NENOMETALIZED

Music, Movie, and Manga sometimes Make Me Moved in a Miraculous way.

こんな時代だからこそ〜日常生活に鳴り響くシンガーソングライター・エナのポップネス

0. SSWたちのリアル

今現在、住んでいる関西地域において、トータルすると一体幾つのSSWやバンド、アーティストなどの集う所謂「フェス」なるものが存在しているのだろうか?

例えば、神戸のトアロード・アコースティック・フェスティバル、ミナミホイール、FM802などラジオ局主体のイベントや大阪駅前でたまにやっている路上でのSSWイベントなどなど....全て含めると指折り数えても数えきれないほどの物凄いイベント数になる事だろう。

そして更に思うのがその数多くのフェスにも拘らず、決してスカスカにならずにむしろギチッギチにタイムテーブルに収まるもう膨大なSSW達の膨大な数、数、数よ!

全日本国民一億人以上いるこの日本の中で、SSW達の割合を出すと、現在私が個人的に支持しているAnly、ハルカトミユキ、鈴木実貴子ズ、ヒグチアイ、AmamiyaMaako、仮谷せいらなどなど.....も含めてこれが結構なパーセンテージを占めるんじゃないかと思ったりする。まぁこれが全国民の10%とまではいかなくても5~8%ぐらいの人が何らかの形で人前でギターを弾いたりするいわゆるアーティストだったりするのだろうか?

そこで、この膨大な数のSSW達の中から頭ひとつ抜けていって初めて【ブレイク】と言える訳であってやはりこういう時は地上波テレビにでも出演して大々的に取り上げられなければならないのだろうかと、と途方もない気分になる。

ふと、そんな事を考えて過去の地上波にまつわるAnlyの記事を思い出したりして。

nenometal.hatenablog.com

でも言うまでもなく、テレビってのは、今の所は最強効力を保っている一大権力なんだろうけど、即効力はあっても、そのアーティストなりSSWなりの活動におけるsustainability(サステナビリティ、持続可能性)までは保証されるものではない。これは今まで多くの「流行(はやり)もの」としてテレビで消費されては、ハイ、これにて終わりって、ハイ次、って感じで消えていくアーティストを見たら一目瞭然ではないか?

だってほら、あれだけ子供達の帰り道のふざけネタになったピコ太郎など誰も見向きもしないじゃないか、もうパプリカですら完全に消費され尽くされてきた感もあるし。もうSuchmosもあれだけ時代を背負ったカリスマだ煽っといて、今やほぼ無視じゃないか、King Gnuよ、予防線貼っとけよ。あと考えられるのが、タレントとしてではなく、あくまで「ポップアイコン」としてのきゃりーぱみゅぱみゅにはもはやお役目が終わった感すらあるよね。彼女の運営サイドはきっと中川翔子小倉優子など過去の先人達に倣っていかに「文化人」への転身にはかろうか知恵を振り絞りつつ水面下でバタバタしていると思うんだけどね、知らんけど(笑)。*1

 

1. 北国のミューズ、エナのチャレンジ

そんな時いつも思うことがあった。このところのミュージシャンと、それを取り巻くファンダムとの関係って90年台以降のJ-POPの流れから換算していっても、ここ最近10年ぐらいだろうか、物凄く距離的にもメンタルな面でもaccesibility(接近可能性)が極めて高くなっていて、それをうまく利用することがブレイクスルーへと繋がるのではないかと。多分、2010年代に入ってから顕著な「会いに行けるアイドル」をコンセプトとしたAKBなどをはじめとするアイドル勢の握手会・特典会などのいわゆるリリースイベントなどの多発しているその影響下で、ミュージシャン(若手のみならずベテランも問わずもうポップスからロックからクラシックとかまでいわゆるオールジャンル)の活動にも積極的に取り入れられるようになってきたではないか。個人的にこうした流れが、距離的にもメンタルな面でもアーティストとファンとのaccesibilityが極めて高くなっている事へと連動している。あと落ちぶれた歌手の独断場というイメージがあったバーや小さなカフェでのライブも、そういうイメージは全く無く、むしろ「お洒落なライブ」として頻繁に行われるようになってきたしね。*2

だからこそ、上記の我が支持するアーティストがブレイクする為のしっかりした活動基盤ってか、土台を構築するには、こうしたファンからなる支持団体(ファンクラブ的なあれ)に協力を呼びかけることではなかろうか、と思ったりして。そういった意味で以前からクラウド・ファウンディングってのは絶対に有効無手段ではなかろうかとは前々から思っていた。

