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エンタメの「座席運」に関する一考察〜"爆毛男"降臨編〜

エンタメの「座席運」に関する一考察〜"爆毛男"降臨編〜*1

1.「当たり」と「ハズれ」の境界線

2.座席運とは?
参考資料;アフロ時代の葉加瀬太郎とパパイヤ鈴木

3.爆毛男、爆誕と降臨の果てに
Appendix;  爆毛男における「アフロ検証論」

❶Typical Afro(典型的アフロ)
❷ Classical Afro(古典的アフロ)

❸ Avant-garde Afro(アヴァンギャルド・アフロ)

1.「当たり」と「ハズれ」の境界線

我々は、日常の彩りとして映画、音楽ライブ、演劇、イベントなど様々なエンターテイメントに接することがある。そしてそれらに触れるにつれて「あれは面白かった(↔️面白くなかった)」と言う重要な「当たり」と「ハズレ」の境界線についてのジャッジを下したりするものだ。大雑把に言ってそれが良かったり、面白かったりすればもうチケット代など軽く取り返したところがもはや得したような気分になるし、逆の結果だったりすると本当に金返せレベルにまで怒りが込み上げることもある。いや〜、でも、ほんとにひどい音楽ライブなんてほんとに酷いからなぁ。

 今回の記事は本題ではないので私の経験上で一例にとどめとくが、今でもハッキリ覚えてるのは去年の5月半ばぐらいに心斎橋の繁華街の一角にある小さなライブハウスで開催された女性SSWが4人ぐらいが集まってのいわゆる「対バン形式の企画ライブ」での出来事である。その中の1人の若手のシンガーがどうやら「MCでオヤジギャグを絶対に放つ」と言うことにこだわりを持っている不思議なSSWだったのだ。

そもそも「親父ギャグ」自体が世間的に敬遠されがちな存在で中には聞けたものではないものも多いのだが、その中でも本当に酷い部類のものを会場の空気を読まずにガンガン解き放つタイプのSSWだった。
もちろん具体的なギャグの例は忘れたが「布団が吹っ飛んだ」とかそのぐらいの最下層レベルのゴミみたいな部類だったと記憶している。 
 そしてさらにタチが悪いことにそれを彼女に関して前から知ってるであろうファンというか取り巻き連中がこともあろうにそれにゲラゲラ笑って囃し立てると言う地獄絵図もそこで当然のようにあったていうのもあって、だからこそ、あろうことかこのSSWは「この芸風はウケている」と勘違いした結果の副産物としてこういうスタイルに陥ってしまったのだろうとも予測できた。いや、何が凄いって曲の途中でも演奏止めて親父ギャグをカマしてたもんな。
当然ライブ最後の締めくくりの挨拶でも親父ギャグで締めてたし。
 私としてはもうこんな親戚のアホの集まりみたいな内輪ウケのライブにもうウンザリだったし、ここまで演者がイタいライブもなかった。もはやこの人のパフォーマンスしているその20分間は正に(大事な事だから二回書くが)客席のノリも含め全てが地獄絵図だった。
 そもそもが彼女が演奏する歌も良くも悪くも頭すっからかんで聴けるような応援歌がセトリの中心で、客に左右手を振ってみたいな振り付けを強要するようなライブでパフォーマンス自体も私はそんなに好きではなかったんだけど、でも百歩譲って全体的に可もなく不可もなくって感じでこういう内輪ノリさえなければ明るい女の子って感じでそんなに印象は悪くはなかったんだけどね。*2
以上の特徴をまとめると

❶ 小柄なボーイッシュな明るい女の子
❷ 変な振り付けの入る深みのない応援歌
❸ 客層ターゲットの主流である中年男性が言いがちなギャグの連発
❹ 姓名合わせてひらがなというキャッチーなアーティスト名

何気に❹において新情報ぶっこんでるんだが「ひらがな名のSSW」てのは日本では鬼のようにいるからまさか特定はできるまい。
あ、全部ひらがなつっても「ぽてさらちゃん。」ではありません(笑)
にしてもこうして正に❶〜❹をざっと眺めると本当にSSWおじさん御用達のプロトタイプて感じがする。多分私は2度とこの人のライブを目にすることもないしこの人について言及することすらないだろう。せいぜいこの人界隈のコミュニティで物販で手土産でチェキだの交換ごっこでも私の目に触れない程度でやってくれ。

で、次からが本題。


第2章は、今回のブログの本題である演劇における「座席運」もまつわる話である。

 

