DivisionであったりMichael Jacksonであったりとそれをうまく j-Popの文脈に昇華していると思う、と同時に彼らにはどこか日本のrockのニューウェーブ的なスタンスを保持するバンドだとも思ったりしている。
この辺りは最終章のキーワードを設定して考察することにして次の章では時間軸を戻してエレママとの出会いから現在に至るまでを軽く振り返りたいと思う。
2.エレママとの出会い
思えばエレママとの最初の出会いは2020年11/3(日)の大阪は京橋駅近くでの 「FLOOR 色s 」というライブカフェにある屋上テラス<野楽 -yagaku->での1stアクトだったと記憶している。
その時はアコースティックでの演奏だったので彼らの真骨頂であるエレクトリックなロックサウンドではなかったのだけど、「普段はもっと激しめなスタイルでLIVEをしている。」というMCだったりとかArisa ZombieのtシャツにJoy Dovision の名盤『Unknown pleasures 』のアートワークが描かれていたりとかアコースティックギターを鳴らしていたKenji Zombieの佇まいなどからどうも今日のアクトとは別ものの何かがあるんじゃないかと思ったものだった。それから帰宅して『生命のダンス』のMVを見て一際曲のエッジが立っていて、「めちゃくちゃカッコいい、これはいつか真骨頂スタイルのLIVEに行かねば。」と思ったものだ。それから2年後の2022年12月、初めて真骨頂のスタイルでのライブを見る事になるのだが、なぜここまで日数が開いてしまったのかと言うと単純に大阪中心で活動しているバンドだし機会があればいつでもライブで会うだろうという気持ちもあったし、正直このアコースティックスタイルのライブにそれほど心打たれなかったというのもあったと思う。まあアコギでは最高峰レベルに感動する曽我部恵一がトリだったってのもあったのだろう。それは置いといても、ここでは省略するが特にこの2年間の私のエンタメをサーキュレートする範囲が莫大に変化しても大きく広がっていった時期であった事も大きく関連している。
だが、やはり時は来る時はやって来るもので2022年秋の出来事。何か突然その瞬間がやってきたのだ。この年の6月20日に満を持してリリースされた『Planet Nine』を聴き、そのMVを観た時に正に能天を撃たれたような衝撃を受けたのだ。その時ハッキリ思ったのだ「私の中でエレママがズドーーーンとキタ!!!!!」と。もうこれは抜け目なくカッコいい、平和への祈りを独自のサウンドエスケープに閉じ込めたピースフル・アンセムであるこの曲に本当にやられてしまったのだ。
なぜ私は彼らを二年前に知っておきながらライブに行かなかったのか恥じるレベルだとすら思ったものだ。
....て事でこの半年で計5回ものライブにいきましたレポをあげておく。
Case(1)『Dystopia Parade』Release Party(12/21)
#ELECTRICMAMA
— ネノメタル𒅒Ahead of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2022年12月21日
『Dystopia Parade』リリパ
LIVEでは音源で聴くクールなエレクトロもワイルドなヴォーカルもギターサウンドも全てにおいてエモ要素が更に付加される印象。
もう今日vijonで鳴らされた音に一欠片の嘘もないと言いたげな圧倒的なパフォーマンス。
また一つLIVEレギュラーバンドが増えた。 https://t.co/nFfetFKj58 pic.twitter.com/TW1OKiqp93
Case(2)不思議回遊@大阪アメリカ村(2/12)
#不可思議回遊 での最高最強最狂アクトは紛れもなく彼らが持っていった。MJもNOもUnderworldもPatti Smithもあと「わっしょい」も全てのバックグラウンドを起爆剤として発火装置にぶち込んだ末のケミストリーがこの #ELECTRICMAMA である。『Planet Nine』ほど涙を流しながら拳を突き上げる曲は無い。 https://t.co/UiEK5WZtw8 pic.twitter.com/MWRQe1ptC3
— ネノメタル𒅒Ahead of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2023年2月12日
Case(3) 心斎橋 Pangea rale one stance pre.
