Electric Mama(#エレママ)最新にして最高傑作『Rock N Roll Universe』爆裂Review!!
〜エレママにとってのブルースとは?
Table Of contents
0.Preview of the Review
1. 『Rock N Roll Universe』〜Overview~
1-1.Rock N Roll Universe
1-2.Hyper Vega
1-3.Taxi Driver2
1-4.Space Derringer
1-5.Sky Telepathy
1-6.Moon Diamond
1-7. Astro Dancer
1-8.Baby Don'tCry
1-9.Starship Blues
1-10.Black Hole Love
Appendix.Emperor Of Sunrise
2.エレママにとってのブルース、そしてレジェンドとは?
0.Preview of the Review
アメリカ合衆国ミシシッピ州ヴィックスバーグ生まれの主にブルースシンガーであるウィリー・ディクソンはこう言った。
ブルースはルーツさ
それ以外はみんなその果実(フルーツ)さ
「ブルース(ズ)」を知るというのは、人の気持ちや考え方を知るということなのかもしれない。人の苦境に我が身を置き換えそうなった時の気持ちや考え方を理解する。ブルースはロックの重要なルーツの一つであり、ロックの歴史におけるブルースの影響は計り知れないものがある。ブルースはロックの音楽的基盤を形成するだけでなく、ロックの精神やスタイルにも大きな影響を与えるものだ。そしてこれらのつながりは、音楽的な影響だけではなく、歴史的・社会的な背景にも深く連動するものだ。ブルースは、アメリカの黒人社会の文化を反映した音楽であり、ロックは、その文化を継承し、発展させてきた音楽である。ブルースとロックの歴史は、アメリカの音楽史における重要な部分であり、その影響は現在も続いているといえよう。そんな事を思って自身のアップルミュージックを使って「ブルース」を巡る旅をしていたら目を惹くアルバムに出会った。あのブルースのレジェンド、Muddy Watersが1968年に産んだアルバム『Electric Mud』である。これは古くからのブルースファンから賛否両論を呼びつつも若いヒップホップファンからは熱狂的に受け入れられたという点に俄然注目してしまう。この、ブルース→ロックの流れ、そして本アルバムに関しては以下のブログ記事において当時の状況が明確に記されている。
『Electric Mud』はサイケデリック時代を反映した実験的なブルーズで、発売当時は酷評された。マディ・ウォーターズが作ったアルバムと思えなかったからだ。だがそれは間違いだった。ヒップホップ世代の若者たちには革新的に聴こえたのだ。
正にここにブルースがロックの根源たりえる所以があるのではないだろうか。ブルースといえどもスタイルを巧妙に模倣するのように継承するのではなく時代の空気感を取り入れ、リアルの音を鳴らし、未来への言霊として羽ばたかせる為の音楽である。
正にこの時代以降の【ロック→プログレッシブ・ロック→パンク→ニューウェーブ→オルタナティブ...】と言った具合に次々に展開されてきたアティテュードが既にマディ・ウォーターズという古典的とも言えるブルースの英雄によって既に提示されていたのだ。
そして本題に行こう。この偶然にも彼のこのブルースという固定概念をぶち抜いたアルバムのタイトル『Electric Mud』にも似たバンド名が日本のインディーズシーンに存在する。ズバリ、【Electric Mama】(以下、エレママ)である。そして更なる偶然は彼らの現時点で最新作である『rock 'n' roll universe 』に関して個人的に強く感じる要素は【ブルース】だったので私の驚きは二重になった。*1ここで注記しておくと収録曲の中にはそういうブルース性を示唆しているものもあったりとかいうことは抜きにしてもコアレベルでそれを感じるのだ。そこで本記事では『Electric Mud』と【Electric Mama】、「ブルース」と「ロック」この偶然にも貼られた伏線のようなキーワードを基にこの『rock 'n' roll universe 』の収録曲をレビューしたいと思う。

1. 『Rock N Roll Universe』〜Overview~

このアルバムは2024年12月20日にリリースされた。とはいえそれ以前も含めて数多くのLIVEと共に駆け抜けたエレママの20年を象徴したかのような正に10もの魂の結晶がここに存在するものといえよう。従来の音源以上にBPM早めのクールなEDMロックンロールナンバーが続き、だからこそ8-9曲目に連続するロックバラードである『Baby Don't Cry』、それに続くエレクトリック・ブルース『Starship Blues』の展開がとてもエモい。
