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映画『#アリスの住人』(澤 佳一郎監督)爆裂レビュー〜物語を終わらせるその強さとは〜(ネタバレあり)

🃏物語とは終わるものではなく、自らの手で終わらせる強さを持つ事ではないか?本作はそんなことをふと思いながら鑑賞した現代版「不思議の国のアリス」なのかもしれない。🐈‍⬛

映画『アリスの住人』(澤 佳一郎監督)爆裂レビュー〜その物語を終わらせるその強さとは〜

Table of contents

1. Overview&Characters

2. Impressive Elements

2-1 First impression

2-2 Some Synchronisites 

2-2 Second impression

3. Final Remarks

*1


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1. Overview&Characters

[Brief Story]

本作品のあらすじは以下のURLのホームページを参照にして引用する。

www.reclusivefactory.com

幼少期に父から性的虐待を受けたつぐみは、その事実を母に告げられなかった後悔とトラウマに今も囚われている。

ファミリーホームで過ごしながら、SNSで男たちと知り合っては手淫でお小遣いを稼ぐ毎日。気付けばもうすぐファミリーホームを出て、社会に出ないといけない年齢。今ある日常をどのように変えていけばいいか…。

そんなある日、賢治という青年に出会う。徐々に惹かれていくつぐみは自分のこれからを見つめ始めるが、ある出来事をきっかけに大量の薬を口にすることになる—

更に本作の主な登場人物を劇場パンフレットをもとに紹介する。

[Main Character]

🃏港つぐみ(樫本琳花)...幼少期、父親から性的虐待を受けトラウマを抱えたまま生きている

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♡前野賢治(淡梨)....会社倒産後現在カラオケ店勤務。倒れていたつぐみを偶然助け知り合う。*2

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♤白戸多恵(伴優香)...ファミリーホームの先輩。入院したDVの父を許すべきか迷っている。

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♢国枝莉子(天秦音).....ネグレクトの母から逃れるためファミリーホームに。腕には傷跡が...

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♧加茂朋恵(しゅはまはるみ).....元弁護士である勝之、池口省吾(補助員)含めファミリーホームメンバーを温かくも時に厳しく見守る里親。

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2. Impressive Elements

2-1 First impression

一部、先ほどのあらすじの繰り返しになるが、主人公、港つぐみ(樫本琳花)は幼少時代に父親から性的虐待を受け続け、その事実を実の母親にも言えず18歳になる今がいままでずっと心の奥底にトラウマ級の傷跡を抱えて生きてきた。
 そんな苦悩を発端とするトラウマから目を逸らすかのように、つぐみはSNSなどで出会った愛と欲望に飢えた男達とカラオケボックス内で援助交際に走り、そこで汚れたお金を手に入れて生きていく毎日。
彼女はそんな地獄のような心と身体を傷つける日々を「終わることのない物語」と称している。こ現に、劇場パンフレットの表紙のめくってすぐ、本編でも象徴的なセリフとなっている「この物語はいつ終わってくれるのか、少女はいつも考えていました」というセンテンスが掲載されている。そしてそれを見ると鑑賞した者なら誰しもあの永遠のように続くカウントダウンが聞こえてくるのだ「1、2、3、4、.....」。

