NENOMETALIZED

Music, Movie, and Manga sometimes Make Me Moved in a Miraculous way.

インディー映画よ、今こそ光れ!『ミドリムシの夢』『みぽりん』そして『恋する小説家』!

1.夢にまで見た"ミドリムシの夢"

やっとのことで『スペシャルアクターズ』に出演している富士松社長、いやボスこと富士たくや氏が主演している事もあって、以前から観に行きたかった真田幹也監督作品「ミドリムシの夢」が大阪は阪急十三駅から5-6分ぐらいの所にあるインディーズを中心とした映画館「シアターセブン」でも上映される事になり、ようやく観ることができた。*1

よくよく考えれば、『スペシャルアクターズ』が公開された10月18日(金)以後に制作された出演者様の作品を観る事自体は初めての経験だったと言って良い。

孤独のグルメ』とか金スマ上田慎一郎再現ドラマ、とか公開前にってのはちょくちょくあったんだけどね。

 

で、この『ミドリムシの夢』ネタバレ抜きに話の流れをざっというと、

[STORY]

駐車監視員であるちょっと女にだらしないバツイチ男シゲ(ほりかわひろき)と、何事もキッチリしなければ気が済まない実家暮らしのマコト(富士たくや)の凸凹コンビ。*2

彼らはガンガン街に駐禁している車を取り締まりまくっている。プロポーズ成功したカップルだろうが、仕事中の現場作業員だろうが容赦無く...ってもこれはマコトの方だけだけどね。

 東京新宿は、西新宿にて深夜勤務に形態が変わった事をキッカケに次から次へと出くわす、そこで出会った様々な人生模様を絶妙な音楽や主題歌と共にテンポ良くかつコミカルに描く群像劇である。

  

 まずは本作、予告編がホントによくできているので是非観て頂きたい。


映画『ミドリムシの夢』予告編

 

予告編を見ていただいてなんとなく分かる通り、本作のテーマである、「大人になったあなたにはまだ夢があるのか?」という命題へと収束すべく、ミュージシャンになると言う夢を諦めかけた者、落ち目のアイドルとして将来的にどう苦境を乗り越えて行こうか悩んでる者、そして駐車監視員としてどのような夢を抱くべきだろうか、もう不倫はやめて家庭に向き会おう、今後の人生設計はどうしようか、etc...と総じて「現状を変えなければ。。。。!」と願っている主要な登場人物が全速力で駆け抜けていくシーンがあるのだが、このシーンがまるでスポーツかなんかを題材にした青春物語を見たような爽快感に溢れているのだ。ちなみに、予告編で流れているように落ち目のアイドルみうさんの歌う主題歌『ミドリムシの夢』がその駆け抜けるシーンとマッチしてて、主題歌と映画作品の雰囲気がこれほどピッタリとくる作品ってこれ以外探しても滅多にないんじゃんじゃないかって思うくらい。映画見た感じと曲を聞いた感じが全く同じ、というか。

*3

 

ちなみにこの二人以外の主要キャストはこんな感じである... 

 みう(落ち目のアイドル):今村美乃
 八重樫(アイドルのマネージャー):長谷川朝晴
 幸恵(見送りに来た主婦):吉本菜穂子
 翔(田舎へ帰る男):佐野和真
 春日部(主婦のバイト仲間):歌川椎子
 矢花(サラ金屋):戸田昌宏

 

 そして上映後間も無く、真田幹也監督とこの素晴らしきバディの主演の一人であるほりかわひろきさんが登壇して舞台挨拶が全体的に和やかな大阪らしいあったかい雰囲気で行われた。

 中でも撮影裏エピソード、ほりかわさんの「滑舌に難アリではないか疑惑トーク」に関して(笑)、また、「続編はあるのか?それははたまた大阪十三が舞台ってのもアリなのか!?」などの期待以上に踏み込んだ濃くも面白いトークの応酬で、50〜60席ほどあった館内はほぼぎっしり入っていて、ホント舞台挨拶の20分間がアッという間の大爆笑の連続だった。