このようにクールもエモも熱狂も全てがここにある感覚はLIVEモードでのエレママをが炸裂した傑作であるともいえよう。
以前X(旧Twitter)にてこの盤を聴けば「少なくとも10回は宇宙にぶっ飛べます」と記述したことがあるがその理由を述べると、ラスト曲『Black Hole Love』でブラックホールにブッ飛ばされるのだ。また一曲目に戻ればいい。一度聴き終わっても回帰的(recursive)な流れになってるのでリピートが止まらないのだ。
そこにあるのは宇宙の普遍とロックとELECTRICMAMAと....わっしょい。『Rock N Roll Universe』はそういうアルバムである。
そして次にこのアルバムのアートワークにも注目したい。あの土星のようでもあり人間の瞳のようでもあり、SNS上におけるXのGrokのマークのようでもあり、その全てのようでもあり或いは全く未知のものでもあるようだ。
正に生活のワークスペースを彩る音楽が宇宙(space)を感じる世界観たり得る名盤である事を示唆している。
1-1.Rock N Roll Universe
『Rock N Roll Universe』の表題曲であり一曲目を飾るハイパーロックンロールチューンである。
中でも
感覚が研ぎ澄まされてく 光の速さで翔べたら
というフレーズがあるが正にエレママが構築するLIVE空間そのものを象徴している。本気の冒険が今ここから始まる🪐
この『Rock N Roll Universe』のMVにおいて「universe」というワードが「人類→生活→世界→宇宙」へと多様な意味を内包する事を証明するかのように「DNA→計算体系→脳内体系→銀河系」など様々な映像を垣間見る。
「この音像からあなたは何を感じる?」という彼らからの挑戦状がここにあるものといえよう。
1-2.Hyper Vega
一曲目の勢いを継承し「銀河で最高に光り輝く『Hyper Vega』 であらん事を。」と我々にも、エレママ自身にも問いかけるように歌い上げるEDMロックチューン。
【等身大から完全体、そして最果て】へと連動していくような世界観。ここから描かれる理想はロマンチシズムすら超えていくような感覚に見舞われる。それにしても、エレママのMVを観てていつも思うのが人間の計算体系に基づいた近未来像、宇宙観などエッセンスを維持しつつその曲にしかないオリジナリティも忘れない点。
本MVでは映画『Ghost in the shell (攻殻機動隊)』に顕著なオリエンタリズムが炸裂しているように思えるのだ。
1-3.Taxi Driver2
怒涛のエレクトリックダンスチューンの2曲を経て更に深くなっていく。正に永遠と幻想の狭間に揺れるようなイントロにグッと引き込まれ、まるでNWの世界へと【僕らを連れて行ってくれ】るような3曲目である。
#ElectricMama#TaxiDriver2 を初めて聞いたのは思えば、2年前夏のアコママ。その時の印象は音源におけるNWアレンジと言うよりもむしろ情感たっぷりのゾクゾクするフォーキーかつブルージーなアレンジで「わたしを置いていかないで」Arisa Zombieのモノローグと相まってヒリヒリと私の心を揺さぶった。 pic.twitter.com/13OpzXKmqE
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年4月4日
1976年の同タイトルの映画をモチーフに作られた事からも分かるように様々な情景も浮かぶ幻想的な一曲。TaxiDriver2 を初めて聞いたのは思えば、2年前の夏のアコママ(アコースティックスタイルでのエレママのライブ)である。
その時の印象は音源におけるNWアレンジと言うよりもむしろ情感たっぷりのゾクゾクするフォーキーかつブルージーなアレンジで「わたしを置いていかないで」というArisa Zombieのモノローグと相まってヒリヒリと私の心を揺さぶった。
更にいえば、ここ最近よくロックと政治性について考える事が多いのだが、ここで言う政治性とは社会性とも拡張されようが、ロックが社会的批評性を失ってしまったらそれはもはやロックどころかポップスではあり得ないとすら思う。
そう、本曲がそれを雄弁に教えてくれる。
論争が生まれていく
グラグラと崩れていく
さっき前の当たり前が
目の前で変わっていく

1-4.Space Derringer
今まで時折覗かせていたアイロニックな視点は消え失せ、タイトル通り世界へ銃口を突きつけるかのようなエレママ史上最もストレートさと攻めの姿勢をも同時に感じ取れる、思えば正に20周年アルバムのパイロット曲の爆誕だった。
#ELECTRICMAMA
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2024年9月13日