『伊豆はどこだ』リリースライブsleeping leon Vol.8(2/17)
『Addiction Q』を聴きながら【情熱とカタルシスと衝動を残したまま】
— ネノメタル𒅒Ahead of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2023年2月17日
という句は #ELECTRICMAMA の本質をズバリ突いていると思った。
ロックから得られる衝動的なダイナミズムとダンスミュージックのもたらす覚醒感とjポップ特有のエモの部分とを一つのステージで成立させる彼らは最高にカッコいい。 https://t.co/4WlJ2SkWdj pic.twitter.com/lOjz2yc6DI
Case(4)『Dystopia Parade』Release Tour 4/7@D×Q神戸
そして最も印象的だったのはD×Q 神戸での1時間ほどの長尺のライブである。
『Dystopia Parade』Release Tour 2023/7/4
@D×Q 神戸 Set list
1.Magic
2.生命のダンス
3.Ley Line
4.Ginga
5.Cosmic Zero
6.Planet Nine
7.Dystopia Parade
8.普通じゃない
9.The Wall
10.Zombie
『生命のダンス』が鳴り始めた瞬間エレママの2人が【音源の再現者】という枠組みを超え音の一部になったような不思議な感覚に陥った。大袈裟でなく完全に音楽と一体化しているようだった。勿論物販でハッキリそう伝えた。これは常に真摯に音楽にLIVEに向き合ってきた彼らの境地である。この背景に何があるのか?indie、EDM、HM/HR等様々な音楽的背景を音像に詰め込んでおきながら「そんな事どうだって良いんだ!今ここで踊ろうぜ!わっしょい!」と言ってしまえる潔さが今のエレママの強みだ。そう考えると『Planet Nine』において高らかに歌われる「愛」の意味が一層深みを持って響いてくる。
我々は生きている限り様々なものにさよならしなければならない。昨日の自分さえも振り切って先へ進む事もある。だが、私は音楽を愛する事だけは決して卒業する事はできない。
この41分の【ノンストップ・エレクトロ・ロックンロール・わっしょい・ゾンビ・パーリー】を経てエレママはそう教えてくれたのだ。
次章ではそんなエレママの全アルバムの独断に満ちたディスコグラフィーを時系列を追ってレビューしていきたい。
2.エレママ 全Album Review &More...
2-1.『The Wall』(2008)
布袋寅泰のプロデュース曲であり今もなおライブレパートリーでもあるオリジナルバージョンの『The Wall』に始まり布袋寅泰によるプロデュースバージョンの「Solid Beat」と明記された布袋寅泰によるプロデュースバージョンの『The Wall』に終わるという『The Wall』が主体となっている、当時はドラムを担当していたArisa Zombieの荒削りながら初々しいボーカルがとても印象的な1st。全体として現在のモードからはハッキリとは見えないようなローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリン、AC/DCにジョーン・ジェットなどなど、ロックの王道を前面に出したワイルドなハードロック路線が特徴だけどそれがこれらはどこかLIVEでのRock爆裂モードと連動するようにも思える。どの曲も一発録りとのことだが個人的に気になったのはほぼArisa Zombieが中盤で叫ぶ以外が一切歌詞のない超絶インスト曲『COOKOO-Ⅵ COOKOO-Ⅵ 』である。この曲の中で込められたRock的な衝動が今もなおエレママのコアを支えているような気がしてならないのだ。*3いずれにせよ、このアルバムこそがエレママというバンドの始まりの景色であるのは間違いないだろう。
2-2.『Zombie』(2011)
彼らのLIVEにはクールなエレクトロモードとワイルドなロックモードとがあるが紛れもなく後者のモードの原風景が本盤にある。
『AdditionQ』に【情熱と衝動とカタルシス】というフレーズがあるがこれはまさにElectric Mamaというバンドの核(Core)を言い当てていると思う。本盤でも印象的だったのは『Call Me』というシド・バレット在籍時の『夜明けに口笛吹き』辺りのピンク・フロイドのような暗闇から鳴り響くこの濃密な2分間のサイケデリアに息を潜めるように聴いてしまう。これは正にエレママというバンドの奥行きを感じさせてくれる一曲だ。
2-3.『1982』(2016)
エモーションとエレクトロの織りなすテンションの華麗なる融合、それがエレママの魅力の一つだとしたら本盤は正にLIVEにおけるElectric Mamaを最もそれを雄弁に音像化している。
以前TwitterでKenji Zombie氏とやりとりした記憶を巡れば
このアルバムはぼくがDTMはじめてすぐに制作したので、あとになるほど技とトラック数が増えてきます!