そしてその時に限ってつぐみの中で何かが不協和音と歪んだ視界がダブルパンチで襲ってきてうずくまってしまう。そして浮かんでくるのはまるで果汁をたっぷり含んだ甘い桃をかぶりつくかのように幼いつぐみの体に覆いかぶさってきたあの日の父親の欲望に満ち足りた顔までもがフラッシュバックするのだ。そんな地獄のような『Never Ending Story(はてしない物語)』。そんな地獄のような物語は誰にも打ち明けることなどできるわけもなかろう。彼女は偶然自分を助けてくれた賢治に自分のトラウマ説明する際「不思議の国のアリス症候群」という言葉を用いて説明した。それにしてもこの物語は果たして終わりを告げるのだろうか?*3
 そして、彼女が唯一の心の拠り所にしている場所は、母のいる家庭ではなく「ファミリーホーム」である。
そのファミリーホームとは、このヘヴィーな状況下で育ってきたつぐみ以外にも、アル中の父からのDVから逃れてるようにファミリーホームに飛び込んできた白戸多恵だとか、母親から育児放棄同然の扱いを受け、その愛に飢えた寂しさを刻印するかのように腕にリストカットし続ける国枝莉子などなど、彼女らの唯一の居場所が養育環境にない子供達の面倒を期限付きで見るホームステイ形式の家庭施設ーそれが本作の主な舞台がファミリーホームである。*4 …とここまで書けば誰もが幼児虐待をテーマにして家族の在り方に一つの問題提起をした上西雄大監督『ひとくず』のようなDVによる子供の胸や腕に残る傷跡などのリアルな描写やそこで起こった事実を色濃く写像することによって「本当の家族が一番酷いことをするんだよ」というつぐみの独白をなぞるように「本当の人の繋がりとは何か」もっといえば「血の繋がりだけが果たして家族と言えるのだろうか。」というテーマを逆説的に浮き彫りにするようなシリアスな物語展開を想像するかもしれないが、本作に関しては不思議とそういう印象はなく鑑賞後にはむしろあのラストシーンのような、さっぱりとした海風を浴びて花火をかざすような爽やかな印象すら受けるのが特徴だ。ついでにと言っては何だが、同じ児童虐待というテーマを扱っている意味で相通ずる上西監督『ひとくず』の過去のレビューは以下の通り。

nenometal.hatenablog.com

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 正確には本作でもそうしたリストカットの描写や性的なシーンなどの現実的かつ生々しい描写がないわけではないけれど、そこは極めて示唆的かつ最小限度に抑えてあるし、むしろ、ここのファミリーホームを仕切っている加茂勝之・朋恵夫婦(みやたに・しゅはまはるみ)、ファミリーホームの補助員・池口省吾(久場寿幸)を含め、実質的に血が繋がっていないにも関わらず家族の絆を感じさせる、心にじわじわと温かな余韻が残る印象すらあるのが大きな特徴でもある。*5というのも、つぐみらの世話をするこの加茂夫婦の里母役である加茂朋恵の視点がとても大きいと思う。印象的なシーンを挙げるとすれば、あのつぐみが賢治と一夜を共にして朝帰りして帰ってくるわけだけど「なんで(ファミリーホームに)帰って来ないって報告してくれなかったの?」みたいに叱ったりする一方で、「もしかして彼氏と一緒にいたの?」と言って冷やかすみたいなこの絶妙なバランスね。彼女らに干渉をしすぎず、勿論突き放しもしすぎない、このニュートラルな関係が心地良くてそれが本作をそれほど問題の軸をシリアスにしすぎない一因として貢献しているようにも思う。

 

2-2 Some Synchronisites

❶主題歌『群集の中の猫』

本節では少し本編から離れて劇中鳴っている音楽であるとか、「アリス」というタイトルからも『不思議の国のアリス』などに触れ、より本作の本質を探っていきたいと考えている。まずは主題歌について。そしてそうした前述したファミリーホームの里親達の干渉をしすぎず、勿論突き放しもしすぎない、このニュートラル温かな視線は主題歌『群集の中の猫』(歌;レイラーニ(中嶋晃子) 、尾崎豊のカバー)の歌詞さながら反映しているようだ。


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以下、一部引用する事でそれを検証しよう。

群集に紛れ込んだ子猫の様に 
傷ついて路頭 さまよい続けているなら 
ねえここへおいでよ 笑顔を僕が守ってあげるから 
突然振り出した雨から 君をつつむ時 
僕のせいで君が泣くこともあるだろう 

