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プライドってなんですか?〜『#ミドリムシの姫』&『#ミドリムシの夢』(真田幹也監督)合同レビュー🐛

1.前作との比較🐛
前作『ミドリムシの夢』において「大人の青春群像劇」と言う作風以上に「路上監査員(ミドリムシ)」という職業そのものに更にグッとフォーカスを寄せたストーリーとなっているのがとても印象的だった。

https://midorimushifilm.wixsite.com/hime

それが功をなしてか主人公・野上幸子(河井青葉)をはじめ、同僚として働く様々なミドリムシたちの心象風景を写像することに成功していて、前作以上に登場人物たちへ深く感情移入して物語に入り込めた。めっちゃ地味って訳でもなくてあと今回新人ミドリムシとして出演してた青野竜平さんもラスト付近サプライズを見せてくれるしで前回同様にスカッとする側面もあった。


www.youtube.com

個人的意見を言えば前作より今作の方がスルメ度は高いと思う。
昨日観て今日、公開中にもう一回は見に行きたいと考えているほどだから。
とはいえ別に前作が受け入れなかった訳ではなくて、このfilmarksでのレビューでも評価してるし、5000字ぐらいの熱いブログを執筆するぐらいとても面白かった事を断っておきたい。

ただ、前作を見た後のブログ記事内でのレビューで私は以下のように率直な意見を付記している。

「続編があるとすれば、本作以上にもっと二人の"間合い"とか、"会話劇"とかにフォーカスして欲しいなと思ったりする。」

この「二人」とはもちろん今回も出演しているバツイチ男シゲ(ほりかわひろき)と、前作のみの何事もキッチリしなければ気が済まない実家暮らしのマコト(富士たくや)のことだが、そのお二人の魅力的なキャラクターが霞むぐらい目まぐるしいストーリー展開が幾分慌ただしいという印象が少なからずあったと思う。
では今作ではどう変わっていっただろう。

 

2.姫にガチ恋🐛
今作はそんな私の懸念めいたものを見事に払拭している。
とにかく今回のバディ、主人公・野上幸子と超ストイックな元・教師のベテランミドリムシ大高洋夫)が絶妙で観ていて二人の会話シーンは結構テンポがあって心地よかった。これは後から分かるけど、二人どこか性格が似ているのだと思う。本作の根底をなしているのは、彼らの一見真面目そうというか「なんでこの職業選んだの?」というどこか抱える心の闇のようなものが徐々に浮き彫りになっていく構造で、より深く彼女ら登場人物たちへの心象風景をより深く理解し、共感することができたように思う。
.....などと、堅苦しい言葉使ったがとにかく野上さんのこういうどこか影があって芯のある女性のようにも見えてどこか脆い面もあるみたいなキャラクターがとにかく魅力的だったのだ。話は全然違うが安田弘之著『ちひろさん』という漫画の主人公を思い出した。
あの主人公ちひろさんの方が確かに心の闇の部分はとても奥深いんだけど野上幸子の方が身の回りにいそうでいない、いやもしかしたらいるかな、ぐらいの絶妙なリアリティのある女性である。あの妙に理屈っぽいハキハキした感じの口調だとか、妙に私服が我々男でも分かるレベルのオシャレさだったりとか、下ネタ言いがちなジジイにも過剰反応せず軽く受け流したりとか、妙にフワユル・インスタ映えなフェミニン女過ぎず、かと言って真逆に位置する男か女か分からんみたいなツイフェミのガチ勢みたいなああいう感じでもないこの匙加減ってかこの絶妙感が最高なのだ!
あ、告白します。
 私はどうやら、もはや野上さんに「ガチ恋」してしまったようです。
そう言った意味では、本編中「おばさん」などと抜かしたドライバー(仁科貴)や極悪YouTuberどもは断じて許せません☠️
そういや仁科さんは去年公開された某女子高生殺し屋二人組映画では893に散々な目に遭ってたけど今回も結構散々な目に遭ってます(笑)

 

3.舞台挨拶でのトーク🐛
前作・今作いずれも真田幹也監督と出演のほりかわひろきさんの舞台挨拶にも参加しているが、毎回掛け合いも独特の間があって凄くツボなのだ。
その時に早くも第三作目への展望トークもあったがタイトルはどうなるのだろう?
今まで「ゆめ」「ひめ」と「め」で韻を踏んでるので今度もそれで行くのかなど考えたり、そうなったら「"め"で終わる二文字」ってことで『ミドリムシのカメ』『ミドリムシのサメ』『ミドリムシのウメ』ぐらいしか思い浮かばないしで、3作目のタイトルは一体どうなるのか今からもう気になっている。
あと先の理由で、野上幸子さんの主人公、再登板は強く望むところだが、どうなるんだろう。

