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ぼけちゃん(#ヒミツノミヤコ)のいちばんおうた楽団「呪いは、にせもの」レビュー!〜ストーリーテリング・パフォーマー、ぼけちゃんの魅力に迫る〜

The flower that blooms in adversity is the rarest and the most beautiful of all. 
(逆境の中で咲く花こそが最も貴重でかつ美しい)
ーWalt Disney(ウォルト・ディズニー、1901 -1966)

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7/14日曜日、16時10分、「お魚フェス」というフェスにて初披露されたこの新曲『呪いは、にせもの』が途轍もなく素晴らしかった。
序盤でSmashing Pumpkinsの名曲『1979』のような坦々とした90sのインディー・オルタナティブロックなトーンの曲かと思いきや、徐々に熱量とバンドダイナミズムが上がる展開に圧倒された。


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本曲の根底にはあるのは「POPミュージシャンとしての理想への果てなきロマンティシズム」だと思う。
個人的にぼけちゃん の好きな点は音楽シーンにおける現在の立ち位置を踏まえながらもそれでも壮大なサクセスストーリーの主人公であり続けようとする点である。
こう言う視点から曲を放つシンガーソングライターは私の知っている限り皆無である。
そのことを証明するかのようにライブレパートリー曲である『宇宙感情線』の演奏直前直前、ぼけちゃんがフロアに向かって「歌になって下さい!」と言い放った瞬間、彼女をありきたりのSSWならぬストーリーテリングパフォーマー足らしめている理由が分かった。
もはや彼女の頭の中に自らを主人公に携えた壮大な物語のシナリオがあるのだ。
それは例えば、「いちばんおうた楽団」名義での最初に放たれた「 いとなみの中に流る音楽 」における

僕を知らない そんな事実がきもちわるいよな 

イヤホンから流れ出す音楽にも僕はなれたはずなのに

この始末さ

と言う一節にも如実に現れている。


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 断っておくが私はこの一節は決して現状否定の「自虐」ではなくサクセスストーリーへの伏線として捉えている。
我々はそんなミュージカルのような物語の歴史の目撃者でありそんな物語の加担者でもあるのだろう。
そして話を7/14の「お魚フェス」に戻すと、「嬉しい時も悲しい時も君の世界で私の音楽が鳴ればいいと思っている。君よ僕の歌になれ。」
要約するとこの日のMCで彼女はこんな風な事を言ったと記憶している。「呪いは、にせもの」と名付けられた本曲はそんなリアリズムとロマンティシズムのせめぎ合いから生まれた正に言霊のような名曲である、と断言したい。

 

Appendix;

ぼけちゃんソロワーク『みんなきらいだよ』レビュー

 本EPを聴き倒して思ったのは全曲が決してファンタジーではなく現実世界そのものの鏡だという事。僕らは日常という名の戦場を生きていて「全てぶっ壊れてしまえ」という思いに苛まれる事がある。そんな日々のアングストに立ち向かうぼけちゃんの強いアティテュードが垣間見える極めてオルタナティブ精神に満ちたアルバムであると思ったりして。だからこそ彼女がリアルと物語とを架け橋に突き進んでいるサクセスストーリーへの伏線がここにもあるのだ。ノローグと抒情的な歌が印象的な一曲目の『メンヘラポップの国』以下のフレーズがある。


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生きたいくせに、私は、死んでいる

このフレーズには実は既視感があって、それは90年代末期に鮮烈デビューした中村一義の名曲『ここにいる』の

見えないし、行けない。けど、僕達、ここにいる

とのリンクとその果ての光景を見る思いすらするのだ。
だが、ここにこそこの2024年の世の中を生きる上での光があるようにも思えるのだ。
安直な応援歌もラブソングも不要だ。この歌があれば生きていける。


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そしてこのアルバムは正に現代の【マザーグース】とも称すべき、キャッチーながらも全曲ある種の【毒】と【メルヘン】とのバランス関係が絶妙で何度も聴いてしまう中毒性にも溢れているがそれを象徴しているのが『友達なんてゆるさない』であったり、或いは『きらいきらい行進曲』であったりでそれを感じ取ることができる。


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『きらいきらい行進曲』に関して2023年10月から上演された映像劇団テンアンツ「探偵かねだはじめたがやすけ犬噛唐草殺人事件」で本曲を推薦し選曲に採用されたことがあるのだが、数ある選曲群の中でも特にこの曲のキャッチーさや中毒性や歌声などがなべやかんさんなどの出演者も観客問わず概ね好評だった。

この中毒性のある🐈ソング。聞けば聞くほど根底から滲み出る「全部○してしまえ」というアングストに共鳴してしまうが、劇中どう解釈されるのか?と興味があったのだが、ピュアながらどこか世の中を見透かす聡明な面が両者驚くほどリンクする、はるちゃん(古川藍)にはテーマ曲があるがもう一つイメージにピッタリだった。そして何気にはるちゃんのルックスがぼけちゃんとダブったりするように感じるのは気のせいだろうか。台本段階とは違って新たに『きらいきらい行進曲』の一節を彼女のセリフに加えたようだったし。

そして最後に話を「呪いは、にせもの」に戻そうか。

この曲の後半でぼけちゃんは歌うという範疇から外れもはやアジテイトするかのように叫ぶ。その時に我々はストーリーテラーとしてのぼけちゃんの歌の旅の途中のウォッチャーであり、加担者でもあるのだ。

そんな思いを込めてこの記事を終わらせたい。

僕が街に鳴る音楽になって
君を苦しめたい!
君を苦しめる雑踏を僕の音楽でかき消したい!
僕は音楽になって、夢になって、
君から、きっと離れない!
僕が音楽になって、夢になって、風になって、時になって、愛になって君を、この街にする。