『劇映画孤独のグルメ』レビュー

1.impression
本作を観て私はなぜこのドラマ版全シリーズを何度観ても飽きないのかに気づいた。
「孤独のグルメ」(ドラマ・原作漫画両方含めて)がどちらかといえば、主に、関東圏を中心として和・洋・中・その他と様々な美味いものを食す井之頭五郎の孤独かつ好奇心あふれるグルメ紀行を通じて、その街の活気や人情をどこかフワッと映し出してくれる作品であるのは周知の通りだが、本作では更に主人公である井之頭五郎という男が単に胃袋のみならず懐もデカい魅力的な人だという紛れもない事実に対峙することができるのだ。そして予想以上にドラマティックでホロリとさせて、少しシリアスさもある110分の「ヒューマン・グルメ・アクション(?)ドラマ、或いはロードムービー要素込みのヒューマンドラマ」とでも定義しようか、何書いてるのか訳わからなくなってるけど(笑)
で、ドラマ版との違いは五郎の「すいません〜、〇〇もください。」から始まる追加注文シーンが食事におけるそれではなく【パリ→五島列島→韓国→東京】というロケーション展開によるダイナミズムに置換されているのが特徴。そして今は亡きかつての恋人・さゆき、昔も今も腐れ縁の同業者の親友・竹山ら原作キャラにおける現状も浮き彫りになっていたりもするのでここから10シーズンに及ぶドラマ版をもう一度お代わりとして鑑賞するのも大いに味わい深いものだろう。
だがここで注意しておきたいのは「長編」という事で年末に放送されるスペシャル版の延長バージョンと言うよりも、むしろ昨年秋ぐらい少し前に放映していたたスピンオフ的なスタンスの異色作『それぞれの孤独のグルメ』に顕著な人間ドラマが反映されているかのように思える。実際あのシリーズで見受けられた設定がいくつか散見されていて、どこか地続き感を感じる事ができる。本作、五郎以外でも色んな人々における「それぞれのグルメ」が人間模様としてキッチリ描かれてるし。で、本作は既に2回観ているのだが、二回目は【『孤独のグルメ』が映画に?】ていうバイアスも抜けるので、二回目の方がよりヒューマンドラマ、とりわけ本作でのヒロインにあたる内田有紀氏が演じる志穂の物語の核を握る心象風景にフォーカスして鑑賞できた。

彼女の最後料理研究所の皆にあの完成したスープをもとにラーメンを振る舞おうってアクションがあるのだが、ひょっとして店主と「ヨリを戻す」って事の示唆なのだろうか?
この辺りは鑑賞者のジャッジに委ねられそうだ。主演井之頭五郎を演じている松重豊氏が監督なのだが初監督とは思えないほど巧みなストーリー展開である。
2.Focus〜音楽を中心に
更に言えばドラマ版の慌ただしさから解放されたゆったりと「ラグジュアリーバージョン」という気もしたのは劇伴による変化も大きい。本作では国内外いろんなとこで五郎さんは食事をするものだが、某所ではあまりにアグレッシブな食いっぷりなので爆笑してしまった。その意味で松重豊監督の古くからの盟友であるという甲本ヒロト氏率いるロックバンド、クロマニヨンズのテーマ曲が凄く馴染むし、あと「ふらっとqusumi 」でお馴染みの原作者でもある久住昌之氏によるサントラバンド、の劇伴群も少し映画用にアレンジされてて、音量も抑え気味でどこか余裕すら感じられる。
個人的にはスクリーントーンズ自体ライブに何度も赴いて久住さんには認知してもらっているぐらい大好きなので、彼らの楽曲『レガートワルツ』を、『伊豆Qのテーマ』を、『そよ風』を『リアスの海』などのドラマでよく流れる名曲群をあの広い劇場のスクリーンで聴きたかったというのが正直な所。私にとっての『孤独のグルメ』の根幹をなすのは『レガートワルツ』或いは『遥かなる大地』の雄大でこの嫋やかな調べこそが『孤独のグルメ』の根底にあるものだと思うから。
1. Screen Tones『レガートワルツ』
2. Screen Tones『遥かなる大地』
3. Screen Tones『リアスの海』
それとそれともう一つ。
本作のトータルタイムは110分。
もうここはジャスト120分にして残りの10分は久住さんが五郎列島の「みかん」ちゃんぽんではない裏メニューでも食べながら【麦ジュース】を堪能する「劇場版ふらっとqusumi 」を期待してたりして。そういや本作、酒飲んでる人が誰もいなかったよな。でも概ね評判もいいし、気の早い話だけど第二弾も制作されることだろう。その時には本作で意図的に排除されたであろうドラマ版要素も全開にしたバージョンの映画を実現して欲しい。そういえば久住昌之さんは弟との漫画家ユニットQBBにて『古本屋台』という名著がある。タイトル通り古本を売るある屋台のオヤジと常連さんとのやり取りを綴った激シブ漫画だ。いっそこちらもドラマ映画にして『孤独のグルメ2』と同時上映ってのはどうだろう?
久住昌之presents Qusdamashライブ@烏山Tuboから一週間か!#古本屋台 はご本人も仰ってたがタイトル通り古本を売るある屋台のオヤジと常連さんとのやり取りを綴った激シブ漫画と同タイトルの主題歌だ。ドラマ化を望む余り本人自ら作り、熱唱、熱演した珠玉の一曲!
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2019年8月29日
もう久住さん主演でどうだろうか? pic.twitter.com/EsfUC1QbLl
【付記】
本作とにかくオリジナルグッズの売れ行きが半端ない。初日にもかかわらず既に「腹が減った」のアクリルスタンドが売り切れになっていたし、2回目に見た時すべてのグッズが物販コーナーに消え失せしまってトレーディングカードのみ販売していなかった。
この作品がいかに愛されてるのかがわかる。
【悲報】
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年1月13日
ムビチケを定期入れに入れたら五郎さんが軽く覗き穴から見たサイコサスペンスの悪役みたいになるんですが😨#劇映画孤独のグルメ pic.twitter.com/afUD4PLCZg
#劇映画孤独のグルメ
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年1月13日
グッズで唯一残ってたトレカ2枚買ったがいずれも到底グルメ映画のワンシーンとは思えないものが出てきて笑った pic.twitter.com/CGLGkYBGRA
昨日はTOHOシネマズ梅田の松重豊監督舞台挨拶回行って参りました〜!
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年1月25日
質問コーナーでは音楽に関連の質問もあって志穂さんの心情を軸に「映画としての音楽を意識した」という趣旨が極めて興味深かったです。
それと関連してスクリーントーンズの音楽も映画バージョンになってる等の言及もございました! pic.twitter.com/xAToF4xNWZ
松重豊監督、昨日は来て頂きありがとうございました♪
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年1月25日
前方左端(B-1)からの景色です(笑)
ちょうどお隣に質問コーナーの時にフランスのル・ブクラに行かれたとコメントされた方々がいらっしゃいました🇫🇷 pic.twitter.com/qVI6XZ5Xh4
#劇映画孤独のグルメ
— ネノメタル𒅒Ahead Of the TRUTH (@AnatomyOfNMT) 2025年1月24日
舞台挨拶の松重豊氏質問コーナー全部面白かったが、特に興味引いたのが「なぜ今回は食べるシーンでスクリーントーンズの音楽が抑えられていたのか」的な鋭い質問。
答えは「映画としての音楽を意識した」と言う趣旨で、特に志穂(内田有紀)の心情をピアノで連動させたかったそう。 https://t.co/eK7btNbWp6 pic.twitter.com/vSWAmi3LKX