NENOMETALIZED

Music, Movie, and Manga sometimes Make Me Moved in a Miraculous way.

#吉田彩花 (Saika) 名古屋Tour Three days 大成功記念〜エンタメ界の太陽、Saika曲を語り尽くせ!

 

f:id:NENOMETAL:20210721121828j:plain

「“うた”はブログであるとか、写真であるとか、色んな媒体があるけど、今の私の気持ちが真空パックされると思う。今から歳をとって、何十年か後に自分の歌を聴いてどう思うのだろう。それがとても楽しみです。」ーSaika(2021/6/21)
 
1.名曲『むらさき』爆誕
 吉田彩花(Saika)がついに「名曲」を発表した。*1
そう、これまで彼女の楽曲中、個人史上最強の曲『むらさき』がついに動画公開されたのだ。
でも、こんなトーンでいえば確かに語弊があるかもしれない。だって確かに以前のブログ記事でもあるように初のソロ配信リリース作となった『余韻』収録の『余計だ』『優しく生きよう』だってそれに劣らず素晴らしいから。
その証拠として、何せ私はほぼこの二曲だけで12000文字もの記事を書いてしまってる事がそれを立証しているじゃないか(笑)

nenometal.hatenablog.com

でもちょっと断っておきたいのは、今回の『むらさき』は今までの楽曲とは濃密度・空気感などあらゆる意味で違う輝きを放っているという意味での「名曲」だと思う。
あくまでこれは予測だけれど、彼女のここ一年の活動を見ていく限り、楽曲配信、舞台の演技やプロデュース、そしてバーペガなどでのライブ、あとYouTube配信などここ最近怒涛の勢いで常に彼女の姿を目撃することがこれまで以上に多くなった事も大きく起因しているのではなかろうか。
本当にtwitter等での我がタイムラインを賑わせ続ける「エンタメは心の太陽というスローガンを掲げる人」 というよりもはや 「エンタメ界の太陽そのもの」 になりつつある彼女は今のこの忙しいモードだからこそ曲に力強い光が込められているのだろうかと思ったりする。
そしてこの『むらさき』に関し90年代後半期にまでの日本のロック界隈にまで想いを巡らせば、あの時期は、90s初期ぐらいまでの渋谷系などの海外音楽の空気感をスタイリッシュにパッケージしてた時期を超えて「普遍的な"うた"としてのポップス」が徐々にヒットチャートを賑わしてた時期を彷彿してしまう。
例えば小沢健二『僕らが旅をする理由』UA『情熱』『リズム』、あと(最近森七菜がカバーしててビックリしたのだが)ホフディランによるオリジナル曲『スマイル』などが今もなお、様々なポップスシンガーにカバーされ人々に愛されている曲が見られるが、この『むらさき』にはそういう系譜の音楽をリマインドさせるように思われる。


www.youtube.com

少し印象に残ったフレーズを挙げてみようか。

 

高円寺には羊と翼(ペガサス)

麒麟と音楽 

ギターと言葉 いつもがなくなるいつもを過ごせば

きっと日々新しく一瞬(セツナ)を生きれるんだ

 

ここでの「高円寺」であるとか「ペガサス」とか「音楽」などのようなフレーズ群は彼女が定期的に配信ありきでのライブを行なっている高円寺のライブスペース【バーペガ】が脳裏に浮かんだりするが実際にはどうなんだろう。特筆すべきは上記のフレーズが醸し出すどこか太陽のような力強い光の眩さは言うまでもないが、ここは吉田彩花のポテンシャルの計り知れなさとして強調したいのが、本曲は単刀直入に行ってしまえば、あの「サニーデイ ・サービス」というよりも、ソロモードの時の曽我部恵一名義の作品群の空気感を体現してるのだ。本人は無意識らしいけど。いや、別にこれは歌詞にある通り【セツナ】というフレーズがあるわけではないが猛烈に曽我部恵一のこの曲をリマインドしてしまうのだ。


www.youtube.com

 

夢みがちな1日にただ一瞬だけ訪れる真実

それが僕らを惑わす

いつもそれが僕らを惑わす

 
たまたま偶然なんだけど、ここでシンクロするキーワード「一瞬」とサニーデイのライブハイライト曲タイトルである「せつな」。
そもそもこのSaikaは舞台女優としての彼女がキッカケで注目しているのは以前の記事から明らかなんだけど*2実際に音楽ライブに行って彼女の作り出す音像を東京に赴いてまでも生で聴く必要があるのではないか?といつしか思うようになった。

