NENOMETALIZED

Music, Movie, and Manga sometimes Make Me Moved in a Miraculous way.

鈴木実貴子ズ、リハビリワンマン@鑪ら場レポート!〜ライブハウスの未来は何処へ〜

1.今年に入ってダメなライブ何本目...

一曲目『音楽やめたい』の最初のフレーズが、元々の意味から別のニュアンスで解き放たれた瞬間、ここ2ヶ月間存在していた蟠(わだかま)りが徐々に音を立てて崩壊していくのを感じた。

そう、あの「ライブ」が帰ってきたのだ。

体全身を振り絞るように全身で絶望も希望もないまぜにしたような全ての感情のマグマを全身全霊「うた」と言う人間だけがなせる技に託して表現するボーカリスト、鈴木実貴子、そして、その感情から芽生える息吹きの一つ一つに水をやるように、そして特にこの日はいつも以上に解き放たれたような笑顔で力強くリズムを刻む「もう一人の鈴木実貴子ズ」の「ズ」ことドラマーいさみ氏、そしてまるで電流に打ちのめされたかのように終盤では弦を切るつつも全身でギターを鳴らすサポートギター、くろおかかくむ、そしてそんなエモーショナルの極みをグルーブに課していつも以上にうねりまくる舟橋孝裕のベース。

この瞬間、純粋にあのライブが帰ってきた、ここからまた「音楽を愛することをやめたいと言っておきながらやめられない」人たちの音楽が奏でられたのだ、と強く確信したのだ、この20人限定のライブスペースで..

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かくして「みんなのリハビリワンマン2デイズ」と呼称されたライブの二日目が開催されたのは、その舞台は愛知県名古屋市吹上駅から徒歩約10分ぐらいの所にある、彼ら鈴木実貴子ズの二人で、DIYで経営している、まさにホームグラウンド「鑪ら場(たたらば)」である。

 確か個人的にここに来るのは2回目で、1回目は個人的にはまだそれほど邪悪なウイルスにここまで翻弄されるとは予測だにしていなかった、まだ冬ど真ん中の2020年2月1日の出来事だった。この時はわたなべよしくに氏とのツーマンという形で行われたが、最早懐かしい気がするので一応ここに載せておきましょう(笑)

*1 


2/1/2020 鈴木実貴子ズ、わたなべよしくにツーマン@鑪ら場(FULL version)

それから4ヶ月、この時は真ん中ど真前と言う席だったが、今回は2回目なので少し端っこからカメラも固定しやすい椅子座席へとやや余裕の構えで音楽を聴くことにした。

 ちなみに鑪ら場のライブスケジュール等の詳しい情報はこちら。

tataraba-live.com

 

 2. Overview of「リハビリワンマン」

「みんなのリハビリワンマン2デイズ」とはなんだろうか?これは最近のコロナ禍ですっかり中止に次ぐ中止の嵐で、ライブというものにご無沙汰になってしまったミュージシャンと我々オーディエンス共々の為の、「ライブの時の感覚を思い出そう!」という双方にとってのリハビリライブというコンセプトの元で開催された名称である。

 以下、当日よりわずか3週間ほど前の5/15に初めて告知された時の二人のツイートである。

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この鈴木実貴子氏の告知にある通り二日間にわたり予約ありの二十人限定でマスク着用、アルコール消毒敢行など様々な注意事項を守った上で、更に通常2時間程要するであろうワンマンライブの半分の1時間ほどで2000円というやや縮小した時間枠と、かなり抑えた入場料で行われた。

 Focus1-リハビリどころかガチな本編


鈴木実貴子ズ at 鑪ら場6/7(日)【リハビリワンマン 二日目】本編

結論から言ってしまえば、はっきり言ってこれはリハビリどころではなかった。鐚(びた)一文たりとも妥協もない真っ向勝負のライブだったと断言して良い。

ただ、これまでと違って何と無く「リハビリ」を感じたのは、演奏中に敢えてエアコンを切っていたのだが、これは彼女らがこれまでのライブの感覚を体感から取り戻したい、という意向があった事、あとこの前日のことではあるが初日にサポートギターK氏のファスナーが全開のまま本人は愚か誰も気づかずずっと演奏していたと言う(←コレコレここに書くの止めなさいwww)エピソード自体に「うわぁ、リハビリやなぁ〜😅」と実貴子氏も言及していた事と、あとはいさむ氏がステージで飲むドリンクを間違えてあまり水分を取るって感じではない「スムージー」を持ってきてしまった事ぐらいだろう。

 にしても、だ。そのような「リハビリ感」はそれぐらいのもので、それどころかこれまで過去6回ほど彼女らのライブを目撃してきたが、中でも一二を争うぐらい、いや、それ以上に気迫のこもった沸点の高いライブだったんじゃないかと思ったほど。そのことがハッキリしたのは2曲目の『夏祭り』の後で「昨日は楽しかった。今日は少し余裕があって客さんのことをあまり考えていない。昨日は来てくれるお客さんのことを考えて楽しませようという思いがあったけど、今日は自分が楽しい!!という思いがある。」という実貴子氏のMCからも絶好調ぶりが窺えたし、更にその次に放たれた『チャイム』における

コンクリート 仕事 お金 通帳 ケータイ 保険 しがらみ 支払い つきあい

...年金 けっこん 介護 ....