 ちなみに私はド真前の座席に座ってたんだけど、そこから動画をフルで撮っているので是非ご覧頂きたい。

 この二人のやりとりがもうめっちゃ面白いので。

*4

『ミドリムシの夢』大阪初日舞台挨拶@シアターセブン 登壇 監督:真田幹也、ほりかわひろき

  中でも、この舞台挨拶の中で個人的にハッとした点は、そうした息の合った大爆笑トークから【本音】が透けて見えた事。ズバリ真田監督からはインディーズ映画を作って東京のみならず、色んな所でプロモーション展開していくことの重要さと大変さ】が吐露され、ほりかわ氏からは良いことでも悪いことでも良い。今、SNSの力は本当に凄いのでどんどん発信していって欲しい」と言うかなり切実な二人の言葉である。そうした面を考慮すると、本作『ミドリムシの夢』においても、ある程度のプラス以上になる興行収入を上げないと、いくら作品の質が良くても続編が作れないのは当然の話なのだろうから。そのためにも是非今後も、東名阪以外の他の地域でもガンガン上映して欲しいと思う。

 監督はしきりにこの駐車監視員(ミドリムシ)なる職業が東京以外に存在しないのではないか、という点を気にしておられたが大阪では駅前とかによく目にすることも多いし、こうしてTVなどでも東京や大阪の様子などが伝えられると思うので地方でも大丈夫だとは思うんだけどね。

 ちなみにミドリムシの夢-returns-』があるとすればメインはキャスト変えずに、ほりかわひろき&富士たくやコンビでやって欲しいなとも思ったりもする。というのも、本作の後半のあるシーンで、この凸凹コンビが人混みに紛れてトボトボ街中を歩く所に、東海道中膝栗毛のヤジさん、キタさん的な、あの凸凹コンビにどこか彼らにしかなし得ない何とも言えない「情緒」が感じられるのだ。*5

 あと、これは偉そうに聞こえたら申し訳ないんだけど、続編があるとすれば、本作以上にもっと二人の"間合い"とか、"会話劇"とかにフォーカスして欲しいなと思ったりする。意外と二人の絡みシーンって卵焼き云々の所しかなかったような気がするので、今回のようにあまり周りの人間模様を入れない方が、きっと、もっと二人の面白い化学反応が生まれると思うからだ。

 ほんと舞台挨拶でも触れてたけどほんとこのポスターの二人には何とも言えない深い味わいがあるんだな。 ↓

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2.「みぽりんの夢と恋するミドリムシ」????

ところで、ふと思ったが富士たくやさんが『スペシャルアクターズ』に出演してたり、内容的に性質上はちょっと違うんだけど「アイドル」を一つのモチーフにしたという意味で前記事でレビューした、インディーズ映画令和最大の前衛作品『みぽりん』と被ってたりと、ここ最近観てきた【シネマ・ロサ系】*6の作品群とのシンクロニシティがどことなく感じられるのだ。更に、『ミドリムシの夢』の根底にあるのは「君にとっての人生の夢って何??」というこの人類普遍のテーマで、これは『恋する小説家』の「軽々しく夢をあきらめるな!」というテーマと被ってたりするから、個人的にはなんとも偶然にも恐ろしく『ミドリムシの夢』ってなんと他の作品とのシンクロ要素の強い作品なんだろう、と実感させられている。しかも個人的にはこれらの作品を「スペアク→恋する→みぽりん→ミドリムシと間を挟まずもう連続で見てるしね。*7

 しかもこれらって、全てがバラバラの監督の作品なんだよね。

 そういや、以前、上田慎一郎監督『恋する小説家』と『スペシャルアクターズ』とを結ぶイベントが関西で行われたがこの時の模様と一つ前になるが『みぽりん 』の詳細ネタバレレポート過去記事で詳細にまとめてある。

以下で再掲するので、もし良ければご覧になって頂きたい。

 ついでながら、これまでのこの二つのインディー映画記事とそれぞれのあらすじはこんな感じである。

nenometal.hatenablog.com

 

[STORY]

地下アイドル「Oh!それミーオ!」のセンター神田優花は、人気投票1位を獲得し、ソロデビューする事に。 しかし、大の音痴である優花の歌声にプロデューサーの秋山とマネージャーの相川は頭を悩ませていた。 そんな中、同じグループのメンバー里奈のツテで、優花はボイストレーナー・みほのボイトレ合宿に六甲山の山荘へ参加する事に。 初日に契約書にサインをさせられると、翌日からいよいよ恐怖のボイスレッスンが始まる。優花に「みぽりん」と呼ばせ、狂った高笑いや怒り狂った猫の真似をするように自らも演じて見せつつそれらを強要するみほ、いやみぽりんの異常性は次第に狂気の狂気を更新していく。 

 

nenometal.hatenablog.com

 

[STORY]

恋人にも愛想尽かされつつある売れないミステリー小説家の岩佐辰夫が、設定やアイディアに煮詰まっていたそんなある日、インターフォンがしつこく鳴る。仕方なしにそのドアを開けると見知らぬ女子高生の姿が....彼女の名は南川奈緒

それはなんと、彼が現在執筆中の主人公と同姓同名だった!

