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全世界のエンタメよ、Re-born(再生)せよ~創作あーちすと・ #のん (能年玲奈) 監督『#Ribbon』爆裂レビュー(ネタバレ有り) 

 

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全世界のエンタメよ、Re-born(再生)せよ~のん監督『Ribbon』爆裂レビュー』*1

Table of Contents

1.はじめに
2. Overview&Comment

3.『Ribbon』を紐解く傑作5選

Scene(1)『花とアリス』(2004)岩井俊二監督

Scene(2);『のぼる小寺さん』(2020)古厩智之監督

Scene(3)『サマーフィルムにのって』(2021)松本壮史監督

Scene(4)『アルプススタンドのはしの方』(2020)城定秀夫監督

Scene(5)『8日で死んだ怪獣の12日の物語』(2020)岩井俊二監督

4.オリジナル新作の果たすべきロール(役割)とは?

 

1.はじめに
以前のS-igen企画『悲劇のアルレッキーノ』の記事冒頭部分でも書いた事があるが、ここ最近というか、ずっと前からだろうが、エンタメ界隈に関する会話で「私は音楽サイドに詳しい。」「私は舞台よりも映画が好き。」とか「私は演劇サイドの人間で、あとはアニメが好きかな。」などと言ういわゆるエンタメジャンル分けみたいな会話ややり取りが日常で繰り広げられたりする。でも、ハッキリ言ってそんなボーダーライン分けに価値などないと思っている。*2

 はっきり言ってそんな蛸壺(たこつぼ)の中で互いのマニア度をテイスティングし合ったりする事自体がもうエンタメ界隈が崩壊レベルでヤバいんじゃないかと。だって人の心臓部のコアのど真ん中をブチ抜きさえすれば、もうそれは音像だろうが、映像だろうが、漫画だろうが、文字だろうが、ライブだろうが関係ないと思うんだけど。
またまた繰り返すが、かつて音楽フィールドの人である筈のマイケル・ジャクソンでさえ『オズの魔法使』を基にした1978年のミュージカル『ウィズ』では諸手を挙げて引き受けてたし、最近だって映画実写版『Cats』でやはり音楽の人である筈のテイラー・スウィフトが嬉々として猫のコスプレ姿で出てきてたし。こうした事実が何を意味するかというと、彼らははなっから「私は音楽サイドの人です。それ以外の仕事を引き受けません。」なんていう変なプライドの乗っ取ったボーダーが無いのだ。もはやエンタメには色んなジャンルを作って、不毛なボーダー作って喜んでんのは恐らく日本だけではなかろうか。
 そして、そろそろこの国もそう言う壁をぶち壊して改めてエンタメの在り方を問い直すフェイズに来てるんじゃないだろうかとも思ったりする。ましてやこのコロナ禍においてはエンタメのなし得ること全てを総動員して真っ向勝負する必要があるのではないか、とそこにはジャンル分けなど全く意味をなさないと思う。

で、そんな事を思ってた矢先、遂にそういう作品に出会ってしまった。
正に2022年2月27日にこのエンタメ界で、コロナ禍への怒りをぶちまけて自らのプライドと意地をかけて真正面から向き合い、悲壮感のかけらもなくそれを高らかにエンターテイメントとして昇華しきった作品に出会ってしまったのだ。 
その作品こそが、ズバリ、創作あーちすと、のん氏が放つ真っ向勝負のオリジナル長編映画作品Ribbonである。


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2. Overview&Comments

さて、この早くも私内で2022年最高傑作の呼び声の高い、のん監督『Ribbon』に関してざっとストーリーを追っていくと以下のようになる。

コロナ禍の2020年。浅川いつかが通う美術大学でも、その影響は例外なく、卒業制作展が中止となった。悲しむ間もなく、作品を持ち帰ることになったいつか。

いろいろな感情が渦巻いて、何も手につかない。心配してくれる父・母とも、衝突してしまう。

妹のまいもコロナに過剰反応してリセッシュしまくる始末。普段は冷静かつオシャレな親友の平井もイライラを募らせている。こんなことではいけない。

絵を描くことに夢中になったきっかけをくれた友人との再会、平井との本音の衝突により、心が動く。
未来をこじ開けられるのは、自分しかいない―。誰もが苦しんだ2020年。心に光が差す青春ストーリー。

*3

[主な登場人物]

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🎀浅川いつか(のん)...主人公の美大生、就活は無事終えたもののアート活動に未練が?