そんなことを思っていたら以下のようなツイートが目に入った。
 

f:id:NENOMETAL:20210720212500j:plain

名古屋!???しかもあの鑪ら場とな???Two days???
もう両日共々行こうじゃありませぬか(笑)
これまで2度彼女の舞台は観てるのだが、1回目はよく知らなかった幅と、2回目は『雨雨』主催のCCBは役者との面会に関しては(情勢を踏まえてか)NGというポリシーだったので、ここにきてようやく私は吉田彩花に直接挨拶することができるチャンスでもある。悲願の初面会達成!
ということでそこでここ一年彼女がここ最近公開してきた彼女の素晴らしい楽曲群をここで紹介していきたいと考えている。
 
本稿の構成は以下の通りである。 
1.名曲『むらさき』爆誕
2. Saika's Songs Collection

❶サニー

コガネムシ

❸いつか君にとって

❹気まぐれ

❺まる

❻オレンジ

❼ボーナストラック:『歌え、ピエロ〜movie by Youtu部?』

3. 名古屋ツアー3Days

❶初日

❷二日目

 ❸最終日

4. エンタメよ、太陽に笑え 

 

2. Saika's Songs Collection

❶サニー


www.youtube.com

 本曲の『サニー』とはSaikaが最も愛用しているアコギに名付けられた愛称でもある。

「サニー=Sunny(太陽の)」恐らくこのフレーズは正に彼女が常日頃スローガンにしている「エンタメは心の太陽」に由来しているのだろう。

「もう過去など笑いとばせ!そしてリズムを奏でよ!」

そんな事でも言いたげなこの血湧き肉躍るこの曲、それにしても聴いてて胸のざわめきを誘導する曲だ。本曲はここ最近バーペガなどの配信スタイルのライブでも頻繁に演奏され、それを見るたびに徐々に狂想曲のような混沌性を増していく化け物要素満載の曲である。あの『まる』が広く長く大きく普及すると大海原を巡るカモメのような広大さがあるのに対してこちらは突黒を巻いて突き進む大蛇のような(なんじゃその例えw)どちらも対照的ながらも非常に更新性の高い曲でもある。
 

喜怒哀楽ほど簡単に言葉に収めたとしても感情は余白ほど渦巻いてる

 

そしてフレーズを見て思い当たる節がある。これは以前「うぇらっぷ」というライブイベントでこのようなことを言ってたのを思い出す。

 

「人間の感情は喜怒哀楽と4つに分けられるのってとってもシンプルだけど、色んな事情でそう断言できない余計な感情が芽生える事もある。そんな時にこの曲ができた。」

 

この曲とは紛れもなく以前デジタルでリリースした『余計だ』のことを示唆し、

あの曲の「幸せは一瞬のことで僕ら余韻を生きてるんだ、よね?」という一節とも本曲とリンクするのも頷ける気がする。

どちらの曲にも言えると思うのだがそこに込められてるのは #吉田彩花(Saika)によるエンタメへの熱い思いは

僕らにマイノリティなど本当はないの

という一節にも現れてて小劇場だろうが、インディーズのシンガーであろうともエンタメにかける想いにはメジャーマイナーなどないのだという彼女なりの闘争の火蓋が切って落とされた宣戦布告感に満ち満ちたりてる曲だと思うのだがいかがだろうか。

 
コガネムシ
Saikaは『むらさき』『きいろ』など敢えて歌詞にタイトルを入れないことで曲全体で「色」を体感できる曲を歌ってきたが、今回はガラッと指向を変えた。
意に反して光に反射する色彩を放つカルマを背負ってしまった黄金虫の悲しくもどこか共感すら覚える不思議な歌詞がツボ。悲しいけどどこか惹かれる光景が描かれている。


www.youtube.com

あと本曲に関して、全力で思うが、チリヌルヲワカ、或いはGo! Go! 7188の音楽を常日頃愛聴している人にも是非聴いてもらいたい歌詞世界である。諸行無常感もヲワカ全体の世界を凄く感じました♫何ならあのユウ氏のボーカルでも脳内再生できるし、〜0:40の「そんなつもりではなく♫」の辺りのどこかくねったメロディーに『再生可能』味を感じるのだ。彼女自身学生時代だかに、GoGo7188!のカバーしたというしこういう所にふとルーツが滲み出てるのかもしれない。