*3

これは前述した全てのSSWたちのみならず、最近ハマっているインディーズ映画界隈などに対しても最もアクションを起こして欲しい活動形態、いわゆるファンダム・ベーシス、もっと極端な言い方をしてしまえば、ファンダム・シンジケートとしてフルに機能できるものになるだろうとずっと確信していたのだ。

 そんなことを思っていた矢先、こういうニュースがタイムラインに飛び込んできた。

motion-gallery.net

そう、北海道中標津町出身の女性シンガーソングライターである、エナさんにおけるクラウドファウンディングへの果敢なる挑戦である。

このクラウドファンディングの目的、をかいつまんでいうと、

【目的を達成するとライブ実施からライブPV製作を行い、事務所所属/レーベル契約までの挑戦を皆さまに共有し、共に達成することです。】

とある通り、彼女の熱心なファンとともに本来は裏方でやるような活動基盤をも公開して、シェアすることによって皆で構築してみようという野心的な試みがそこにあるのだ。そしてそれらの目標の一つ一つが達成した際にはアーティストサイドから「リターン」という形でお礼をするというものだ。

そしてこのチャレンジ発足したのは去年の秋ぐらいの出来事で、結構前だからもうクラファン活動は終わっていることがわかる。そしてこのページを見て貰えば分かるとおりという目標金額である「1,000,000円」をはるかに超え何と、「4,916,611円」という目標の300%以上超えて達成してしまっているのだ。いやいや、クラファンってもっと「やっと到達、95%!!あともうちょい!!!あ、でも日数がない💦」みたいに結構ギリギリ感漂うもんじゃないのか??

そして、そのクラファンの最初のチャレンジとしてある企画が、今執筆現在2020年3月3日からするともはや明日にまで迫った渋谷eggmanにて開催されるワンマン無料ライブである。*4

 

 

明日行われるライブ....この言葉を聞いて人によってはこのコロナ感染で賑わっている世の中、「なぜこの後に及んでライブを開催するのか?」

「誰かがこのハコでコロナに感染したらどのように責任と取れば良いのだ?」

などなど、きっと消極的な意見や、場合によっては批判的な声を浴びせるものもいるだろう。でも彼女は演ることを決意したのだ。そこに彼女の音楽を希求するファンがいるから、その音を鳴らすためのステージがあるから、共に音を鳴らしてくれるバンド仲間がいるから、そして何よりもそこに「音楽」があるからに他ならない。

あとはこの彼女のキャリア史上ターニングポイントになるであろう「伝説」となるライブが実施すれば、そしてそのLIVEが成功して、そしてその伝説となるLIVE videoが無事に撮り終えられることができれば彼女はきっとアーティストとして次のフェイズに進むことができるだろう。

......などなど思惑を巡らしてたら、3/3の 18:00ぐらいにこういうツイートが飛び込んできた。

 

 ここで分かったことは当初ファンの誰もが恐れていた「全面的に公演中止」という最悪の事態は免れた模様。ただ、この日は当初から「無料ライブ」という設定であり、開催日などは全てクラファン支援者によって賄われてた為、主催者側としても比較的ノーダメージのまま3/4(水)のライブアクトはYouTubeによる配信ライブ、そして公演自体は未定ながらも延期、という体裁になったのは幾分助かった面もあったのかもしれない。ハッキリいうと、こういうアクシデンタルな事態に際して如何に対処するか、どういうアティテュードで対応するかという姿勢も既にアーティストとしての価値が問わると思うのだが、この決断には何の落ち度もないと断言できよう。しかも有り余るほどの彼女らしいとても、誠実な対応であると思う。

 でもここで、キャリア史上ターニングポイントとなるLIVEまでは少し時間的余裕がができたのではなかろうか。まだまだ彼女の楽曲に触れていない新規の人らがLIVEへ足を運ぶチャンスがでてきた、とも言える訳で、次章では、彼女の楽曲の世界観にジックリと触れてみようと思う。

 

2.名曲「ゆらゆら」の世界

本ブログではおそらくは初登場となるエナさんであるが彼女の楽曲の良さにも触れておこう。

こちらは前の章で触れた、3/4に渋谷eggmanにて無観客で行われた「wonder」ライブの模様である。


エナ - ワンマンLIVE「wonder」生配信@渋谷eggman(無観客ライブ)

特に私が個人的に好きな曲はこのライブで披露されている一曲目の「ゆらゆら」と言う曲である。この曲に個人的に素晴らしいと感じた点は、大まかに分けて以下の3点である。

❶:全体的に【だだっ広い荒野で新芽が息吹き、太陽光を浴び新緑の候を経て一気に花が咲き誇っていくあの自然のサークルを高揚感とともに鳴らした】感じが破格値に素晴らしい。でもそんな花や自然を美しく感じられるのは【悩み、痛み、涙】というリアリティに揺れるからこそである、そこまで描かれている素晴らしい曲だと思う。