僕の胸で泣いてよ 
何もかも わかちあって行きたいから 

やさしく肩を 抱き寄せよう 
雨に街が輝いて見えるまで 
やさしく肩を 抱き寄せよう      

 

from『群衆の中の猫』(尾崎豊)

*6

本歌詞の中での【雨に濡れた群集に紛れ込んだ子猫】とは紛れもなくファミリーホームにいるつぐみ達のことを示唆しているようだ。
そして【君のために泣くこともあって、君が泣き止むまでに肩を抱き寄せてくれる】存在こそがここの加茂夫婦であるように思えてならない。

そして僕の胸で泣いてよ  何もかも わかちあって行きたいから】のくだりを見て彷彿とするのが唯一とでも言っていいほどファミリーホーム以外での自分の存在を見てくれる信頼できる存在である賢治に例の援助交際の件がバレてしまい、どうしようも無くなって安定剤と称する錠剤を一気に飲みまくってそれを引き止める朋恵の姿である。

このように枚挙のいとまがないほど、他にも探したら出てくるであろう、『アリスの住人』と『群衆の中の』とのまるで書き下ろしたのではないかと思うぐらいリンクしている。

しかし、本曲は、この物語の為に書き下ろした訳ではなく、伝説の日本のロックシンガー尾崎豊による『回帰線』(1985)というオリジナル・アルバムの収録曲のカバー。こうしてだから37年以上もの時を越えて映画本編とシンクロしているという偶然に驚きを隠せない。*7

❷「アリス」とのシンクロニシティ

そうそう「シンクロ」と言えばそのタイトルでタイトルに「アリス」と付したあのLewis Carrollルイス・キャロル)のあの有名すぎる絵本作品『不思議の国のアリス』とのシンクロニシティも忘れてはならない。以下のサイトからあらすじを引用させていただく。

honcierge.jp

ある日、物語の主人公であるアリスは、お姉さんと一緒に本を読んでいました。本を読みながらぼーっとしていると、服を着た白いウサギが慌ただしい様子で走っていく様子を目にします。

そのウサギは、「もう間に合わない!」と人の言葉を喋りながら走っていくのです。そんなウサギに興味を覚えたアリスは、そのウサギを追って穴の中へと入っていきます。

穴の中に入ると、そこは広間になっていました。彼女はウサギを見失ってしまいます。怖くなったアリスが泣いていると、涙が池となって彼女はその池に落ちてしまいました。

池に落ちたアリスは、ドードーらと出会い、コーカスレースという競技に出場することになります。それからまた白いウサギに出会って、大きくなったり小さくなったりします。

アリスは、森にいたイモムシに教えてもらい、キノコを齧ることで、自分の身体の大きさをちょうどよいサイズにしていました。

アリスは、その後もチャシャ猫と出会ったり、帽子屋と三日月ウサギと一緒にお茶会に参加するなどします。

物語の最後に、アリスは、「アリス起きなさい」という声で目を覚まします。目を覚ますと、アリスははじめの木の下にいて、お姉さんも一緒でした。アリスはお姉さんの膝の上で寝ていただけだったのです。

今までみていた夢が忘れられなかったアリスは、お姉さんに覚えている限りの物語を精一杯伝えるのです。 

あらすじはざっとこういう感じだけど、この『不思議の国のアリス』では、(因みに本編でも『不思議の国のアリス症候群』としての言葉でも出てくるように)アリスの体が大きくなったり小さくなったりなどなど様々な不思議な体験をして、最終的にその世界から目覚める、といういわゆる夢オチの物語だけれど、ここでこのアリスとの共通点を2点論じたいと思う。

 

 ❶まず共通点としては大きくなったり小さくなったりするのは前述した通り例の「1、2、3、4、.....」というてつぐみの中で何かが不協和音と歪んだ視界がダブルパンチで襲ってきてうずくまってしまうあのトラウマ物語によって大人になった自己の体に幼い日の自分が蘇ってきてその重量に耐えきれなくなってうずくまってしまうあの感じが正にアリスとリンクしているように思う。