*3


www.youtube.com

 

❸いつか君にとって


www.youtube.com

 

5月15日「越谷イージーゴーイングス」での配信ライブにて彼女はそうMCしたのをハッキリと覚えている。 

 

「ライブハウスはいいなぁって改めて思いました。地下に下っていく感じだったり、重い扉だったり…エンタメは誰かにとって不要ではなく、気付いたらそこにある、寄り添ってくれる存在だと思っています。」

 

この中にある「エンタメ」、「不要」....という言葉たちには紛れもなくこのMCはこのコロナ禍で何度もそして誰しもが様々なエンターテイナーやオーディエンスの垣根を越えて議論し続けてきたエンタメとは果たして不要不急なのだろうか?」いう命題への彼女なりの答えを提示しているように思える。そして、本曲にもその命題に対する答えを忍ばせている。

残念ながら、現状としてはエンタメが不要のレッテルを貼られ続けている現状への怒りが滲み出た瞬間が以下のフレーズに現れている。

 

音楽なんかで泣かない 
そんなわけはないだろう
メロディはすぐ側にある 
彩ることで世界は変わる

 

未来への自分自身に対するタイムリープのようなこの歌詞を昨日のことのように懐かしむ事ができたならば、いつか世界は変わっていくだろう。という意味でこの曲はアフターコロナだからこそ生まれた曲だと確信できる。

 

❹気まぐれ


www.youtube.com

まさに、コンビニのイメージソングに使われるべきほのぼのとした曲ではないか。

サムネイルの夕焼けの写真通りの日常の大切さを歌った佳曲である。

注目すべきは「大きく広がる夢と胃袋に 豚骨らーめん」というフレーズがあるのだが、彼女のYouTubeチャンネルである「多彩花ちゃんねる」のコメント欄にて、オリジナル曲を作成するにあたって、テーマリクエストで様々な人たちのリクエストテーマを募集してて小生のコメントにある「豚骨ラーメン」というフレイズを曲にフィーチャーして下さったものだ。

 以下、その時の私のコメントである。

f:id:NENOMETAL:20210720212454j:plain

この中のガチなロックファンの親友というのがめんだこさんという方で、この歌を聴いて喜んだものだ。何せ我々は音楽ファンであるばかりでなく大の豚骨ラーメンマニアで、#とんこつbotなるタグで日々のラー活に勤しむほどの仲間である。それはともかくとしてこの『気まぐれ』の

別々の場所で同じ時を過ごして
何度も生まれ変わって今出会ったのは
偶然必然運命ではなく

 

の部分を聴くにつけ、ふと個人的に浮かぶ曲がある。

そう、松重豊井之頭五郎に扮する人気ドラマ『孤独のグルメ』にて、「ふらっとクスミ」のコーナーでお馴染み原作者、久住昌之氏のオリジナル曲『自由の筈』にある

 

生まれちゃうのは偶然 死んでいくのは必然 その間は自由 自由の筈なのに

 

というフレーズをを思い出すのだ。

どちらもこの時に混沌としてしまうこの世の中を、迷いながらも歩いていく日常の中だけども、どこか開き直りの大切さとよいうか、俯瞰生にも似た楽観性が見出せるそんな心象風景。

それにしても、若干29歳にも関わらず、久住昌之とか、曽我部恵一であるとか、ベテランのシンガーの歌う心象風景とリンクしてしまう彼女はとても不思議であり稀有な存在である。

その意味でも本当に面白いSSWだと思う。


www.youtube.com

 

❺まる


www.youtube.com

変な言い方だけど、本曲は本当に「歌」だと思う。いや、「歌」というより「うた」。

LIVEの度に、どんどんまるく初めは小さな点だったのかもしれないが、やがてひまわりの大きさとなり、そしてそんなひまわりは太陽光へと目指すべく、大きくなっていく、本当の意味での「うた」だという意味で。本来持っていたスケール感がそれこそ新緑が太陽光を浴びて芽吹くかのように更にグングン成長していくのを感じ、思わず目頭が熱くなる時がある。