あと舞台挨拶の後半で真田幹也監督は
「世の中のドラマには医者であるとか刑事であるとか教師であるとか定番の職業を題材としてるんだけれども、このように"路上監査員"などのようなマイナーな職業にに目を向けたものは極めて少ない。こういうニッチな職業に目を向けることによって、むしろそこにしか生まれないドラマが生まれるんじゃないかといつも思っている。」
というような事を仰ってたがその言葉に深く共感できるものがあった。
というか、路上監査員というマイナーな職業にフォーカスしたからこそ、そこから透けて見える人間模様や心象風景など我々の日常生活にも当てはまる、ある種の一般性や共感が生まれるのではないだろうかとすら思うのだ。
「鑑賞後、町のミドリムシ達が皆ヒーローに見えるそんな映画だ」と前作から今作にいたるまでずっと思ったものだが、結局、我々は人生に、そして自分の生業に、自分の愛する人達にプライドを持って生きる者は誰しもヒーローなのかもしれない。
そう、ミドリムシとは彼らだけではない、我々もミドリムシ、だったのだ。

(付記)あ、真田監督、本作ってか前作を見て以来、大阪の街を歩いて路上監査員の方々に俄然注目するようになりましたが、帽子に緑色の制服、そして大体二人組と東京とほぼ同じスタイルだと思います。

再録;「ミドリムシの夢」

nenometal.hatenablog.com

1.夢にまで見た"ミドリムシの夢"

やっとのことで『スペシャルアクターズ』に出演している富士松社長、いやボスこと富士たくや氏が主演している事もあって、以前から観に行きたかった真田幹也監督作品「ミドリムシの夢」が大阪は阪急十三駅から5-6分ぐらいの所にあるインディーズを中心とした映画館「シアターセブン」でも上映される事になり、ようやく観ることができた。*1

よくよく考えれば、『スペシャルアクターズ』が公開された10月18日(金)以後に制作された出演者様の作品を観る事自体は初めての経験だったと言って良い。

孤独のグルメ』とか金スマ上田慎一郎再現ドラマ、とか公開前にってのはちょくちょくあったんだけどね。

 

で、この『ミドリムシの夢』ネタバレ抜きに話の流れをざっというと、

[STORY]

駐車監視員であるちょっと女にだらしないバツイチ男シゲ(ほりかわひろき)と、何事もキッチリしなければ気が済まない実家暮らしのマコト(富士たくや)の凸凹コンビ。*2

彼らはガンガン街に駐禁している車を取り締まりまくっている。プロポーズ成功したカップルだろうが、仕事中の現場作業員だろうが容赦無く...ってもこれはマコトの方だけだけどね。

 東京新宿は、西新宿にて深夜勤務に形態が変わった事をキッカケに次から次へと出くわす、そこで出会った様々な人生模様を絶妙な音楽や主題歌と共にテンポ良くかつコミカルに描く群像劇である。

 

 まずは本作、予告編がホントによくできているので是非観て頂きたい。


映画『ミドリムシの夢』予告編

 

予告編を見ていただいてなんとなく分かる通り、本作のテーマである、「大人になったあなたにはまだ夢があるのか?」という命題へと収束すべく、ミュージシャンになると言う夢を諦めかけた者、落ち目のアイドルとして将来的にどう苦境を乗り越えて行こうか悩んでる者、そして駐車監視員としてどのような夢を抱くべきだろうか、もう不倫はやめて家庭に向き会おう、今後の人生設計はどうしようか、etc...と総じて「現状を変えなければ。。。。!」と願っている主要な登場人物が全速力で駆け抜けていくシーンがあるのだが、このシーンがまるでスポーツかなんかを題材にした青春物語を見たような爽快感に溢れているのだ。ちなみに、予告編で流れているように落ち目のアイドルみうさんの歌う主題歌『ミドリムシの夢』がその駆け抜けるシーンとマッチしてて、主題歌と映画作品の雰囲気がこれほどピッタリとくる作品ってこれ以外探しても滅多にないんじゃんじゃないかって思うくらい。映画見た感じと曲を聞いた感じが全く同じ、というか。

*3

 

ちなみにこの二人以外の主要キャストはこんな感じである... 