『1982』はダンスミュージックのいろは的な初期衝動のアルバムです。
とのこと。確かにこの初期衝動に満ちた『1982』を聴いてから改めて後にリリースされる『Electricity』『Electricity remixes』『Moment』『Dystopia Parade』辺りを聴くと、あらゆる意味で「研ぎ澄まされた感」を感じる事ができる。本盤はさしずめビートルズ文脈で言うところの『Revolver』でありプライマルスクリームだっったら『Screamadelica』でありMassive Attackにおける『blue lines』であったり過去のレジェンドが「ようやく必殺技を得た」瞬間に生まれたような気づきに満ちた傑作群と同じ匂いを放つように思えるのだ。その証拠として『Ginga』『Zombie』などのライブレパートリーもしっかりと収録されている。そしてそうした文脈を踏まえてラスト曲『Last Summer』を聴くと日本にようやくセカンド・サマー・オブ・ラブのようなビッグ・ムーブメントが到来するのではないかとすら思えたりして。*4
2-4.『ELECTRICITY』(2018)
彼らの「わっしょい」モードとクールなエレクトロモードの中で紛れもなく後者の原風景が本盤にあり先に述べた『Zombie』とは対照的なスタンスにある。
だがクールネスに留まらずどこかエモーショナルでノスタルジックなのはArisa Zombieの歌声のなせる技である。そしてノスタルジックという点に焦点を絞ると『普通じゃない』が象徴的で本曲はどこかエレクトロサウンドに歌謡曲要素も色濃くてそれがクセになる曲という印象である。まさかのあの大阪は鶴橋駅前の商店街をぶっ通しワンカットという予想の斜め上をいくMVである。
ここでのノスタルジーの所在は実は歌詞にあって
少女の前では残酷に子供になるんだ Bye Bye
の辺りにどこか相川七瀬『夢見る少女じゃいられない』のようなヤンキー文化を経た当時の若者が歌うポップスの面影を見る気がするからというのもあると思う。この辺りの影響についてはよくわからないが。
*5ちなみに本盤には『Electricity Remixes』なるオリジナルと曲順をそのままにしたKenji Zombie によるremixヴァージョンなるものも配信のみにてリリースされている。だがremixとは言えNine Inch Nailsの名盤『The Downword spiral』のremixバージョン『Further Down the spiral』のような原曲をスクランブルするような「再解釈」というニュアンスではなくあくまで原曲のメロディーラインなどのイメージを遵守した形でアレンジの先鋭化している印象。
更に本アルバム『Electricity』は限定でカセットテープもリリースされている。*6
2-5.『Moment』(2019)
本番は『1982』以降のエレママ 特有のRockスピリットとエレクトロのクールネスとの絶妙な塩梅で配合されている。
そして更に本盤ではその二つの要素に狂おしいまでのエモーショナルな一面が『裸のマッドネス』や『Rain Fall Down』において表現され本盤を一層深みのあるものにしている。
さて、ここでの「エモ」の要因とはなんなのか?
例えば『裸のマッドネス』における
足の指触れたい 僕は指の間を潜りたい
触りたい 隠れていたいだけさ
というフェティシズム入った屈折的な愛が歌われていることからも明らかだけど、おそらく私はこうした歌詞のみならずKENJI ZOMBIEのギターのエモさがこのアルバムで大いにフィーチャーされている点にもあると思う。『ELECTRICITY』に比べて、ギターサウンドが数多く加味された本盤を聴くにつけ、エレママ楽曲のスパイスとしてというより、このギターだけに改めてフォーカスして聴くと音色が凄くふくよかで、幻想的で、雄弁で、まるで言葉を放っているかのような印象がある事に気づく。しなやかさと強さと優しさが共存しているこのエレキの音色は、更にArisa Zombieの歌声とエレクトロサウンドとの間に立って両者をうまく調和させる効果があるのだと思う。
正に本盤は感情(emotion)と音像(sound escape)とを絶妙のタイミングで捉えた瞬間(Moment)の名盤だと思う。
2-6.『Dystopia Parade』(2022)
2022年も終わりを迎えようとしていた12月06日にリリースされた最新のアルバム。まずは理屈抜きに『Dystopia Parade』のスタートを飾る同タイトル曲が死ぬほどカッコいい。