 

❷:しかも更に個人的にツボだった点は【綺麗な花が咲いていたんだ】と言うフレイズが途中のブレイクを挟んで言い直されるのだ。だって「同じフレーズを言い直す」ことは日常生活ではままある現象だがそれを歌として成立させたのを聴いたのは人生初。はっきり言おう。このリフレインは「魔法」である。その瞬間、情景は広がり、燻りし感情は吹っ切れ、聴く者の心に訴えかけるポップスの魔法、である。このリフレインの背景に、登場人がおかれている人間ドラマだとか、その人を取り囲む情景だとか、儚くも力強くあろうとする感情などが、そのフレイズ以上のニュアンスを持ってパノラマのように広がっていく印象を持ってしまうのだ。

 

❸:更に❷のリフレインという概念に焦点を絞って述べると、人が(1)conviction(確信)と(2)emotion(感情)とが交差してその中で揺れ動きながらも前へ向かっていくと言うポジティヴィティに満ち溢れている。きっとこの歌の主人公は二度目の【綺麗な花が咲いていたんだ】を謳った時(1)conviction(確信)と(2)emotion(感情)の狭間でゆらゆらと揺れ何もかも振り切ったのだろう、そんな登場人物の心象風景まで垣間見えるのだ。

 他にも『星が鳴る道』という曲があるのだが、この曲の高音域の凄く響き渡る様はまさに北の大地さながらゆったりと壮大に響き渡るのだ。同じ道民で松山千春という超ベテラン歌手も 『大空と』という名曲があるが、あれにも勝るとも劣らぬほどの壮大に響き渡る歌声は、北海道の懐の深さすら思わせる。まさにエナは、このようにゆらゆらと揺れ動く様々な感情の幅を声で表現できるからメリハリのきいたメロディアスな美しい曲が多いのだとも思う。*5

 

 で、余談ではあるが、私ネノメタル はこの種の【前向きに力強く進みながらもどこか不安げな気持ちも垣間見える、でも全体的にポジティブに鳴り響く系の曲】にめっぽう弱い。でここらでそういう『ゆらゆら』とある意味シンクロすると考えているネノメタル フェイバリット曲でも紹介しとこうか。

 

☆例えば、石田ショーキチ(当時、石田小吉)のポップ・クリエイター編成ユニット、

Scudelia Electroの名曲『水虎の涙』とか、

www.youtube.com

☆「水虎の涙」と同じ作詞作曲は石田さんが在籍していた二人組バンド、

Spiral Lifeの人気曲『20th century Flight』とか

www.youtube.com

☆後はハルカトミユキで個人的に最も好きな曲『光れ』

www.youtube.com

 実は、これらの3曲ってどれも共通点があって現在活動休止中であるが、人気劇団である【演劇集団キャラメルボックス】の演目におけるオープニング・ダンスチューンになっているのだ。その意味でエナ『ゆらゆら』或いはエナの楽曲が近い将来、キャラメルボックスが復活した際のオープニングチューンにでも採用されることを物凄く心待ちにしてたりするのだが、それは可能性高き今後の夢として心待ちにしておこうか。

 

で、話はエナさんに戻るが彼女のその他のディスコグラフィーや活動内容、グッズ情報などはこちらを参照されたい(丸投げかw)。

ena-official.com

 

3.日常に鳴るべきポップスがここに...

ところで、先月末東京旅行した際の初日、2月21日(金)に、木場駅を降りた所のイトーヨーカドー付近に設置してある「レインボータウンFM」というコミュニティFM番組にてエナさんが生主演して、トークのみならず、曲を演奏もあるというという情報をゲットした。ちょうどその時間は空いていたのでまさに彼女の楽曲に直に触れるチャンスという事でいくことにした。

 

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*6

2020.02.21 エナ - 「サヨナラの音」@レインボータウンFM『ふかがわ音Meguri』

www.youtube.com

 ラジオ収録が終わって少しの間ではあるが彼女と話をする機会を得た。今回の直接お話しする最大の目的は前の章で述べたような『ゆらゆら』に関するレビュー・ツイートした所、大変共感かつ喜んでくださって、友人でありTwitterの相互フォロワーでもあるきむしげさんがわざわざ私の為に直接CDを購入して以下のようなサイン(というよりこれはもはや私信ですね!?)を頂いてたので、私が『ゆらゆら』レビューしたその張本人のネノメタルです!ということをお礼と自己紹介を兼ねて伝えたかったからだ。