そしてこの曲は【エンタメは心の太陽】をスローガンに掲げることを象徴しているかのようにSaikaの上半期のライブで最も歌われた気がする。

彼女は本曲を歌う前にこう言っていた。

偶然古道具屋の前を通って小学校の時に家にあったでっかい時計が置いてあってびっくりして家に連絡した。

というエピソード(部分的に聞き違えてる可能性あるが)を披露したが、本当に偶然すぎてビックリする。

この人は、今いろんな偶然を引き寄せる不思議な力があるという意味で、ふと『石集め』という曲を思い出した。ちなみにこの曲は、「ゆた生誕祭」と呼称されたミュージシャン・ゆた氏の誕生日である5月9日を祝って多くのミュージシャンが集ってライブをしたバーペガ配信にて初めて披露された。

石集め』という曲があるがこの中に生まれてきてくれて有難う」というフレーズが多彩なエモーションを込めて歌われたのが印象的であるが、個人的にこういうエピソードがあったのだ。

6月19日のツイキャスのライブだったと記憶しているが、ちょうどSaika氏が本曲を演奏し、まさにこの「生まれてきてくれて有難う」というフレーズが歌われた瞬間に本記事でも触れた『みぽりん』『コケシ・セレナーデ』などの松本大樹監督などでの映像作品の衣装担当もされているフリースタイリスト冨本康成氏の娘さんの誕生祝いツイートが私のタイムラインに流れてきたのだ。

f:id:NENOMETAL:20210721080628j:plainf:id:NENOMETAL:20210721080729j:plain

f:id:NENOMETAL:20210726174322j:plain

ホントこれめちゃくちゃTL的にローカルな話なので、読者の大半は「だから何?」と実感的にほぼゼロなのかもしれないが(笑)個人的にもうめちゃくちゃ驚いたのだ。ホント0.0001のジャストタイミングで同時に「生まれてきてくれて〜」が出たタイミングだったから。

でもそんな偶然を引き寄せるのが今のSaikaのモードであると考えれば妙に納得してしまう話でもある。冨本氏も聴いてくださったみたいだし良きエピソードだった。


www.youtube.com

本動画を見れば分かるように彼女のギターサポートとして向かって右に康士郎氏というギタリストがいるが、彼のSaika曲への解釈がとても好きだ。Saikaオリジナル曲の世界の可能性を時にはジャズ・インプロビゼーションの如く、時にはサイケデリックな領域だったりとか、我々の予測もしなかった次元へ飛ばしてくれる感覚に見舞われるのだ。ミニマムな2人編成だけど、もはやバンドのような趣きすらある。何が言いたいかと言えばSaika+康士郎=(頭取って)「サイコウ」のコンビネーションである。

 

❻ オレンジ

あと最後に、Saika氏はバーペガライブ並びにツイキャスでも幾度となく披露された『オレンジ』はに関して。本曲にはポップス特有のセンチメンタリズムがいい塩梅に散りばめられている。インディロックというよりj-POPど真ん中を貫く力にみなぎっているから。 

『オレンジ』の間奏では夕焼けが眼前に広がっていく瞬間を感じる。
時間で言えば黄昏時を思わせるまさに太陽がオレンジに染まるような曲である。


www.youtube.com

配信コメントなどで個人的に演劇などでのセンチメンタルがかったハイライトシーンのバックにかかりそうな印象があるが意外や意外。先月の鑪ら場(7/24)、バーペガでの配信ライブちゃびりはマスコット(6/26)では本曲は一曲目に演奏されることが多いが、それもバッチリハマる、考えてみればハイライトとオープニングどちらでもいける意味でとても不思議な曲である。

朝焼けが終わってしまう前に
もう一度夢を描く
ベランダのシャツが揺れている
影遊びしてるのかな
名前のない色じゃないのに
呼び名はなかった

夕焼けはあんなに儚げで
言葉すら出てこないのに
屋根の隙間から見えた色に呟いた
綺麗だなあ

こうして歌詞を引用してはたと気づく部分がある。彼女がよくMCで触れるように、まさに喜怒哀楽と言う4つの感情では決して人間の感性を推し量ることのできない、曖昧だけど、重要な余白の部分を思い出してしまう。例えば1日の始まりである朝焼けのオレンジも、1日の終わりである夕焼けのオレンジでもその意味合いは全くことなるのと同じように。ましてや同じ夕焼けの色でも日によって全く同じ色であるとは限らない。同じオレンジであっても様々なオレンジのあり方があるのだそしてその余白の部分を埋め合わせるのは紛れもなく我々の心の隙間からである感情なのかもしれない。