そんなことがあって以来、他の小説の個性的な登場人物も次々にやって来て、誰もが口々に小説内容へのダメ出しを始める...

 

よくよく考えたらこの『恋する小説家』って作品に関して、上田慎一郎の監督作品もあまり認知されていなくて、ましてやインディー映画という言葉も今ほど使われてはいなかったであろう約10年も前に製作されているのに、この時代に全く色褪せていないこの感じってなんなんだろうか?

 時に笑えるシーンもありつつ、時にホロリともさせられ、さらに人生とは何か?夢を叶えることってどういう事なんだろうか?という人生の命題についても深く考えさせられるこの人間ドラマが、わずか40分に凝縮されているという...『恋する小説家』は、上田慎一郎作品のコアであると同時に奇跡的に凄い作品だなと感心する。*8

何せ、2019年に作れらたこれらの作品群と並べても何の違和感もないのだから。

 

3.ドリパス運動で壁を壊せ!

そう、「夢」といえば、「ドリーム」。「ドリーム」といえば「パス」というわけで(適当かよw)、まさに【ドリーム・パス】という映画ファン参加型の映画上映公開運動というものに今、この『恋する小説家』はその戦いに真っ向勝負で挑んで中々健闘をしていて、当然私も微力ながらポチポチ運動を日々、日課のように続けている。*9

勿論この運動を誰よりも応援している【リーダー】は紛れもなく被害者・根本明役を演じていた19人目のスペシャルアクターである岡本裕輝さんだ!

 

 

 

こんな投稿をしている我々に、毎日お礼のリプライをくださる岡本、いや被害者根本明様の誠実かつまあ丁寧なこと。これってたまたま一回とかではなくドリパス投稿をリンクつけてツイートした人達に全てこんな感じでリプライしてるからね。

 

 

で、最近このドリパス運動をしながら常々思ってるのは、一つの映画作品が上映されるか否か、というだけの問題だけではないような気がしている。

そこには、カルチャー全般を担う問題というか、もっともっとコアな問題を潜んでいるような気がしてきている。 

というのはそれはズバリ、これまで個人的な事情として、映画なり音楽なり舞台なりなんでも良いが、自分の好きなものっていつでもメジャーカテゴリーではなく特殊なカテゴリーに押し込められてきたように思うのだ。そう、よく言えば(と言ってもそんなよくはないが笑)【マニアック】【知る人ぞ知る】、もっと口の悪い言い方をすれば【一般受けしない】【メジャーではない】というあのレッテルに根差したタチの悪いカテゴライゼーションである。

  でも本当にそうだろうか?『恋する小説家』にせよ、『みぽりん 』にせよ、今回の『ミドリムシの夢』にせよ、カメ止め以前の初期の上田慎一郎監督作品にせよ、テレビドラマ時代の岩井俊二監督の『INITIAL』辺りに収録されている低予算で作られたという作品群にせよ、或いは音楽の分野になるが、私が大ファンなのだがだがまだ一般的に世間には認知されていない「鈴木美貴子ズ」にせよ、「ハルカトミユキ」にせよ、自分内、或いはそれを愛するファンの中では多大なる超メジャー級の感銘を心の底から受け取れるものばかりである。いや、むしろど真ん中である。その証拠にそれらを愛するものたちは口を揃えてこう言うではないか。「もっと売れても(認知されても)良い筈なのに。」と。これは間違いなく我々ファンの偽らざる普遍の心理である。

ぶっちゃけた話、これまで本ブログで何度ともなく記事で取り上げた『スぺシャルアクターズ』にしたってちょっとこの世間のリアクションのあまりの緩さに唖然として呆れてたりするぐらいだ。あれは前作以上に作り込まれ、練られた作品だと個人的には思ってるし、前作と同等以上のリアクションが伴わなばならないはずだ、もっと言えば前作を観た人間みんな観たら大絶賛する、とすら思っているくらいだ。