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🎀浅川まい(小野花梨)...いつかの妹。少し神経質だがめちゃくちゃしっかりしてる。

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🎀平井(山下リオ).....いつかの美術大での親友。大学院への進学を予定している。

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🎗公園で出会う男、田中(渡辺大知)....いつかの中学時代の同級生。よくよく考えれば最も謎な人かも。

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🎀いつかの母( 春木みさよ).....娘いつかをいつも思ってるが芸術を理解できず空回りしてる。

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🎗いつかの父( 菅原大吉)....家族思いの優しい父親....なんだろうけど職質されたらダメだろwww

*4

いや、もう2022年2月27日、シネ・リーブル神戸にて2度連続鑑賞した感想を真っ向勝負で結論から言いましょう、恐れ入りました!!!!

正直にいうと本作を観る前この「ゴミじゃない」というキャッチコピーと共にのんがカラフルなリボンを背負っているこのポスターのビジュアルも目にしてて、なんとなくアート志向の音楽もかかったりする、知る人ぞ知る的な洗練された雰囲気映画かなと鷹を括ってたけどこれは大きく間違っていた!!!!

完全に舐めてました。
もう紛れもなく2022年を代表する大傑作です。
正に本作を定義すれば「コロナ禍で全てのエンタメがズダボロに寸断されていく状況下で のん監督がエンタメに生きる者としての怒りと意地とプライドとセンスの極みを掛けた超弩級の傑作である」と断定しても大袈裟ではあるまい。
2/27(日)に、本作を舞台挨拶付きのシネ・リーブルにて2回ほど観て既に1週間経過しているが、もうただ感動と感銘と共感の溜息しか出でこないのだ。もう余韻が半端ないのも本ブログの膨大な分量からも推察できよう。駄作からは一文字たりとも出てきません(笑)
あと断っておくがこれは、決してこの本名・能年玲奈かつ、現「のん」という国民的レベルに認知されている目のキラキラ輝く見た目麗しい女優が監督してて、そのバイアス込みでオマケ点込みで大絶賛してる訳ではないことも断っておきたい。
そもそも私筆者はこの「のん」という女優かつ創作あーちすとなるエンターテイナーは、一応過去、舞台作品を観てたり、神戸での新曲リリースイベントトークショーなどで実際に目の前で見て「凄いオーラのある女優さんだな。」と感心した事が幾度かあって、大好きな女優さんではあるんだけど、あくまで現在住しているだけ関西近郊に来た時に観にいく程度の「ライトファン」であって、所謂舞台挨拶や舞台に県外越えて遠征したりするほどの熱狂的な「コアファン」ではない事に注意したい*5


 だからむしろここまで本作に感動してる自分に驚いている次第である。
これは例え彼女の名を伏せて、覆面監督状態で鑑賞したとしても私は同じ様に上記のように大絶賛しただろうし、本作には喜怒哀楽のどれでもない感情の洪水の様な涙が溢れる瞬間が少なくとも三度はあった。

普段どんなに感動してもその場ではあまり落涙する事はない自分なのに。
 今現在コロナを経て不要不急のレッテルを貼られまくっているアートの権化のような、あののんさん自身の自画像のような立体的にデカいあの絵画アート作品の崇高なまでの気高さよ。

それを目の前にして「ゴミじゃない」、監督兼主役であるのん演じる「浅川いつか」という名の美大生は本編の中でも確信を得たかのように穏やかにこう断言していた。
そう、あのセリフはアートを含めた全てのエンタメは決してゴミなんかじゃないのだという思いに起因すると思うのだ。普通の平面のひょろ長い長方形の紙切れでも、きっちり折って結べば愛するひとへのプレゼントを際立てたり、女性の髪型を美しく彩ったりする「リボン」へとたちまちにして変身していくではないか。
 そこには大きいリボン、小さいリボン、青や赤やオレンジやピンクのカラフルなリボン、などなど多種多様なんだけれど、それらは人の喜怒哀楽では決して収まりきれぬ「感情」の象徴として様々な様相をも魅せてくれるようにも思ったりする。正に感情の景色を「再現」してくれるものとしてのリボン
 或いはこうも捉えられよう。のん氏自体、かつて能年玲奈という本名で国民的ドラマに出演するなど活動していたが色々な事があって本名での芸能活動の休止を余儀なくされている事実も本作品への着想へと少なからず貢献してはいないだろうか。