全盛期のMしてそんなロックの衝動とエモさとが混ざり合ってエレママにしかなし得ない【カタルシス】がさながら音像として具現化した象徴のような曲がこの『Dystopia Parade』である。アルバムリードチューンならではのポジティブな光を放つ曲だけれどどこか泣けてしまう曲でもある。だからこのALを何度も聴いてしまうのだろう。映画『Cosmetic DNA』を思わせるめくるめく映像美も印象的な本曲、これがアルバム一曲目ってとこに余裕と自信を感じる。
Michael JacksonとUnderworld『Bornslippy』とが邂逅し、更にSPIRAL LIFEのロックモードも加味したような奇跡の一曲である。15年ほど日本のポップミュージックが忘れていたものがここにある。*8エレクトロとロックダイナミズムとが融合し、それらが単なる方法論ではなく聴き手の懐にバキバキに攻め込んでくる感じ。もしMichael Jacksonが生きていたらこんなアルバム出すんじゃないかなと思ったりする。そして忘れてはならないのが初期の彼らの代表曲であり今だにライブレパートリーの必須曲である『The Wall』がリアレンジンジされて蘇っているのも見逃せまい。私は個人的に「break on through to the other side」と歌ったあの60年代の伝説のバンド、ジム・モリソン率いるThe Doorsに匹敵する「壁をぶち壊せ曲」だと思っている。*9
3.エレママを紐解く2つのキーワード
彼らのステージを観てるとこれ夢じゃないかと目を疑う瞬間に見舞われる。煌びやかなエレクトロサウンドに包まれて全身真っ黒に包まれたスタイリッシュなゾンビ達は時に攻撃的に時に挑発的に大きなサウンドエスケープという名のモンスターを操る様はとてもクールである。本節ではエレママと言うバンドを考察するにあたって2つのキーワードを模索したい。
Keyword (1) ; tension
そしてエレママのキーワードについて考えてみたい。彼らの音楽を一言で言うと「テンション」だと思う。テンションとは【Tension】と綴り語源として【ピンと張る[張っている]こと、伸長】から成り立ち、以下のように定義される。
The definision of "Tension"
1. 《物理》引っ張り、張力
2. 〔ミシンなどの〕テンション調整機構
3. 〔文学作品の要素間の〕緊張関係、葛藤
4. 〔文学作品の〕劇的緊張◆【同】dramatic tension
5. 〔精神的な〕緊張、ストレス、不安
6. 〔人やグループ間の〕緊張、敵対意識
7. 《電気》電圧、起電力◆high-tension
この定義を見ると多く人は意外に思われるかもしれない。
何せ多くのアーティストはライブにおいて単に叫び倒したりするだけの行為は「テンションの高いライブ」はよく言うけれど多くのミュージシャンはその意味を誤解していることが分かるだろう。そう、「tension」とは上の定義からもはや「緊張感」に由来するものなのだ。そしてそれをライブ文脈に適合するとその緊張感とは「ヒリヒリ感」であってそうした感覚はライブに必要不可欠な要素だと思ったりしている。馴れ合いのバンドマン同士で肩組んで歌いましょうみたいな対バン形式のライブが本人達的には楽しいんだろうけど観る側はそうでもなかったりするのだ、残念ながら。更に最近ワチャワチャやりましょう的ないわゆる「ワチャ系」のバンドが激増していてウンザリしているのだが、あれ系のバンドには「お魚の小骨を全部取ってお子様に食べやすくしました」みたいな媚び媚び感に絶望しかない。あれらのバンドにはなくてエレママにあるのは「怒り」「苦悩」「アングスト」が源に発せられる音楽だからだと思う。安易な共感などいらないのだ。
Keyword (2) ;transform
今回リリースされた『Black Hole Love』、私なりの解釈として本曲に限りなく感じるのは「怒り」であり「熱狂」であり「アンダーグランドからの突き上げる拳の強さであり、そうした強さは1stアルバムの一曲目『The Wall』からずっと変わっていないと思われる。
この『The Wall』の中でArisaZombieは「壁をぶち壊せ」と叫ぶ。確かに彼らはこの曲を15年以上パフォーマンスし、常にそう歌ってきた。
だが、同じように壁をぶち壊すという全く同じ歌を歌っていても、初期のドラムを叩きながら歌っていた上田亜里沙と今現在のArisa Zombie、同じく激しくギターを掻き鳴らしてきた大島健司と今現在のKenji Zombieでは、やはりそのアジテーションの仕方に違いがあると思うのだ。
ただ闇雲に壁を叩くだけでは壁はぶち壊せないしその先へ行くにはどう行けばいいのか何をすればいいのかを知っている。