② 次に、ここで重要なのはアリスの「お姉さん」が、アリスが夢の中の世界から現実の世界へと連れ戻してくれる役割を担っている点だが、その姉的存在について検証したい。
 正にこの物語を本作に準えるならば「アリス=つぐみ」とするならば彼女が地獄のような心と身体を傷つける地獄のような日々は「終わることのない物語」であると同時にアリス同様「迷い込んだNightmare(悪夢)」であり、そんな悪夢から目覚めさせてくれた存在とは、あの加茂夫婦ではなく、ましてや、ある日偶然出くわし後に恋人関係にまで発展する前野賢治でもなく、ズバリ同じファミリーホームの2つ上の卒業生である多恵ではないかと思うのだ。というのもアル中で入院したあのかつての父に対して着替えを持っていく事を実行した多恵の姿を見た事によって彼女の中で何かが変わったのだと思う。正にあのがんじがらめに支配し続けられた少女から大人になるための卒業の儀式として、「海へ行く」事をしっかりと決意をして、年下の妹のような国枝莉子の自傷行為を目にして「私たち、こんなことしちゃダメだよ。」と強く諭す点であり、最後の最後に電話をして実の母にあの日のことを打ち明ける決意をすルべく一歩踏み出すようになるのだ。不思議の国のアリス』も『アリスの住人』もいずれも少女から大人への成長の物語であるという意味で共通しているが、その終わりなき物語に終止符を打つのは「勝手に終わってくれる」ような「夢オチ」ではなく自らの手で物語を終わらせ強さを持つようになる事なのかもしれない。

 

2-2 Second impression

そして本作は3月27日に一度鑑賞してFilmarksにレビューを書いて、本レビューより半分以下の4000字でアップしたのだが(それでも十分多いんだけど)何か色々と個人的に確認したい点があってもう一度見て観ようという気持ちから3/31(木)にもう一度観にいこうとシアターセブンに駆け込んだものだ。1回目よりも更に、つぐみ、多恵らが各々の日常で感じる心の痛みを一層ヒリヒリ感じたと同時に、彼女らへのファミリーホームの人達の温かな視線に深い絆を感じ尚更感動した2回目だった。

このように、正に「血の繋がりだけが家族ではない」というテーマの作品は映画のみならず演劇でもよく目にし、素晴らしいものは非常に多いと思うが、あの海辺で皆んな笑顔で花火をかざすシーンは誰もが血がつながっていないんだけど、誰もがもはや家族だったという結論に至ったものだ。

....と書いて実は思い当たる節がある。

数週間前に寺田町駅付近の「表現者工房」という演劇スペースで観たタテヨコ企画当劇団の「家族のカタチ」もそんな感じだった。あの物語もファミリーホームに類する里親施設が舞台となっていて、実の親ではない里親に、一人の女性が10年以上ぶりに家族の絆を確かめに帰ってくるというストーリーで、そこでも最後は血の繋がりのない十人ほどの施設登場人物が食卓を囲って「いただきま〜す!!!」言って暗転して終わるのだが正に同じ感慨を抱いたものだ。*8そう、この食卓エンディングでおそらく劇団が伝えたかったことは「もはや、血のつながりだけが家族ではない。こうして皆で食卓を囲んで楽しげに食事をすることに本当の家族的なものの原型、つまり家族のカタチなのだ」ということではないかと。そして本作『アリスの住人』も同じ事で。同じように海辺で花火をしながら笑い合っているファミリーホームの人たちもあの食卓で楽しい食事をする人たちも、そしてそれを観て心にぽっと灯火がこもったように微笑ましく観ているもっといえば客席にいる我々さえも、もはや家族に混ぜてもらったような気がしたものだ。