 

を歌い終えるや否のタイミングでの地団駄踏み倒して叫び倒す実貴子氏の歌う姿が過去最高潮勝手くらい鬼気迫るというか、凄まじ過ぎて圧倒されたことからも明らか。

にしてもこの曲には

【気付けなかったな 夕焼けが綺麗なことを】

っていうフレーズが示している通り、ここまで美しくも儚げで希望溢れる曲だったんだなと改めて気付かされたものだ、まるでこの日に、【気づけなかったなぁ ライブってこんなにも楽しかったんだなぁと気づいたこと】私自身を象徴するような気分だった。

 更に新曲『光を刺す』を披露する直前に「自粛期間中にたくさん曲を書きました。今日はこうして皆んなの前で披露する機会があってよかった...」とその時、少ししんみりとした口調で実貴子氏は言ってたが、聴いてるこちらも思わずグッと来る感じはあった。

順番は前後するが、もう一つの新曲『常識とルール』の切れ味も凄かった。

【公園のベンチでまたがって新商品の唐揚げ食べてる 

                     コーラにメントス 僕には何がいるの?】

そんなどん詰まりのような日常の風景から怒涛のような激しいアレンジが待っているのだがその直前の実貴子のどこかに潜む敵を見据えるかの如くギラッと光る眼光の鋭さは、今回のライブのハイライトのひとつだった。多分これって鈴木実貴子ズ史上最もオルタナティブな曲かも。いや、もっとミーハーな言い方をすれば鈴木実貴子ズ史上最もニルヴァーナ的な曲だとも言えるかも。あの1994年のカートコバーン 死の直前『MTV Unplugged』のラスト曲『Where Did You Sleep Last Night』で最後「シヴァーーーーーーーーー!!!!!!!!!」と叫ぶ直前に、一瞬銃弾に打たれたかのように目をハッと見開く誰もが見てもあのドキッとするあのシーンを思い出した。*2

そして、今回個人的に収穫ってかレアだったのは、ラスト曲『なくしたもん』を放つ直前の今回のアルバム『外がうるさい』の代表曲であり、MVにもなっている口内炎が治らない』 を演奏し終えた直後に「ああー!!!楽しい!!!!」とさも嬉しそうに叫んだのを聞き逃さなかった。こりゃ冒頭のMC通り心底ライブを楽しんでるんだな、本当にライブの好きな人達なんだなと思ってこちらも心の底からこのバンドに出会えた事を嬉しくて、誇りにすら思えるほど。

久々のライブ、しかも鈴木実貴子ズのライブという、人によってはかなりヘヴィかつシリアスに捉えがちなライブだったんだろう思うかもしれないが(まぁ最初は自分もそう思ったわけだけど)、逆にすっきりとした晴れやかな気分でこのライブを楽しめたっていうのが意外と言えば意外なのかもしれない。繰り返すけどいさみ氏は本当に楽しそうにドラム叩いていたな、彼のMCもいつもの自虐要素にさらに磨きがかかってたしね(←良いのかコレ?w)

 もうこれはハッキリ言えるが自粛要請解禁後の初めてのライブがこの人たちで良かったと素直に思えた。これは今現在様々なアーティストやバンドサウンドを聴き、ライブにも足繁く通っている音楽ファンとしての私だが、このような清々しい気分でライブにのぞめたのは、他のバンドやアーティストでは無理で、この人達にしかなし得ない偉業であったとすら思えるのだ。

 

Focus2-ラスト曲からアンコール怒涛の2曲


鈴木実貴子ズ at 鑪ら場6/7(日)【リハビリワンマン 二日目】本編最後〜アンコール編

しかしまぁなんと言っても本編ラスト曲「なくしたもん」に尽きる。*3本曲のラストスパートあたり、実貴子の咆哮は過去最高記録更新かと言っても過言じゃないくらい叫び倒し、そしてサポートギターが、2:30辺りでギターの弦もブチ切れてるのが確認できるだろうか。もうソニック・ユースニルヴァーナマイブラが束になってかかって来たんじゃないかってくらい凄かったわ、今日オルタナティブアーティストよく出てくるな今日の記事w。

そしてふと時計を見れば、ちょうど1時間後の7時少し過ぎたあたり。そして客席からのアンコールの拍手が起こるか起こらないかの瞬間にもはや捌けることなく「もう一曲させて下さい。」と実貴子は嘆願した。そこから放たれた「あきらめていこうぜ」はこれまで以上に更にさらに声を潜めつつも、むしろ魂が込められたかのような静かな怒りの塊の凄み。

そして完全に時間をオーバーしたものの、まだ、あと一曲、とまるで千本ノックに食らいつくように放たれたアンコールの2曲目は「うたなんて」!!!!