 彼女は既にコロナ禍以前にエンタメ活動を閉ざされるという挫折を味わっていて、そうした弊害をようやく乗り越えてようやく「あーちすと活動」が軌道に乗りかけていたこの時期に、コロナ禍ならではのニュース記事を偶然にも目にしてしまう。それがある美大生の「コロナ禍を経て私の創作物は全てゴミと化してしまったようだ。」というかつての自分の挫折を想起せざるを得ないような現実的かつ残酷すぎる独白。この不要不急の名の下にアート含めたエンタメの存在意義が失われつつあり、何とかして現状を打破しようとする状況下とかつての自分とかリンクしてやがて感情移入してできたであろうこの作品。

美大生、浅川いつかの心象風景は正にのん自身の投影でもあるのだろう。
その意味で本作は彼女のドキュメンタリー作品的側面もあるのかも、と思ったりもして。
因みに私は本作鑑賞中に「Ribbon」は主人公いつかが正に再びアートへ向き合いという意味での再生を表す「Re-born」とダブルミーニングかかけているのかな、と深読みしたということに自画自賛的に喜んでたのだが、それは誰しも考えてるみたいで見事にパンフレットの方で中森明夫氏の素晴らしいレビューにて既にガッツリ記述されていたんだけど(笑)。

これもドキュメンタリー云々という文脈で言えば当然と言えば当然なんだけど本作での浅川いつかのキャラクターのベースは「8日で死んだ怪獣の12日の物語」でのコロナ禍自宅にいる事を余儀なくされて通販で宇宙人を購入しても育ててしまうというのん演じるほぼ本人役のあの個性派女優が基盤にあると思う。その意味でも岩井俊二監督はエグゼクティブ・プロデューサー的な役割を無意識的にやってるようで、彼の影響が凄く大きい作品でもあると思う。

 ちなみに岩井監督は冒頭でも美術大学の担任教師、というもう雰囲気から風貌から物言いから彼以外いないであろうドンピシャな役で一瞬だけだけど出演していた。しかもあの電話シーンでの学校が休みになったとかで親からの苦情の電話受けての「いや〜、こう言う時期だから仕方ないんですからねえ....」というあの言い方めちゃくちゃリアルだったな。

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具体的な2/27の舞台挨拶でも触れてたエピソードをここで記述すると、主人公浅川いつかの装着してるマスクが最初は地味なものだったのだが、「ウレタン製マスク」になり→「ウレタンマスクのカラー」→「可愛らしい柄物」と徐々に明るさを取り戻していくのがわかる。
こういう所に劇中でアーティスト志望の女の子としての自分を取り戻していく心象風景の変化をも感じることができよう。あとマスク外して改めて自己紹介し合ういつかと田中が別れ際マスクを付け直しつつあたふたして別れるとことかほんとキメが細かいと思う。あといつかの親友・平井(山下リオ)と口論になったりするシーンとかめちゃくちゃ迫力あったし、その中で

いつか「何やってんだよ!!!!」
平井「”何やってんだよ”じゃないよ、ずっと絵を描いてたんだよ!!!!!

と言われた時のハッとした浅川いつかの表情が「そりゃそうだよな....」と微妙に変化する所とかこういうリアリティの突き詰め方もヒリヒリするし演出など物凄く細部にこだわり抜いていると思う。あとこれも舞台挨拶で触れてたが監督でも主演女優でもあるためどう演じるテンションを持って来ればいいのか悩むこともあってアクティングコーチなる人も雇っているのだそう。そういう意味でも本作の行き届いてる感も計り知る事ができよう。