梅田BANGBOOと言う新たなライブハウスで新たに生まれた『#SpaceDerringer』という曲がまるで地上からスペースへ向かって打ち上げられた瞬間を目撃できて心底良かった。もはや無謀なまでに美しい光景だった。セトリハイライトに敢えて新曲で真っ向勝負をかけてくる #エレママ は最強だ。 https://t.co/Kvl9oHepS9 pic.twitter.com/2ba94w3fGJ
今夜新たな宇宙の誕生を祝福したい衝動を掻き立てるイントロが戦いの火蓋が切られた事を示唆する世界観を誘導する。
思えば『Rock N Roll Universe』とは飛翔のALである。
...というのも本曲で【羽ばたく】というフレーズがあり一曲目
光の速さで翔べたら
とシンクロするからである。
本MVでも「飛翔」というキーワードが翼を持ったバレリーナという形で具現化されている。更にディストピアを描いたジョージ・オーウェル『1984』のように操られた独裁者に洗脳されたかのようなTV男達の存在。どれも曲の輪郭を際立たせてくれる。


1-5.Sky Telepathy
アルバムも中盤戦。5曲目はKenji Zombieのボーカルである「Sky Telepathy」である。まず前提として彼のギターソロに感じる音色がふくよかさだとか、幻想性だとか雄弁で、まるで言葉を放っているかのような印象があるのだが本曲におけるこのボーカリゼーションには全く同じ印象を持った。
正にしなやかさと強さと優しさが共存しているのだ。
次に歌詞に目を向けてみよう。
空の向こう側 君へのtelepathy
正にここでも映像が浮かぶ音像であるといえよう。
映画『インターステラー』を彷彿させる一節で、あの映画に顕著な壮大なテーマの根底にあるヒューマニズムを感じ取れるエレママのもう一つの一面がここに。
そこにはKenji Zombieのボーカルにおける貢献度も高い。そして話は脱線するが本曲の浮遊感に関して思い出すバンドがある。ナンバーガール、くるりなどと共に1990年代末〜2000年の間コアながらもミュージックシーンを牽引してきた「snoozer系のバンド」であるスーパーカーである。
本曲を聴くと『YUMEGIWA LAST BOY』を聴きたくなる。
正に時を超えて音像達が共鳴し合う瞬間である。
#electricmama#ARISAZOMBIE爆誕祭
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2024年12月21日
ハイライトの一つがスーパーカー『YUMEGIWA LAST BOY』カバー!
ライトニングもわっしょいもKenji Zombieの優しいボーカルも2000年代当時音楽シーンにあったムーブメントへの予感もエレママは全部ここでエンターテイメントとして成立させた最高の音楽空間があった! https://t.co/UZQf84eRYB pic.twitter.com/pW1X9F9Wfj
1-6.Moon Diamond
本盤には一つの大きなコンセプチュアルなストーリーがあるのではないか?それを確証させるのが本曲『Moon Diamond』の存在である。
地上での運命に抗えず月へ向かって
今度はもっと分かり合えたら愛し合えたかも
と愛を希求する登場人物の心象風景を写像する本曲。
そして私はここにもブルースがあると考えている。
そしてこの曲に私はどこか先ほど引用したスーパーカー以降の90sJ-POPの幻影を見る気がする。どこか相川七瀬『夢見る少女じゃいられない』のようなヤンキー文化を経た当時の若者が歌うポップスの面影を見る気がするからというのもあると思う。この辺りの影響についてはよくわからないが。既存曲で行けば『普通じゃない』にNew Order『Blue Monday』要素を加味してJ-POPのロマンティシズムを浮き彫りにした印象がある。
1-7. Astro Dancer
そしてこのアルバムを全曲通しで聴いた人は、いや正確には昨年6月Kenji Zombieの誕生日と共にドロップされて以来、LIVEでも音源でも何度も聴いてきた人にとっては本曲のイントロが鳴った瞬間人半端ではないカタルシスがあるのではないだろうか。ズバリ『Astro Dancer』である 。
間違いなくエレママど真ん中であるこの楽曲。宇宙も愛もロックも全開だ。最近のエレママ新曲群は宇宙とリアリティとは常に地続きである事を教えてくれる気がする。そう「Space」が空間と宇宙を意味するように。
今回もAstroDancer とは決してアンドロイドなどではなく人だとでも言いたげな本MV。これほどスケールのでかいラブソングを他に知らない。
#ElectricMama
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2024年6月20日
Kenji Zombieの爆誕を華やかに彩る全宇宙初披露の最新型ニューウェーブ爆裂EDM#astrodancer!
