1. バンドにおけるアイドル化現象
最近twitterなどを見て、たまに違和感があるのが「推し」「課金」いうあの独特の言い回し。あれって元々アイドルとか声優兼シンガーとかあの辺のオタクっぽい連中あたりから頻繁に発生しているイメージがあるのだが、今やゴリゴリのロックバンドや超ベテランのシンガー・ソング・ライターにも適用されている気がする。まぁ、それはそれで良いのだが、それに伴いライブ自体の客の求めるクオリティも限りなく低レベルな判断基準がまかり通っている気がするのだ。
「"推し"にCDを"課金"して次の活動資金になってくれたらそれで良い。」
「"推し"のあのギター間違えたところの笑顔が可愛かった。」
っていう感じでこの【推し】【課金】という表現自体、オーディエンスの態度としてへり下っててものを言ってる印象になるせいか、バンドのパフォーマンスを限りなくアイドルチックな方面へと導いているような気がするのだが。
だってこれ逆に言うと、
「推しの最後の曲の激しいギターディストーションで前オーディエンスを震撼させた。」
とか
「推しが最後ドラムぶっ壊しーのギターの弦をはぎーの物凄い狂気のパフォーマンスターだった。」
など本格的なロック方面のパフォーマンスとは結び付きづらいだろうと思うし、現にそういうパフォーマンス自体も限りなく減りつつあるのではないだろうか。これって何となく感覚的なこと言ってる気がするが、その辺りをうまいこと言い当てたフレーズが鈴木実貴子ズの『音楽やめたい』で言う所の【キャバクラになってしまったライブハウス】なのかもしれない。実貴子ズのこの【世界の心臓部を貫いた感】を言い当てた件に関しては別の記事で書こうと思うのだが、とにかくオーディエンスは折角金を払って人によっては決して安くない遠征費を払ってライブを観に来てるのだからもっと声を上げても良いと思うのだ。
その証拠に最近どこのライブハウスに行っても『アンケート用紙』というものが全くないではないか。いや、あの『アンケート用紙』って演劇なんかでたまに劇場に行ったりするからよくわかるんだけどあれは「思ったままの正直な意見」や「辛辣に書かれた感想」を浮き彫りにする効果があるのだ。つまり『アンケート用紙』を配らないという姿勢はマイナスな意見からは目を逸らしていきますよという姿勢とイコールだと思う。残されたものは140字のSNSのtwitterではほぼほぼ細かいことが書けないから逆にプラスの意見だけが浮き彫りにするのだ。あるいはバカっぽい意見だけが浮遊するとかね。ましてやオフィシャルがそういう意見ばかりRTしまくればこっちのもの。結果ふわふわした意見ばかりがタイムライン上に浮遊して、いつしかアイドルを押そうというアイデンティティと融合してロックバンドも「推し」の一つになってしまったのだろう。そんなこと思ってたらこういうツイートに出会った。
ライブハウスは10年前から既に飽和状態なのに増える一方、演者の中心となる若者は減る一方、地下アイドルなるものの出現で新しい演者と客層を一時的に得たが、どう考えてもステージでの演奏は劣化が止まらない、最も蔑ろにされてるのはお客さん、この流れを一体誰が止めるのか、もう止められないのか。
— BABY BLUES/ゴガツハズカム (@gogatsuhascome5) 2020年2月16日
やはりちゃんとしたロックバンドでもステージパフォーマンスのレベルって劣化の一方を辿ってるのだろうか。そういえば心震えるワンマンにおけるライブを経験したのは2018年の3月にサニーデイ・サービスで、曽我部恵一がギターをぶっ壊した時か、あるいはその年の9月にハルカトミユキのゾンビアクトあのパフォーマンス以来か。
2. ハルカトミユキ TRIADのモードとは?