 あとは劇伴音楽に関して触れておくと、あのSSWヒグチアイさんの妹、ひぐちけいさんを中心として作られたらしい劇伴音楽も神がかり的に合ってたと思う。何なんだ、特に平井の絵を二人でぶっ壊す時にかかったあのロックダイナミズム溢れるエレキギターが劇場中に鳴り響いた時、鳥肌で震えまくったものだ。
そうそう、これが前述した【喜怒哀楽のどれでもない感情の洪水の様な涙が溢れる三度の瞬間】の中の一つだ。因みにあの美しいラストのぶっ壊された絵の断片を幾多のリボンと共に貼り付けたいつかの自宅の卒業展覧会シーンも最高に感動的なんだけど、個人的に感情移入沸点が沸いたのは間違いなくこのぶっ壊しシーンである。

ここに彼女自身の人生の中で培われた怒りや苦悩が凝縮して、それこそ果汁120%ぐらいの濃度でドーンとブチ込められてていると思う。
で、何よりも素晴らしいのは本作は丸眼鏡かけてちょび髭はやしてベレー帽被ってしたり顔でニヤニヤして骨董品でも愛でるように映画作品を論じるあの気持ち悪い事限りなしのサブカル映画マニア・オンリーに向けてでは決してなく
【全宇宙のエンタメに関わるもの、そしてエンタメを愛する者、そしてエンタメそのもの】達へと全世界に放たれる太陽光のようにギラギラと光り輝いていると思う。もう一度繰り返すが、我々には偏りまくった狭い狭いファンダムコミュニティなどに塗り固められたエンタメ作品などには毛頭興味はないのだから。

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*6

3.『Ribbon』を紐解く傑作5選

これはあくまで私観なんだけど、本作『Ribbon』は青春をテーマにしたインディーズ映画のさまざまな要素が一堂に全て詰まっている作品だとも言えよう。例えばアルプススタンドのはしの方』でのテンポの良い会話劇の心地よさであるとか、『サマーフィルムにのって』
や或いは『佐々木、インマイマイン』でのスクリーンから主人公が飛び出してきたようなダイナミズム溢れるあの展開であるとか、あと『のぼる小寺さん』に顕著だった青春期特有のセンチメンタリズムであったりとかとか、あるいは起源を辿れば恐らくはこちらも既出したように(本作に最もインスパイアを与えたであろう)岩井俊二監督『花とアリス』なども挙げられる。

これらに傑作群を彩ってきた要素の全てを本作に感じられつつも、更にこの人にしか描けないであろう独特の空気感も伝わってくる完全なオリジナリティもあったりするのだ。

これらの5作品のエッセンスと『Ribbon』とのシンクロする点を並行して挙げていきたい。

Scene(1)『花とアリス』(2004) 岩井俊二監督


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本記事で挙げられている映画が全てコロナ禍以降の2021年以降に公開されていると考えたら2004年に公開ながらも17年以上もの年月を感じさせぬほどの色褪せなささに驚いてしまう。

しかし今観ても何なんだろう?この本作の放つ、このコメディとも言えようし、青春物語でもあろうし、恋愛映画ともカテゴライズできようができないか分からないというような様々なジャンルというペルソナをチラつかせながらもそのどれだともカテゴライズできず、どこかはぐらかされているようなこの感触。

こんな感触、どの岩井俊二監督作品でも当てはまるんだろうけど本作は特にそういう色合いが強い。そして本作は今でこそ認知されているけど、2004年当時、劇場で上映されていた頃はあまり客がいなかった印象ってか自分入れて2名なんて言う日もあったぐらいで、意外にも代表作というほど大ヒットしなかった印象だけど、時代を経ても徐々に徐々に安定して愛され続けている傾向にあるのも本作ならではというか...上田慎一郎監督や、今回のん監督であるとか根底で大きな影響を与えた作品であると言える*7

公園にてかつての中学時代の同級生、田中(渡辺大知)を遠巻きに見ながら「あいつ怪しい。」だ、「キモイ、こっち見てる。」だ「あれは不審者だ。」などと言って、君らその声聞こえてるだろ💦的なシーンがあるんだけど、
あと本作『Ribbon』との関係でいうと過去の作品になぞらえれば「花とアリス」の冒頭で新井花と有栖川有栖が朝の通学電車にてマーくんを見ながらあーだこーだ言ってる会話シーンを彷彿とさせる。

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Scene(2);『のぼる小寺さん』(2020)古厩智之 監督