2.座席運、とは?
さて、ここからが本題である。本記事では演劇を中心に語りたい。私は意外と演劇に関しては自分の趣向性が違ったなっていうのが幾つかある程度で概ね満足して会場を後にしている。極端な「ハズレ演目」は3年前の5月に開催された某インディーズ映画を土台にした某神戸で開催された公民館のようなとこでの某舞台の一例ぐらいしかない。あれもホント酷かったなぁ、詳細は省くけど。それはともかくとしてこの演劇界隈では「座席」にまつわる当たりハズレが非常に多い世界だなとも思ったりしている。いわゆる「観やすい(↔️観ずらい)席」という対立構図ね。これはもう面白いだの、面白くないとか言う感想以前の問題で、最悪の座席に着いたらほんとにもう演目内容まで頭に入ってこなかったりするものだから本当にタチが悪いものだ。
そして今回こうした「座席運」について是非考察してみたいあるエピソードを一つ紹介してみよう。

これは去年の12月29日の劇団「鵺的(ぬえてき)」というユニットが主催している『天使の群像』と言う下北沢711で開催された演目での出来事である。

www.nueteki.org

こちら、今回個人的に初めて行ったのだが、かなりコアファンも演劇自体の世界観も確立していて評判の良い演目だった。その証拠に千穐楽以外にも連日客席ぎっしりのいわゆるソールドアウト状態だったと記憶している。この711という小劇場は狭いながらもぎっしりとお客がいて、その2段目の真ん中ぐらいの客席で開演の30分ぐらい前に指定座席にて待機していた。すると、私より5列位前にある母娘がいるのにふと気づいたのだ。30代半ばぐらいの母親と小学校3〜5年生位の娘さんという組み合わせで、このサブカル演劇の聖地にある小劇場にしては珍しくて結構目立っていたようにも思う。でもまあ演目自体は基本的に高校が舞台の「学園もの」だったから過激な表現もない健全な演目ってことで親子で観にきたのだろうとも予想できた。
そこでちょっとした事件が起こった。
開演20分前の出来事である。
この母娘2人が座っていた座席の女の子の目の前に割と背の高い大柄な50〜60代以上ぐらいのおじさんが座ってきたのだ。当然その小学校の女の子は前が見えないので舞台も目に入らなくなるということを鑑みてお母さんがふっと目くばせをして席を変わってやっていたのだ。

これは正に親子愛であり家族愛。もうこれで万事解決である。
母親が「大丈夫?見える?」みたいなニュアンスで娘に目配せをしていた模様が一段差ある私からの位置からでもはっきりわかった。ああ、ホッとした。
…………….....あの〜、ところで読者はなぜ私がこんなにこの親子を凝視し、彼女らの心理描写まで想像しながら見つめてるんだろうと思ったのかもしれないが、時はもう開演前でスマホの電源も完全にオフにしてるし、パンフレットも本演目にはなかったしで何もやることもなかったし、かといって後ろを見たりしたら意図せず座っている他人と目が合うしで(演劇・映画あるある)、ふわっと前の方しか見るものがなかったからである。

そして、開演5分前になって、劇団側から観劇マナーにまつわる注意事項などの説明があって、それからいよいよ開演の3分前「始まるまでしばらくお待ちください」のアナウンスが!
(あ、*ちなみにこの「しばらく」は言うほど「しばらく」じゃないよねっていつも思う。「しばらく」というけどすぐに始まりますよ的な謎に謙遜のニュアンスを感じるのだ。これも演劇あるあるである。)

そして開演2分ぐらい前だろうかもう直前の直前に今回の目玉となる大事件が起こった。
そう、その大柄なおじさんの隣、その女の子のいる前の席にまたまたキャップを被ったやはり50〜60代ぐらいの男が新たに座ってきたのだ。*3
あれ?もうそうなってくると私の関心事は「果たして女の子は舞台が見えるのか?」の一点ばりで私は心配になったが今回に関しては「大丈夫」だったのである。と言うのも、その男は先ほどのおじさんほど大柄ではなかったし、そのおかげでこのおじさんと男との間にはちょっとした距離が生まれて、その二人の隙間から女の子は無事に舞台を観れるようになっているのだ。
正にこの二人のおじさん同士の華麗なる連携プレー!!
って基本的にこいつらは何にもしてないんですけどね(笑)
そしてこの時も母親がもう一度娘に「大丈夫?」みたいな確認をして女の子も「うん。」とうなづいている様子が見て取れた。
よし、これで安心だ。
私も謎の親子へのおせっかいコーナーもこれで終わって、いよいよ、舞台が始まるということでワクワクして待っていた。
そして1分後、いや、1分もなかったかもしれない。
1分〜30秒前正にその時にその事件が起こったのだ
その彼女の前にいるそのおじさんがおもむろに被っていたキャップを脱いだのだ。