 話を『アリスの住人』に戻そう。この2回目の上映は舞台挨拶があって澤監督のみならず、今回多恵という重要な役割を演じた伴優香さん(登壇)とその父親を演じられた萩原正道さん(リモート)らによるとトークが繰り広げられた。

そこで、個人的に今回衝撃だったのはファミリーホーム中、つぐみに一歩踏み出す打つ勇気を与えてくれた多恵役の伴優香さんにおける父親とのエピソードが完全に彼女の実体験だった点である。その話を聞いてあの病室での父親に着替えを届けて、自分の思いを全てぶちまけて

父親「また.....来てくれるか?」と言われて

多恵「考えとく...」

と言って去って行くシーンにおけるある種の緊張感だとかその背後にある物凄いコンテクストを半端なく感じたのはそのせいだったのかと深く納得したものだ。

更にあの海辺のシーンでハイボール缶を飲むシーンも実際に彼女が亡くなった父を偲んで行った事だったというのも極めて興味深かった。
『アリスの住人』にはその他役者達のリアリティもギュッと凝縮されていて、多恵の父親役を演じられた萩原正道さんが舞台拶後に教えて下さった2つのエピソードがこちらである。*9

なるほど、と、この二つのツイートを読んでものすごく腑に落ちた気がした。

まず、そのしゅはまさんの絶妙な母性に関して最初のツイートでは、彼女らに干渉をしすぎず、勿論突き放しもしすぎない、このニュートラルな関係性を持った理想の里親像が見出せた理由があった訳がものすごく分かった。

 次の10歳の莉子役を演じた天白さん関連のツイートでは最後の最後のシーンで自転車に乗ってピースしている時の笑顔が物凄い自然でキラキラしてるなと思った理由をはっきりと享受できたと思う。

 

3. Final Remarks
今にして思えば、つぐみにとっては猫、賢治にとっては女の子に見えるという座敷童子(合田純奈)の存在がいかに物語全般のキーとなるほどに重要であるかという点である。

実は一度観た時は気づかなかった点で、2回目を観た後で薄々気づき、澤監督とお話しさせていただく中ではっきりとわかった点がある。

 その証拠に多恵やファミリーホームの加茂夫婦ににとっては座敷童子は不可視ではないか。それは、どこか本当の自分の中の終わらない物語に決着がつけられない人間にだけ見える、自己アイデンティティを見失いかけた漠然とした分離した魂の具現化したものの象徴それが座敷童子ではないかと。

 ここからはあくまで予測であるが、なんとなく最初にうずくまっていたつぐみと賢治が出会ったのは運命的なものであると同時にすぐに打ち解けあったのは「似たもの同士」とお互いの共時性を見出したからだろう。

そして心が通じ合った二人は自然に交際へと発展し、性的行為に及んでもつぐみの頭の中でカウントダウンと不協和音が鳴らなかったことがその証拠である。そして賢治は賢治で、これまで何となく自分の家族の在り方や境遇を感じながらも自己アイデンティティを確立できない状態で生きてきたと。そんな時につぐみの援助交際行為を見るにつけ自分の意思を思いっきり吐き出してその後悩みに悩んでつぐみを受容しようと決意できた事により、彼の中の「終わりなきカウントダウンの物語」を終わらせられたのだ。

 要するに、賢治も広義の意味で「不思議の国のアリス症候群」だったのではないかと。

そんな妄想ついでに最後にこうして『アリスの住人 』2回鑑賞して一日経過後、まず本パンフレットの表紙をしみじみと眺める事でそれを検証してみよう。

本表紙は別に内容云々を示唆してる訳でもましてやネタバレでもなく個人の解釈によって色んな解釈が成り立つアートワークだと思うが、私はこの表紙に関して以下のように定義した。