 

❼ ボーナストラック:

『歌え、ピエロ〜movie by Youtu部?』

最後に、吉田彩花が自ら立ち上げた魂の演劇プロジェクトS-igen企画「歌え、ピエロ〜movie by Youtu部?」についても触れる。 

f:id:NENOMETAL:20210721131849j:plain

え??これは曲ではなくて演劇でしょ?これは曲なのかどうかという異論もあるが私は曲だと思っている。だって本人がそう言ってるもん(笑)

 

《STORY》

有名なミュージシャンである姉・若林えみに憧れ、中学からバンドのギターボーカルをしていた若林のぞみ。

のぞみが高校にあがる頃、姉は突如失踪した。

何も告げることはなく、たった一つ残されたのは

一枚の紙切れ。

書きかけの歌詞「ピエロ」だった。

『また君に会う時が来たら

君より大声で歌えるように

歌いつづけるよ また絶対に会える

だから歌ってよう』

ー 届くよ。声。届けようよ!ピエロ!

あの⽇から⽌まった時が、

きっとどこかで動き出す。

( HPより抜粋) 

 

演劇とは常々「感情のセッション」だと思ってるが、個人的にここまでセリフの一つ一つがバシッと音楽のようにキマる舞台演目は初めてだと思う。とにかく、『雨雨』でも共演した長谷川小夏演じるのぞみに対して、親友がいつまで経っても心の殻に閉じこもっている彼女に対して2人の本音ぶちまけシーンが本当にヒリヒリとした共感を呼び寄せた。それはバンドでコピーしていた「フジファブリックの曲」でもいい、映画部の部室に置かれてた『君の名は』でも良い、YouTube配信でも、個性的すぎる同級生でも良いだろう、のぞみは様々な物に囲まれつつも、いつも自分の居場所を失ってしまう。それはいつの時代も誰もが感じるであろう青春時代ならではのリアリティに溢れていた、とても見終わった後の爽快感が半端ない劇だったと思う。

 まさに、ここでののぞみの心象風景は、もしかしたら当時の吉田彩花自身の投影でもあったのかもしれない。
 とも思ったが、或いはこの話は、S-igen企画の主催者でもある吉田彩花 による、コロナ禍以降蔑ろにされがちなエンタメに内在する光を取り戻す彼女自身の心象風景を写像したドキュメントでもあるのかもしれないと思ったりもするのだ。
何せ本作を配信にて観終わった頃、この『歌えピエロ』というタイトルが彼女のスローガンである「エンタメは心の太陽」とどこかシンクロするような感覚すら覚えたものだ。
 あと去年、吉田彩花と本劇にも出演している斉藤陽葵が兄妹役だった『GCM動画日記 case1』のテーマが「人と人との繋がりとは?」だった事も影響を与えてるんじゃないかとも思ったりして。*4

ちなみに本作でも斎藤氏の役柄は「画面を通じて自分達の想いを他者へ届ける」という意味では否時役柄だし、その意味でのシンクロっぷりが個人的に楽しかった。後ヨシオさんというメガネオタ役の方も出てるのだがあの人いい味出してたなぁとか思ったり。
 
ちなみに本劇終演後、何にかした後だろうか、主演の長谷川小夏生誕ライブなるものバーペガで行われて、その時長谷川小夏は、本作の続編のような台詞を放ったのが印象的だった。
「また一つ年取った。お姉ちゃん、あなたに届きますように」
『歌えピエロ』ののぞみが降臨したかのように「姉」を語る長谷川小夏。

f:id:NENOMETAL:20210721131823j:plain

それにしても、その姉が3時間前にしっとりと歌い上げた『やさしく生きよう』を青空に飛ばすようにテンポよく高く放ったのが印象的で、この時若林姉妹は笑顔で再会したのがハッキリとじぶの頭の中でもリマインドできたものだ。