工藤遥と伊藤健太郎共演!映画『のぼる小寺さん』本予告

 ストイックにボルダリングに打ち込む小寺さん(工藤遥)とそんな迷いなき彼女につい【見入ってしまう】どこか迷えるクラスメート達との人間模様を描いた青春物語。台詞は全体的に抑えめでニュアンスで示唆される彼らの心理描写を補うかのように挿入されるピアノ劇伴がただただ心地良かった。ちなみに本作は私は二回見ているが、1回目では小寺さんには達観したアスリートな印象があって、人工の無機質な岩壁に吸い込まれるかのようによじ登る小寺さんに何故誰もが惹かれてしまうのか疑問があった。二回目だとより彼女の魅力と人間味が増し、心象風景もクリアになり、きっとあの熱い視線達は「人生全てをかけて打ち込める何か」を誰もが模索していて、そんな彼女に向けられた羨望と願望の気持ちの現れだとも思っていたけど、誰かを応援する事は自己と向き合う事なのかも。

「なぜ君は登るのか?」彼女だってきっとその命題の答えは分からないだろうし、だからこそ目の前の壁に挑み続ける小寺さんに誰もが共感し得るまさに珠玉の作品だった。この「なぜ君は登るのか?」という問いは『Ribbon』以下の、

いつか「何やってんだよ!!!!」
平井「何やってんだよじゃないよ、ずっと絵を描いてたんだよ!!!!!」

というやりとりとどこか共鳴する感覚すらある。あと配役も被っていて『Ribbon』妹役の小野花梨さんは本作では「田崎ありか」という今回とはまたガラッと違うオタがかったカメラ女子役で出演しているのも興味深い。いや、でもこれパンフレットにすら載っていなかったので気づいたのはたまたま誰かがツイートしたのを目にしたからだったという、そういう人結構多いんじゃなかろうか。

 てかこうして比較してみても、もう完っ全に別人ですね(笑)

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この人もそうだが、最近よく出てくる河合優実さんとかもよく出てくるし、あと中村守里さんだとか、小野莉奈さんとかに並びそうな凄い才能を持った女優さんが本当に多いと思う。

 

Scene(3)『サマーフィルムにのって』(2021)松本壮史監督


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「スクリーンは過去と今とを繋ぐ。そして私はこの映画を未来へ繋げたい。」
そんな思いを胸に勝新マニアの女子高生が仲間達を集め、時代劇を撮ろうと奮闘するまで、という展開を予想していたら、更なる異次元へとぶっ飛ばされた。
2020年は『アルプススタンドのはしの方』『のぼる小寺さん 』などがあったが、2021年夏、また新たな青春映画傑作の誕生を祝福したものだ。本作でのポスター等にある通り3人の仲良し女子高生、その内訳は映画監督ハダシ(伊藤万理華)以外にビート板(河合優美)ブルーハワイ(祷キララ)という濃い仲良し3人組を中心に展開される。

とにかく昨年の夏に観たとき、本作のあの最後のラストシーンは意表をつかれた。

文化祭において映画部の部員である時代劇の監督でもある主人公が上映会の途中、しかもクライマックスの最中に突如音声と画面を無理やり中断させ「今、私、この映画の結末はウソだということに気づきました!今からキャストみんなでここで本物のクライマックスシーンを実演します!」と宣言。映画というフィールドをぶち壊し、そこで出演者たち全員でその場でチャンバラシーンがスタートする。そしてこれこそが私のやりたい結末を秘めた映画だと悟った瞬間に、本作はエンディングを迎える。あのシーンに賛否両論あるというのもめちゃくちゃ頷けるまさかの「映画完全否定からの、まるで演劇のリハーサルさながらチャンバラ合戦」インパクトは今考えるだけでも衝撃ものだった。監督はもうはなっからあのシーンを目指してストーリーを構成していったのだろうか。それぐらいあのシーンには迷いがなくて感情移入沸点が沸いたのは事実である。

そしてそれと全く同じようなシンクロニシティを感じたのが先述したズバリ、本作『Ribbon』におけるロックダイナミズム溢れるエレキギターが劇場中に鳴り響く中、平井の卒業制作巨大ジャングル絵画ぶっ壊しのシーンである。

