1.Impression
狂気と正気、愛と憎悪、人間・アーサーと道化師・ジョーカー、シリアスネスとエンタメ性、これら二つの両極端な要素が交互に交差し錯綜しトグロを撒き、やがて訪れる壮絶な結末へと雪崩れ込む展開に「鑑賞」というより「目撃」したとでも言おうか、正に期待通りの見応えある作品だった。

ただトレイラーで予測されたような「ジョーカーが牢獄から抜け出してハーレクインと組んで更に信望者を巻き込んでバンバン悪い事しまっせ!」みたいなエクストリーム要素はほぼゼロで、カリスマとなってしまったパブリックイメージと人に愛され愛する事に目覚めることとのギャップを意識し始めやがて苦悩することになる「人間アーサー」の心情が浮き彫りになる事に終始していくような展開が意外......というかちょっと拍子抜け感はあったのも事実。
で、ふと思ったけど個人的に2020年にリリースされた松本大樹監督『みぽりん』好きな人にはハマるかもとか思ったり。あの作品も世間における【アイドル】という虚像に理想を描きながらもそこに向き合いことごとく否定されて、やがて破滅してしまうミホ(みぽりん)の姿と世間から求められるダークヒーロー(=ジョーカー)という虚像に苦悩するアーサーとがどうしてもダブってしまうのだ。あ、でもその意味ではあっちの方がクライマックス付近の盛り上がりカタルシスはあったな。
それと趣旨は違うかもしれないが、本作のパンフレットに本作にはインディーズ映画っぽい的な記述があったが人間ドラマを鈍臭く描こうというアティテュードがあって、それは正に私が本作にインディーズ映画要素を感じた所在の一つなのかもしれない。
2.Focus
私は本作のトレイラーから今回当然のようにひっかかったのが所謂「ミュージカル」部分で、さあここからシリアスな展開に突入しそうな場面になろうとした瞬間に突如アーサーやハーレクインやらが歌い出す、というシーンに多少興醒め感が感じたのも事実。いくらなんでも裁判中に歌い出したのはナシだろ(笑)あれには否応なしに興醒めしてしまった。まあでも後々考えれば映画もファンタジー性を保つ為の手段としてああいう華やかな歌唱シーンを演出するいわゆる妄想と捉えれば納得のいく話ではあるんだけどやはり実写映画でそれは無理が出てくるものではないだろうか。
そこへ行くとあの今年の夏に観た『ルックバック』というアニメ作品における妄想描写はめちゃくちゃ神がかってたなぁ。あれも規模は違えど本作に負けず劣らずのシリアスなシーンのある作品なんだけどあの妄想描写で一気にエンタメ性を取り戻したから。
あとこれは特筆すべきだと思うがハーレクイン役のレディ・ガガが本当に素晴らしい。本作ではひたすら「推し」であるジョーカーに恋するかなりぶっ飛んだ前科ありの女性を演じてるんだけど、にも関わらずそう感情を表に出していないんだけど画面に彼女が立っているだけで完全に映画としてのドグマが成立する感じとか本当凄いと思う。今回アーサーは前作ほどエクストリームに走らないので、事実上の主役は彼女なのかもしれません。

それにちょっと関連して最後に一言だけ。
この『ジョーカー:フォリアドゥ』全世界で賛否両論巻き起こっててまあ私は絶賛サイドなんですけども、グッズ展開の「あり得なさ」にはもうゲンナリしたよね。
ただ『#ジョーカー2』私は大絶賛サイドなんですけども、このグッズ展開の「あり得なさ」にはもうゲンナリしたよね。
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2024年10月11日
というかフォリア・ドゥ要素ゼロやんけw
今作ではレディー・ガガ演じるハーレクインが凄くいいのは間違いないので最低限彼女のポストカードぐらいあっても良いと思うんだよね。 pic.twitter.com/5SVBKD5c3a
.....というかアメコミ風のジョーカーやらハーレクインで溢れてて今回のフォリア・ドゥ要素は全くもってゼロ。正確に言えばサントラCDのみなのだ。
そもそもDC系MCに比べグッズ展開における力の入れなさげはデフォルトなんだけど、今作ではレディー・ガガ演じるハーレクインが凄くいいのは間違いないので最低限彼女のポストカードぐらいあっても良いと思った。