ラストこの姉妹二人で『やさしく生きよう』だけでなく、姉妹共作のオリジナル曲、「きっといつか」が披露されたが、『やさしく生きよう』や『まる』と地続き感あるとてもヒューマニズム溢れる、正に初夏の風が優しく頬を撫でるような感覚に見舞われる爽やかな良曲だった。あ、ちょっとScudelia Electro(現;石田ショーキチ)『水虎の涙』を彷彿とさせる爽やかないい曲だった。
 特にこの二曲は是非いずれライブか配信などで再会できたらと願ってやまない。

 

3. 名古屋ツアー3Days

そしてそして...........第三章はもちろんこのレポも入れねばなるまい。

今回彼女にとってバンド以来5年ぶりだという名古屋ツアーである。

日は『太陽の余韻』TOURと名付けられた上前津music BAR BoBでのアクトである。

❶初日


www.youtube.com

セットリスト

コガネムシ
②サニー
③余計だ
④まる
⑤やさしく生きよう

3日間にわたるパフォーマンスの中で最も短い26分だったんだけど、ここにある5曲をありったけの感情で全力で曲を表現する姿を見て思ったのは彼女は絶対ライブで見なければならない類の表現者であるという事マイクにふと入ったちょっとした息遣いも、ふと緊張からか、天を見あげた時のキリッとした表情も、感情が先走りそうになるMCも、全てが曲を表現する大切な要素であることがわかる。そしてこの動画見ていただいたらお分かりだろうか、確か彼女はこのツアーを始める前に「太陽は空だけにはない。きっとライブハウスにもある。」と言っていたが、確かにこのアクトでパフォーマンスする彼女の背後に終始ビカッと光っているあの太陽のような光は何だったのだろう。

『エンタメは心の太陽』をスローガンに掲げる彼女らしいライブの幕開けであったと断言して良い。

 *5

開演前物販の所にちょこんと座っているのを目撃してご挨拶させていただいたが、「ああ、本物だ!!」と思ったが向こうも「え、ネノさん??あ、本物だ!(笑)」と仰ったのは笑った。もう配信の時のあの明るい気さくなキャラクターまんまの方で東京のライブハウスの話とか東京のカレー店事情とかライブについてとか色んな話を聞かせていただいたのも本当に貴重な体験だった。 *6

 

そして次は二日目、あの鈴木実貴子ズ の本拠地である鑪ら場でのライブである。

❷二日目


www.youtube.com

セットリスト

①オレンジ
②サニー
③イントロ
④余計だ
⑤石集め
⑥気まぐれ

「音楽で世界は変えられる、それを確認したくて聖地、名古屋にきた。」
とうとうここ、鑪ら場をホームタウンとしている鈴木実貴子ズへのアンサーソングである
③がこの地で鳴らされたのだ!

そしてこれは彼女の音楽キャリアが次のフェイズへと更にステップアップできる『イントロ』なのかもしれないと実感した。

*7

*8

ちなみに帰りがけ、吉田彩花氏をHIVEというバンド時代から知る方とお話しできたのだが、
彼女が一貫してるのは当時から常にSNSでの告知・近況報告を絶やさない事だと言う。
そういえばこの日最後の曲として演奏された『気まぐれ』も彼女を慕うファンからの
様々なテーマリクエストを一つの歌詞世界として完成させた名曲だ。*9

人間同士の出会いは奇跡だが、それをどんどん繋げれいけば軌跡にもなり得る、
人生とは「幸せへのキセキ」なのではなかろうか、そんな事を思わざるを得ない。

 *10

*11

❸最終日

そしてそして5年ぶりの名古屋ツアー最終日は、前日の鑪ら場の前に「ワンチャンあったらやるかも。」と言っていた路上ライブである。矢場駅付近の通称「噴水公園」、久屋大通公園噴水前にてパフォーマンスが行われた。あ、オーディエンスに鳩数匹もいます🐦 


www.youtube.com

 
セットリスト
①まる(撮影者が録音ボタンを忘れてるのでめっちゃ終盤ですw)
②むらさき
③余計だ
④イントロ
⑤オレンジ
⑥サニー
⑦いつか君にとって
⑨気まぐれ
⑩石集め
11やさしく生きよう 