そこでなんと驚愕の出来事が!!
その時私は思わず「あ!!!!」と声をあげそうになった。
このおじさんがなんとものすごい目を見張るような剛毛だったのである!!
いや、具体的にいうならば、今は知らんが一昔前、世界的に有名なバイオリニストの葉加瀬太郎氏とかコメディアン兼ダンス振付師のパパイヤ鈴木氏だとかあの辺の人たちはブレーク当時ものすごい大爆発したようなアフロヘアを施していたがあの状態の髪型のまま就寝について5度寝ぐらいしてものすごい寝癖を帯びていて、その状態のまま外に出たらものすごい台風ど真ん中にぶちのめされた位の物凄い爆発力を誇る髪型だったのだ。

参考;アフロ時代の葉加瀬太郎(上)とパパイヤ鈴木(下)、こうして並べてみて初めて気づいたんだけどこの人達割とよく似てるよなwww

 

言うなれば剛毛以上の「超剛毛」とでもいうべきか、こういう言葉は世の中に存在しないだろうが的確なので言うがいわば「爆毛(ばくもう)」だったのだ。
以下、この爆毛の男を「爆毛男(ばくもうおとこ)」と呼称する。
そして残酷にもそのまま舞台は暗転してその演目は始まったのだった。

*4

 

3.爆毛男、爆誕と降臨の果てに
そうだ、ここでこの演目について軽く整理しよう。
この『天使の群像』に関しての感想として、12/29の私ネノメタルのXより以下のポストを引用したい。

 

 

と言う以上の当時の私のポストが示唆しているように割とシリアスな学園ものでとても見応えがあったのがわかる。しかもテーマがかなり深いシリアスな演目だったとも言えよう。ここでいっている内容に関しては今読み返してみてもほぼ偽りはない。現にものすごく面白かったので帰りにDVDなどのグッズもいくつか購入したほどだ。
だが、一点だけこのポストにはがある。
そう、「180分間圧倒されまくった」と言うフレーズである。
物語に惹き込まれたのは多くとも140〜150分間ぐらいである
なぜなら、この冒頭20〜30分間ぐらいの私の視線は舞台ではなく5列目先の母娘と爆毛男との壮絶な戦いにもはや釘付けだったからである。
この爆毛男は先述したような髪型ゆえ、一寸でも顔を動かそうものなら、手の位置を変えようものなら、肩を動かそうものなら、足を組み返そうとしようものなら正に台風の時の樹木のようにバッサバッサと爆毛も同時に上下左右に揺れてしまうのだ。

そうなってくると、この女の子が不憫極まりなくて爆毛男が揺れるたびに、その女の子にとって舞台上の視覚がかき消されてしまうので男の動きに合わせて顔の位置を変えることを余儀なくさせるのだ。爆毛男が右に揺れると髪型は当然右に揺れるのと同時に左側の上部も揺れるので女の子は爆毛男の頭の左側下部に顔の位置を変え、左方向に揺れると髪型は左に揺れるのと同時に今度は右側の下部が揺れてしまうので女の子は男の右側上部方面に顔の位置を変えなければならないのだ。
 そして左右のどちらかの足を組んだ時、或いは左右どちらかの肩を動かそうとした時も同様のメカニズムが適用されるので女の子も同様の対策が必要だってことも覚えておきたい。

てかこの爆毛男、静かに一点に止まってれば良いようなものの本当に落ち着きなくひっきりなしに動くのだから益々タチが悪いのだ。
これもし、私の目の前にいたらもはや「サツイ」以外の何者でもない怒りと憎悪の感情が巻き起こっていただろう。
そして極端なケースとしてはこの爆毛男が左右両サイド同時に首をひねったりした時で、これを台風に例えると風速五十メートルぐらいの台風を真っ向から受ける大木さながら左右上下全てが揺れに揺れるのだからどんな大惨事が起きるのか、と思いきや、この場合は「全てが揺れる=小康状態」とイコールになるらしくて意外と大丈夫だったりするのだ。現に女の子も顔を動かさずに済んでいた。
これはどう言うことなのかというと、台風になぞらえればわかりやすいのかもしれない。だってよくあるじゃないですか。「台風は直前と直後の方が荒れて、直撃ど真ん中の時は逆に静か」って…まさかの台風の本質を下北沢の劇場で名も知らぬ中年男の爆毛から再確認することになろうとは思いもよらなかったよ(笑)
という訳で私は残念ながら『天使の群像』に関しては前半20~30分の「生意気な教え子たちに問い詰められる苦悩するある新米教師の心象風景」が描かれたこのシリアスなシーンに関しては記憶が一部抜けてしまっている。
 なぜならこの間はそれどころか「存在自体が台風のような爆毛男に翻弄される1組の母娘の物語」という別の群像劇に惹きつけられて(気の毒に思いながらも)もう可笑しくて可笑しくて仕方なかったし、しかも舞台上でのシーンがシリアスなだけにもう笑うに笑えず痙攣しまくっていたからだ。
 それ以後は人間薄情なもので、あまりその母娘と爆毛男との対決に関しては気にならなくなって集中して演目を観劇できたのだが、それでもよくよく思い返してみれば、この女の子は物語のクライマックスから終盤ぐらいになると完全に爆毛男の挙動パターンに関して要領を得たらしくて男の動きに合わせて、臨機応変かつ速やかにサッと顔を移動して「爆毛男避け」のエキスパートと化していたような気がする。