vijonならではのライティングとのコラボは圧巻だった。
そしてこの曲は『imagine』を何気に散りばめる事で世界を見つめるArisa zombieの視点も垣間見る事のできる愛に溢れた曲でもあるのだ。 https://t.co/ujfOT6r6sf pic.twitter.com/N1OBlA9nKR
個人的に本MVは伝説のアップル社CM『1984』さながらデジタルディストピアに支配された社会に一人悶々としている女の子がやがてKenji Zombieのギターを浴び一人の人間としてそこから解放され恋をして夢を持ちダンスをするまでの物語と受け取っている。




1-8.Baby Don'tCry
『Rock N Roll Universe』とはエレママの進行形であると同時に集大成だとも位置付けていてそれを確信したのが『Baby Dont Cry』。
1stAL『The Wall』収録曲をセルフカバーというよりも今現在のテンションで真っ向勝負で演奏している。エレママブルーズは止まない。『Baby Dont Cry(『The Wall』ver.)を聴聴きながらブルースマン、ウィリー・ディクソンの言葉を再び思い出す。
ブルースはルーツさ。その他はそのフルーツさ。
ここからあのロックダイナミズムも強さの中の優しさをも感じる歌詞世界がスタートしたのかも。
正にエレママの原風景がここに。
1-9.Starship Blues
これぞ最新のエレママが今のモードで鳴らすエレクトロックブルースだ。それにしても全編に縦横無尽に広がるギターサウンドの煌めきは銀河の星の輝きのようでありキラキラと光る瞳のようでもあり...どこかアートワークともシンクロするようだ。
ある朝 孤独を感じて この世でひとり
どうしようもない寒さに動けなくなる戸惑い
心の奥では招いた鼓動あのこが小さい声で
ドアを叩くよ 呼んでる
どうして人は求めるのだろう
どうして人は繫がるのだろう
どうして人は与えるのだろう
どうしてどうして
ここで特筆すべきは、本曲の内省的とでも称しても良い心の叫びである。人によってはあの「わっしょい!」と叫び、ライブハウスをダンスフロアと化すあのエレママのライブから想像すれば、意外に思われるかもしれない。しかし、これを人が音楽を愛する理由という文脈で本歌詞を読み込んでいけば正に原風景でもあるのだろうとも考えたりもする。まさにここにあるのは普遍的なまでの人間の心象風景であり、言うなれば紛れもなくBlues(ブルース)なのだ。私はこの曲のみならず、このアルバム全体にブルースを感じる理由があるのは本曲の存在意義が非常に大きい。
1-10.Black Hole Love
アルバムラスト曲であり2年前のKenji Zombieの生誕を祝うようにドロップアウトされた最初の『Rock N Roll Universe』の要素を持つ曲である。
合図をするから来世で逢いましょ
『Distopia Parade』が「祈り」ならば本曲は「約束」の歌である。エレママ新曲『Black Love Hole』セトリのどの位置で放たれるかに注目していたが、正にダイナマイトにニトログリセリンをぶち込むかの如く最も盛り上がりを加速させる中盤だった!彼らはキラーチューンに頼らず真っ向勝負に出たのだ!