という訳で2020/2/15(土) 個人的に夏以来、久々のハルカトミユキのワンマンライブ 「Live 2020 “Triad”」が大阪は福島と言う所の高架下にある大阪・LIVE SQUARE 2nd LINEというライブハウスで行われた。
セトリは以下の通り。*1
まぁ結論を言うと、ドラムが加わった効果によって、既存曲に関してはドラム・リミックスによって再解釈を施したアレンジになっている印象を受けた。『プラスティック・メトロ』や『振り出しにもどる』は「ダンスリミックスによる再解釈」によってよりダンサブルに、更に『Vanilla』や『ニュートンの林檎』はよりバンド・ダイナミズム度を増している印象で。これまでの二人編成でのヒリヒリ感であったり、ベースやギターを更にフィーチャーしたフル・バンド編成のガチガチにコンセプトを掲げた【ショー的】な感覚とは違う、もっとバンドライクと言ったらいいだろうか。例えるなら曽我部恵一のソロともサニーデイ・サービスとも違う、曽我部恵一バンドにおけるバンドにおける一体感、」バンドダイナミズムを楽しむモードと言ったら良いだろうか。
例えば、『トーキョー・ユートピア』でハルカが途中の歌詞を飛ばしてもそのままスッとばしてガンガン行くあの感じ。あるいは『ニュートンの林檎』でイントロからミユキのキーボードが遅れて途中ストップがかかってハルカ「オイオイオイ!!!一人ニュートンやる所だったよ!」(場内大爆笑)みたいな感じで本当に楽しんでるんだなと思った。
タイムリーに、Triadについてのコラムあがってます。
— ハルカ/ハルカトミユキ (@harukatomiyuki) 2020年2月15日
あと自由について。
今日やりたかったこと、まだできてないこと、これからやりたいことについて。
ホヤホヤのうちに。#ハルカトミユキTriad https://t.co/nVWPXmvxRv
で、話は変わってその前日、心斎橋KNAVE において、モバイル会員限定イベント(HARUKATOMIYUKI.Lab vol1)が行われた。これは名前の通り、まぁハルカトミユキ と言えば心のひだを抉るヒリヒリ感とメロディアスさとが融合した音楽を奏でるイメージだが2人のトークも何とも言えない味があるのだ。その素の部分をフィーチャーした本イベントともいえる。
今回ミユキボーカルデモ音源やハルカ的語彙獲得の過程を披露したりと天才音楽家達の脳内を窺い知れたものだったが、triad編成ライブとほんとに地続き感のあるものだったと思う。ほんとにこの二人のモードは「音を楽しむ=音楽」と言う原点に立ち返っているんだなと言う事が両日のイベント並びにパフォーマンスから窺い知れたものだ。
もうこうなりゃいずれ是非このTRIAD編成でセルフカバーALでも一発リリースして欲しいいなと思う。
ここ6年ハルカトミユキのライブに行ってますが(的確な表現かわかりませんが)triad編成で既存曲の再解釈、言わばリミックス・アルバムを聴いている感覚でした。
— ネノメタル⚡️New Analysis of an Account of Anatomy’s (@AnatomyOfNMT) 2020年2月16日
『プラスティック・メトロ』『振り出し〜』はよりダンサブルに『vanilla』『ニュートン〜』はよりダイナミズムを増してとても新鮮でした!
3. 新曲『Continue』を分析する
春には音源リリースで6月東名阪ツアー!YouTubeもボチボチ公開らしいヨライブ本編も無事終了し、アンコール。そこで披露されたのは、『Continue』と言う新曲である。こちらは去年末の「7doors」で披露されたため個人的には初聴きだった。もうこれ正直に思ったのでハッキリ言っておくが、聴いた感じがものすごく意外過ぎて拍子抜けしてしまった。具体的に言うとヴォーカルもメロディーも歌詞もいつもと違って聴こえたし、こんなに彼女ららしくない謎曲は初めてだ、と感じた。
まぁここまで言ったら更に以下のはてなブログにおいて、この曲のタイトルContinueの語源を見てみようか。
continue /kəntínjuː/ : 続ける
continueの意味は「続ける」で、語源はcon(一緒)とtenere(掴む)に由来します。
原義はラテン語のcontinuare (繋がっている)です。
まあこの引用からその語源を辿っていくと「共にこのままの状態を維持する。」と言う事だが、この『Continue』と言うタイトルに関して以下二点において焦点化していく事にする。
❶ continueの接頭辞の「一緒に=together」が一体ど何(誰)と一緒になるのかと言う事だ。ここで予測とされるのが前日のイベントにおける【現状の彼女らを肯定してくれるファンダム】を中心として現状維持+アルファでの活動を続けていくと言う宣言ではないだろうか。
更に
❷ バンドの根底を覆す意味で『change』をスローガンに掲げた2015年と真っ向に対峙するタイトルかつ誰が聴いても保守的なサビの歌詞はもはやこの人たちはメインストリームに躍り出るのを諦めてしまったのではないか、とすら思ってしまうのだ。
別に批判だとかじゃなくて前述した通りLive自体は非常に良かったが、ただひたすらこの『continue」だけフワッと浮いてて解釈できなかっただけなのだ。第一章で述べたバンドのパフォーマンスを限りなくバンドを甘やかす方面へと導いているような現象の余波みたいなものがここでも起こっているのではないかというお節介にも似た懸念に近いのかもしれない。現に肯定的な意見も多いし。
でももう一度聴いたら印象が変わるのだろうか?
そう、私にはもう一度チャンスがある。そう、ハルカトミユキtriadは本日、2/21に新代田FEVERにて「なきごと」 「可愛い連中」を迎え入れて自主企画イベントを行うのだ。
そこで演奏されるかどうかは不明だが、もうこの曲に一度向き合いたい、対峙してみたいと思っている。
答えはすぐそこ。