多分のん監督も松本壮史監督もあのシーンを目指して映画を撮ってたんだろうなと思う。それぐらい迷いなき何かを感じるのだ。ほんとそういう迷いなき確信のある映画は強い。

 

Scene(4)『アルプススタンドのはしの方』(2020)

城定秀夫監督


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「頑張っている誰かを応援する」という意味では『のぼる小寺さん』とどこか相通ずる、こちらは甲子園を舞台とした元々演劇を土台としているので会話中心だけど怒涛の展開に感動してしまう青春群像劇映画。本作は合計にして13回ほど劇場で観てるんだけど、初回から一言(?)で言ってアホみたいな感想だが、「もう、めちゃくちゃ面白かった!!!!こんな笑えて泣けて、希望をもらえてほんのちょっとのセンチメンタルもあってこれほどのど直球の感動に出会すことなどあるだろうか!」に尽きる間違いなく令和2年の夏を代表する最高傑作作品だった。何せ、なんら文句のつけようがない、真っ当に素直に面白くて感動できるメインストリーム級の作品だとも言っても良い。この会話のテンポの良さにめちゃくちゃ笑ったし、途中のあるシーンでもこのシーンでも思わず力が入ってしまって声を上げそうになったし、またまた観終わった後の爽快感はまさにホームランでも打ったかのような気持ちだった。

本作『Ribbon』関連では、特筆すべきは姉・浅川いつかと、妹・まい(小野花梨)とのやり取りがめちゃくちゃ自然な点で神がかりすぎている点とリンクする。のん自身が舞台挨拶でも言ってたが、この二人の間(ま)は台本読み合わせの時からもうドンピシャで時間をほぼかけずにすぐに本番収録に持ち込んだようだと言ってたが、これはめちゃくちゃ納得してしまった。これは一昨年の傑作『アルプススタンドのはしの方』における安田あすはと田宮ひかるのあの前半の野球オンチ・グズグズトークのシーンをふと思い出したりして。

あ「ファウルボールに当たったら死ぬの?」

ひ「うちのおじさん当たったんだって。」

あ「おじさん、死んじゃったの?」

ひ「まだ生きてるよ。」

....みたいなもうコントのようなあの野球オンチトークなぞ、もうずっと延々眺めていたいくらいの心地よさだった。あの時これいずれ円盤化したら「あすはとひかる」のトーク集みたいな二人のショットのロング・バージョンを収録していただけませぬか、と切に願ったものだが、『Ribbon』における浅川姉妹の会話シーンも同様に延々ロングバージョンで観たいとも思った。是非この辺り円盤化などが叶った際には未公開シーンも見てみたい。

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Scene(5)『8日で死んだ怪獣の12日の物語』(2020)

岩井俊二監督


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だが本作は真っ向勝負にコロナ禍に対峙したテーマでありつつも、現実的になり過ぎず #岩井俊二 流の映像美を要に極めて芸術性の高い作品に仕上がっている。 本作はネット公開されたリモート作だから例外的なスタンスかと思ってたが、あのNorman's Nose👃のクレジットを見るにつけ、岩井俊二ド真ん中作品だと確信したし、あとほぼ本人役で役者・丸戸のんとして出演している のんさんがあそこまでニコニコしてあの瞳をキラキラさせて、しかもスクリーン一杯にドアップで観れる映画ってのもこの作品でしかあり得ないんじゃないかと思う。

のん自身は能年玲奈時代を含めて様々な映画作品に出演しているが、ここまでパーソナルな役で、多少フィクション入っていると言えほぼ本人役というここまで素の姿をスクリーンに投射した事はないであろう。そして注目すべきはコロナ禍で暇を持て余し通販で宇宙人を購入して飼ってしまう「丸山のん」という女優を演じるにあたってそれほど役作りというより普段の彼女のキャラクターが土台にあったのだが、本作『Ribbon』での浅川いつかの役柄のキャラクターとも付合するような感覚を覚えたのは私だけだろうか?これはまさしく先程述べたように本作自体ものん自身のドキュメンタリー的な意味合いがあるからこそ一致したように感じたのではないか?とか思ったりして。

 それにしてもコロナ禍以降、様々なリモート撮影で撮られた作品を観てきたが、どれも敢えて具体名を伏せる事でエンタメ性を保っているものが大半であるが本作は本当にコロナ禍が真っ只中という文脈の上で成立している。こういう作品は本作と『Ribbon』と、松本大樹監督『コケシ・セレナーデ』と、あとこれはドラマだけど『孤独のグルメ』にしかまだ出会した事がない。そんな現代の希望に満ちたお伽話を作ったこの年に作った彼には感服しかない。*9*10*11

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4.オリジナル新作の果たすべきロール(役割)とは?