このアティテュードこそ最高の起爆剤だ。
本曲は『Distopia Parade』以後の光景のようであり、ROCKのドグマとはバカ明るい太陽光ではなくブラックホールシャドウから滲み出る歪な炎にこそ存在することを教えてくれる最高で最狂なスペイシーなダンスチューンである。
以前「エレママliveでは二人を操る"第三のメンバー"を見る瞬間がある。」とXでポストしたことがあるが、MVの担う役割がめちゃくちゃ大きいと思う。このカッコいい音像をビジュアライズ化する事によって更なる『Black Hole Love』像が確立するのだ。私なりの解釈として本曲に限りなく感じるのは「怒り」であり「熱狂」であり「アンダーグランドからの突き上げる拳の強さ」である。
もうバカみたいなことをいうが私には最近のワチャワチャ系みたいな内輪ノリの音楽は必要ない。エレママの音楽が、ライブがあれば生きていける、闘っていける。

Appendix.Emperor Of Sunrise
このブログ記事ドロップアウトより12日後、Kenji Zombieの生誕を祝うかのように生まれたまっさらな新曲だ。
そこに描かれるのは風、太陽、月、夢、そしてそこで鳴り響く懐かしい「音楽」の存在。
本記事で触れたようにスペーシーな世界にブルースを取り入れた傑作『rock 'n' roll universe 』の次なるヴィジョンがこの音像にある、と断言して良い。銀河を彷徨い、空との交信をし、ブラックホールを抜け、地上に降り立ったこの新たな光景は今まで以上に力強く鳴り響く。とここまで書いてふと思い出す曲がある。アルバム収録曲の『SKY TELEPATHY』である。まさにこの曲において登場人物は宇宙ではなく地球上にいる事が以下のフレーズで示唆されている。
空の向こう側 君へのtelepathy
そしてこの『Emperor Of Sunrise』も同じく「地上曲」であるのだが、どこかあの曲とシンクロし、時を超えて共鳴し合っているような気がするのは気のせいだろうか?
夜明けまで踊りたいよ
離れないで離れない
風と太陽息を合わせて
Emperor Of Sunrise
そしてこのmvも新境地だ。
従来のmvではライブシーン含めアクロバティックにパフォーマンスする二人の姿が描かれるものだが今回一切それがない。
動かぬエレママ。
無表情のエレママ。
歩き出すエレママ。
だが、二人の佇まいが既に音像を掻き鳴らしているのだ。
日常という名のスペースの中で日常という名のブルースを鳴らす。
2.エレママにとってのブルース、そしてレジェンドとは?
本レビューの締めくくりに2025年5月21日に寺田町Fireloopにて開催された「音不死-Autopsy-vol.2 大阪解剖室」での私にとっての最新のエレママのライブの模様をレビューすることで本記事を締めくくりたいと考えている。youtu.be
「音不死-Autopsy-vol.2 大阪解剖室」 @寺田町Fireloop
setlist
1.生命のダンス
2.zero
3.Black Hall love
4.Space Derringer
5.moon Diamond
6.rock 'n' roll universe
7.Baby Don't Cry
8.Dystopia Parade
9.Wall
10.Zombie
理由はシンプルで最&高を更新したからだ。もっと具体的にいえばこの日は特に『Evil Heat』期のプライマル・スクリームのようなエレクトロパンクスピリットを感じたからだ。『rock 'n' roll universe』に顕著なスピード感溢れるロッキンブルースとあの頃のプライマルに顕著な荒削りなEDMパンクとの華麗なる融合した正にオーディエンスの誰もが「世界はエレママが必要だ」ともわ思わせた瞬間でもある。
このエレママは日頃決して共演しないであろうSAISEIGA、ストロベリーソングオーケストラというメタルバンドが中心で、アウェイな雰囲気も確かにあった。そうした対バンだとかハコの資質を意識してか一貫して【攻めママ】であったと断言できよう。従来のライブスタイルに加え、ハードロック&ブルースの荒削りさに根差したエモさを投下したような印象を受けた。
そしてそれが顕著だったのはやはり8曲目の『Baby Don’t Cry』だったし、エレママの音楽が原点回帰するかのようにどんどんコアになりLIVEパフォーマンスも更にダイナミックになっていく事を確証させるのが本曲である。
5曲目『Moon Diamond』地上での運命に抗えず月へ向かい
今度はもっと分かり合えたら愛し合えたかも
と愛を希求する心象風景を辿るこの音像の美しさよ。