正に子供の適応能力の可能性とは無限大のものがあることを実感した次第だ。まあでもこれはこの先彼女の今後続いていく人生で一ミリたりとも役に立たない技術だけれども。

 それにしてもこの娘さんが今回の演目が初めての演劇体験とかだったらトラウマレベルの演劇体験だったわけで、本当に胸がキリキリ痛む思いすらする。

(↑てかあんたは笑いを堪えるのに必死だっただろw)
 しかし劇場側も「他の客様の視界を遮るので帽子を取ってください」という注意アナウンスはたまにすることもあるんだろうけど「他のお客様の視界を遮るので帽子を被っててください」というのはなかなか言えないよななどと思ったりもして。
だってもっとストレートに「あんたの髪型は爆毛なんで帽子被っておいてくださいね。」という訳にもいかないし丁寧に回りくどく言える術がないというか、でも敢えてここを丁寧に言うならば「お客様が今現在なされているそのヘアースタイルは総量や形状が通常我々が想像するヘアースタイルの範囲以上に及ばれていらっしゃいますので観劇中にもし少しでもお客様が動かれたら時折後ろにいらっしゃるお客様の視界を遮ってしまう可能性があるのでむしろお帽子を着用して頂けると助かります。」という長台詞を爆毛男に面と向かって劇場スタッフは言わなければならないだろう。
まあ私だったらこの長台詞を最後まで言い終わらないうちに間違いなく吹き出してしまう自信がある。むしろ序盤の「通常我々が想像するヘアースタイル」あたりで笑死してしまいそうだけど。
 ということで、なんとなく軽〜い感じで書いた記事だったが、実はこういう「座席運」ってのは今後のエンタメを考える上で由々しくも非常に難しいある意味シリアスな問題提起だったりしてね。

気づいたら7800字を超えてしまってるしで本記事をここで一旦打ち止めとしたい(笑)

果たして続きはあるのか??

Appendix;  爆毛男における「アフロ検証論」

❶Typical Afro(典型的アフロ)

実際はこれより小ぶりなものもカウントされるが我々がパッと想像できる典型的なアフロ。本記事に出てくる爆毛男の場合こんなに小綺麗にまとまっていなかったので、現物は更に凄かったのだ。これから更に寝癖がついて台風が来たり爆発したりしてカオス化した感じ。

❷ Classical Afro(古典的アフロ)

こちらは厳密に言わなくてもアフロではないし、前述した「小綺麗さ」でいえばこれが一番爆毛男に程遠いんじゃないかと思われるが私が実際に見た毛量というか「ありのまま感」という意味ではこれが一番近かったんじゃなかろうか。①と被るがこれから更に寝癖がついて爆発してカオスになった感じ。

❸ Avant-garde Afro(アヴァンギャルド・アフロ)

 

きましたね(笑)こうなってくるとこれは爆毛男というよりも単なる迷惑なヤツという感じなのだが本記事から醸し出される一人の少女の鑑賞体験の邪魔する迷惑ものという意味では一番近いのかもしれない。正に爆毛男のアバンギャルド性を言い当てた本質がここにあるのではなかろうか。

 

*1:本記事は以下のnoteの記事に加筆・修正を加えたものである「座席運」についての一考察|ネノメタル

*2:記事アップ後日談;妙に気になってこのSSWについて調べてみたら20代前半のノリとか思ってたら結構キャリアがあるじゃないか!益々腹立ってきたぞw

*3:新たにきた男も同じような年代のおじさんなんだけどおじさんとおじさんがと言うのも紛らわしいので便宜上「男」と呼称する。

*4:まあこれぐらいの毛量だったらまだマシなんですが w