さて、突如舞台を1月11日に大阪のLOFT plus oneにて開催された公開記念イベント「上田慎一郎監督と皆川暢二 のスペシャトーク」に移そう。

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初めに「ある朝、突如逃げてしまった男性器(通称:ポプラン)を探す旅に出る」という絶対あり得ねえエクストリームな設定に大爆笑すると同時に「自分とは一体何者なのだろうか?」というある種の哲学的な命題に対峙しなければならぬこの主人公、田上の置かれているリアリティにふっと我に返ったりと、正にとコミカルとシリアスの塩梅がこれでもかと表裏一体ピッタリと対峙しているのが珍しいくらいの本当に味わい深い傑作である。*13


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この映画のトークショーが開催されたのは、公開直前だったこともあって作品を紹介しつつそのネタバレをひた隠すスリリングさが滲み出るトークに爆笑したものだが、彼が「自由とは制限があってこそ享受できるものだ。」と言った時物凄くハッとしたと同時にこれが上田監督のバランス感覚なんだよな〜とつくづく思った。彼の作品群にはディズニーやマーベル、DCなどとあい通じるエンタメ精神がありつつも、ど真ん中にいるようでふと垣間見えるナイーブな程に知的な側面も垣間見えるのだ。コミカルとシリアスさとリアリティのバランスの絶妙さと時にそれらをぶち抜くようなギミックの妙技の組み合わせが、彼の作品を唯一無二の存在にしていると思っている。

 そこで本題に入るが、このトークの場で「シリーズものや原作ものではない"オリジナル作品"を世にドロップアウトする事の難しさ。」について上田慎一郎監督・皆川暢二の両氏共々触れていた。

現にこの皆川氏演じる田上は漫画をテーマとするネットアプリの運営会社の社長になっていて、本編にも「オリジナル作品では売れない。既存作のリイシューが全てだ。」などというセリフもいくつか存在していたと記憶している。

そしてこのトークの場で上田氏は以下のようにも断定したのだ。
「この話は過去の作品である『カメラを止めるな!』然り『スペシャルアクターズ』など群像劇が多かったが今回はそれらとは一線を画している。これは私上田慎一郎の【私小説】として位置付けられるかもしれない。」と。そう、『ポプラン』はそんな彼の本質・核(コア)を体現した作品なのだろうと確信したものだ。そうか、確かに既存作品のリイシューされたものや今の時代に合わせて再構築されたものはそれはそれでロマンがあるし、面白さの安定性に関してはガッチリと保証されているから売れることが見込まれる。でもと同時に面白さの枠組みの限界が固定されているため決して「奇跡」は起きないのだと思う。それはコミュニティを作ってその中の人だけで楽しみましょうみたいな生ぬるい空気感。

もうこれは分かりやすいので、ハッキリ例示してしまうが、私にとってあの大ヒットしている『スパイダーマン〜ノーウェイホーム』は全然面白い作品だとは思えなかった。ただ私のようなMCUに疎い人間でもあの最後の歴代主演やらヴィランが一堂に解するあの展開は度肝抜いたし、笑い所も泣かせ所もある壮大なバラエティとして楽しめたのは否定しない。だが、その反面、製作サイドとファンとの間でのみ成立する「内輪受け」の域を超える事がなかったとも正直に思ったのだ。要するにスパイダーマン としての業を背負った主人公の苦悩や怒りの部分が抉り出されてなかったし、スパイダーマンを通じて社会情勢に訴えかける的な外へ向かった感じじゃなく真逆だったのが意外だったくらいだったから。それが「これは今流行りのマルチヴァース展開だから仕方ない。」とかひっくるめられればそれまでだが、それにしても、完全にMCUワールドの内部だけで成立するコミュニティだけで世界観を確立させガラパゴス映画だったとも言えるんじゃないかと思う。まあ井の中の蛙」つっても世界規模の井の中の蛙なんだけど、所詮井の中は井の中なので周りの景色は見えないのだ。故に本作は残念ながら真っ向勝負していないんじゃいかという感覚は否めなかった。それに引き替え、である。この『ポプラン』であるとか今回のRibbon』などのオリジナル新作には今の時代を直感的に捉え、直視して、真っ向から挑んでいく気概を凄く感じるのだ。繰り返しになるが映画マニアに向けてでは決してなくここの所閉ざされてしまったエンタメ全体への光を再生へと促す太陽光のような役割を担っているのだと思う。今、我々が欲していて、これからも必要なのはこういうシリアスな状況に真正面から立ち向かった真っ向勝負のエンタメだと思う