この日は以前二日間とは違って、あの『ムーミン』のスナフキンのような吟遊詩人さながら、街の景色や風を感じたりしながら、曲の中に散文詩のような物を挿入しながら歌っていく極めて自由なスタイルだった。多分この二日間のライブをやり終えて少しホッとしていたのかも知れない。彼女の通り過ぎていく鳩も、噴水の音も風の音も車の音も交差するこの公園で開放的に鳴らされた彼女の「うた」は正に我々が生きる日常生活の行間を読むように優しく、強く、しっかりと馴染んでいくのが分かる。

 ちなみにこの日配信も同時中継だったのだが公園の広場で私は真前特等席を占拠して全曲聞かしていただく人が羨む最高のライブを堪能したのだが、このライブ後ちょっと話してて思ったのだが、道ゆく人もこの路上ライブにも子供たちがチラッと近づいて行ったり、レゲエっぽい外国人のお兄さんも何の違和感もなく自然と耳を傾けては通り過ぎて行くのがとても良かったなあという点で同意した。なんというか、アイドルイベントもこの日多くあったようだし、近くの公園ではバンドライブをやっていたし、そういやアイドルっぽい人達がステージ衣装を着たままパルコ前の横断歩道を渡っているのも目撃した。名古屋はエンターテイメントに溢れている街だなあと実感したものだった。 *12

f:id:NENOMETAL:20210725144111j:plain

 

4. エンタメよ、太陽に笑え 

ここでは彼女の掲げるエンタメ論とチャップリンピカソなどの世界の偉人たちの掲げるエンタメ・アート論との間に見られる共通点を探っていこうという章である。というのも以前Saikaはこういう事を言っているのだ。

f:id:NENOMETAL:20210721082520j:plain

『人生は壮大なコント』これを聴いてふと思い当たる節がある。世界の三大喜劇王と呼ばれる、イギリス出身の俳優、映画監督、コメディアン、脚本家Charlie Chaplin(チャールズ・チャップリン)が以下の名言を放っているのだ。

*13

 

Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.

(人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。)

 

この言葉って以前からなんとなく頭の中にあって「人生は喜劇であり悲劇....まぁそんなもんだろうな。」ぐらいに思ってたけど世界史の一部として「コロナ禍の年」として語り継がれるであろう2020~21年をクローズアップした時にある種実感と絶望感を持ってこの悲劇をかみしめることができる。でも、同時に多少懸念もあって、いつの日かこのコロナ禍が完全に収束した時に"ロングショット"でこの2020~21年を振り返った時にこの世の中はキチンと「喜劇」として解釈されているのだろうか?と疑問に思ったりもする。

確かに去年の元総理大臣のなんちゃらマスクとか、現都知事のフィリップ芸や、今年に入ってオリンピック開催をめぐる揚げ足取りだらけのドタバタ劇はリアルタイムでも怒りを通り越して笑いの境地に入ってて、いずれコロナ収束という事態になれば「壮大なコント」として解釈されるかもしれないが、もはやそういう域に達することができるのか不安感すら感じる。

まぁ深いことは置いといてそれだけこのチャップリンの言葉には今後の全人類の運命を背負うかの様な重みがあると思うし、まさに今その悲劇と喜劇の狭間に立たされた様な2021年7月21日の現在であるし、この言葉が立証された時に希望の光が立ち昇る。

そんなことを思わざるをない。それに関連して、コロナ禍に塗れた「2021年の夏」は本当に特殊な夏として我が人生に深く刻まれることだろう。ところで、話は変わるが今度のまた吉田彩花が、脚本/演出/プロデュースを担当するS-igen企画の第二弾の演目『悲劇のアルレッキーノ11月公演のフライヤーの上部に注目してみよう。

f:id:NENOMETAL:20210721124945j:plain

 

 

芸術は我々に真実を少なくとも我々が理解できる範囲の真実を見せるための嘘である。

 

これは紛れもなくスペインの前衛画家、であり吉田彩花が常日頃から尊敬しているというあのパブロ・ピカソによる名言である。*14

『芸術とは我々に真実を見せてくれる嘘』とは一体何だろう?
芸術といえば、片や、時代は違えど、同じアーティストであるかのレオナルド・ダ・ヴィンチは『その手に魂が込められなければ芸術は生まれない。』とも言っている。

前作「歌え、ピエロ〜movie by Youtu部?」で青空の下、高らかに嘘なき世界ともいえる青春を歌い上げたS-igen企画からすると意外なテーマである、嘘。

魂の込められた嘘であり真実でもあるこの芸術への答えをどう解釈するのだろう。

次なるビジョンへの期待がやまない。そしてここでこれまでの彼女の活動を見てきて、更に実際に目の前で彼女の 3つものLIVEを体感して今回確実に分かることがある。

 

