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『#愛なのに』(#城定秀夫(監督) × #今泉力哉(脚本))に関する覚書📙

「答えは風に吹かれている」と言われればそれまでだが本作はあまりにも答えのない風に吹かれすぎた印象。

0.preface
公開1週間経って今も尚、SNSのタイムライン上で大絶賛の声が止まない。昨日(3/8)平日の18時という中途半端な時間にもかかわらず、テアトル梅田では半分以上の席が埋まっていて、客層もいかにもなインディーズ映画ファン(察し)から若いカップルから阪急デパート帰りのような年配のご婦人に至るまでバリエーションに富んだ視聴者層だったように思う。
いわゆるスマッシュヒット感ならではという雰囲気が劇場を充満していた感じ。
さて、本レビューでは多少長くなるが本作を観てあるがまま思った事を正直に語り尽くしたいと考えている。


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1.Overview
ストーリー展開は

【ある30代の古本屋店主(多田)の元に何故か高校2年生ぐらいの女の子が彼に求婚するぐらいに思いを寄せていて、その彼にはフラれた憧れの女性がいて未練を断ち切れず、でもその女性(一花)は結婚間近で、その旦那になる男(亮介)はその結婚式を担当しているウェディングプランナー(美樹)と不倫関係にある。さぁこの群像劇の織りなす愛の行方や、いかに?】

というもの。

 

正にジャンルレス感満載で、恋愛小説も青春漫画も、官能小説も、あと殴り合いのシーンもちょいあるから格闘技もの(?)も一つの棚に同居する、まるで(こじ付けていう訳ではないが)この話の舞台である街の古本屋にさながらいるような空気感がとても心地良い、サブカル雰囲気映画の象徴のような作品だと思った。
いや確かに、TL上で主人公さながらの丸メガネちょび髭生やしたような、あ、あとベレー帽みたいな帽子も被った自称映画マニアみたいな連中が希少本を崇めるようなしたり顔大絶賛する空気はわかる。カタルシスは皆無だが語るに値する(シャレみたいなw)作品である事を前提として以下、吠えまくるつもり。

『街の上で』とのシンクロニシティでもふと思い当たる節がある。
この感触って本作の監督を担当してる今泉監督の『街の上で』さながらなんだよね、と思ったものだ。まあそう言う言い方をすれば年間ベスト10に選ぶ人が多いほど高評価された作品だから「それなら良いじゃん。」という人も多いだろうが私個人はあの作品観て全く心の隙間ほど掠ることのない「凡ヒット作どころか空振り三振送りバント大失敗作」として認知している事に注意したい。
何がそこまで私を絶望の淵に落とし込んだのか、主にあげれば以下3点である。

❶「あの...」「え、ええと...」などの言い淀み表現なども含めた長回しによる会話セッションでリアリティを醸し出してるのは良いが、それが違う場面切り替わって次の場面にきて更にまだ続くのが異常にしつこく感じて逆に不安すら(後少しの怒りも)覚えるほどだった。

 

❷で、そういうリアリティを重視しておきながらも妙に途中コントみたいな警察官とのやり取りがあったりとか、終盤にきて特にコメディタッチになったり、結局優柔不断な友人の買い物に付き合わされるような何とも言えぬ全体的なブレブレ感は否めなかった。要するに「笑いの要素も貼っとけ」みたいにペタペタと付け焼き刃でラベル貼った感じ。

 

❸これは❶❷を含む全体論になるんだろうけど、他にも恋愛要素も足してたり、人生を考える的なシーンもあったりと、様々な要素があるんだけど、それらがペタペタと映画作品全体を彩る飾りにしか見えずこれらが最終的に何の収束もせずにケムに巻かれてエンドロールを迎えた印象。


「結局この監督この映画を通じて何が伝えたかったの?」って言う巨大なクエスチョンマークだけが宙に浮かんで終わったものだ。

 

3.『愛なのに』Criticism
で、すっかり『街の上で』論になってしまったが、それと全く同じような印象を本作にも思った次第。
上記❶❷❸をあてはめると、『街の上で』ほど放送事故レベルではなかったが ❶の長回しシーンは相変わらずあったけど、どれもに必然性が感じたし、超がついて不安になるほどの長回しはなかったので置いといて問題は❷と❸である。