ここで望むべきはまさに2つ目のキーワードとなるのは変化Transformが必要なのだ、と。
The definision of "Transform"
1. 変える、転換[変換]する
2.〔~の外形を〕変形する3《数学》〔~を〕変換する《言語学》〔~を〕変形する
4.《電気》〔~を〕変圧する、〔~を〕直交変換する
5.《生物》〔細胞を〕形質転換する
この言葉は正に初期のハードロック・パンク路線である『The Wall』『Zombie』期を経て、エレクトロダンスの要素を音源に取り入れた『1982』『Electricity』、そしてこの二つの要素を融合しようと試みた『Moment』『Dystopia Parade』という大きく分けて3つのモードへとtransformationを繰り返しつつも壁を打ち破ろうとしてきた彼らのアティテュードと符合する。そう、Transformationという言葉でふとおもいだす節がある。
先にもレポーとした4/7にD×Q神戸で開催された『Dystopia Parade』Release Tour での出来事である。この日対バンのTiger&Dragonと言うインストバンドのアンコール時にArisa Zombieが急遽呼び出されセッション行ったのだ。この日のツイートで「エレママはもはやメンバー自体が音の微粒子だ」と断定したがそれを象徴するエピソードがある。
これがその時の動画である。
そう、インプロビゼーションとは思えないこのパフォーマンス。正に彼女自体が音楽なのだ。そして先に述べた通りKenji Zombieのギターも然り。音色が凄くふくよかで、幻想的で、雄弁で、まるで言葉を放っているかのような印象があるのだ。正にしなやかさと強さと優しさこの三つはギターの音色だ、ボーカルの特質だの話ではなくもっと深い二人の音楽人としての核(コア)に起因しているかもしれない。
そしてようやくこここまできた。
このブログ記事もようやくこの二つのキーワード「tension(緊張)」「transform(変化)」とを内包した、正にイントロダクションで引用したこの言葉に立ち返る。
そう、あのファッションの革命王、Coco Chanelによる以下の名言である。
Don't spend time beating on a wall,
hoping to transform it into a door
壁がいつか、扉に変わってくれるだろうと期待して、
壁を叩き続けて時間を無駄にしてはダメよ。
(ココ・シャネル)
ここでのシャネルの意図とは恐らくTake an another View(違う視点でものを見よ)であるとかThink Differentだとかいうニュアンス、と捉えるのが正解かもしれない。でも私はもっとそれ以上にもっとオルタナティブな意味合い、いや、もっと情熱と衝動に溢れと、カタルシスを求める姿勢を感じたりするのだ。
そう、やっとこれを言う時が来た。
そう、このココ・シャネルの言葉こそELECTRIC MAMAの音楽そのものを言い当てているような気がしてならないのだ。
そしてこの言葉を、全ての怒りに満ちた人に、ロックの神にに、ポップスの神に、音楽の神に、マイケル・ジャクソンに、イアン・カーティスに、パティ・スミスに、Nine Inch Nailsに、オアシスに、カート・コバーンに、ジャニス・ジョップリンに、ジョン・レノンに、そしてこの記事の最高の主役、Electric Mamaに、Arisa Zombieに、Kenji Zombieに最高の差し入れとして捧げたい。そして、この14263文字にも及んだこのブログ記事にピリオドを打ちたい。
情熱と衝動とカタルシスとエレママ と〜日本屈指のNWバンド、 Electric Mama 爆裂レビュー〜vol.1
【to be continued】
*1:
*2:関西発の主に音楽に関するエンタメはこの辺りの関連記事を参考に。
*3:この時期については以下の記事を参照にした。
*4:
*5:「普通じゃない」のmvについてはこの辺のインタビューが参考になる。
*6:エレママには更に唯一のDVD作品『Dual Core』も存在するがこれが死ぬほどカッコ良すぎる。扇町パラダイスで撮影しているが所謂ライブ映像ではなくこれは映像作品としてMVとしても素晴らしいもう至高の一枚。曲目もしっかりまとまっているので敢えて曲はいうまい。実はお土産にバーペガに持って行った。自分用にまたもう一枚買おうw。
*7:本論と全く無関係だが映画『Cosmetic DNA』に関するレビューはこちら。
*8:Arisa Zombieの曲演奏中の動きとか曲中にて「そうさ!」と掛け声のように入れる場合があるがMJの影響を受けていると個人的に思ったりしている。