あのパブロ・ピカソはこうも言った。

「大切なのは、熱狂的状況を生み出す事だ」と。

正に本名言は我々が日々享受している音楽・映画・演劇などのエンタメを盛り上げる上で重要なアティテュードだと思う。熱狂(enthusiasm)なくしては物事は盛り上がることはないのは当然のことである。とここまで書いてふと思い当たる節がある。

エンタメを提供するものもそれを享受(enjoyment)するものも、盛り上げる努力(endeavor)を怠らないことで先へ進める(encouragement)と思うのだ。

そしてここまで書いて思ったのは偶然全て頭文字enで始まる言葉たちであることに気づく。これを文章にしてみると....

 

Enthusiastic endeavor enjoys encouragement.

(熱に浮かされてるぐらいの努力を怠るな

そうすれば大きなサポートが待っている。)

 

またまた13244文字を超えることになったこの長文ブログにようやくオチをつけられたようだ(笑)。

本当に、吉田彩花(Saika)の掲げる「エンタメは心の太陽」なるスローガンが今後どこまで広がっていくかが楽しみだ。今後も彼女の演劇活動・音楽活動共々見守って行きたいと願ってやまない。*15


www.youtube.com

 

 

*1:今回舞台俳優吉田彩花というよりミュージシャンとしてのSaikaにクローズアップしてるので名称をSaikaに統一する。

*2:

nenometal.hatenablog.com

*3:twitterフォロワーである、めんだこ(暴走機関車)様からはGo! Go!7188時代の『数え唄』がモチーフになっているというご意見も頂いた。

*4:

nenometal.hatenablog.com

 

*5:しかしsaika氏ライブで、二日間ともCDのビニールのパッケージ開け係に徹したの笑った。

自分ライブとかで人の写真撮ったり、何時に始まるか聞かれたり妙にスタッフオーラ出してしまう時あるんよねw

*6:その他の出演者はバーペガでお馴染み古群翔馬、そして名古屋で活動しているかつら、鈴木大夢の各方々。完全にオルタナティブよりのカッコイイアクトを見せてくれた。物販でも音源は購入したし今後も注目して行きたい。

*7:ちなみにこの日、Saikaではなく吉田彩花名語での出演。orange blossomも川沿クタ子さんもとても雰囲気あって全体的にアートな感じだったな。

*8:ここに脚注を書きますこのSaikaの鈴木美貴子ズとの出会いや『イントロ』ができた詳細な過程に関しては過去記事を参照いただきたい

nenometal.hatenablog.com

*9:そういや鑪ら場でのもう一人の演者さん川沿クタ子さんがmcで吉田彩花さんは女優業もやっているだけあってセリフの行間を歌に込める印象がありました。と言ってたがまさに言い得て妙だと思った。

*10:幸せへのキセキ』って映画のタイトルね。マッドデイモンとスカーレット・ヨハンソン主演の動物園で暮らして経営しながら生活する話ね、てめっちゃ関係ないけど(笑)

*11:今回のライブでもセトリ予想をやってるが鑪ら場の方はオレンジが一曲目にきた時個人的にどよめいたが(笑)当たったのは6曲中4曲だったが、初日はすごかった。実際より一曲多めに書いたんだがそれにしても全曲的中(笑)、しかも順番まで当たってる。Saika氏も驚いてたし、古群翔馬氏も驚いていたらしい(笑)

f:id:NENOMETAL:20210725144546j:plain

f:id:NENOMETAL:20210725144554j:plain


*12:大阪とかだったらたいしてこういう音楽に興味ないのにニヤニヤ好奇心で近づく人多いもんな。音楽へのリスペクトはなくてただただ好奇心だけっていう...w。ああいうノリはちょっと違うと思う(笑)

*13:チャールズ・チャップリン - Wikipedia

*14:パブロ・ピカソ - Wikipedia

*15:そういや若宮八幡社で風鈴まつりなるものがあって願い事を書いてくくりつけるイベントがあったのだがこういうことを書いておきました(いつか世界は変わるだろう)

f:id:NENOMETAL:20210725125601j:plain