確かに本作には様々な要素が混在している。繰り返すが女子高校生の純愛のような恋愛小説も、あと女子高生をめぐって奮闘する高校生の青春漫画的要素でもあろうし、濃厚なSEXシーンがバンバン繰り広げられる官能小説や成人漫画的でもあろうし、あと殴り合いのシーンもちょいあるから格闘技ものの要素もあろうし(ここは強引ですw)、あと妙にリアリティのある会話なのに、途中急に取ってつけたような「結婚とは家族を見せ合うもの」だ、「愛を否定するな!」などの多分脚本サイドがしたり顔で思いついたであろう文脈上妙に浮き足だって聞こえた名言風のセリフ、などなどそれ全体がいかに『愛なのに』というタイトルを受け皿に収束するどころか結局そこへはいかずバラバラに溢れすぎやしないかと思ったものだ。逆を言えばそれぞれの要素が各々の分野で空中分解して炸裂していったみたいなイメージ。
或いは、そういうジャンルというラベルだけペタペタ貼っただけで非常に様々な要素が多種多様に混在してるだけの薄っぺらな印象をも感じたものだ。いや、これは「伏線回収されてないから分かりにくい。」とかどうという単純な事を言っているのでは決してなく、もっと単刀直入に言えば結局「高度な編集技術」と「巧みな役者の演技力」と、「会話劇から出る名言風の台詞の妙」と、意味深に聞こえるタイトルの元で「鑑賞者に対して伝えたいメッセージやシーンをぶつけたいのだ」という魂が震えるような瞬間が残念ながら本作からは微塵も感じられなかった。もっと言えば。映画作品を観たというより「映画というもの」を見せられた感じ。【お手本としてテイの良い映画という雛形】を見せられた感じ
 さあ、かなりしつこいがもっとわかりやすいメタファーを用いて言おうか。
高級食材をバッと並べられて「これ良いでしょ?これはどこどこ産の肉で、これはレアな魚介類。そしてこれは新鮮な野菜。
全て美味そうでしょ?」と自慢された感じ。でもこっちは「いやいや確かに食材は良いんだけどこれがどう調理されてそれ食いたいんですけど。」って感じ。
やっと伝わったか?(笑)
 てか私がここまで言うのも、2年前、城定秀夫監督文脈で言えば『アルプススタンドのはしの方』にて「矢野君」の名前が甲子園球場で轟かせた瞬間であるとか、或いはキモハラ課長の文脈ではあのラスト付近のど迫力の格闘技のような物凄いSEXシーンとか、ああいうハイライトのような、観るものを圧倒させるシーンてか、瞬間だか、セリフだかが本作にももっと欲しかったと思った。

4.Grand conclusion
という事でまとめると、本作には様々な要素がありつつも、これらがいかに収束するのか期待してたが、最終的にタイトルの曖昧性と共にはぐらかされた感はあって個人的にはそこが肩透かしを食らわされて残念だったって話。
良くも悪くもあの『街の上で』のエッセンスを城定監督の高度な撮影技術のインパクトでもって更に進化させた作品なんだろうし、そこが達成されれば大成功なんだろうし、あの『街の上で』を好きな人にとってはきっとどハマりなんだろうってのもよく分かる。
でも私の魂は残念ながら一ミリも揺さぶられなかったのだ。

あと最後に具体的なシーンに関して気になった2点を論じるとまず

❶【一花が神父への懺悔したり何故か相談のシーン】である。
あのシーンは確かにその後のキーとして重要なのはわかるが、それより気になったのがあの時、一花がちょっとトイレにと出ていき、長時間取り残されたであろう不倫関係にある亮介と美樹はどんな会話をしてどんな表情をしてたのだろうってのは気になるが本編では完全スルーされていた点。
更にあの神父のシーンてのもちょっとコメディ入ってて『街の上で』の警官のシーンを思い出したんだけど、あのシーンですら蛇足感は否めないとも思った。
我々が観たいのは不倫関係の2人が取り残されたあのシーンだったんじゃないの?と非常に疑問に思ったが他の人はどうだったんだろう。

❷あと本論とはハズれるんだけど、人気バンド「ゲスの極み乙女」のリスナーがTwitterフォロワーなどにもにいないから実際の所よくわからないのだが、苦悩のフィアンセ一花を演じたほないこか(さとうほなみ)氏でのあの特に2回目の方では鬼気迫るってくらい超官能的な濡れ場体当たりシーンが超絶凄かったんだけどそれほど界隈ざわついてなさげなんだが、これがめちゃめちゃ不思議ですらある。

 

本作観た後彼女のライブパフォーマンスでのドラミング表現力に対する視点がめちゃくちゃ変わってくるんじゃないかとすら思ったほどだったから。

では最後の最後に、0.はじめに に戻るが
「この構成の妙技と秀逸なカット割がお見事」
「群像劇の織りなす会話劇が稀有な作品。」
などなど分かったような分からんようなそれこそ今でもTwitterのTLで主人公さながらの丸メガネちょび髭生やしたような自称映画マニアみたいな連中の希少本か骨董品を崇めるようなしたり顔大絶賛の空気が蔓延している。本作には連動作品『猫が逃げた』も東京では既に公開されており、今も尚そしてこれからもしばらくはこの絶賛の嵐は収まる気配はないだろう。
 でも私はこの絶賛の嵐の中、こう宣言したい。「それが人生だ。人生は映画みたいなものさ。答えは風に吹かれている。と言われればそれまでだが本作はあまりにも答えのない風に吹かれすぎた印象は拭えなかった。」と。

と、ここまで4000字ぐらい一気に書き殴ったが、『愛なのに』はこんな風に色々とごちゃごちゃあーでもないこーでもないって反芻する作風であって私はウッカリその手中にハマっているのかも知れません(笑)

 

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