 みう(落ち目のアイドル):今村美乃
 八重樫(アイドルのマネージャー):長谷川朝晴
 幸恵(見送りに来た主婦):吉本菜穂子
 翔(田舎へ帰る男):佐野和真
 春日部(主婦のバイト仲間):歌川椎子
 矢花(サラ金屋):戸田昌宏

そして上映後間も無く、真田幹也監督とこの素晴らしきバディの主演の一人であるほりかわひろきさんが登壇して舞台挨拶が全体的に和やかな大阪らしいあったかい雰囲気で行われた。

 中でも撮影裏エピソード、ほりかわさんの「滑舌に難アリではないか疑惑トーク」に関して(笑)、また、「続編はあるのか?それははたまた大阪十三が舞台ってのもアリなのか!?」などの期待以上に踏み込んだ濃くも面白いトークの応酬で、50〜60席ほどあった館内はほぼぎっしり入っていて、ホント舞台挨拶の20分間がアッという間の大爆笑の連続だった。

 ちなみに私はド真前の座席に座ってたんだけど、そこから動画をフルで撮っているので是非ご覧頂きたい。

 この二人のやりとりがもうめっちゃ面白いので。

*4

『ミドリムシの夢』大阪初日舞台挨拶@シアターセブン 登壇 監督:真田幹也、ほりかわひろき

  中でも、この舞台挨拶の中で個人的にハッとした点は、そうした息の合った大爆笑トークから【本音】が透けて見えた事。ズバリ真田監督からはインディーズ映画を作って東京のみならず、色んな所でプロモーション展開していくことの重要さと大変さ】が吐露され、ほりかわ氏からは良いことでも悪いことでも良い。今、SNSの力は本当に凄いのでどんどん発信していって欲しい」と言うかなり切実な二人の言葉である。そうした面を考慮すると、本作『ミドリムシの夢』においても、ある程度のプラス以上になる興行収入を上げないと、いくら作品の質が良くても続編が作れないのは当然の話なのだろうから。そのためにも是非今後も、東名阪以外の他の地域でもガンガン上映して欲しいと思う。

 監督はしきりにこの駐車監視員(ミドリムシ)なる職業が東京以外に存在しないのではないか、という点を気にしておられたが大阪では駅前とかによく目にすることも多いし、こうしてTVなどでも東京や大阪の様子などが伝えられると思うので地方でも大丈夫だとは思うんだけどね。

 ちなみにミドリムシの夢-returns-』があるとすればメインはキャスト変えずに、ほりかわひろき&富士たくやコンビでやって欲しいなとも思ったりもする。というのも、本作の後半のあるシーンで、この凸凹コンビが人混みに紛れてトボトボ街中を歩く所に、東海道中膝栗毛のヤジさん、キタさん的な、あの凸凹コンビにどこか彼らにしかなし得ない何とも言えない「情緒」が感じられるのだ。*5

 あと、これは偉そうに聞こえたら申し訳ないんだけど、続編があるとすれば、本作以上にもっと二人の"間合い"とか、"会話劇"とかにフォーカスして欲しいなと思ったりする。意外と二人の絡みシーンって卵焼き云々の所しかなかったような気がするので、今回のようにあまり周りの人間模様を入れない方が、きっと、もっと二人の面白い化学反応が生まれると思うからだ。

 ほんと舞台挨拶でも触れてたけどほんとこのポスターの二人には何とも言えない深い味わいがあるんだな。 ↓

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*1:一応公式ホームページなどここであげておく。

www.midorimushinoyume.com

*2:スペアクボスの役柄とはちょっと若い設定なんだろう。同級生が落ち目とは言えアイドルだから28,9~30代前半ぐらいだろうな。となるとボスの年代設定って40後半〜って感じか、あの娘だもんね。

*3:ちなみに物販になかったのだがあれ、CD販売してたら紛れもなく買ったよね。あとパンフレットも欲しかったなぁ、ってここで言ってもしょうがないけど。

*4:ほりかわ氏、前飲みしてたらしくホント滑舌滑らかでしたよ、って初対面だから滑舌悪い時をよく知らないんだけどw

*5:いやいや、ここは舞台挨拶でも触れてる通り『相棒』的な、と言ったほうが良かったかな汗