そして9曲目『The Wall』ここ最近、私は本曲が放たれた時にはもはや完全に目をつぶってしまっている。
この曲は聴くよりも観るよりも「体感する」に尽きるからだ。
音像のシャワーを浴びる。
ロックンロールを浴びる。
そして、レジェンド達の音を浴びる。
エレママは全てをフロアにぶつけてくれるのだ。ほんとに思うのが、エレママのライブでは色んなレジェンド達の面影を感じるのだ。最近よくロックと政治性について考える事が多い。ここで言う政治性とは社会性とも拡張されようが、ロックが社会的批評性を失ってしまったらそれはもはやロックどころかポップスではあり得ないとすら思う。
そう、本曲がそれを雄弁に教えてくれる。
それはニューオーダーであったり、スーパーカーであったり、プライマルであったり、アンダーワールドであったり、或いはエアロスミスであったり、パティ・スミスであったりと彼らが築いてきたルーツがフルーツとなり様々な形で結実しているのを感じるのだ。正にブルースがロックと化し、ヒップホップとしての萌芽を見出した1968年のMudy Watersのように。ここでARISA ZOMBIE、KENJI ZOMBIEの二人がが私にX(旧Twitter)でリプライしてくれた言葉を引用しよう。
私の背後では、レジェンド達がいつも投げかけてくるんです。
— ARISA ZOMBIE@エレママ (@ARISAZOMBIE) 2025年5月21日
いまここで終わってもいいと思ってステージに立ちなさいと!
いつも試されてる。
その
声が聞こえなくなったら終わりだと思ってます。
いろいろ思い出す言葉を、ありがとうございます。 https://t.co/OVzK3eZlYH
ロックンロールが生まれてまだ70年ぐらいしか経ってないですし、その時代をつくった人たちが未だ第一線で活躍してます!
— KENJI ZOMBIE@エレママ (@KENJIZOMBIE) 2025年5月21日
ぼくらは、先人がつくった道を辿って、その先の道をつくるのが役割やと思ってます。
温故知新と革新、ロックンロールはまだまだこの先も続きます!
『Rock N’ Roll Universe 』が世に放たれてから、また更にそのレジェンド達の数が益々激増しましていくような感覚を覚える。そうだ。エレママのライブはレジェンド達のスピリットを継承し常に進化し続けていく。
そして私はエレママを正に「更新し続けるロック史」である。そう言える根拠はもっとプリミティブな所にあるようにも思う。唐突に引用するが、あのアメリカの小説家、詩人であるヘミングウェイはこう言った。
The world breaks everyone,
and afterward, some are strong
at the broken places.
この世では誰もが苦しみを味わう。
そして、その苦しみの場所から強くなれる者もいる。

正にこの言説の中にエレママの音楽、そしてライブから感じるブルースやロックスピリッツは強さにこそあるのだと思う。
他のレジェンドたちがそうであるように。
そしてレジェンドたちよ、安らかに眠れ。
世界よ、今こそElectric Mamaを聴け。
これはそんな11767字の物語である。
#ElectricMama#EmperorOfSunrise
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年6月20日
夜明けまで 踊りたいよ
離れないで 離れない
風と太陽 息を合わせて
Kenji Zombieの生誕を祝うようにまた一つ新たなチューンが爆誕した。これは彼らの必殺技であるスペーシーEDMロックとは一線を画す、大地をしっかりと踏み締めて鳴らされるエレママのソウルがある https://t.co/Q0UZo6Qvnh pic.twitter.com/7lXx1E87bf
#ElectricMama
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年6月21日
はシステマティックなLIVEをやる印象を持っている人がいると思うかもしれないが実はフィジカル。それを証明したのが『Baby Don’t Cry』直前の機材トラブルからの復活。
ブルースの神、Muddy Watersが彼等を試したんだと思う。彼は丁度60年前に『Electeric Mud』という傑作を残している。 https://t.co/rNF2NUNuTC pic.twitter.com/7eGhVpcEFc
*1:エレママに関する個人的出会いや既存曲、アルバムなどに関する過去の記事はこちら。