 その中でリフレインされるフレーズにこういう歌詞がある。

 

【うたなんてくだらないけど最高に無敵な瞬間がある】

 

これだ。このフレーズだ!!!!!!もう正にこのフレーズの中に僕らがライブハウスに足繁く通い、緊張の面持ちでフロアに駆け込み、ステージの演者の登場に感動し、日頃の生活の中で噛み締めるように聴いてきた楽曲がそこで放たれるのに歓喜し、時に狂ったように叫び、時に涙する、そんな僕らがライブへ行く本当の真理が凝縮されているのではないかと思う。

後これは私の憶測なんだけど、これはバンドで示し合わせていたのか、鈴木実貴子のみが目論んでいたのかは定かではないが、このラスト3曲の『なくしたもん』『あきらめていこうぜ』『うたなんて』は、別にアンコールで演奏するだ、突発的に最後の最後に演奏する予定だとか云々は関係なく最初からかましてやるつもりだったのではないかと私は思っている。だってもうタイトルや歌詞そのものがストレートに今の今まであらゆるライブ空間を抹消してきたコロナ禍に対峙したバンドマンとしての意地と怒りと誇りに満ち満ちているではないか。

こうして終演後も残響音が鳴り止まなかった。これがライブだったのだ、思い出したよ!

もう去年半年の間に7回目のライブとなり、その全てになんらかのサインをもらったりしてるのでもうすっかり常連の域に達してしまって物販での鈴木実貴子さん、ズさんとの何気ない会話、*4 帰りの新幹線でのサイン入りの2枚もの『外がうるさい』*5を眺めるひと時、そして家に帰り着きかけてふと見上げる帰り道の月明かりの光がいつも以上に輝いて見えたことなど、目の前にある全てがLIVE、だという全部当たり前なんだけど歴然とした真理の有難みに改めて気付けたのだった。

 これまた当然のことながら、パフォーマンスが終わるや否や、勝手にプツっと画面が途切れてしまう配信ライブでは決して体感できないものである、と言うことを認識して私としてのリハビリライブは終了したのだった。 

 

鈴木実貴子ズ at 鑪ら場 6/7(日)

【リハビリワンマン 二日目 セットリスト

*6

①音楽やめたい
②アホはくりかえす
③常識とルール
④夏祭り
⑤これでもかと
⑥チャイム
新宿駅
⑧ばいばい
⑨光を刺す
口内炎が治らない
⑪なくしたもん

en.1 あきらめていこうぜ
en.2 うたなんて

 

 

3. Bring Me To LIVE*7

そう言えば、ライブが始まる3時間ほど前に新栄駅から少し歩いて行った所に名古屋を代表する「クラブロックンロール」という正にその名の如くって感じの老舗のライブハウスがあるのだが、そこで写真展をやっているといういさみ氏のツイートを目にしたので行ってみたのだった。

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ここにあるのは、今取り戻すべき日常風景の一つのシーンとしてのライブが当たり前のように毎日毎日開催されていた日常からふと離れつつも日常を彩るステージの数々。今までの本ライブハウスでのロックパフォーマンス名演の数々を現像した写真をズラリと展示したその光景はとても壮観だ。勿論中でも今日の主役、鈴木実貴子ズの写真も4枚ほど展示してあった。*8 でもスペースでジャンジャーエールなど飲みながら、何千枚とある写真を眺めていると、ステージ上でも、フロアでもこれでもかってくらい笑顔が咲き誇っていることに改めて驚愕したりする、そういや最近人の笑い声って聞いたことないよねえとか思わずしみじみしてしまったり。