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いや、そこで、もちろん覚えていただいていたのはとても嬉しかったし、あと、個人的にうろ覚えだったんだが、以前「『片目に涙』の「誰かに伝えたくて〜♪」の辺りってどこか沖縄民謡っぽいうねりつつ徐々に登りつめていく感じが凄くしてやはり心に訴える感はある。ただ北の地域出身の彼女に真逆の南の音楽を感じるのも興味深い。」とツイートしたことがあってそれをハッキリ覚えてくださっていたのだ。

 これはホントビックリしたね、てかなんでツイートした張本人の私の方がエナさんよりうろ覚えなんだよ、という話だがw、ちなみにこれがその去年の夏のこのやりとりである↓

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 そして、私が前々から思っていた事を伝えることができた事も非常に嬉しかったな。*7

 それは、エナさんの音楽を聴くにつれ、彼女の音楽は極めて「日常のサウンドトラック」という感じが常日頃からしていたのだ。

大袈裟なメッセージや、大それた主張などを、ドラマティックにメロディーに託すのではなく、本当にフラット感じである。

言うなれば、

平日の午前から昼下がりにかけてFMラジオからふと流れてくる音楽、本当のポップミュージックのあるべき姿が存在している、と個人的に思っていてまさにエナさんの音楽にはそういうポップネスがある、という歴然とした事実をお伝えしたかったのだだからこそこのコミュニティFMで彼女の音楽が鳴らされたというこの日のエピソードはドンピシャすぎるシチュエーションであったし、先に述べたように、シンプルな舞台で日常の風景でもって構成される演劇集団キャラメルボックスのアコースティックシアターのオープニングテーマにも適していると思ったのかもしれない。

 そんな意味で東京は下北沢という様々なサブ・カルチャーで溢れる街の日常生活のありふれた風景の中撮影した、この『片目に涙』という彼女の音楽キャリア初のミュージック・ビデオをあげることによって、またもや8100字を越えてしまった本ブログ記事を締め括りたいと思う。 

『片目に涙』performed by. エナ 

www.youtube.com 

 

【付記】

どんなに人と笑って騒いで楽しい時を過ごしても、ふわっと塒のような不安がよぎる事ってないだろうか。

「僕らは常に少し悩み、それでも涙を堪えて生きている。」

この歌は、いやこの歌に限らずエナの歌はそんな我々の日常を肯定性に導いてくれる。

そんなポップスがもっと街にあふれますように。

こんな時代に。

いや、こんな時代だからこそ。

*1:そう考えりゃ「あいみょん」って人は凄いよね。時代の流れに消費されることはなく良質なポップスを未だに次々に生産しているんだから。彼女を取り巻く運営陣が優秀だって説があるけどうなずける話だ。

*2:話はそれるが、握手会、リリースイベントでもTwitterで「ガチガチに緊張した」と言っていつつも案外皆しっかりと時に冗談を交えつつコミュニケーションできているよね。やはり身近で会ってしまうってのは肝が座るってか、大きいのだと思う。多分リリースイベントなどとは無縁の超ベテランシンガーとかあってしまうと一言も喋れんぐらい緊張するだろうな、長渕剛とか山下達郎とか中島みゆきとか....

*3:これがクラウドファンディングの全貌である(丸投げ)

ja.wikipedia.org

*4:ちなみにこのライブの開催の可能性に関しては執筆当時は微妙なところがあった。だが、この時点での活動の流れはまだ開催できる可能性のある今の時点のリアルなブログ記事としてこのように公開しておきたいと思う。

*5:ライブを収録した音源を聞いたのだが、ライブには一般的に音源をきっちり再現するタイプと音源の世界観をさらに広げるタイプとがあるが彼女は間違いなく後者。『エナライブ1』『エナライブ2』と称する彼女のライブ盤作品があるが、どちらも音源を超えた表現力に圧倒される。中でも「君がいなくなった朝」のブルーズすら感じる広がりは必聴。

*6:本ラジオ番組をYouTubeにアップして下さっているのは、エナさんの熱心なファンであり、私のTwitterの相互フォロワーである待つぼっくりさんである。彼ともこの場にて初対面だったのだが、彼の存在なくしてはエナさんの音楽を聴いたりする事はなかったかもしれない。

*7:これは彼女の人間性を表すエピソードだと思うんだけど、ラジオ生放送収録中に3-4歳ぐらいの女の子もキャッキャッ言いながら観覧していた。父親もいたが、たまたま通りかかった風で、別に彼も彼女の音楽を知っているわけでもなかったのだが、収録終わって帰り際に「楽しかった(о´∀`о)!!」エナ「楽しかった?有り難う〜!!」とその女の子と会話しててたのがとてもエナさんらしきエピソードって感じで印象的だった、彼女の音楽ってこういう風に日常にふっと浸透するんだろうなとも思った。