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生と死の境界線、と更にその先にあるもの〜 #小川深彩 監督作『#はじめの夏』『#偽神』『#二階のあの子』を鑑賞して

『偽神』『はじめの夏』『二階のあの子』を貫くものとは?

本当に、この監督の作品とは正に運命の出会いだった。9/25(土)の夕方頃、大阪はスカイビル内にあるミニシアター「シネ・リーブル梅田」3Fにて『oasisネブワース1996』を観に行った所、当初9/26に1日かけて行う予定だったが、偶然その日は早乗りして一時間だけ行ったというチラシを配りをされていた小川深彩さんという新進気鋭の映画監督の方に直接チラシを頂いたのであった。*1

 

いや、もうこのツイート通りで付け足す言葉がない。何せ映画館の入り口付近で普通にマスクしてて若い女性がチラシ配りしてるな〜ぐらいの感じだったのだが、どこか只者じゃない感が半端なかったのだ、まさに漂うオーラとはよく言ったもので、正にこの人はエンタメを生業としてる人なんだろうなって感じが半端なかったのだ。そうこうして待ち時間の間、彼女のTwitterなどチェックして、フォローしたりしていたらその後にフォロバを頂いて、うちに帰ってプロフィールや作品群を見たりするとやっぱりこの方は只者じゃない予感が確証されたのだ。それですぐさま 9/27(月)のシネ・リーブル梅田での上映に参加する事を私の中で大決定したというわけだ。

その時のチラシがこの『偽神』である。

この作品は個人的には当初よくわからなかったが、田辺・弁慶映画祭セレクション2021という映画コンペティションの一環としての上映だと認識している。

misaogawa.com

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Rough Story; 

神だけを信じ、幸せに暮らす正人とその家族の元に、ある日突然不気味な彫刻が現れる。愛する者の心臓を捧げるよう迫られ、追い込まれていく正人。暗い過去を必死に隠そうとする正人とそれを知りたいと願う妻。ガラガラと崩れていく日常の中で、神の御心を必死に模索しつつ、正人は決断を迫られる。


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☆小川深彩監督作品感想

当日本作を鑑賞して思ったのはホラー、スリラー、サイコ・サスペンス等のジャンルをあくまで表現手法としつつも、別にインパクトありきでそれ自体が目的としてではなく、さらにその先にある「生と死のボーダーラインとその先にあるものは何か」と言う命題へと収束していくような印象があった。

ちなみにこの「生と死のボーダーライン」と言う命題は『偽神』 のみならず併映していた『二階のあの子』『はじめの夏』と言う作品群にも一貫していたように思える。

言うなれば、生死の境界線をハッキリと分断して主人公である正人が贖罪へと向き合うことができるのかと言う主題の『偽神』、そして逆にその生と死ボーダーラインをむしろ曖昧にする事で普遍的なヒューマニティを浮き彫りにした『二階のあの子』、更にはその生と死ボーダーラインすらも消え失せたところにあるある母子の愛を描いていく『はじめの夏』と全て素晴らしい作品群だった。
あと全作共通して言えることは劇伴である。『偽神』においてあの堕天使が鎖で繋がれた箱が送りつけられた時の緊張感ある音楽などいまだに思い出すだけでもゾッとしたし、『二階のあの子』でも主人公の女の子が2階へと上がっていく時でも彼女の心理描写と音像とが密接に結びついてその切迫感たるや半端なかった。

 これは後から上映後小川監督からお聞きしたのだが、音楽の使い方には元々小さい時から舞台などにも出演していて、オペラなどにも造詣が深く、その辺りに使い方には深い拘りがあったらしいが、ものすごく納得してしまった。後余談だが『はじめの夏』の某最後のシーンとか『偽神』のポスターやどこか宗教的というか荘厳なビジュアルイメージなどからEvanescenceの影響などもあるのかなとチラッと思ってお聞きしたがそこは関係なかったようだ(笑)。なんとなく風呂場のとこかこのmvをふらっと思い出したんだけどな。


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それにしても凄い映画監督が出てきてしまった。

 9/27、シネ・リーブル梅田にて20歳にして鬼才と称すべき小川深彩その人の名が私の頭の中に刻まれた瞬間だった。

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(上から『二階のあの子』『偽神』『はじめの夏』より)

☆小川深彩監督舞台挨拶

この上映の後、『二階のあの子』に主演された山庄乃の葉さんとのトークという形で舞台挨拶が開催された。恐らくは山庄乃の葉さんの家族の方も沖縄から勢揃いで鑑賞してたりで、終始和やかな雰囲気で行われたが、割とビビったのは、山庄乃の葉さんによる「なんでこの映画(『偽神』)を撮ろうと思ったんですか?」というイノセントながら核心をついたこの質問に思わずのけぞってしまった、この人演技見てる時にも思ったけど本当天才すぎる。

あと「もう一つ質問していいですか?」と自らかって出て「どういう気持ちで映画を観てるんですか?」とかいうド直球の質問もぶつけてたしな(笑)

で、この困難極まる質問に対しては小川さんは普通は他の映画監督が組み合わせないであろうサブジェクトの組み合わせて、そこから生まれる化学反応を意識しているという。

『偽神』における「宗教」『はじめの夏』における「母の日」、そして『二階のあの子』における「女の子同志の友情」というテーマに各々ホラー、スリラー、サイコ・サスペンス等のジャンルを組み合わせることによって生まれる独自のグルーヴと言おうかケミストリーとでも言おうか、そこに彼女の映画にそこはかとなくオリジナリティを感じ取ることができるのだろう。

だから先ほど、作品群を観た感想として、生死の境界線について述べてきたつもりだがもっと彼女のヴィジョンは広くて以上述べたジャンルにそこに止まらない更なるフェイズが組み合わされた作品というのも期待できるかもしれない。そもそも「生と死」という次元に関して言えば『はじめの夏』はもうある種の極地だからな。

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と言うわけで大事な事だから二度いうが、それにしても凄い映画監督が出てきてしまった。

 2021年9/27、シネ・リーブル梅田にて20歳にして鬼才と称すべき小川深彩その人の名が私の頭の中に刻まれた瞬間だった。


 

*1:本記事は以下この『偽神』について書いたFilmarksのレビューに加筆・修正を加えたものである。まあColor Versionと言おうか(笑)

filmarks.com