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これらの写真を見ているとこういう光景に出会すのはいつのことになるだろう、案外すぐそこまできているのだろうか、まだまだ先のことなんだろうか、正直複雑な思いも禁じ得ないものである。そういや、最近、FMラジオ番組を聴いてると、色んなミュージシャンがゲストで出演した際に「コロナが完全に終息して、LIVEができるようになったら、もう久々すぎて俺たちもお客さんとともにとんでもない感動的なステージが作れそうな気がするよ。」と言ってるのを本当によく聞く。「よく」と言ったが、この台詞は誰かがゲストに出る度にほぼ100%じゃないかってくらいの確率で耳にするフレーズだ。でも今の私にはそういう戯事には全く同意する余地がないのだ。何故ならもうこの状況で制限しながらも最高のライブをやったのを目撃してしまったんだもん。しかも、我らが鈴木実貴子ズがひょっとしたらリスクも背負いかねないこの、2000円と言う破格の入場料でそれほど利益があるとは思えないながらも、20人ものオーディエンスと向き合った真っ向勝負のLIVEを二日間連続でやってのけたのを目撃してしまったもん。

もっとハッキリ言ってしまえばそのラジオのゲストミュージシャンの言い方が、その件の【感動的なステージ】というものも、最早夢見心地に単に自分に酔ってるだけの薄っぺらいセリフにしか聞こえ無くなってしまったのだ、正直。だって考えてもみて欲しい。

もう今の状況は緊急事態宣言が発表された2ヶ月前とは全く状況が違うではないか、ちなみに東京アラートって一体あれ何だったん??

「(たとえ制限付きでもあったとしても)ライブの開催は可能」となった今現在、我々に最も必要なのはそんな安っぽい理想を語ることではない。【オーディエンスに参加したい、と思わせるミュージシャン側のこの時期にだからこそ伝えたいという強い意思を提供する場としてのライブを行うこと】に他ならないのではないだろうかと思う。

 前の記事でも書いたが、別にコロナウィルス自体はライブハウス自体から発症しているわけではなく、たまたまコロナを発症している人がライブハウスにいた事に原因があって、そう言う人が野放し状態になってしまっているシステム自体に問題があったのだから最近政府が提唱している変な新基準などガン無視してしまえばいいのだ

 

全てに万全を期して互いに信頼してやりゃあいいのだ、もうこっちは覚悟はできている。

もはや、前進あるのみ、だと思う。

ドイツの小説家であり詩人ゲーテは前進という概念に関して素晴らしい名言を放っている。

最後に、この名言にて当初3000字程度のレポにしようと思ったのだが、思いがけずというかやっぱり7537字を超えてしまった本ブログ記事にピリオドを打ちたい。

 

He who moves not forward, goes backward.
「前進をしない人は、後退をしているのだ。」

                                            −Johann Wolfgang von Goethe(1749-1832)

 

*9

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:ただここで思うのが、正直、鈴木実貴子ズに関しては特にライブが途切れたという感覚はなくてむしろ常にライブをやって来た人だと言う印象しかない。恐らく以前ライブを見たのは3月15日という緊急事態直前に京都でもギリギリ目撃してるってのも大きいのだが、4月にアルバム『外がうるさい』もリリースしているから常に何かを発信しているイメージが他のアーティスト以上にあるんだな。ちなみに『外がうるさい』に関するこの辺りの過去記事は以下を参照願いたい。

nenometal.hatenablog.com

*2:鈴木実貴子ズには無関係だが、是非このvideoは見て欲しい。Nirvanaのライブ史上最も静かなライブだが、どこか不穏な空気が流れるパフォーマンスの数々。そういや実貴子さんはNirvanaは好きなんだろうか???

*3:その割には撮影中レコーディングが止まってしまったのだが、、、これもライブの神の悪戯という事でお許しを笑

*4:ちなみに今回二人の差し入れによくTwitter上で「寝れない、寝れない」と呟いている実貴子様には入浴剤『BARTH』を、漫画好きで多少私と趣向の合うズさんには和田ラジヲがカバーした『火の鳥』を差し上げた。

*5:なぜこのアルバムに2枚サインもらったかと言えば実は1ネタがあって...それはいずれの起こりうる素晴らしいことの布石として...ってなんじゃそらw

*6:参加していないが、リハビリワンマン1日目のセトリは以下の通り...

1.限りない闇に声を

2.口内炎が治らない

3.問題外

4.常識とルール

5.アンダーグラウンドで待ってる

6.バッティングセンター

7.アホはくりかえす

8.都心環状線

9.光を刺す

10.うたなんて

11.音楽やめたい 

*7:ちなみにここはEvanescenceの大ヒット曲「Bring me to life」にかけましたとさw

*8:勿論購入しました。大きさは3パターンあったが、ドデカいのは飾るスペースが限られるのでL2版とL1版を各二枚に留めておきましたとさw

*9:そう言った意味でこの鈴木実貴子ズがこのライブに踏み切ったのはレジスタンス的意味合いでもなく彼女らは一貫してそう言う姿勢を貫き通しているからである。そういう姿勢は本インタビュー記事を読めば明らかである。

mikiki.tokyo.jp