そういう真っ向勝負要素は原作ものや既存作の再構築だけでは不十分だと思う。

レジェンドなど死んでしまえ。かのジャズの帝王、マイルス・デイヴィスだって以下のように言っているじゃないか。

A legend is α old man with  cane known for what he used to do. But I'm still doing it until I die.

 

伝説というのは、過去の業績にしがみついている老人のことだろ。そんなことになるぐらいならオレは死ぬまで現役を続けるよ。

つまりそういう事なんだと思う。

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本記事のGrand Conclusionとしてまとめると本作『Ribbon』が何よりも時代と共に寄り添い全世界の人口78億8796万3616人の目に留まる価値のある作品だという事、そして2022年全ての季節、いやそれ以降もずっとを駆け巡ってくれることを切に願う

そうすれば「世界はきっと平和になる」だろう....という唐突ながらJohn Lennon『IMAGINE』の歌詞を一部引用して14200字にも及んだ本レビューを壮大かつ強引に締め括っておきたい。


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*1:本レビューはFilmarks映画に執筆したネタバレありレビューを元に大幅に加筆修正を加えたものである。文字だけのサラッとしたバージョン、と言いたい所だがこっちですら5000字ぐらいあるんだけど(笑)

filmarks.com

*2:この辺りの記述はほぼこの記事の前半部と同じです(自分でバラすなw)

nenometal.hatenablog.com

*3:公式サイトより引用。

www.ribbon-movie.com

*4:これらの人物写真はこちらからの引用。

www.cinemanavi.com

*5:てかこういうガチのんファンの人結構多いんですよw、ファン同士が「今日は愛知から新幹線で明日の東京も夜行バスで行きます。」などと言ってるのよく耳にするから。

*6:シネ・リーブル神戸での13:00~と16:20~の上映前後の筆者自ら撮った写真。撮りすぎてどっちがどっちかわからん為まとめて掲載w。あ、司会の女の人語り口丁寧だったな、神戸ローカルのベテラン・アナウンサーだろうか。

*7:花とアリス』は上田監督作品では特に『恋する小説家』辺りにすごく影響を感じてるが実際はどうなんだろう。

*8:『アルプススタンドのはしの方』に関するレビューはこちら。

nenometal.hatenablog.com

『サマーフィルムにのって』に関するレビューはこちら。

nenometal.hatenablog.com

*9:『コケシ・セレナーデ』のレビューはこちら

nenometal.hatenablog.com

*10:あとこれはGCLによる完全インディーズ制作の舞台俳優によるプロジェクト『GCM動画日記』だけどこちらもコロナ禍に向き合っているよね。全ての面で先をいってたよね。

nenometal.hatenablog.com

nenometal.hatenablog.com

*11:本作は2回観てるんだけど
❶日々進化していく怪獣君に感情移入する事に成功(笑)

❷丸戸のんの相棒であるあの宇宙人の脳内ヴィジュアライズ化にも成功(笑)

❸樋口監督の顔ひっくり返してまで検証する所ともえかすYouTubeチャンネルのリアリティっぷりにマスク越しに吹き出すなど

*12:あと初回見た時から気になったのが主演・斎藤工氏が後半め辺りで着ていたtシャツに「難波Mele」と書かれていた件。あのライブハウスは去年スクリーントーンズで行った事あったから知ってるけど、斎藤氏はあそこに行ったりするんじゃろかねʕʘ‿ʘʔ?

*13:本作も死ぬほど感動してるのでつかブログ記事にせねばならんな。