 このままでは映画界は「泣ける⇔泣けない」「笑える⇔笑えない」「伏線を回収する⇔回収しない」と言ったモノトーンなバイアスで語られまくり、テレビでお馴染みの人気者とされる無難に構成されたキャストで塗りたくられ、「お涙頂戴」か、「壮大なラブストーリー」か、「感動巨編」とか言ったありきたりの言葉で埋め尽くされたステマ映画だらけになってしまうではないか。ついでに言うと音楽業界も同じ事だ。観客をモッシュ風情の全体運動をさせて「ハイハイ、皆んなお上手〜」とかバカ学生のコンパ程度の芸当しかできぬパリピ御用達バンドや、声すらマイクに通して歌うことすらできぬ口パクだけで何の主張もヴィジョンもないコンサバティブなアイドル紛いの自称アーティストなどで蔓延してしまうではないか。
 

 心底僕らが求めていたのはこんなもんじゃないはずだ。

そんな安い精神安定剤かアルコール度数だけは高い発泡酒程度のものにまんまと騙され続けて何も悔しくないのか。何が、感動巨編だ、何がフェス・ロックだよ、単にどうつもこいつもタピオカの粒々以下程度のゴミを寄せ集めただけじゃねえか!!!!ほんとしょうもねえ!!!こいつら全部が全部今中国で流行ってるなんとかウイルスでやられてしまえ!!!!!!!!

 はっきり言おう、これはもはや、我々の良いもの、もっと言えば「文化を守る聖戦」である。まずは『恋する小説家』が上映にこぎつなければならない。これをトリガーとして、今後色んな「メジャー⇔マイナー」の壁がとっぱらわれる気がするのだ。是非この聖戦に勝たねばなるまい!

そんなことを思ってたら令和2年1月28日の夕方ごろ、こんな情報が飛び込んできた。

 

 

 

そうご存知の通り、最近北海道だ、金沢だ、大分だ、結構意外なところで拡大上映されているこの『みぽりん 』だけれど、とうとうまた関西に戻ってきたのである。

単なる上映ではない。そう、『みぽりん 』は関西(神戸)で作られた作品であるため姫路で上映する事によってようやく【凱旋上映】と呼称できるのだ。

しかも1日に3回上映して3回連続舞台挨拶である。

 

これって結構でかくないすか!?もうこれ世界を変えられるかもね。

 

と、言う訳でまとめると、ミドリムシの夢』も良い作品だったし、『恋する小説家』も再上映(これこそ凱旋上映だよね)に日々一歩近づいてるし、『みぽりん 』も最近徐々に広まりつつあるしで「インディーズ⇔メジャー」を間に阻むデッカイ壁が徐々に崩壊する音が聞こえつつあるように思える。 

これが無くなるのは時間の問題なのか?

これこそが間違いなく僕らの夢である。

 

 【付記】

最後の最後ににまたしつこいぐらいにJohn Lennonの引用だが(別にそんなファンじゃないけど彼このブログによく出てくるなw)、これがまた今回のドリパス運動にぴったりくるから再引用して、軽い感じの記事にしようと思ってたけど案の定というかまたまた8000字になってしまった本記事を締めくくろう。

 

 

A dream you dream alone is only a dream.

A dream we dream together is a reality.

 

ー1人で見る夢は単なる夢に過ぎない  だけど皆で見る夢は現実になるー

 

 Jonn Lennon(1940-1980)

*1:一応公式ホームページなどここであげておく。

www.midorimushinoyume.com

*2:スペアクボスの役柄とはちょっと若い設定なんだろう。同級生が落ち目とは言えアイドルだから28,9~30代前半ぐらいだろうな。となるとボスの年代設定って40後半〜って感じか、あの娘だもんね。

*3:ちなみに物販になかったのだがあれ、CD販売してたら紛れもなく買ったよね。あとパンフレットも欲しかったなぁ、ってここで言ってもしょうがないけど。

*4:ほりかわ氏、前飲みしてたらしくホント滑舌滑らかでしたよ、って初対面だから滑舌悪い時をよく知らないんだけどw

*5:いやいや、ここは舞台挨拶でも触れてる通り『相棒』的な、と言ったほうが良かったかな汗

*6:私が付けましたw

*7:あ、みぽりん とミドリムシの間に『ラストレター』(岩井俊二監督)観てたわw、まぁみぽりん (中山美穂)も出演してたという繋がりでおまけという事で(何だそれ)

*8:本作はわずか15万円で制作されたってのも信じられないです。

*9:『みぽりん 』の方もファン登録しててこちらも順調な伸びを見せているようだ。まぁこっちは今絶賛公開中でどんどん上映会場も増えているので、私は『恋する〜』の方に比重を置いて投票している次第です。