この写真左上の表紙の写真はきっと海へ行って花火をして、つぐみは母に全部を打ち明けたエンドロール後の光景である。

あれから悩み、つぐみの全てを理解して受容した賢治はあのファミリーホームに遊びにいくことを決意する。

そこで皆んなが冷やかし半分、笑顔で出迎えてくれるが、もはや彼の視界には女の子としての座敷童子の姿は見えない。

そしてつぐみも同様に猫の姿は見えない。

あと右上のオリジナルクアファイルをこのパンフエットに重ねるとそれが如実になってつぐみの頭の中に賢治、加茂勝之・朋恵夫婦、白戸多恵、国枝莉子、池口省吾は存在するが、座敷童の存在はいなくて、「住人」という文字の位置の裏に隠れているのだ。

はたまた、紛れもなくアリスの住人とは座敷童子の事かもしれない。

「この物語はいつ終わってくれるのか、少女はいつも考えていました」

「ただ飲み込まれないようにそうやって生きて」

表裏表紙パンフレット両サイドにあるこの言葉が座敷童と存在と共にじわじわとゆっくりと消えていく、本当の意味でのエンドロールがあるような気がする。

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【付記1】澤監督はじめ、久場寿幸氏、曽我真臣氏(助監督)、合田純奈氏らのインターネット動画番組『シネマ・チラリズム』の中での興味深いトークはこちら。


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【付記2】あ、あとこれめちゃくちゃ余談で自分だけしか思ってないことだと思うんだけど、これまで何度も観た上西監督「西成ゴローの四億円」で闇金姉妹が口にベタベタつけて食ってたインパクトが頭残ってて本作でもファミリーホームで皆が食べてたあの麺「ジャージャー麺」かと思ったけど、澤 佳一郎監督に直接お聞きしたら実は「やきそば」らしいというオチを込めてこの10854字にも及んだ本レビューに終止符を打ちたいと思う。*10

*1:本記事はFilmarksのレビューに大幅に加筆・修正を加えたものである。

filmarks.com

*2:あの上田慎一郎監督『スペシャルアクターズ』を鑑賞した者ならムスビルという怪しさ極まりないあの新興宗教(というより詐欺団体)の教祖様をほぼ台詞なく演じ切ったあの淡梨氏が今回普通の好青年を演じているのもかなり驚愕でもあっただろう、いやこれぐらいインパクト強かったからねあの大和田多磨瑠教祖は。スペシャルアクターズに関する過去記事。てか「淡梨さんが出ている」以外ほぼ共通点ないのに載せる筆者のセコさなw

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*3:不思議の国のアリス症候群』についてはこちら。

ja.wikipedia.org

*4:「ファミリーホーム」について詳細に解説したこちらを引用して紹介する。

one-love.jp

*5:最近時系列順に『GCM動画日記』(2020)『ひとくず』(2021)『家族のカタチ』(2022)『アリスの住人』(2022)と「血の繋がりだけが家族じゃない」と言う趣旨のエンタメ作品を立て続けに観る事が多い。そしてどれも遺伝子レベルの繋がりはないんだけど逆説的にピュアな家族のあり方を提示してるのが特徴である。

*6:尾崎豊オリジナルver.の「群衆の中の猫」オリジナルであるこちらのバージョンはめっちゃエモーショナルでレイラーニさんの穏やかなテンポのカバーヴァージョンとは違う。こちらがもし主題歌として使われたら印象もガラッと変わっただろうな。


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*7:

*8:でこの女性が『GCM動画日記』江頭環こと福永理未さん出演という...色々リンクするね〜。

*9:こちら、ブログアップの後日談だけど、この記事の件ツイートしたら萩原正道さんまたまた返信してエピソード下さったよ、ほんと良い方ね。大阪シアターセブンにて4月16日(土)から公開される出演作『スペースクライングフリーセックス』必ず観ます〜!

*10:『西成ゴローの四億円』に関する過去記事。てか「焼きそばがジャジャー麺に見えた」以外ほぼ共通点ないのに載せる筆者のセコさその2w

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